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Home / 恋愛 / 再び頂点に戻る、桜都の御曹司にママ役はさせない / 第98話

第98話

Author: こふまる
「桜国最強の女性ドライバーですって?たいしたことないわね」

今夜、Lunaを打ち負かし——

明日には、自分の名が轟くはず!

最初のコーナーが迫る。

「シュッ!」

黒いバイクが、まるで軽やかな舞のように楓の横を抜け去り、瞬く間に差をつけていった。

楓は目を疑った。

どうして?一瞬で抜かれて——?

フルスロットルで追い上げを図るも、コーナーを重ねるごとに、その差は開くばかり!

「マジかよ!コーナーでブレーキ踏んでないぞ!」

「やべえ!初めてのコースで、慣らし走行もなしでこれかよ!」

「さすが桜国のエースライダーだな!化け物かよ!」

楓は奥歯を噛みしめた。追いつけない——となれば、あの手を使うしかない。

観客席から、ミネラルウォーターのボトルがコースに投げ込まれた。

時速200キロを超える走行中、小石一つでさえ事故の原因になりかねない。

バイクが轟音を立てて近づく。観客たちが息を呑む間もなく、誰もが直感的に悟った——Lunaのマシンはボトルを踏んでしまう。事故は避けられない。

たとえボトルが直撃しなくても、避けようとして減速せざるを得ない。

だが、ボトルまで残り3メートル。黒いバイクが突如30度の角度で傾く。

夕月の手が伸び、地面のボトルを掬い取った。

観客が状況を把握する前に「ポン!」という音。ボトルはコース脇の大型ゴミ箱に見事に投げ込まれていた。

月光レーシングが走り去った後、やっと皆が目撃した光景を理解し始めた。

「マジかよ!!」

「うわあああ!!」

誰かが額を叩きながら、驚愕の声を上げる。口は鳥の卵が入るほど開いていた。

膝から崩れ落ちそうになりながら、Lunaに跪きたい衝動に駆られる者も。

「な、なんだ今の!」

「リプレー!リプレー見せてくれ!」

金持ち息子たちの声に応え、管制室のスタッフがコース脇に設置された高速カメラの映像をスローモーションで大画面に映し出す。

「やべえ!言葉が出ねえ!ただただスゲエ!」

「コーナリングバンクからのゴッドハンドか!」

「人類に可能な技なのかよ!Luna様!俺も高速ボトル投げ習いてえ!!」

レースは続いていたが、もはや誰も楓のことなど気にしていなかった。かつての仲間たちさえ、コース脇で跳び跳ねながらLunaを応援している。

悠斗は冬真の傍らで、呆然と口を開けたまま。
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