さっきまでと違い、やたらと暗い画面で静止画像かと思うほど動きがない。でもよく見ていると何かが画面の底で蠢いている。しばらくすると、蠢いていたものがゆっくりと立ち上がり、何かを手にぶら下げながら立ち去って行って動画が終わった。さっきのとこれとの違いは、ウエアラブルカメラの映像と設置カメラの映像であるところだ。暗すぎて細かいことは分かりにくいけれど、画面からは言いようのない背徳感が滲み出している。
「闇の匂いする」 「だよね。だからヒビキに観てもらおうって」 「ユサって広報だったよね。何か知ってるんでしょ」 「知らないの」 「知らないって。それでどうやってこのプロダクトのこと広報してんの?」 「広報の仕事って言っても、ポスターの印刷頼んだり、ユーザ宛てのメールの文書作ったりするだけだもん。だからほとんど蚊帳の外」 なんだ、使えないか。 「これでも頑張ったんだよ。なんとか食い込もうと思って。でもダメだった、ヒビキと違って」 あたしはそうならないように、うんとアタマ働かせてやって来たけどね。 「それでも、他の人が知らない余計なことは知ってる」 聞きたかない。 「だから、この動画アップしたのは、カイチョーって言える」 なに泣いてんだよ。こいつのこういうところが嫌なんだ、ホント。 それから観られるだけ観たけど、どれもこれも同じような動画だった。フィルターがかかってる? 「ヒビキ分かる? カイチョーの投稿にパターンがあるの」 「パターン?」 「うん。短期間のうちに3回あげたら、1、2ヵ月空けてまた短期間で3回あげてる」 タイムラインをhoukeikamenで検索して、日付でソートするとユサが言うとおりのパターンが見て取れた。 「ホントだ。よく気づいたね」 「システムやってると、タイムスタンプにはうるさくなるんだよね」 なるほど、習性ってやつか。 「ユサんところの社長SNSってあるじゃない。あれって見てる?」 「カイチョーの『桜の森の満太郎のつぶやき』? 見てない。一、二度見たけど、許せな