そして。
絵里香はハッとして、心の中に込み上げる感情を抑えこみ、冷たく笑った。
「私から何か聞き出すことができるって思ってる?」
未央は残念そうに唇をきつく閉じて黙ってしまった。
この時、絵里香はすっかり落ち着きを取り戻し、いつも通りの余裕ある状態に戻った。
「あなたがどう思おうとも、晃一の死と私は無関係よ。信じられないっていうなら、明日の朝分かると思うけど」
そう言い終わると、絵里香は一度も振り返らずに去っていった。
未央はその場に立ったまま、さっき絵里香が言っていた言葉の意味を考えていた。この時耳元に京香の声が聞こえた。
「未央さん、早くいらっしゃい。ケーキを切ってね」
本来このような場面では、藤崎家の者だけがステージに上がることができる。
未央は京香からかなり好かれているので、一緒にステージ上へと引っ張られていった。
「あなたならいいのよ。たとえ悠生と関係がなかったとしても、悠奈の恩人であることに間違いないのだし」
未央は仕方ないといった顔で京香にされるがまま従っていたが、同時に心の中では嬉しく思っていた。
このように自分を大切に見てくれることは、以前、西嶋家にいる時には有り得ないことだった。しかし、今の彼女にとって少しそれが重たくも感じていた。
未央は嬉しそうな京香を見て、ふいに不安を感じた。もし、京香に悠生の恋人だということが嘘だとばれたらどうしよう?
暫く考えた後。
未央は眉をひそめて、悠生の傍まで行くと、声のトーンを落として言った。
「ちょっとお話したいことがあるんです」
「ははは、藤崎社長と白鳥さんはとても仲が良さそうですね」
ビジネスパートナーの一人が気を使って一言意味深に言って去っていった。
悠生は視線を下に落とし、未央のほうを向いて小さな声で言った。「どうした?」
彼は今夜、お酒が入っているので、普段は優しく穏やかな瞳が、普段より攻めた魅力的な目つきになっていた。
未央は口を開き、視界の隅に映る京香を一瞥して、軽く咳をして言った。
「ちょっとここは騒がしいので、外に行きませんか」
悠生は何か思うところがあるらしく、両手に無意識に力がこもった。しかし、複雑な思いを顔には出さず、素直に彼女の言うことを聞くことにして頷いた。
「分かった」
……
これと同時刻。
博人はオフィスの椅子に腰かけ、かな