家に戻ったその日、またひどく踏みつけられて――
これでは、しばらくは動けそうにない。
紀美子はようやく、娘が自分の質問に答えなかった理由を理解した。
自分が知らないことがまだたくさんあったのだ。
次第に、朔也をかばう気持ちも薄れていった。
昔の恩義は時間で消えないけど……悪事を働いた以上、情状酌量なんてできないわ。
しばらくして、晋太郎は二人を連れて帰路についた。
車の中で。
ゆみは紀美子を見て尋ねた。
「お母さん、まだ私を説得するつもり?」
紀美子はしばし沈黙してから答えた。
「もう止めやしないわ。澈くんは本当に無実だった。ただ……会えるなら、朔也と一度会わせてほしい」
「いいよ」
ゆみは答えた。
「そんなに時間かからないよ。もうすぐ彼を連れてきて母さんに会わせるから」
紀美子は寂しげに頷き、車窓の外へと視線を向けた。
朔也……
あなたは、もともと誰かを理不尽に傷つけるような人じゃなかったはず。
でも今回ばかりは、やりすぎよ。
――十四年の時が、あなたを変えてしまったの?
……
数日が過ぎた。
誰にも異変はなく、平穏な日々が続いていた。
ゆみも朔也と澈の話題を意図的に避けていた。
しかし、臨はどんどん焦ってきていた。
ゆみが決めたその日が近づいているのに、今になっても行動の知らせが届いていない。
我慢できなくなった臨は、放課後にゆみへ電話をかけた。
しばらくして通話が繋がると、彼はすぐに聞いた。
「姉さん、あの件……結局どうなってるの?」
ゆみはタクシーを拾い、澈の家へと向かっていた。
「何をそんなに焦ってるのよ?」
「だって、また役立たずって怒られたら困るし……」
「私がちゃんと知らせるって言ったじゃない」
ゆみは言った。
「でももう時間がないんだよ!期末試験も近いし!」
ゆみはふっとため息をつき、携帯を置いて時間を確認した。
少し考えてから、口を開いた。
「じゃあ、今夜にしよう」
「でも一つ問題があるんだ。父さんと母さん、それに兄さんたちにバレたらどうする?」
「それは私に任せなさい。あなたは気にしなくていい」
「……わかった。じゃあ、今夜始めるよ」
「ええ」
電話を切り、ゆみは深く息を吸い込んだ。
計画通りに行くといいな……
二十分後、彼女は澈の家の前に到着した。
建物