「約束したことは必ず守る」
剛は何回も深呼吸をして自分を落ち着かせた。
「さあ、やれ!」
「はい!」
二人は応じ、麻袋を担いで川辺に向かって歩き出した。
しかしその時、突風が吹き荒れた。
風は、冷たく唸りながら鋭い刃のように肌を切りつけた。
二人の男は、砂塵で目をやられ、一瞬足が止まった。
「ちくしょう」
一人の男が言った。
「いきなりどこからこんな風が吹いてくるんだ!目に砂が入ってくる」
もう一人の男は急いでゆみを下ろし、自分の目をこすりながら言った。
「いてえ。どうなってんだ、こんな強風」
剛も同様で、砂が目に入り涙が止まらなかった。
やっとのことで目を開けると、目の前に広がる光景に愕然とした。
30分後。
佑樹は、ボディガードを連れ、川辺の監視カメラが捉えた場所に駆けつけた。
目の前の光景を見て、彼は驚きのあまり固まった。
佑樹は急いで麻袋の縄を解くと、気絶しているゆみを抱き上げた。
「ゆみ、しっかりしろ!」
彼は妹の頬を叩いた。
「ゆみ、大丈夫か!」
何度も呼びかけると、ゆみはやっと目を開けた。
「お兄ちゃん……」
目の前の兄を見て、ゆみは掠れた声で呼んだ。
そう言うゆみの声を聞くと、佑樹は目頭が一気に熱くなるのを感じた。
「もう……大丈夫だ」
彼はゆみを強く抱きしめて囁いた。
ゆみは強く抱き締められて苦しく感じながらも、次第に意識を取り戻していった。
「お兄ちゃん、剛が私を誘拐したの。彼はどこ?」
意識を失う前のことを思い出し、佑樹を押しのけて尋ねた。
「死んだ」
佑樹はゆみから離れ、涙をこらえながら答えた。
「お兄ちゃんが殺したの?」
ゆみは驚いて目を大きく見開いた。
「違う」
佑樹は顎である方向を指した。
「俺が着いた時には、もうこうだった」
ゆみはすぐに佑樹の視線を辿って見た。
すると、少し離れた所に、剛が目を見開いたまま倒れていた。
顔はすでに青ざめ、呼吸も止まっているようだった。
「こ、これはどういうことなの?」
ゆみは剛から視線をそらし、佑樹に向かって叫んだ。
「わからない」
佑樹の目は冷たかった。
「でも、そいつがまだ生きていたとしたら、俺があいつを生かしておかなかっただろう」
「いや、ちょっと待って。どうして死んだの?あの様子だと、何かに驚いて死んだ