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Romans de Kaya

愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!

愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!

日本でアラサー主婦だったのに、気がついたら不倫恋愛ロマンス小説に登場する、性格の悪いアデリナに憑依していた!? しかも素人作品!?未完成!? このままでは夫のローランド王がヒロインと出会い、最推しの息子、ヴァレンティンが悲惨な死を迎えてしまうバッドエンドに! よし。すぐに離婚しよう!…と思ったのに? 性悪妻に憑依した元日本人アラサー主婦×愛のために自分の息子を殺す運命の王。 二人の離婚劇の行末は?
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Chapter: 軍事力ゲット!…って何で不機嫌なのよ?
 ◇◇◇ 「俺はアデリナ・フリーデル・クブルクに忠誠を誓うぜ。」 レェーヴは片膝を突き、まるで物語に出てくる騎士の誓いの様に、私の掌にキスをした。 「だから……アデリナから離れろ……!」 ちょっと。何でルナールじゃなくて、その兄であるレェーヴが私に忠誠を誓ってるの? それに何でローランドはそんなに怒ってるの! 東部地方の問題が解決した上に、ルナール一味が今後、私達の味方をしてくれると言っているんだよ? なぜかローランドじゃなくて、私に忠誠を誓って掌にキスしてくるレェーヴは、ちょっと何やってるのか分からないけど。 なんせルナール率いる一味は、クブルクの一軍にも匹敵する規模の山賊で、山での戦いを得意とする武力集団だ。 それが今後クブルクのために働くって言ってくれてるんだから。きっと東部地方の鉄壁な守りになってくれる。 こんなに心強い味方はいないよ? 確かに私が勘違いして、一緒にベッドに横になるというハプニングはあったけど… 結果的には何もなかったんだから! ………だから、ちょっとは仲良くしてよ!! あの騒動の後、私達はフィシの城でフィシの代理者と面会した。 なるほど確かに本物のルナールは、レェーヴと同じ髪色をしていた。 男装しているけれど肩幅は小さく、小柄で顔は小さくて中性的。よく見たら完全に女性! くっ……!騙された。 この原作小説に何度騙されたことか。 もう迂闊になんでも信じない方がいいみたい。 フィシの腹違いの弟で、腹心のアルバは私達に会うなりすぐに謝罪した。 「兄の不祥事を兄だけの処罰に留めて下さり、クブルク王陛下、ならびに王妃陛下の寛大なお心遣いに感謝致します。 我々はこのメレフ一帯、及び鉄採掘場の所有権をルナールに明け渡します。 ここは元々彼らの土地でしたし…
Dernière mise à jour: 2025-07-31
Chapter: そんな…嘘でしょ?まさかルナールが!?
 扉を切り裂いてまで私とレェーヴの間に入ってくるローランド。最早ギャグでしかない。 しかし助かった!!ナイスローランド!! 「へ、陛下ぁ……」 自分ではよく分からなかったが、実は私は緊張していたらしい。 半ば泣きべそをかきながら、レェーヴの手を離れ、ローランドの真後ろに回り込んだ。 「やっぱり、こんな事だろうと思っていた。 だから私が言っただろう! こいつは男だって!」 「……ほ、本当に!!陛下が鈍いなんて思ってごめんなさい!」 完全に原作を信じ切っていた!私はルナールを女だと思い込んでたけど、ローランドは本能的に分かっていたの? さすが氷の王!侮れない……! 反省して啜り泣く、情けない私の顔を始めは怒り気味に見下ろしていたローランドだったが、次第にその顔は崩れて、悩まし気な瞳をする。 剣を鞘に納め、私の方に向き直る。 骨ばった大きな手がそっと私の頬に触れた。  「ほ……ほら。 分かったなら、もう……泣くな。 お前が泣くと、私はどうしていいか分からなくなる。」 「え……?どうしていいかって、どうもしなくていいですよ? いつも通りで……」 「いや、だから……そうじゃなくて。 あ、アデリ……」 「なあ。あんたらやっぱり仲いいの? 不仲っていうあの噂はデマなんだ? っていうか俺の事無視して、そこでイチャイチャするの止めてくれない? 馬鹿夫婦。」 「何だと……!」 ベッドの上で心底つまらなそうにこちらを眺めてるレェーヴの言葉に反応し、ローランドが再び剣鞘に触れる。 だー、まずいまずい! 「陛下!大丈夫
Dernière mise à jour: 2025-07-31
Chapter: そんな…嘘でしょ?まさかルナールが!?
 ◇ 今すぐ逃げようと思います。 危険の度合いを数字の5段階で示すとしたら、危険アラート最大5くらい(?)。 「じ、じゃあ、そういうことで……、」 「おい、今さらどこ行くんだよアデリナ。 逃すか。」 慌ててベッドを抜け出そうとしたら、ぐいっと体ごと引っ張り直されて、また抱き止められる。 「な、な、何で男なのー!?騙された! 貴方にも!作者にもね!!」 「サクシャ……? ははっ。本当のルナールは今、お前の夫と寝室にいるレェーヴの方なんだよ。」 「……え!!」 「俺は替え玉。 時々妹が危険そうな場面に出くわした時に、俺が妹のフリをすんの。 今回はずーっと替え玉になってたってわけ。 あんたが何でルナールの秘密を知ってたのかは知らないけど、残念だったな?」 「な、なるほど。 そんな複雑な事情があるとは知らず。 じゃ、じゃあ私はこれで……」 「おい、待てよ。 自分から誘っといて、俺を放置するのか?」 「誘っ…!?いえ!私は貴方を誘った覚えはないですけど!?」   変なことを言って人を再度ベッドに引き寄せようとするルナール、改めレェーヴから逃れようと必死に抵抗する。謎の攻防が続いた。  「じ、じゃあ陛下の部屋に押し付けた方が本物のルナールってこと! そっちの方がまずいんじゃない!?」 いくらローランドが鈍くても… いや、このレェーヴが男だと頑なに言い張っていたから鈍いとは言い切れないけど、もし万が一本物のルナールが女だって分かったとしたら。 原作通り、ルナールはローランドに惹かれてしまうのだろうか? そしてローランドもまた、ルナールを邪険にできずに優しくしてしまうのだろうか? 一瞬、モヤっとする。 &h
Dernière mise à jour: 2025-07-30
Chapter: そんな…嘘でしょ?まさかルナールが!?
 え?ハグ?女同士のハグ?百合? まさか百合展開とかじゃないよね? そんなの原作に全くなかったよね? 「う、うん、いいけど……」 返事したと同時に、真正面からギュッと抱き締められた。厚い胸板に顔が埋まって息ができない。  「う、ぷっ…ちょっ、ルナール?」 「んー、アデリナ。 お前、抱き心地最高だな。」 やっと顔を上げたのにルナールはなぜか体をギュウギュウに絡めて、やっぱり私の髪の匂いを嗅いでくる。 ちょっと、凄い力強いんですけど。 押しても引いてもびくともしない。 それにサラシを巻いて胸を隠してるにしては、脂肪分というより、かなり筋肉質な体をしている。 山賊の頭領設定だから強いのは分かるけど、それにしても体は男そのものじゃない? 「ルナール?ねえ、ちょっと、ルナー……」 暫くそうしてると、自分の脹脛辺りに何かゴツンと硬いものが当たった。 「え………?」 「何だよ。アデリナ。俺は女、なんだろ?」 見上げたら、ルナールの少し優し気な瞳と目が合う。 だが同時に意地悪そうな口元の笑みも一緒に映った。それにはドキッというよりギクって表現が相応しい。 え?え?何?何が?何で?何これ。 ルナールは女だよね? そんな設定だったよね?ローランドに恋する不憫な…… 「ステータス、おーぷん…」 ごくりと唾を飲み込んで、私はウィンドウ画面を出現させた。 [ルナール▷本名レェーヴ  正体▷男装した女を装った、男 ルナールの兄 21歳 Lv89 アデリナを堪能中 現在の親密度55 体温37.4] ………なん、だ、これは。 男装した女を装った&helli
Dernière mise à jour: 2025-07-30
Chapter: そんな…嘘でしょ?まさかルナールが!?
 ◇ フィシ達は城の牢獄に閉じ込めてある。 王妃殺害未遂の罪も大きいが、この世界の契約書はかなり大きな意味を持つそうで、破れば相応の罰が下されるんだとか。 だからローランドも私との離婚を渋ってるのかも? 今後どうなるか分からないが、とにかく今夜はルナールを守れたし、良しとしよう。 「今夜はルナールと一緒に寝ます。 心配しないで。」 「いや……心配しかない!! 駄目だ!アデリナ!あれは間違いなく男だ! お前は一体何を言ってるんだ! お前は私の妻だぞ!もっと自覚しろ! だめだ、アデリナ!アデリナ!!!」 頑なにルナールを男と疑うローランドが、すごい剣幕で引き止めてきたが、とりあえず部屋から追い出して鍵を閉めた。 元々私がいた寝室にはレェーヴを押し付けた。  「は〜。これだから鈍感男は。」 「アデリナ、来い。」 「?貴方のベッドはあっちよ?」 なぜかルナールが人のベッドに横たわり、嬉しそうにシーツを叩いて呼んでる。 「えー、いいだろ? だって俺達友達だろ?一緒に寝ようぜ。」 どうやら私は「友達」というワードに弱いらしい。 長く主婦をして、夫の浮気に全神経注いで辟易していたせいか、友達と何かをして楽しむという事も忘れていた様だ。 「っ、しょうがないわね〜。」 とか言いつつ自分の口角は緩みまくりだ。 そっと狭いベッドに横になる。 ただ思った以上に狭いから、どうしてもルナールに体はくっついてしまう。 「アデリナ。お前、いい匂いするな。」 「そう?軽くお風呂入ったからかな。」  すん、とルナールが人の頭の匂いを嗅ぐ。 ひゃー!やっぱり山賊として、しかも頭領として長年男装してきたルナールの男らしさは、大したものだ。 これ絶対、知らない女なら惚れちゃうやつ。 白髪に近い綺麗な髪がさらりと枕に落ち、薄い灰色の
Dernière mise à jour: 2025-07-29
Chapter: そんな…嘘でしょ?まさかルナールが!?
 勇ましいローランドの姿に毎回ドキドキしてしまう。 これはルナールやリジーが惚れて当たり前。 やっぱり男主人公優遇されすぎ! 「あのっ、ありがとうございます。陛下。 私を話を信じてくれて。」 汗をかき、まだ息の乱れたローランドを見上げて私は素直に礼を言った。 「…当たり前だろう。夫が妻を信じなくてどうする。」 《今夜ルナールが奇襲される》 そんな、まだ起きてもいない事をローランドはあっさりと信じ、こうして来てくれた。 私の夫、本当に完璧だなぁ。 強いし、そして何だかんだでちゃんと守ってくれてる。 いくら政略結婚とはいえ、アデリナは一応妻だし、それが義務だもんね? たまに訳分からない誘惑もするけど本当にいい男だ。 暗殺者達は皆捕えられ、フィシは即座に拘束された。  「アデリナ………」 ふとローランドが手を伸ばし何か言いかけたけど、私はルナールの服が破れてる事に気付いて大慌て。 「ルナール…!服、破れてる!」 「え?ああ、本当だ。最初の一撃の時に奴らの剣が掠ったのか」  しかも胸元だ。 この場にいるのは私以外全員男! 誰にも聞かれないようにルナールにそっと耳打ちした。 「こっちへ来て、一緒に着替えましょう。」 「え?」 「大丈夫、貴方が女だって事、私には分かってるわ。」 「………!!………ふうん。 じゃあ、お願いしようかな?」 奥にある男性用のドレスルームに連れて行こうとすると、なぜかルナールに笑われてしまう。 「?とにかく、急いで。」 「アデリナ?」 不安そうな顔してローランドが私達を引き止めた。 「大丈夫です。ちょっとルナールを着替えさせるだけですから。 陛
Dernière mise à jour: 2025-07-29
なぜか人気俳優に飼われています〜消えるはずだった私がまさか溺愛されているなんて〜

なぜか人気俳優に飼われています〜消えるはずだった私がまさか溺愛されているなんて〜

「侑さんがもう駄目だと思うなら、残りの人生俺に下さいよ。」 常磐侑34歳。 女優としてしか生きれない不器用な女は人気が低迷して、心を病んでいく。 そんな時に後輩俳優である綿貫昴生が甘い言葉を囁いた。 ※疲れた大人の恋愛ラブストーリー。
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Chapter: 落ち目女優の誤算/悪役
 昴生の事は、テレビやネットニュースで見かけるようになった。  ドラマに映画にと忙しそうな彼は、相変わらず甘い笑顔でファン達を魅了していた。 私は自分のマンションで、少しだけ物が増えた部屋で、そんな昴生を眺めていた。 一緒に暮らしていたあの時間が、凄く懐かしい。 今思えばあれは夢だったんじゃないか。 そんな事を思ったけど、この身体にはあの夜の感覚がハッキリと残っている。 寂しかった玄関に小さな水槽を置いて、二匹の熱帯魚を飼い始めた。 それを見ていたら、何だか笑えてしまった。 「つい最近まで昴生に飼われてた私がまた、熱帯魚を飼うなんて……」 レースのカーテンを開けて、テラスの柵に寄りかかる。季節はもうすっかり冬だ。 時々、無性に昴生に会いたくなる。 だけど彼が私を避けているから、これ以上私にできる事はない。 何とか役者を続けながら、元いた生活環境に戻っただけなのに。 どうして前以上に、こんなにも切なくなるのだろう。 ふとした瞬間に思い出す。昴生と一緒に暮らした日々を。 まだ眠たそうに部屋から出てくる昴生。 あくびをする昴生。 優しく微笑んでくれる昴生。 洗濯物を干している昴生。時々柔軟剤の匂いがする昴生。 料理を作ってくれる昴生。 たまに、訳の分からないナゾナゾみたいな事を言ってくる昴生。 髪を洗ってくれた昴生。 熱く私を抱いてくれた昴生。  目が合えば必ず、私が好きだという顔をしていた……………… 「会いたい…………」 ただ無性に昴生に会いたい。声が聞きたい。 私達もう、このままなの? だったらどうやって忘れたらいいの? どうやって聖を忘れたのか、思い出せない。 それくらい、こんなに
Dernière mise à jour: 2025-07-31
Chapter: 落ち目女優の誤算/悪役
 お⃞願⃞い⃞だ⃞か⃞ら⃞、⃞側⃞に⃞い⃞て⃞。⃞ あれから昴生と全く連絡が取れないまま、私はひたすら映画の役に打ち込んだ。 愛した人に裏切られ、次々と周囲の人間を殺していく女殺人鬼の役。 昴生と連絡が取れなくなった今の私には、ちょうど良かったのかも知れない。 現場で久しぶりに役を演じていると、少しだけ昴生の事を忘れられた。 それとは逆に忘れかけていた、懐かしい気持ちを思い出した。 役を演じるのって、こんなに大変で……… こんなに楽しいものだったのかと。 「侑お疲れ!今のすごく良かったよ!」 時々我妻監督が拍手しながら、演技を褒めてくれた。 いつの間にか役に入り込んで、汗をかくほど熱演していた。 「あ……ありがとうございます。」 照れながら言うと、今度は側で見学していた共演者の数人が手を叩き始めた。 「やっぱり常盤さんの演技はいいですね。」 「好きですよ、私。」 「常盤さんの演技力は健在ですね!」 他の俳優達は、皆本当に演技が好きという顔で笑っていた。 「あ、ありがとうございます……。」 思わず感謝の言葉が出る。 そう言えば久しぶりに、何も考えず、誰の目も気にせずに役を演じた気がした。 不器用な私は、役を演じる以外に何もないと思っていたのに。 役者という職業に、必死に縋りついているだけとばかり思っていたのに。 私、本当は…………… 演じる事が好きだったの………………? 自分が役者である事に苦しんで、苦しめられてきたと思っていた。 でも、もしかしてそうじゃないのかも知れない。 私、やっぱり役者でありたいんだ。
Dernière mise à jour: 2025-07-31
Chapter: 落ち目女優の誤算/結ばれない運命だった
 我妻監督とは以前にも仕事をした事があった。 と言っても何年も前に、だ。 監督は今や世界的にも有名な人だ。 そんな監督にオファーを受けた私は、今は落ちぶれた女優。 それなのに、どうしてまた私を使ってくれる気になってくれたのかが分からないけれど。 本来なら他の俳優陣達と同じようにオーデションを受けるのが普通なのだろうが、なぜか個人的にオーデション会場に呼び出された。 八重樫は仕事があるならなんだっていいと言っていたけれど。  「久しぶりだな、侑。」 久しぶりに会った我妻監督は、昔と変わらない接し方で私に話しかけてきた。 「…お久しぶりです。監督。」 オーデションを受けるための会場には、私以外に俳優の姿はない。 しかも鳥飼さんさえ、今回は何の役なのか聞かされてないという。 そこには我妻監督の他に、数人の有名な映画関係者が座っていた。 我妻監督は昔から少し変わり者な事で有名だった。 そのため、手がけたのはいつも普通とはどこか違う異色作だった。 返ってそれが視聴者の目を惹き、監督は瞬く間に有名になった。 何年も経っても変わらない顔の我妻監督は、笑顔を崩さずに言った。 「侑。今回お前に演じて欲しいのは…… 殺人鬼の役だ。 愛する人に裏切られた女が、殺人鬼になって次々と周囲の人間を殺していく話。 どうだ。……演じてみる気はないか?」 「………殺人鬼、ですか?」 私が一瞬呆けていると、我妻監督はさらにニコッと笑顔を浮かべた。 正直、戸惑った。 けれど仕事が全くない今、呑気に仕事を選んでいる場合じゃない。 それに…… 昴生が今私を避けているのは、私が仕事もせずに家でブラブラと過ごしてることが、いい加減嫌になってきたのかもしれないから。 このまま彼を失
Dernière mise à jour: 2025-07-30
Chapter: 落ち目女優の誤算/結ばれない運命だった
 それから暫くして、私もマンションを出た。 周囲にはもう誰もいなかった。 「帰ろう……昴生のところに。」 昴生に会いたい。 きっと、もうすでに深く彼を愛してるいる。 思った以上に深く絡め取られて、甘い罠に完全に嵌ってしまったみたいだ。 もう抜け出せる気がしないし、その気もない。 私を拾い、私を救い、私を生かしてくれる人。 私を決して死なせたりしない人。 それが昴生だ。 これからは昴生と一緒に未来を歩んでいきたい。 あれから昴生のマンションに戻ったのに、彼は電話に出なかった。 いや、それ以前にすごい着信履歴とメールが残されていた。 電話に気づかずに凄く後悔してる。 予定よりだいぶ早く着いたみたいなのに…… 昴生。一体どこに行ったの? 何で電話に出ないの……? * それから昴生と、すれ違いの日々が続いた。 「侑さん……!喜んでください! 仕事です…! あの我妻監督から、侑さんを使いたいってオファーがあったんですっ……!」 「……え?」 ある日鳥飼さんが、いつもの倍以上のテンションで私に仕事の話を持ってきた。  もう自分は何かの役を演じることもないだろうと思っていたのに、本当にびっくりだった。 あれから私は、昴生の帰ってこない家に一人でいる意味をじっくりと考えた。 何の音沙汰もなく昴生からの連絡が途絶えて、家にも帰って来なくなった。 連絡しても返事がない。電話にも出ない。 きっとこれは仕事が忙しいとかいう理由じゃない。 私は間違いなく、避けられてる。 昴生。 ……どうして避けるの? もう私のことが
Dernière mise à jour: 2025-07-30
Chapter: 落ち目女優の誤算/結ばれない運命だった
 それから聖の言葉は続かなかった。 こうして二人でいるのに、ほとんど荷物のない家の中はあまりにも寂しかった。 アクアリウムが置かれていた場所には、もうその痕跡すらない。 暫く沈黙したあと、私は勇気を出すように深呼吸してから言う。 「貴方が捨てた私を、拾ってくれた人がいた。 私以上に不器用で、凄くおかしな人だけど…… でも、確かに彼の深い愛を感じるから。」 目を閉じて、昴生を思い浮かべた。 「あの人なら例え—————— 世界中が私の敵になったとしても、ずっと私の味方でいてくれると思う。」 きっとそう。 はじめから昴生は不思議な人だった。 時々怖いくらい。 最初は分からなかった。 普段の言動は理解不能な事ばりで、昴生が何を考えてるか、何を思ってるのかなんてまるで分からなかった。 もっと早く渉の弟だって分かっていたら…… 「飼育」だなんて物騒なことを言って、昴生は自分を悪く見せてまで、死にたかった私を生かそうとしてくれた。 口では体目的だと言っておいて、ずっと私を、私の傷を、私の痛みを…… 優しく塞ぐように、ただ側にいてくれた。 私の気持ちが自分に向くまで、大切にしてくれた。それは今も、変わらずに。 だからこそ昴生が、ずっと私を愛してくれるという妙な確信がある。 そしてそれはきっと私も同じ。 実はずっと昔に出会っていた。彼はあの子だった。 あの頃とは違って、だいぶ変わってはいるけれど、それでも私も彼を愛していく自信がある—————— 「それ…が…俳優の綿貫、昴生……?」 そう言った聖の顔はまたくしゃと歪められた。
Dernière mise à jour: 2025-07-29
Chapter: 落ち目女優の誤算/結ばれない運命だった
  中学のあの頃、聖は皆の憧れだった。 誰もが聖を好きだった。誰にでも優しくて、誰にでも救いの手を差し伸べる事ができた。 そんなヒーローみたいな聖が、私も大好きだった。 けれどもう、あの頃の聖はいない。 「最低だね……聖。 私といて寂しい思いをしたから、彼女を好きになったんでしょ? 寂しさからあなたを救ってくれた彼女に、今度はあなたが寂しさを教えるの? 受けた恩をそんな裏切りで返すの? あなたが……?」 「侑………!!そんな事言わないでくれ、頼むから!」 「貴方に捨てられた日、私もこの世が終わってしまったような気分だったよ。 もう何も考えられなかったし、色々あって疲れてたから、死にたかった。」 「……!??」 そんな風に見えない?聖。あんなに側にいたのに。 あなたは私の、一体何を見ていたの? 「私はずっと死にたかったし、自分のことがずっと大嫌いだった。 生きるのに不器用で… 親にも捨てられた私が、愛するあなたにも捨てられたら……どうなるか、分かってなかったの? 本当に……?」 「あ…侑、俺は————」 聖が壁際によろける。知らなかった事実を突きつけられた、とでも言いたそうな顔。 でもきっと聖は分かっていたはずだ。 私を捨てたらどうなるか。 もしかしたら死ぬかもしれないと分かっていたのに、私を捨てたということを。 親に捨てられた私を知っていた聖なら、誰よりも私の弱さを知っていたはずだ。 だけど結局聖は、私よりも自分の寂しさを優先させた。 例えすべての原因が私だったとしても、聖は私よりも自分自身を選んだ。 それが二人の結末だっ
Dernière mise à jour: 2025-07-28
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