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Home / 恋愛 / 今さら私を愛しているなんてもう遅い / 第86話

第86話

Author: 大落
そして。

絵里香はハッとして、心の中に込み上げる感情を抑えこみ、冷たく笑った。

「私から何か聞き出すことができるって思ってる?」

未央は残念そうに唇をきつく閉じて黙ってしまった。

この時、絵里香はすっかり落ち着きを取り戻し、いつも通りの余裕ある状態に戻った。

「あなたがどう思おうとも、晃一の死と私は無関係よ。信じられないっていうなら、明日の朝分かると思うけど」

そう言い終わると、絵里香は一度も振り返らずに去っていった。

未央はその場に立ったまま、さっき絵里香が言っていた言葉の意味を考えていた。この時耳元に京香の声が聞こえた。

「未央さん、早くいらっしゃい。ケーキを切ってね」

本来このような場面では、藤崎家の者だけがステージに上がることができる。

未央は京香からかなり好かれているので、一緒にステージ上へと引っ張られていった。

「あなたならいいのよ。たとえ悠生と関係がなかったとしても、悠奈の恩人であることに間違いないのだし」

未央は仕方ないといった顔で京香にされるがまま従っていたが、同時に心の中では嬉しく思っていた。

このように自分を大切に見てくれることは、以前、西嶋家にいる時には有り得ないことだった。しかし、今の彼女にとって少しそれが重たくも感じていた。

未央は嬉しそうな京香を見て、ふいに不安を感じた。もし、京香に悠生の恋人だということが嘘だとばれたらどうしよう?

暫く考えた後。

未央は眉をひそめて、悠生の傍まで行くと、声のトーンを落として言った。

「ちょっとお話したいことがあるんです」

「ははは、藤崎社長と白鳥さんはとても仲が良さそうですね」

ビジネスパートナーの一人が気を使って一言意味深に言って去っていった。

悠生は視線を下に落とし、未央のほうを向いて小さな声で言った。「どうした?」

彼は今夜、お酒が入っているので、普段は優しく穏やかな瞳が、普段より攻めた魅力的な目つきになっていた。

未央は口を開き、視界の隅に映る京香を一瞥して、軽く咳をして言った。

「ちょっとここは騒がしいので、外に行きませんか」

悠生は何か思うところがあるらしく、両手に無意識に力がこもった。しかし、複雑な思いを顔には出さず、素直に彼女の言うことを聞くことにして頷いた。

「分かった」

……

これと同時刻。

博人はオフィスの椅子に腰かけ、かな
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