「このこと、おばあさんに話す。おばあさんだったら、父さんを止められるはず。見てなさい、絶対にこのまま終わらせたりしない!」
花は怒りに震えながら言った。
その表情を見た紀子は、胸が締めつけられるような思いだった。
―このままでは、花がいつか高峯と同じようになってしまう。
彼女の中に流れているのは、間違いなくあの人の血。
だからこそ、必死に寄り添い、育ててきた。
たとえ離婚したとしても、花には決してあの人のようになってほしくなかった。
「花、待って」
突然、紀子が彼女の手を取った。
「おばあさんに話さないで」
「......なんで?」
花は思わず声を荒げた。
「お母さんは、まだあの人たちの肩を持つの!?どうして?どうして!?なんであんな最低な二人を庇うの!?」
「違うのよ、花」
紀子は娘の肩をしっかりと掴み、真剣な表情で言った。
「お母さんは、あの人たちを庇ってるんじゃない。ただ、あんたを守りたいのよ」
「そんなのおかしいよ!どうしてそれが私を守ることになるの!?」
「お母さんはね、花の心が憎しみでいっぱいになるのが怖いのよ。おばあさんに話せば、きっと何かしら行動を起こすでしょう?そうなったら、すぐにお父さんにもバレるわ。私は、あんたとお父さんが敵対するようなことにはなってほしくない」
「でも、父さんと対立するのがそんなに悪いこと?お母さん、本当は父さんをかばってるんでしょ?」
花は悔しそうに言った。
「お母さんは、私が父さんを嫌うのが嫌なんでしょ?でも......でも私は、お母さんのことが好きだから!」
「......本当に、いい娘を持ったわ」
紀子は穏やかに微笑んだ。
「私を守ろうとしてくれるのは、とても嬉しい。でも、もしこのことが大事になったら、私はもっと苦しくなる。だからお願い。おばあさんには言わないでほしいの」
紀子の切実な願いに、花はため息をついた。
「......分かった。お母さんがそこまで言うなら、言わない」
「いい子ね」
紀子は娘の頬に手を添え、優しく微笑んだ。
「お父さんの件は、私が直接話すわ。もしまたあんたを傷つけるようなことをしたら、そのときは絶対に黙っていない」
彼女の声は優しかったが、そこには決意が込められていた。
何があ