-57 誘われるがままに-
店主「では、スープを残したまま少々お待ちください。」
屋台にて店主による誘惑の言葉に迷う事無く鯛塩飯を注文した光は、ゾクゾクしながら店主を待っていた。車券の事など頭の隅にもない様子だ。ただ大食いなのでここのラーメンだけで自分の腹が満たされるかどうかを心配し始めた。
大食いの人間特有の心配をする光をよそにニコニコしながら店主が茶碗1杯のご飯を手に近づいてきた。
店主「お待たせ致しました、鯛塩飯です。残ったスープにぶっこんでお召し上がり下さい。」
光はご飯を1匙すくい、スープに入れて1口食べようとしたら店主が来て説明しなおした。
店主「すみません、説明が足りませんでした。ご飯を全部入れっちゃって豪快に食べちゃって下さい、美味しいですよ。」
光「全部ですか・・・?」
店主「はい、お席が汚れても私は気にせず喜んでお掃除致しますので。」
光はご飯の入った茶碗をスープの入った丼の上でひっくり返し、ご飯をスープにどぽんと入れた。
ご飯の1粒1粒にスープが染み込みお茶漬けや雑炊の様にサラサラと食べれる状態に変身する。
そのご飯をカウンターやテーブルに蓮華代わりとして設置されたお玉でたっぷりとすくい1口・・・。
光「嘘でしょ・・・、美味しい!!!」
サラサラと優しく口に流れ込むご飯がスープを引き連れて次々と胃に納まっていく、まるで飲み物の様に。(※食べ物ですのでちゃんと咀嚼しましょう。)
光「ダメ・・・、無くなっちゃう。」
自分の意志に反して両手は食事を止めさせようとしない。気付いたときには既に丼の中身は無くなり、スープは1滴も残っていない。
光「美味しかった・・・。」
店主「フフフ・・・、ご満足頂けましたか?」
光「はい・・・、お会計お願いします。」
店主「それより、予想の方はお決まりになりましたか?確か⑮番車をお考えだったと思いますが・・・。」
光「どうしてご存知なんで・・・。」
光が質問しようとしたら頭の中に声が直接流れ込んできた。
声「光さん!!光さん!!どちらですか?!」
光「へ?」
店主「おや・・・、この声は・・・。」
声「光さん、聞こえますか?ゲオルです!!念話の魔法で直接語り掛けています、返事をしてください!!どちらにいらっしゃいますか?!」
念話・・・?あ、そう言えばここ異世界だったわ・・・、と改めて感じた光。
店主