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Home / 恋愛 / 会社を辞めてから始まる社長との恋 / 第1428話 番外編七十六

第1428話 番外編七十六

Author: 花崎紬
家に戻ったその日、またひどく踏みつけられて――

これでは、しばらくは動けそうにない。

紀美子はようやく、娘が自分の質問に答えなかった理由を理解した。

自分が知らないことがまだたくさんあったのだ。

次第に、朔也をかばう気持ちも薄れていった。

昔の恩義は時間で消えないけど……悪事を働いた以上、情状酌量なんてできないわ。

しばらくして、晋太郎は二人を連れて帰路についた。

車の中で。

ゆみは紀美子を見て尋ねた。

「お母さん、まだ私を説得するつもり?」

紀美子はしばし沈黙してから答えた。

「もう止めやしないわ。澈くんは本当に無実だった。ただ……会えるなら、朔也と一度会わせてほしい」

「いいよ」

ゆみは答えた。

「そんなに時間かからないよ。もうすぐ彼を連れてきて母さんに会わせるから」

紀美子は寂しげに頷き、車窓の外へと視線を向けた。

朔也……

あなたは、もともと誰かを理不尽に傷つけるような人じゃなかったはず。

でも今回ばかりは、やりすぎよ。

――十四年の時が、あなたを変えてしまったの?

……

数日が過ぎた。

誰にも異変はなく、平穏な日々が続いていた。

ゆみも朔也と澈の話題を意図的に避けていた。

しかし、臨はどんどん焦ってきていた。

ゆみが決めたその日が近づいているのに、今になっても行動の知らせが届いていない。

我慢できなくなった臨は、放課後にゆみへ電話をかけた。

しばらくして通話が繋がると、彼はすぐに聞いた。

「姉さん、あの件……結局どうなってるの?」

ゆみはタクシーを拾い、澈の家へと向かっていた。

「何をそんなに焦ってるのよ?」

「だって、また役立たずって怒られたら困るし……」

「私がちゃんと知らせるって言ったじゃない」

ゆみは言った。

「でももう時間がないんだよ!期末試験も近いし!」

ゆみはふっとため息をつき、携帯を置いて時間を確認した。

少し考えてから、口を開いた。

「じゃあ、今夜にしよう」

「でも一つ問題があるんだ。父さんと母さん、それに兄さんたちにバレたらどうする?」

「それは私に任せなさい。あなたは気にしなくていい」

「……わかった。じゃあ、今夜始めるよ」

「ええ」

電話を切り、ゆみは深く息を吸い込んだ。

計画通りに行くといいな……

二十分後、彼女は澈の家の前に到着した。

建物
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