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月神守は転生の輪舞を三度舞う
Author: 菅原みやび

1.深夜のカーデートはスリリング

Author: 菅原みやび
2025-02-15 08:47:25

 闇夜に走るは1台の漆黒のスポーツカー。

 そう、俺【月神 守(つきがみ まもる)】は大学の親友達と車で深夜の山中をドライブの真っ最中なんだよねー!

 俺の隣の助手席に座っている女性が「わあ、夜風がひんやりとして、とても気持ちいいですね……」と、呟きこちらを見つめる。

 彼女の名前は【風見 スイ(かざみ すい)】さん。

 気になった俺は隣をそっとチラ見する。

 するとスイさんは夜風に静かになびくセミロングの銀色の髪に手をそっと当て、サファイアのように澄んだ青い瞳でこちらを見つめ返し、ほがらかに笑っていた。

 童顔を感じさせる二重の大きな瞳。それを強調させる細長い眉。彼女の小柄な体形と血色の良いもち肌。そしてふっくらとした丸みを帯びた顔と胸に俺は小動物的な癒しを感じてしまう。

(それに、紺色のギャザーワンピがまた超似合っているんだよなあ) 

 俺はそんなことを考えつつも、「ですよねー!」と力強く返事し、ウンウンと頷き自身を納得させていた。

 あ、で、話はドライブに戻るんだけど、実はこのドライブには目的があるんだ!

 結論から言うと、なんと「スイさんへの告白をかねて」のドライブデート中なんだよね。

 情けない話だけど、親友にお膳立てしてもらって現在に至るわけなんだけど。

(いやー、ホント持つべきものは良い友……) 

「風も気持ちいいけど、俺ともっと気持ちいいことしませんか? なーんつって!」

「……」

 後部座席から訳の分からない言葉が聞こえ、その後静かなエンジン音が車内に響き渡るのが分る。

(こ、こいつっ! まじかっ⁈ この空気、い、色々と、台無しだ) 

 だからか、俺の額にじんわりと変な汗が滲み出てくるのが分る。

 えっとですね、今後部座席から訳の分からない人語を発した奴。

 コイツが色々お膳立てしてくれた悪友の【星流 学(ほしながれ まなぶ)】。

 学は御覧の通りパーソナルスペースというものは一切ないおバカ。なので、剛速球な会話を得意とし、両手を広げ土足で人の心の領域に踏み込んでくる。

 体の線は細いが馬鹿力。かつ武道の実力は相当なもので空手の師範代持ちだったりするんだよね。

(他人を思いやる優しい一面もあるんだけど……) 

 俺は深いため息をつき、カーミラー越しにそっと後部座席に座っている学を覗き見る。

(こうやって改めて見ると、性格に反して顔と雰囲気は整った中性的なんだよな。髪は薄い茶髪で今日の髪型はオールバックですか。で、目は二重のアーモンド形の薄い茶色の瞳が特徴的だよなあ) 

 で、服装は紺色のジーパンに灰色の長袖ポロシャツ。学の脳みそと同じで非常にシンプルだな。

 「ごめんねスイ、こいつアホだから今の会話は軽いジョークと思って、軽く聞き流して?」と、その馬鹿とは対照的に、今度は後部座席から透き通った心地よい声色が聞こえてくる。

 あ、今ナイスフォローをしてくれたのは【音風 雫(おとかぜ しずく)】さんで、スイさんの親友。

 学は「ひ、ひどっ⁈」とおどけてますが、「酷いのはお前の頭と言葉だ」と俺は言いたい。

 学のバカはさておき、雫さんは有名な音風財閥の一人娘。

 なんでも、有名な音大に通えるほどの音感を持っているお嬢様とのこと。

 お嬢様であることを鼻にかけず人柄が良くて、今の会話で分かる通り頭の回転も速く機転が利くめっちゃいい人だ。

 俺はそんな事を考えながら、ミラー越しにその雫さんの姿をチラ見する。

(すらっとした細身の長身に、同じくすらっとしたまな板のように整った胸……か。天は流石に完璧は与えなかったか?)

 その時、俺の座っている座席の背中に軽い衝撃が走り、運転座席が少し揺れた。

 俺はたまらず「い、イタッ!」と、反射的に呻く。

 雫さんは「あら、ごめんなさい⁈ ちょっと足が滑っちゃって。前座席を蹴っちゃった(笑)」と、テヘペロしてますがっ⁉

 学の奴も「お、おいおい。ホントかあ? 今、意図的に雫が蹴ったように俺は見えたが?」と、何故か雫さんから少し距離を取って座り直す姿が見えた。

(……な、何やら後部座席組が騒がしいが? てか、い、今のワザとじゃないよね?) 

 ワザとだったら、俺色々とめっちゃ怖いっす……⁉

 あ、そうそう! 紹介の続きなんだけど、雫様はきりっとした細長い眉毛に二重の大きな茶色の瞳、整った端正な可愛らしい小顔に茶髪のロングヘアーをしている。

 んで、現在あの学と付き合っていたりするし、その関係か今日の服装は学とペアルックだったりする。

 雫さんが学に惚れたのは、感性が高く学の魂の強さと優しさを感じ取れたからじゃないのかなと俺は思っている。

 スイさんは後部座席を覗き見て「ふふっ、二人とも仲がいいんですね? 羨ましい……」と、自身の手を口元にあて上品な笑みを浮かべている。

(おお、笑っているスイさんも可愛らしいな! 結果オーライだがナイスだ、悪友っ!) 

 俺はなんか得した気分になり、満足げにウンウンと頷く。

 雫さんは「え? そう見える?」と、若干顔を赤らめ、まんざらでもないって顔をしている。

「え? 俺らそんなんじゃねーから。……って、痛っ……⁈」

 カーミラー越しで分かったが、学は雫さんから足を踏みつけられ悶絶している。

(……いい気味だ。リア従はそのまま爆死してはぜろや(怒)……) 

 と、俺が嫉妬心を噴火させていたその時、後ろから急接近してきた車が何故かパッシングしてくる⁈

「うわ、眩しいっ⁉」

 カーミラー越しに光が反射し、俺は思わず目を細めてしまう。

「……あの車、黒のクラウンだし、なんかやばそうなんで先に行かせたほうが良くないです?」

「あ、そうだよね!」

 スイさんの言葉に超同意だった俺は、急いで運転していた車を道路の端に寄せる。

 なんか気まずかったからか、スイさんは「あ、ごめんなさい! ちょっと知人とライムのやり取りするんで、しばらく無言になるね?」と、自身のスマホを忙しく触りだす。

 これには俺も「あ、どうぞ」、と返すしかなかった。

(く、くそっ! 折角のスイさんとの楽しい時間を邪魔しやがって! あのクソクラウン野郎……っ!)

 俺は漆黒のクラウンを憎悪の眼差しで睨みつけ、そいつが遠くにいったことを確認し、車の運転を再開させる。

 その気マズイ雰囲気に、シンと静まり返る車内。

(ひ、暇だ……)

 ぼっちで暇になった俺はカーミラー越しに後部座席に目を移す。

(て、おい⁈ 学と雫さんは缶ビールを飲んで楽しそうに騒いでいるじゃん!)

 よく見ると、雫さんは学に体をそっと預け学の耳元で何やら呟いているご様子。

 しばらくすると、今度は学が雫さんの耳元で何やら呟いている姿が見えた。

(こ……こいつら! 人が真面目に運転している時に何イチャついてるんですかね?) 

と、その直後、「……え、ウソ?」と、雫さんの大声が車内に静かに響き渡る⁈

(えっ、一体どうしたんだ⁈ まさか、いきなりの痴話喧嘩か?) 

 その声の大きさに、俺はまるで雷に打たれたようにビックリし、そう感じざるを得なかった。

 当然、隣のスイさんも驚き、急いで後部座席に目をやるくらいであった。

 ……。

 暫く車内は静寂に包まれる。

(う、うわあ、これダブルデートとしては最悪の展開じゃね?)

 俺がそんな考えの最中、何かが俺の顔横をかすめ飛んでいき、「あ、あぶなっ⁉」と、俺は情けない悲鳴を上げてしまう。

 カンっと軽い音をたて、飛んできたそれが俺の握っていたハンドルにぶつかったのが理解できた。

(あっ、これ! もしかして、さっきあいつらが飲んでいたビールの缶……⁈ で、でも何故?)

 俺はこのトラブルに急いで状況を把握する。

(そ、そうかっ!痴話ゲンカしてたからかっ!) 

 そんな考察をしてる間にも、その缶は社内をせわしくバウンドし、結果不幸にもブレーキペダルの真下にスッポリはまってしまったっ⁈

(まっ、まじか―――お、おおおイイイイイイイイい――――――――――――!) 

 当然ブレーキが使えない!

 俺は咄嗟の判断で、なんとかハンドルだけで必死こいて車を操作していく!

(うおおおっ! ハリオカートで毎日鍛えているゲーマーの腕なめんなよっ!)  

「う、うわー⁈」

「キャー⁈」

 揺れる車体に当然、一同は阿鼻叫喚し、感情も激しく揺れる始末!

 スイさんが「えっ、ああっ⁈ さ、さっきのクラウンがま、前にっ! ぶ、ぶつか……」と、甲高い声で絶叫し、震える手で前を指さしてますが⁉

(不幸は重なって起きるってことかよっ! このクソ野郎っ、後で覚えてろよっ!)

 俺は心の中で先程の車を心底恨みながら「ええい! こなくそっ!」と、叫びながら咄嗟にハンドルを切ってしまう! 

 が、虚しくも慣性の法則が働き、俺達の乗った車はそのまま勢いよくスピンしてしまう結果に⁉

「う、うおおおおおおおおおっ⁈」

「キャ―――――⁈」

 急回転の恐怖に、思わず絶叫する俺達!

 しかし、不幸はそれだけに留まらない。

 そう、俺達の車はその勢いのため、道路から放り出され、真っ黒な闇夜を勢いよくダイブしてしまったのだ!

「ひ、ひえええええ――――――⁈」

「い、いや――――――⁈」

 直後、超高層ビルのエレベーターに乗った時に感じられる真下に落ちていく気味の悪い感覚に包まれ、体中がぞわぞわし、たまらず俺達は大声を張り上げてしまう。

 本能的に体が危険信号を出しているからか、俺の脳裏に過去の出来事が走馬灯のように蘇ってきた。

(ああ、俺と学は捨て子として孤児院に拾われ、兄弟のように育ったんだったな) 

 その孤児院も幼少期に謎の火事にあい、実の兄弟のように育った学とは離れ離れで引き取られることになって……。

(くそっ、両親の愛情を知らない不幸の連続だった俺達にもこうして青春を謳歌する時が来たってのに……) 

 何よりもスイさんに告白もしてないのに……。

 何故こんなことに?

 そんな考えが俺の脳裏に浮かび上がる。

(こ、こうなったらこのさい……) 

 俺は急いでスイさんを真剣な目で見つめる。

「す、スイさんっ聞いてくださいっ!」

「はわわっ? はいっ」 

「俺っスイさんのことっ……」

 「ば、馬鹿野郎っ、今そんなことしている場合じゃねーだろ?」と、続きの言葉を遮るように、学から叱咤される俺。

(あ、スマン、確かにそうだよな。冷静さをに欠けてたわ……) 

 が、一体どうすればいい? 正直空中に放り出されているし、万事休すだぞ?

「みんなっ、俺の手に掴まれっ」

 俺の心配をよそに力強く叫ぶ学だったが、何故かその姿はほんやりと不思議な光に包まれていた。

 何故そうしたか自分でも分からない……。

 けど、そんな学に惹かれるように俺はあいつの手を掴んだ。

 他の皆もだ。

 その手を繋いだ瞬間、俺らは真っ白い不思議な光に包まれ意識を失う……。

 うっすらと温かい光に包まれる中、俺は昔の孤児院時代を思い出していた……。

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