なのに………
「陛下。少しよろしいでしょうか?
実は昨夜から王妃陛下が妙なのです。 いつもなら当たり前のように私達侍女に嫌がらせをしたり、暴言を吐いたりするのですが、なぜか今朝に限って何もしてこなかったのです。 それにいつもは気合いを入れて朝食に行くはずなのに、陛下と食事を共にしないと仰るのですから……不気味………いえ、一体何を考えていらっしゃるのかと。」侍女は、真実に悪意を織り込みながら話をしているようだった。
時々あの嫌な感じの嘲笑が見えるから。なぜだ。
なぜ……この侍女の態度が不快に感じる?
「誰が発言していいと許可をした? 勝手に喋るな、不愉快だ。」「ひっ………!」
無意識に侍女を睨みつける。
敵意を剥き出しに。 私は氷の王という異名を持つ男だ。睨まれたら誰でも怖気付くだろう。「王妃は私の妻だ。
お前如きが嘲笑できる相手ではない。 下がれ。」「ひ、っ、大変失礼いたしました!」
気分を不愉快にさせた侍女が真っ青になって部屋を出て行った。
ふうっ、と溜息を吐いてふと周りを見渡す。 護衛兵に給仕達が皆一様に驚いたような顔をしていた。その中でも、一番驚いていたのはランドルフのようだった。
陛下が王妃陛下を庇った……?という目をしていた。
確かにそうだ。
なぜ私は咄嗟に、あの女を庇ってしまったのだろうか?
◇
朝食後、日課の行政庁に向かう途中、太い円柱の柱が何十本と並んだ広々とした廊下でアデリナに出くわ