二人は書斎に入ると、佐倉遼一がドアを閉め、重苦しい雰囲気が一気に押し寄せた。
月島康生は仏像に線香を立てながら、突然問いかけた。「最近、新しい友達ができたのか?」
予想外の質問に、月島明日香の体は緊張し、息を詰め、心臓がドクンと早鐘を打つのを感じた。
「はい......そうです、お父様。私、何か間違えましたか?」
月島康生はゆっくりと机の前に腰掛け、佐倉遼一はその傍らに立ったまま、二人の視線が鋭く彼女を捉えていた。「明日香、君は父さんを怖がっているのか?」
明日香はうつむき、慎重に言葉を選びながら、控えめに答えた。「いいえ......お父様が厳しすぎるのです。私、何か失敗して叱られるのが怖いだけです」
この言葉に、月島康生は少し驚いた様子を見せ、彼女をじっくりと見つめた。彼の娘が、どこか以前とは違う気がした。
昔のような突っ張った態度が和らいでいる。
「君、いつから藤崎家の人と付き合いがあるんだ?」
「藤崎」という名前を聞いて、明日香はすぐに思い浮かんだのは藤崎樹だけだった。まさか何か問題が起きたのか?
月島康生のように、敵対する者を決して許さない性格からすれば、もし娘に何かがあれば放っておくはずがない。
この質問をされたということは、
藤崎樹が何かに関わっているのか?
これが、彼女が唯一考えられる理由だった。
さもなければ、月島康生がわざわざ彼女を呼び出すことなどないだろう。
彼女は藤崎樹のことを月島康生に隠し通せるはずがないと知っていた。今言わなかったとしても、いずれは知れるだろう。
月島明日香は観念し、正直に答えた。「樹君とはここ数日で知り合いました。彼は隣の家に住んでいて、先日後庭の枣の木のところで少し話をしました」
「ほう?」
藤崎家の人も南苑の別荘に住んでいるのか?
明日香は続けて言った。「彼の名前は藤崎樹といいます。お父様、彼は良い人ですよ」
月島康生は立ち上がり、彼女の肩に手を置きながら言った。「父さんはただ心配しているんだ。月島家を狙っている連中は多いからな、君が騙されないか不安だったんだよ」
「わかっています、お父様。気をつけます」
「時間があるなら、その友達を家に招いて一緒に食事をしよう」
その言葉には何か裏の意味が含まれているようだった。明日香はそれを感じ取りつつも、素直に頷いた。「わかりました、