「わ……私……」
雪乃はあまりの光景に顔を真っ青にさせて、言葉を詰まらせながら言った。「ただ炒めてる時に、ピーナッツを砕いたものを少し入れただけ」
博人は歯ぎしりをした。「理玖はピーナッツが食べられないんだ」
「え?」雪乃は体を震わせ、瞳は一気に真っ赤になった。そして震えた声で「私、そんなの知らなくて」と言った。
そして。
博人はすでに理玖を抱きかかえて家を飛び出し、車に乗ってアクセルを踏み込み病院へと急いだ。
雪乃が家から出てきた時には、すでに遠くにいっていた車の後部が見えるだけだった。
博人はすぐ病院に到着した。
病院のベッドに横たわる理玖は命の危険は脱していたが、両目をきつく閉じ、顔は血の気が引いて長いまつ毛には涙の粒がついていた。
誰が見ても非常に可哀想な姿だった。
「ママ……」
彼は苦しそうに眉をひそめて、夢の中で何を見ているのか、ずっとうなされていた。
博人は非常に心配した様子でベッドの横に座り込んでいた。
この時、入り口から誰かの足音が聞こえてきた。
雪乃が急いで駆けつけ、病室の入り口に立ち、とても後悔しているらしく博人と理玖の父子を見つめた。
「博人、私、本当に理玖君がピーナッツアレルギーだってこと知らなかったの。私……」
彼女は話しながら、声色は嗚咽に変わり、涙を流した。
理玖がちょうど騒がしさで目を覚まし、目を開けると傷ついた雪乃の姿が目に飛び込んできた。
もし以前の彼であれば、すぐにでも雪乃を慰める言葉をかけていたはずだ。
しかし今は……
理玖は顔を博人のほうへ向けた。その声は弱々しく小さかった。
「パパ、僕ママに会いたい」
雪乃はそれを聞いた瞬間その場に立ちすくんだ。瞳の底には恨みと悔しさが潜んでいた。
博人も彼女のほうを見ることなく、自分も心を痛めながら、しっかりと理玖の手を握りしめ、落ち着いた声で言った。
「安心しろ、絶対にママを探し出そうな!」
……
それと同時刻。
未央たち一行はすでに堂本家を後にしていた。
車の中で悠奈がじっとしていられず口を開いた。「兄さん、私と未央さんね、一緒に心療内科の病院を開きたいと思ってるの、兄さんはどう思う?」
悠生はその突然の申し出に意外そうだった。
しかし、すぐに彼はそれに同意した。
「いいじゃないか。白鳥さんの実力なら、もっと多くの人を助