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第1430話 番外編七十八

Author: 花崎紬
晋太郎の顔が険しくなった。

「念江、佑樹に電話しろ。すぐに澈のマンションに人を向かわせ、ゆみを探させろ!それと監視カメラも調べろ!」

念江はうなずき、最速でファイアウォールを突破して監視映像を探し出した。

同時に、紗子に頼んで佑樹に電話をかけさせた。

映像には、帽子とマスクで顔を隠した三人の男が、ゆみを階段の踊り場で襲い、昏倒した彼女を担ぎ上げて車へ運び込む様子が映っていた。

映像を見つめていた臨は、眉をひそめながら口を開いた。

「違う……あれは僕が手配した三人じゃない!」

その言葉に、全員の視線が一斉に臨へ向けられた。

「どうしてわかる?」

念江は尋ねた。

「僕が手配したのはがっしりした男だ!姉さんは喧嘩が強いから、細い奴らだとバレて朔也叔父さんに見破られちゃうと思って」

「ここを見て」

紗子が画面を指さして言った。

「臨が手配したなら、ゆみの携帯を隅に投げ捨てたりしないわ」

確かに、画面の隅にゆみの携帯が捨てられていた。

念江が拳を硬く握り締めた。

「紗子、佑樹には連絡取れた?」

紗子は気まずそうに苦笑しながら答えた。

「かけたけど、切られちゃった……誰か代わりにかけてくれない?」

「僕がかける」

臨は佑樹の電話番号を探し出してかけた。

まもなく、佑樹が電話に出た。

臨は焦った声で言った。

「佑樹兄さん!すぐに戻ってきて!大変だよ!姉さんが誘拐されたんだ!今すぐ人を出して探して!」

臨がそう叫ぶと、電話の向こうで佑樹は即座に通話を切った。

そしてすぐに手配を始め、自らも全速力で潤ヶ丘に向かって車を飛ばした。

帰宅後、彼は状況を確認すると、一言も発さずにそのまま玄関へ向かい、再び扉を開けて飛び出して行った。

「念江、もう一度監視カメラを調べて!ゆみに何かあったら……」

紀美子は涙をこぼしながら言った。

念江は重々しく頷いた。

「母さん、心配しないで。今、部下と連絡を取り合って、街中の監視カメラを一斉調査してもらってる」

十数分後、念江は手配を終え、全市監視ネットワークから映像を照会し始めた。

百人以上の人員が同時に捜索を行ったため、進展は速かった。

一時間もしないうちに、彼の元へ一つの監視映像が共有された。

その映像を開くと、川辺で意識を失ったゆみが袋に押し込まれるシーンが映し出された。

その袋
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