-60 十人十色-
トップを独走する⑨番車と事故を起こした⑰番車を除いた各組の車がバルファイ王国にある第一コーナーと砂漠の道、国境近くの平地を抜けネフェテルサ王国に入って改めて平地に差し掛かり、未だ数台がスピード勝負を行っていた頃、⑨番車は市街地の複雑で狭い道を走っていた。市街地のコースではそのまま走ると交差点等でぶつからない様にする為、トンネルを掘ったり街中の小川の両端に柵を付けコースの一部として利用したり、また橋や立体交差を一時的に増やしたりと事故を出来る限り防止している。因みにコースの整備にはゲオルが魔法で関わっていたので車券購入時にかなり有利になっているはずなのだが・・・、そこは今関係ないのでやめておこう。
小川の端を突っ切っていた⑨番車は橋を通り対岸をまた突っ切ろうとしていて、未だ独走状態でほぼ趣味のドライブ感覚だ。ドライバーから何気にルンルンと鼻歌が出始めているので実況のカバーサが悪戯感覚で音声を切り替えた。
⑨ドライバー「ふんふんふん・・・、ふふふふふん・・・。」
カバーサ「トップの⑨番車はネフェテルサ王国の市街地で余裕をかましています、まさかの鼻歌が出ているなんて良いですねぇ・・・。曲選びはあれですけど。」
光「何で『ぶんぶんぶん』なの・・・。童謡って・・・。」
ナルリス「どうよ。」
周囲が凍り付くように静まり返ったのでゲオルがナルリスの肩に手を置いて一言。
ゲオル「ナル君・・・、ウケると思ったんですか?」
ナルリス「・・・、あ、フランクフルト1つー。」
光「あ、逃げた。」
ゲオル「逃げましたね。」
売り子の下に向かったナルリスは顔が赤くなっていて、汗が尋常では無い位に噴出していた。
その時、後続車の2位を争う3台のグループ、⑥番車⑮番車、して⑳番車が喧嘩をするようにひしめき合いながらトンネルを抜け出して走っていく。全車カフェラッテだが、数台纏まるとエンジン音も迫力がある。ぶつかりそうでぶつからない瀬戸際でずっと争っているらしくそろそろ1台が抜け出しそうな様子なのだが結局3台でずっと走っている。
暫くして3位グループが仲良さげな様子で走って来た。車番を出走表の番号と照らし合わせてチームを確認してみると加速やコーナリングの性能がほぼほぼ一緒と言える位に似ていて、ずっと一進一退をずっと繰り返している。よく見たら全車ダンラルタ王国代表らしい。