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Home / 恋愛 / 七年の嘘、愛も憎しみも虚しく / 第9話

第9話

Author: 半夏moon(はんかのムーン)
運転手は急いで車を飛ばし、私を相澤家傘下の病院まで送り届けた。

手術は順調に終わった。体の中から小さな命が流れ出ていくのを感じたとき、私の心はただ静かに、解き放たれるような安堵だけが残った。

病室から出されたその瞬間、ドアを勢いよく開けて飛び込んできたのは、嘉山だった。

傍らのボディーガードが事情を説明する。

「若旦那様、命がけて駆けつけまして……私たちも止められませんでした」

私は彼を責める気にもなれず、ただ淡々と嘉山を見つめて言った。

「もう遅いの。お腹の子は、もういない」

嘉山は目を赤くして、その場に崩れ落ちた。

「時雨、なんで……どうしてこんな酷いことを……」

思わず笑いそうになった。この七年間、私にしてきた仕打ちを、彼はすっかり忘れたらしい。

その時、相澤当主が入ってきて、地べたに座り込んだ嘉山を一瞥し、呆れたように叱った。

「バカ者が!今さら後悔か?もっと早く気づけばよかっただろう!」

そう言いながら、相澤当主は嘉山を無理やり引きずり起こして連れ出そうとする。

「このままじゃ時雨に顔向けできんだろう!邪魔だからさっさと出ていけ!」

病室の扉が閉まっても、相澤当主の叱責は微かに聞こえていた。

私はすべて聞こえぬふりをして、ベッドに腰掛けたまま、渡された小切手を一瞥した。

相澤当主はさすがに太っ腹で、いきなり二十億円。これで私のこれからの人生は安泰だ。

療養のために病院で過ごす間、嘉山は毎日のように見舞いに来て、高級な贈り物や滋養の品をこれでもかと届けてきた。

何も知らない看護師たちは、羨ましそうに言う。

「ご主人様、本当に奥様のこと大事にされてますね」

私は微笑んで訂正した。

「違いますよ。私たち、もう離婚しましたから」

つい最近、嘉山は相澤当主に強く迫られ、離婚届にサインしたばかりだった。

あと数日で正式に離婚成立。

そして、退院の日、まさか真夏が現れるとは思ってもみなかった。

この間に彼女はずいぶんとやつれ、頬もこけて、かつてのみんなの憧れのお嬢様の影はなかった。

私を見つけると、彼女は怒鳴りつけてきた。

「あんた、もうすぐ離婚するんでしょ?だったら何でまだ嘉山にまとわりつくのよ!

本当は私が彼と結婚するはずだったのに、全部あんたが邪魔したから!」

言い終わるが早いか、彼女は私に詰め寄り、平手打
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