Chapter: まさかローランドが?熱すぎる公開告白!? 確かにローランドとの間には、信じられないくらい色々な事があった。 最初は1秒でも早く離婚したかったからずっと避けてたのに、なぜかローランドの方から近寄ってくるようになった。 私もいつの間にか、戦争によってローランドが苦しむのは嫌だと思うようになった。 だって戦争が起きれば、ローランドは戦場で瀕死の重傷を負う。 いくらリジーに会うためとは言え、すでにローランドは私にとって小説の中の人では無くなっていたから。 傷ついてほしくなかった。 それに戦争が起これば自国だけじゃなく、相手国でも多くの兵や国民達が死ぬ。 分かっていたから未然に防ごうとしてしまった。 何よりアデリナがローランドにずっと誤解され続けているのも嫌だった。 アデリナはとにかく不器用すぎた。 けれど確かにローランドを愛していたから。 それに本人に託されていたから。 私が変わった事でローランドは義務で私を大切にしてくれていたけれど、言われてみれば本当にそれだけだった? 私がこれまでに接したローランドは確かに生きて、笑って、時には人間らしく失敗だってしていたよね? ちょっと不器用な所もあったよね? アデリナに負けず劣らずツンデレタイプだったよね? 私がレェーヴ一派の山賊に襲われた時、助けに来てくれた。 あの時はめちゃくちゃ怒ってた。 ルナール達と交渉する時も、フィシに襲われそうになった時も。 何かする度に私の側に居て、困った時は間違いなく側で守ってくれた。 何だかんだ甘くて優しく包み込んでくれた。 妊娠してからは特に…… 「でも……その信頼を裏切ったのはローランドじゃない。 リジーが毒を盛られたからと私を冷たく突き放したのも、北棟に閉じ込めたのも、あの時寝室でリジーと二人きりなのを見せつけたのも。 結局ローランドは私の事を政略結婚の相手としてしか見ていなかった。 そうなんでしょう? だからリジーと恋に落ち
Last Updated: 2025-09-14
Chapter: まさかローランドが?熱すぎる公開告白!? 私がリジー毒殺未遂の犯人扱いされた時、話も聞かずにあんな風に溜息を吐いたくせに。 心底呆れたって顔をして、私を北棟に閉じ込めるように言ったくせに。 それから一度も会いに来なかったくせに。 リジーが目を覚ましたからと、寝室に呼びつけといて。 中にはすでにリジーを呼んでいたなんて。 事前なのか事後なのかは知らないけど、無事にヒロインと恋に落ちました。 ハッピーエンドですって見せつけたのは、貴方でしょ? どうしてヴァレンティンが産まれるまで待ってくれなかったのよ……… 「アデリナ……」 「来ないで………!」 「アデリナ……違っ、話を」 「来るなって言ってんでしょーが! このっ……最低の浮気クズ野郎が!!」 弱々しく近づいて来るローランドにブチ切れる。 周囲の兵達は困惑を隠し切れない。 また、隣のレェーヴはなぜか……肩を震わし笑っていた。……おいっ! 「何しに来たのよ?ローランド。 もう私に用はないはず。 私達はきれいさっぱり離婚したんだから。」 腕を組んでローランドを睨みつけてやる。 「離婚……? ああ、あの紙切れの事か? 残念ながらあの紙切れは破り捨てた。」 「え………?」 「アデリナ。お前と私の婚姻関係は今も継続中だ。知らなかったのか?」 「し……知るはずないでしょ! 何で?ローランドにはもうリジーがいるじゃない!」 だって貴方にはリジーがいればいいんでしょ? だって貴方はそういう人だもんね? 結局は原作通りにアデリナとヴァレンティンを
Last Updated: 2025-09-13
Chapter: 私、殺される?ローランドに追われている謎! 「おーい、火事だ!」 「向こうで火事だぞ!」 「大勢の人達が閉じ込められてる!」 ライリーを筆頭に、精鋭部隊訓練生の少年達が、兵達の前で一斉に叫び始めた。 中にはラシャドの姿も。目が合ったラシャドは笑顔で、私に目で軽く合図した。 「アデリナ様。ここは俺達にお任せ下さい。」 口パクでそう言っている。 ラシャド……!ありがとう!! 火事だと言いながら向こう側に走っていく彼らを、兵達は戸惑いながら追う。 後尾にいたライリーもまた、逃げる瞬間に私に目線で合図をしてきた。今です!と。 さすがはライリー!私の第二の推し……! 皆、本当にありがとう………!! 私とホイットニーはライリー達が注目を引きつけてくれている間に、レェーヴが働いている自警団に向かった。 その日はたまたまレェーヴが会社にいてくれて本当にラッキーだった。 成り行きを説明すると、レェーヴがすぐにヴァレンティンを抱き上げた。 「ならさっさとここから逃げるぜ。」 「ええ……!」 ここにいたら間違いなく、ローランドに捕まってしまう。 戦争もなくなり、愛するヒロインとも一緒になれたローランドが、今さら私を追ってくる理由はただ一つ。 ヴァレンティンだ……!! 悪いけど絶対、ヴァレンティンだけは貴方には渡さない!! 死んでも我が子は守る!! 私達は国を出るため、港に向かって走り始めた。 だけど追っ手が……… そしてついに私達はクブルクの兵達に取り囲まれてしまった。 その中に彼が。 ローランドがいた。 「アデリナ…………」 数ヶ月ぶりに会うローランドはなぜか凄く窶れ
Last Updated: 2025-09-12
Chapter: 私、殺される?ローランドに追われている謎! 何でクブルクの兵がこんな所に……? 穏やかないつもの午後。 休日だというホイットニーにヴァレンティンを預けて、私は夕食の材料を買いに町に来ていた。 そこでこの騒動。 中には王宮で何度か顔を合わせたクブルクの兵もいる。咄嗟に壁際に隠れてやり過ごした。 王宮の兵という事は、私達を探してるのは間違いなくローランドだ。 何で今さらローランドが私を探してるの? 私達はもう離婚したのよ? あの後ローランドは、リジーと幸せになったはずでしょ? なのに私とヴァレンティンを探してるって事は………やはり物語の強制力というやつで!? 本来なら私もヴァレンティンも死ぬはずだから、その未来通りに! ……逃げなきゃ! ヴァレンティンを守らなきゃ!! 何とか兵達に見つからずに無事に家までたどり着く。 ホイットニーに状況をうまく説明する間もなく、私は荷物をまとめ始めた。 「ホイットニー、悪いんだけど、今すぐ家を出る準備をして!」 「え?一体どうされたのですか? アデリナ様!?」 「ローランドが……私とヴァレンティンを探し回っているみたい。」 「え……ローランド様が?なぜ今さら? もうお二人は離婚なされたはずでは……」 「分からないけど…… もしかしてヴァレンティンの王位継承とかの問題をめぐって、殺すためかもしれない。」 下手したらリジーに子ができた可能性もある。 その為に邪魔なヴァレンティンを狙っているのかも。 「そんな……果たして本当にそうなのでしょうか?」 「分からないけど、今は確認してる暇はないの! とにかく必要な物だけまとめてくれる?」
Last Updated: 2025-09-11
Chapter: ローランドの執念 初めは怒りに震えた。 けれどアオイの消息が不明のまま、時間だけが虚く過ぎていった。 後から後から、アオイにちゃんと説明した上で、愛してると伝えればよかったと後悔ばかりが募った。 言葉足らずだった自分を何度も悔いた。 私がリジーを愛するはずがないと。 あんな風に私のアオイを罠に嵌めた女など、誰が愛すると言うんだ。 あんなに性格の腐っている女を、私が愛することは一生ない。 私が生涯愛するのはアオイ。お前だけだ。 私を懸命に愛してくれて、私の子を身籠ってくれたお前だけなんだ。 幼い頃、体の弱かった私は両親に愛されず、寂しい思いをしながら過ごしてきた。 だが病気で寝込んだ私を何だかんだ言いながらも世話を焼く、アオイに何度も癒された。 人から優しくされるということを、人の温かさというものを、そして不器用ながらも愛というものを、アオイ。お前に教えて貰ったんだ。 やっと愛を知ったのに。 人を愛する事ができたのに…… アオイは実家にも戻ってないという。マレハユガ大帝国の皇帝に、娘を見つけなければ殺すと脅された。 あんなにアデリナを嫌っていた母上までも。 何やらアオイの素直さが気に入ったらしい。 しかもサディークのあの王太子までもが彼女の失踪の噂を聞きつけて、文句を言ってくる。 「我が国が和平条約を結んだのは王妃陛下です。 王妃が無事に戻らなければ……条約は破棄させて貰いますよ。」 うるさい。お前に言われなくても、必ず見つける。 だが、一体どこに消えてしまったんだ…… クブルクの大規模な軍を使い、アオイ達の捜索を開始してはいるが、一カ月経っても何の手掛かりも掴めなかった。 そこで神殿にも協力を依頼した。 「陛下。貴方がしっかり王妃陛下を捕まえておかないから」 呆れたようにイグナイトが溜息を吐いた。 「分かっ
Last Updated: 2025-09-10
Chapter: ローランドの執念 そうして私は心を鬼にし、アオイを北棟に閉じ込める様に言った。 アオイ……今は我慢してくれ。 お前に不便がないよう、部屋では快適に過ごせる様言っておくから…… 今その事をアオイに説明できない。 この状況だと、誰がアオイに危害を加えるか分からないからだ。 むしろ私がリジーに大人しく従ってると周囲に思わせておく方が、まだアオイは安全なはずだ。 悪いとは思ったが私を呼び止めるアオイを振り切り、毒に倒れたというリジーの元へ…… 彼女の自作自演の証拠を見つけに向かった。 一週間後、毒から回復したリジーが目を覚ました。 だがリジーが目覚めると同時に、私の方が疲労と熱で倒れてしまった。 早くリジーから自白を引き出し、アオイの無実を証明したいのに。 だからランドルフ達に頼み、容疑者としてリジーを招集するようにと命令しておいたのだ。 私の部屋ならあの女は必ず逃げずにやってくるだろう。 今回の件でアオイが犯人扱いされる決め手となった、アオイの髪飾り。 あれについてはリジーが私の部屋に来たあの夜に盗んだと思われる。 それにはやはりリジーの手垢が残っていた。 着色をつけた手形と、髪飾りに付いていた手垢が一致した。 それからリジーの部屋に用意されていた解毒薬の残った瓶。すでに使用されているのは、操られた侍医がリジーに飲ませたのだろう。 初めからリジーは死ぬ気などなかったのだ。 これらを叩きつけ、後はアオイから無実だと言わせれば…… だが、あの時どうやらリジーは部屋に入る直前にアオイに何かを吹き込んだらしい。 その場にアオイが来ていた事を知らないまま私達はリジーを徹底的に問い詰め、やっと自白させた。 それから仕事とリジーの件に忙殺されている間に、アオイがいなくなってしまったのだ。 離婚届と手紙を残して。 ……どうして
Last Updated: 2025-09-09
Chapter: 第一章:契約結婚の予行練習一周回って笑えるわね。過去の私は、リーアとエルミニオの愛のための障害物。そしてこの世界の都合のいい道具だった。本当に愚かだった。考えてみればエルミニオは婚約者がいながら他の女性と堂々と浮気する、テンプレ的なクズだったのに。物語の強制力が私の目を曇らせていたのだろう。とにかく彼にはさんざん苦しめられたのだから、一秒でも早く忘れてしまいたい。「ロジータ。お前はまだ兄のことを愛しているのだな。あんなことをされてもなお……」はっとして顔を上げると、ルイスが心配そうに私の方を見つめていた。思えばルイスだって同じ。「そういうルイスこそ、リーアへの想いは断ち切れそうなのですか?」私は控えめに尋ねた。確かルイスがリーアに出会ったのは、エルミニオと同じくらいのタイミングだった。原作のリーアは陰謀によって奴隷に落とされたが、周囲の力を借りてこの王宮に使用人として入ってきた。そこでエルミニオやルイスたちと出会い、ロマンスを繰り広げた。ただルイスは、ずっと長い片想い……本当に死ぬ瞬間までそっくりな私たち。「大丈夫ではないが、忘れる努力はする。お前の話はまだ半信半疑だが、リーアに酷いことをし、兄に殺される未来などごめんだ。ロジータ。お前が俺を救ってくれるのだろう?」ルイスは目を細めて苦笑する。何だか切なくて胸が締めつけられる。「ええ、そうです。だからもう少し演技の練習、頑張りましょう!ーーっ!」気合いを入れたせいかまた胸の傷が疼き、とっさに私はうずくまる。「ロジータ、傷が痛むのか!?今日はもう無理そうだな。練習は中断して、治療を再開しよう。」「いいえ!ルイス。本当に大丈夫です、続けましょう。私たちにはもう時間がありません。」「しかし……はあ。その顔は絶対譲らないって顔だな。ロジータ、お前意外と頑固なんだな。
Last Updated: 2025-09-14
Chapter: 第一章:契約結婚の予行練習あの時の私はロジータ・スカルラッティとして、断罪、処刑までの筋書きを真っしぐらにたどっていた。本来ならこの煌びやかな空間で、エルミニオと一緒にダンスを踊っているのは私だったはずなのに!と。それなのにエルミニオが、今夜のダンスの相手に私ではなくあの女を選んだ!とにかく彼女が憎かった。彼に優しくエスコートされてきたリーアは下の会場にいる私と、真っ先に目が合った。「しかし殿下のお相手は、私ではなくロジータ様では……?」美しい銀糸のような長い髪と宝石のようなサファイアブルーの瞳の彼女。エルミニオの隣でまるで小動物のように小さく震えている。彼女が着ていたのはヴィスコンティ王家を象徴する、星のラメが入った群青色のドレス。なぜかエルミニオと同じドレスコードだ。彼も群青色の洗練された礼服を着ていた。加えて、リーアの頭上にはたくさんの真珠が散りばめられたティアラ。童話のシンデレラのように輝くクリスタル製の靴。どれもこれも私が欲しかったものばかり。なんで……なんで殿下の隣にいるのが私ではなくて、あの女なの!?招待された貴族たちと同じ場所にいる私を、リーアは気の毒そうに見おろしていた。「その、ロジータ様。私、悪気は……」「何で……何であなたが、エルミニオ様の隣にいるのよ!!何で……っ!!」本来なら、このような公式の場では婚約者同士で同じ色やお揃いのデザインの服で揃えるものだ。特に王太子とその婚約者ともなれば、他とは一線を引いた特別感を出す必要がある。だけど私は彼のドレスコードが分からず、会場から一人だけ浮いたような真紅のドレスを着ていた。虚しく悔しい。分かっていた。ずっと。「何を喚いているんだ、ロジータ・スカルラッティ!なぜお前が会場にいる!?呼んでもいないのに!」リーアに向けられるものとは全く違う、エルミニオの冷淡な声が
Last Updated: 2025-09-13
Chapter: 第一章:契約結婚の予行練習……き、気まずい。なぜなら体勢を崩した私が、ルイスにしっかり抱き止められているから。しかも、彼の膝上にまたがる形になってしまったから。本当に信じられないし、心が悲鳴をあげている。ありえないこの状況に、ルイスも目を見開いて固まってる。やはりチェニックの上からでも、ルイスの腕も胸も本当に逞しいというのが分かる。それに薔薇の香水のようないい匂いまでする。両膝も石みたいに硬い。ルイス、もしかして鍛えすぎなのでは?見た目は華奢なのに、反則でしょう。「〜〜ったく、だから、何をやっているんだ?お前は。気をつけろと言っただろう!」「ご、ごめんなさい、ルイス!」ルイスの照れながらも呆れ顔、といったものが視界に入ってくる。私の方も結局、また敬語に戻ってしまうが今はそれどころではない。とにかく私は慌てて体勢を立て直そうとした。「私だってわざとじゃありません、ただ、なぜかこう体が……っ」だが、ぐんと何かに引っかかり、また体がルイスに近づいてしまう。なんと今度は、私が着ているチェニックの前止めの紐が、ルイスのチェニックのボタンに絡まっていた。そのせいで服が引っ張られ、胸元が露見する形に。今度こそ完全に墓穴を掘った。もう!この失態は、本当にどうしたらいいの!「待て、ロジータ、動くな!」ルイスの口調が強くなる。目の前で肌を露出した私を叱りつける。「俺が取るから、お前は動くな。いいな?」「わ、分かりました。」「よし。」半分は呆れ顔。もう半分は照れ隠しといった、ルイスの表情がたまらない。顔を紅潮させながらも、ルイスはチェニックに絡まった紐を解こうとしていた。……本当に恥ずかしい。だってルイスに私の開いた胸元が見えてるから。手当のために包帯が巻いてあるし、胸が直接見えてるわけではないのだけれど
Last Updated: 2025-09-12
Chapter: 第一章:契約結婚の予行練習私とルイスは向かい合って、椅子に腰を下ろした。今のルイスは少しゆったりとしたシルクのチュニックに、黒のホーズと革のブーツを合わせていた。私は血に染まったドレスを脱ぎ、使用人から借りたガウンとクリーム色のエプロンを身につけていた。「それで。“恋人らしい”とは、一体どうやるんだ?」真剣にルイスが尋ねてくる。改めてそう言われると、返事に困る。実は私もエルミニオと婚約していながら、恋人らしいことはほとんどしてこなかった。ただ前世の恋人、理佐貴との記憶が私にはあった。「そうですね。まずは、お互いの名前を呼び合うところから始めましょう。ルイス様はこれまで通り、私をロジータとお呼びください。私の方は恋人らしく、「ルイス」と、お呼びしても宜しいでしょうか?」「……いいだろう。」 エルミニオほどではないけれど、原作で知る限りルイスもプライドが高い人だった。王子だからこの提案は駄目かもと思ったが、案外協力的で助かる。「ありがとうございます。それではさっそく。「ルイス」。」「なんだ。ロジータ。」一瞬、ルイスの瞳が揺れた気がした。不満そうではないし、すぐに冷静に切り返してくる辺り問題はなさそうだ。「いい感じです、ルイス。」満足げに私が笑うと、ルイスが視線を逸らした。機嫌を損ねたのかと思ったが、どうやら違う。「呼び捨てにするなら、いっそ敬語もやめてみてはどうだ?」「敬語を?よいのですか?」「ああ。徹底した方がいいだろうから。」ルイスがそこまで言ってくれるなら、私もしっかり答えよう。「分かった。じゃあ、『ルイス。昨日は傷の手当てをありがとう。今朝のあなたの寝顔、とても可愛かったわ』。」「ロジータっ、それはあまりにも……!」目の前のルイスが壁側に顔を背けた。あれ、もしかしてあまりに馴れ馴れし
Last Updated: 2025-09-11
Chapter: 第一章:契約結婚の予行練習それなのに、この胸の高鳴りは、一体何? ロジータ?それとも前世の七央の? 心臓が激しく脈打つたび、私はルイスから目が離せなくなっていた。 戸惑いが隠しきれない。「ロジータ?傷が痛むのか?」ルイスは控えめに尋ね、心配そうに私の顔を覗き込む。 肩にそっと置かれた手は、まるで壊れ物を扱うかのように優しくて。 かつてあんなにも私を毛嫌いしていたくせに。 本気で調子が狂うし、心臓がやけに騒がしい。 ルイスって、もしかしてスパダリなのでは…?「な、何でもないわ。」恥ずかしくて私はルイスから顔を背けてしまった。 彼はまだ訝しそうに私を見てる。 視線が熱い。いえ、私の顔が真っ赤なの? 気まずい。鼓動も驚くほど早い。 早く治って。 これは、刺された傷口が痛むからだと誰か言って!「使用人に用意させた。 傷口が開くから、風呂はまだ控えてほしい。 食事も用意させた。 準備が終わったら来てくれ。」さっきの出来事があったせいか、ルイスとの食事はご飯が喉を通らなかった。 柔らかいリゾットに、優しい味のスープ。 これ絶対、負傷中の私のために用意したんだわ。 やっぱりルイスってスパダ…… いや、私は何を血迷っているの? ルイスとは契約結婚までするのよ。 このくらいで慌ててどうするの! 思わずルイスを盗み見る。 ヴィスコンティの王族らしい気品のある佇まい。 食事をする時の、フォークやナイフを持つ仕草も完璧だった。 少しくせのある栗色の髪も、脇役らしくて、なんだか親近感が湧く。 ルイスの琥珀色の瞳って、太陽の光に照らされると、さらに綺麗なのね。 案外と小さな唇が、愛らしい。 いつもは静かな人。だけど実は情に熱い人。 ルイス・ヴィスコンティ。私の命の恩人。「さっき、エルミニオたちの仲間が、ここへ来た。」「え!だ……大丈夫だったのですか?」「ああ。お前の死体が消えて、兄さんたちも焦っているようだ。 ここで隠し通すのも時間の問題だな。 お前が生きてると知れば、間違いなく命を狙ってくるだろう。 急いだ方がよさそうだ。」ロジータ・スカルラッティは王太子エルミニオに殺される運命。 怖い……!物語の強制力とやらが私を容赦なく追い詰めてくる。 エルミニオは、原作通り私を殺すまであきらめないだろう。 だから変えるしかないのだ。運命を
Last Updated: 2025-09-10
Chapter: 第一章:契約結婚の予行練習ヴィスコンティ王宮の小広間。 月明かりでシャンデリアが淡く光り、重みで鈍く軋む。 吹き抜けの円柱の隙間から、運河の水流の音が聞こえる。 エルミニオが冷酷な目で、ためらいもなく私の胸を剣で突き刺す。 22年間、ロジータとして生き、エルミニオを必死に愛した記憶が私を苦しめる。 ただ彼に愛されたかった。 ロジータの感情は、痛みよりも、醜い嫉妬と果てしない絶望で崩壊寸前だった。「やめてーー!エルミニオ様。お願い……」だがその時、一人の男性が優しく私を包み込んでくれた。「七央、大丈夫だ。それは全部悪い夢だ。 俺がお前の側にいる。だからーーー」「理佐貴《りさき》……?」彼はそっと私の涙を拭き、血に染まる真紅のドレスを着た私を抱きしめてくれた。 慈愛にあふれた手つき。優しい眼差し。 その瞬間、闇に閉ざされていた私の心が、明るい太陽の光に照らされた。 どうしてずっと忘れていたんだろう——。 川崎《かわさき》理佐貴。 前世でとても大切だった、恋人のことを。「は……っ!」止まっていた呼吸をするかのように目覚めると、見慣れない灰色の天井が目に入った。 吊り下がる星型のランタン。ヴィスコンティ王宮にはよくある光景。 両脇にあるステンドグラスから暖かな太陽の光が差し込み、今が朝であることを告げている。「あれ……あ!そうだ。私、昨夜…」ズキっと錘《おもり》を乗せられたような痛みが胸いっぱいに走り、思わず両手で押さえつけようとするとー 左手がグンっと何かに引っ張られた。「え?」ーールイス? 見るとルイスが私の手を握ったまま、ベッドに伏せて眠っていた。 栗色のウェーブした髪が、愛らしい子犬のようだ。 小さな銀のピアスが片方の耳の隙間から覗いている。白くてきれいな肌。 柔らかそうな頬……って、見惚れている場合じゃない。 そうよ、手。ルイスが手を握ったまま寝ているから。 でもまさか、あれからもずっと私の側に? 第二王子のルイス・ヴィスコンティ。 『無能の王子』と陰で呼ばれる王子。 物静かで、正直いつも何を考えているのか分からなかった。 そんなルイスがまさか、こんなにも慈悲深いなんて。 握っている手も、なんて温かいのーー。「ん……?ロジータ?もう目覚めたのか?」「は、はいっつ!」私の心臓が激しく跳ねた。 寝起きのルイスの声
Last Updated: 2025-09-09
Chapter: ※人気俳優に溺愛されています〜after story〜二人の未来について けれど、私と昴生はまさに今、遅い夏休みを取って、余暇を楽しんでいた。 忙しいプロダクションの業務は、優秀な副社長の佐久間さんに任せているから、何の心配もない。彼には悪いけど。 私達は相変わらず仲良しで、あの家のオープンテラスから芝生の広い庭を眺めていた。 「ママー、パパー。」 私と昴生を呼ぶ小さな愛娘。 テラスにいる私達を見つけて、テクテクと歩き、段をよじ登ってきた。 庭には小さなプールが張ってあり、大きなシベリアンハスキーがいて、庭を駆け回っていた。 洗濯物が風にはためき、娘の遊具があちらこちらに散乱している。 慣れた手つきで昴生が娘を抱えて微笑する。 「歩夢《あゆむ》〜は元気だなー。」 「ふふ。誰に似たのかな。」 昴生は愛娘と頬擦りしながら私の方を見た。 「誰だろうね。そうだ、分かった。 …俺の可愛い奥さんだな。」 「も、もう!」 「ははは。侑さん、赤くなる癖は抜けないんだね。 また、そこが幾つになっても可愛いんだけどね。」 相変わらず昴生は、今日も昔と変わらないイケメンぶりで、私を揶揄ってくる。 「昴生だって…相変わらずカッコいいよ。」 「え〜本当?それ嬉しいな。本気で。じゃあ侑さん、今すぐ俺にキスしなきゃね。」 「ええ〜、娘が見てるのに?」 「大丈夫、歩夢の目は一瞬俺が塞いでおくから。ね?早く。」 「もー…しょうがないなあ。」 相変わらず私は昴生の手の上で転がされ、愛おしく、幸せな日々を送っている。 愛する夫と、愛する娘。大きな犬がいる家。 ここに幸せがいっぱい詰まっている。 今私は、昔は知らなかった、幸せな人生というものを謳歌している真っ最中だ——————。※本編・after story完結です。
Last Updated: 2025-09-06
Chapter: ※人気俳優に溺愛されています〜after story〜二人の未来について 結婚式は盛大に行われた。 本当に天気も良くて、何もかもが私達の結婚を祝福してくれているみたいだった。 憧れのチャペルで私と昴生は愛を誓いあった。 神父を呼んでやるあたり、かなり本格的に。 私達の誓いには「健やかなる時も」ではなく、「病める時も」の方がしっくりとくる。 これまで本当に色々あったけれど———— 「誓います。」 「誓います。」 その時ふと、これから先の、二人の明るい未来のイメージが見えた気がした。 私達ならどんな困難があろうと、きっと乗り越えていける。そんな予感がした。 それでも、もし万が一。 この先昴生に、万が一、何か耐え難いほどの困難が訪れたとしたら————その時私は、そっと彼の隣にいよう。 昴生が何かに傷つけられて、心が壊れそうな時。 それ以上壊れないように、側で傷を癒そう。 寄り添って、対話しよう。 どんなに拒まれても諦めずに、力になれるよう努力しよう。 あの時、昴生が私を無性の愛で支えてくれたように。 私もまた、昴生を愛してるから、そうでありたいと願う。 「おめでとう〜!」「おめでとう、侑さん!綿貫さん!」 「おめでとう、侑ちゃん、昴生!」 鳥飼さんに、佐久間さん。 事務所の先輩後輩達。俳優仲間。米本さん。 我妻監督に、その家族。お世話になった映画のスタッフ。結局、両親は呼ばなかった。 それに変装したキャスリンも祝福で手を叩いてくれていた。 「侑、コーセー、おめでとう!悔しいけどお似合いよー!」 誰よりも熱く、誰よりもユーモラスな祝福に、私も昴生も顔を見合わせて、笑い合った。 ねえ…渉。見てるかな。 ありがとう。貴方が私にこの縁を繋いでくれたんだよ。 貴方を救えなかった私を、今だけは許してね。 その分
Last Updated: 2025-09-06
Chapter: ※人気俳優に溺愛されています〜after story〜二人の未来について 「あ……はあ。だ、だめ。」 「何が駄目なんです?侑さん。……っ、俺的にはいい眺めですけど。」 その夜、さっそく私は昴生にお仕置きされていた。 今夜はやっと二人きり。早めにご飯を済ませて、お風呂に入って…。 嬉しかったけれど、やっぱり・・・これが待っていた。 二人の寝室は広く、大きな窓、ドレッサーやクローゼット、軽く腰掛ける椅子もある。 薄く暗くついた照明が、私のほぼ裸の姿を映し出していた。 「俺、本気で嫉妬したんで」 「でも、あれ、私のせいではなくない?」 「いえ、侑さんのせいです。侑さんがあまりに魅力的だから悪いんです。…っ、はあっ。」 言っている事は荒々しいのに、昴生は顔を熱らせ、甘い息を吐いていた。 「う、ん……っ、い、これ、深い……」 今夜はお仕置きなので———私が昴生の上に乗り、さっきから腰を沈めたりして律動を繰り返している。下着がずり落ち、下から昴生にそれをじっくり見られて変な気分だ。 「これがお仕置き?…んんっ、はあっ、」 確かに格好は恥ずかしいけど…私だって気持ちいい。 だからこそ、昴生のいうお仕置きってやっぱりよく分からない。 淫らな姿の二人。淫靡な音が室内に響く。 私の下に、胸板が厚く、腹筋が割れた立派な昴生がいる。 甘い声で…私が動くたびに、気持ちよさそうに顔を歪める。 だがしかし、あまりにも私がゆっくり動きすぎたらしく、昴生に我慢の限界が。 眉間や首筋に青筋を立て、私の腰を掴んで、上下に激しく揺さぶり始めた。 「侑さん、っ、すごく気持ちいいです。」 「あ、それ!だめっ昴生…は、激しっ…」 「はあ。侑さん、侑さん、侑———愛してる。」
Last Updated: 2025-09-05
Chapter: 人気俳優に溺愛されています〜after story〜愛するということ 成田国際空港。———私達は目張りのあるレンタカーを借り、俳優組は怪しい変装をして、キャスリンを見送りに来ていた。 運転席に佐久間さん、助手席に昴生。 後部座席に私、キャスリン、キャスリンのマネージャーという変な組み合わせ。 ちなみに鳥飼さんはマネージャーの仕事で、お留守番だ。 「キャスリンさ〜ん!楽しかった〜! またいつかお会いしたいです〜」 と、キャスリンとの別れを心底惜しんでいた。 さすがに空港の中まで行くと大騒ぎになるので、空港内の駐車場の中で別れの挨拶をする事にした。 「あー楽しかった!本当に帰りたくなくなっちゃう! 侑、今度はアメリカにも遊びに来てよ、ね?」 「はい。分かりました、キャスリンさん。」 「もー、堅苦しいわね!でも、そんな侑も好き!」 キャスリンがバイである事は別に気にしないけど、狙われてる感があるのはちょっと警戒している。 「行く時は俺も一緒ですけどね。」 「ちょっと!コーセー!二人できたら、どちらともイチャイチャできないでしょ!?」 相変わらずキャスリンはキャスリンだった。 最後は握手を求められて——— 「侑、私達はもう友達よ! コーエーに思いなさい。この天下のハリウッドスター、キャサリン・カヴァデイルが貴方の友達になったんだから。」 「ふふ。ありがとう、キャスリンさ… キャスリン。」 そう言った途端、後部座席にいた私は隣にいたキャスリンに腕を引かれて、「チュ」っとキスをされてしまった。軽めだったけど。 「うふふ!侑の唇、貰っちゃった〜!」 「キャスリン・カヴァデイル! それはルール違反では!?」 助手席にいた昴生が本気っぽく怒り、キャスリンはきゃあ!と言いながら楽しそうに車を降りた。 「キスくらいは許してよ!コーセー! それじゃ、ま
Last Updated: 2025-09-04
Chapter: 人気俳優に溺愛されています〜after story〜愛するということ 昴生と二人、ベランダに出た。 この辺りは閑静な住宅街だ。夜の静寂に混じって、微かな風が吹いてくる。 少し火照った顔で、昴生は不満を口にした。 「何で皆、我が家に集まるんですかね。」 「ふふ。皆昴生を慕っているからだよ。」 「理由は、俺だけじゃないと思いますけど。」 私は改めて昴生に頭を下げる。何だか申し訳なくて。 「…昴生。ありがとう。母にお金を貸してくれて。相当な金額だったのに。」 私がそう言うと、突然、昴生がこちらを真剣に見つめ返した。 「侑さん。さっきは、侑さんのお母さんなのに、冷たくしてしまい、ごめんなさい。 そして…もしも侑さんが望むなら、結婚式に招待してもいいんですよ?」 「母を?」 「ええ。お父さんでも構いません。侑さんが望むなら、今ならまだ間に合いますから。」 昴生の黒髪が風に揺れる。 私のお母さんもお父さんも、招待リストには載せてなかったのに。 とっくに二人とは縁が切れたとばかり。 普通の娘なら許せていただろうか。 普通の娘なら、結婚式に来てと… その瞬間、昴生の逞しい手が私の長い髪に触れた。 「侑さん。無理にいい娘をやらなくてもいいんですよ。」 「え?でも、自分の親を招かないなんて。」 「さっきキャスリンも言っていたじゃないですか。家族って言うのは、血のつながりだけじゃないって。 辛い時にそばに寄り添ってくれる人を、本当の家族と言うのだと。 侑さん、俺があなたの家族になります。」 髪に触れる昴生の眼差しが熱い。 こんな風にいつも昴生は私を、情熱的に、躊躇いもなく見つめてくれる。そんなところも… 「侑さんが辛い時は、俺が支えます。 苦しみは一緒に背負います。 楽しいことは二人で分け合いましょう。 二人で幸せになりましょう? 恋人から夫に。家族に。 俺が侑
Last Updated: 2025-09-04
Chapter: 人気俳優に溺愛されています〜after story〜愛するということ 「侑!あなたもっと、ビシッと言ってやれば良かったのに!私を甘く見ないでって! しかも何なの〜!お金の話を終えたとたん、帰るとかありえな〜い!」 どうしてキャスリンが酔い潰れてるんだろう。 しかも私と昴生の新居で。 この惨状は一体…… 「侑さん〜、そうですよー!ずっと侑さんが苦しんでいた時は知らんぷりで、自分が苦しい時だけ頼ってくるなんて…ブツブツ」 鳥飼さんも私が作った料理を勢いよく食べ、お酒をたくさん飲み、いつもの事ながら酔っ払っている。 「も〜!まさかキャスリン・カヴァデイルとこうして食事する事になるなんて! 私ってやっぱりついてるわ〜!この仕事していて本当に良かった!」 「うーん!和食サイコウ!」 米本さんに、キャスリンのマネージャーもすっかり酔って、上機嫌だ。 あの後、おかずが足りず、急遽私と米本さんの二人で増えた人数分の食事を用意する事になった。 私はリクエストにあった通り、昼と同じ照り焼きチキン、和風つくしの食事を用意。 米本さんは色々アレンジを効かせ、家事代行サービスならではの、まさにプロのご飯を作ってくれた。 皆それを食べているうちに酔っ払ってしまった…というわけなのだが。 「キャスリンさんって、侑さんのお母さんの事、何か知ってるんですか?」 お酒に強い昴生が、向かい側に座るキャスリンを怖い顔して問い詰める。 「そう言えばそだね。キャスリンさん、あなた、私の事を何か知ってるの?」 キャスリンが、ああやって母をバッサリ切り捨てる理由は何だったんだろう? 何だか母に怒っているようにも見えたし。 「…調べたのよ。ロサンゼルスで初めて二人に会った夜に。 どうしても悔しくて! 私の大好きなコーセーのハートを奪った侑は、一体どんな人なんだろううって!」 キャスリンは顔を真っ赤にし、半ばキレ気味に私の過去などを調べたと、暴露した。 その事に対し、なぜか昴
Last Updated: 2025-09-03