ある日【月神 守】は大学の親友達と車ごとガケから転落してしまう。 守はアデレという異世界の魔族の王に転生し生まれ変わっていた。 しかも、親友の学は魔王の長男⁈ そんなこんなで、守と学はザイアードという魔族の国の2人の王として君臨する。 他の親友達、【雫(しずく)はファイラスの王女】に、【スイはエルシードの王女】としてそれぞれ君臨する。 色々情報収集し、各国の国宝を巡って大戦が勃発しようとしている事が分る。 また、【 Fプロジェクト】が絡んでる事が判明していく。 そんな主人公達が異世界の戦乱を共闘、あるいは敵対し生き抜いていく異世界戦記物語! ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
view more闇夜に走るは1台の漆黒のスポーツカー。
そう、俺【月神 守(つきがみ まもる)】は大学の親友達と車で深夜の山中をドライブの真っ最中なんだよねー!
俺の隣の助手席に座っている女性が「わあ、夜風がひんやりとして、とても気持ちいいですね……」と、呟きこちらを見つめる。
彼女の名前は【風見 スイ(かざみ すい)】さん。
気になった俺は隣をそっとチラ見する。
するとスイさんは夜風に静かになびくセミロングの銀色の髪に手をそっと当て、サファイアのように澄んだ青い瞳でこちらを見つめ返し、ほがらかに笑っていた。
童顔を感じさせる二重の大きな瞳。それを強調させる細長い眉。彼女の小柄な体形と血色の良いもち肌。そしてふっくらとした丸みを帯びた顔と胸に俺は小動物的な癒しを感じてしまう。
(それに、紺色のギャザーワンピがまた超似合っているんだよなあ)
俺はそんなことを考えつつも、「ですよねー!」と力強く返事し、ウンウンと頷き自身を納得させていた。
あ、で、話はドライブに戻るんだけど、実はこのドライブには目的があるんだ!
結論から言うと、なんと「スイさんへの告白をかねて」のドライブデート中なんだよね。
情けない話だけど、親友にお膳立てしてもらって現在に至るわけなんだけど。
(いやー、ホント持つべきものは良い友……)
「風も気持ちいいけど、俺ともっと気持ちいいことしませんか? なーんつって!」
「……」後部座席から訳の分からない言葉が聞こえ、その後静かなエンジン音が車内に響き渡るのが分る。
(こ、こいつっ! まじかっ⁈ この空気、い、色々と、台無しだ)
だからか、俺の額にじんわりと変な汗が滲み出てくるのが分る。
えっとですね、今後部座席から訳の分からない人語を発した奴。
コイツが色々お膳立てしてくれた悪友の【星流 学(ほしながれ まなぶ)】。
学は御覧の通りパーソナルスペースというものは一切ないおバカ。なので、剛速球な会話を得意とし、両手を広げ土足で人の心の領域に踏み込んでくる。
体の線は細いが馬鹿力。かつ武道の実力は相当なもので空手の師範代持ちだったりするんだよね。
(他人を思いやる優しい一面もあるんだけど……)
俺は深いため息をつき、カーミラー越しにそっと後部座席に座っている学を覗き見る。
(こうやって改めて見ると、性格に反して顔と雰囲気は整った中性的なんだよな。髪は薄い茶髪で今日の髪型はオールバックですか。で、目は二重のアーモンド形の薄い茶色の瞳が特徴的だよなあ)
で、服装は紺色のジーパンに灰色の長袖ポロシャツ。学の脳みそと同じで非常にシンプルだな。
「ごめんねスイ、こいつアホだから今の会話は軽いジョークと思って、軽く聞き流して?」と、その馬鹿とは対照的に、今度は後部座席から透き通った心地よい声色が聞こえてくる。あ、今ナイスフォローをしてくれたのは【音風 雫(おとかぜ しずく)】さんで、スイさんの親友。
学は「ひ、ひどっ⁈」とおどけてますが、「酷いのはお前の頭と言葉だ」と俺は言いたい。
学のバカはさておき、雫さんは有名な音風財閥の一人娘。
なんでも、有名な音大に通えるほどの音感を持っているお嬢様とのこと。
お嬢様であることを鼻にかけず人柄が良くて、今の会話で分かる通り頭の回転も速く機転が利くめっちゃいい人だ。
俺はそんな事を考えながら、ミラー越しにその雫さんの姿をチラ見する。
(すらっとした細身の長身に、同じくすらっとしたまな板のように整った胸……か。天は流石に完璧は与えなかったか?)
その時、俺の座っている座席の背中に軽い衝撃が走り、運転座席が少し揺れた。俺はたまらず「い、イタッ!」と、反射的に呻く。
雫さんは「あら、ごめんなさい⁈ ちょっと足が滑っちゃって。前座席を蹴っちゃった(笑)」と、テヘペロしてますがっ⁉
学の奴も「お、おいおい。ホントかあ? 今、意図的に雫が蹴ったように俺は見えたが?」と、何故か雫さんから少し距離を取って座り直す姿が見えた。
(……な、何やら後部座席組が騒がしいが? てか、い、今のワザとじゃないよね?)
ワザとだったら、俺色々とめっちゃ怖いっす……⁉
あ、そうそう! 紹介の続きなんだけど、雫様はきりっとした細長い眉毛に二重の大きな茶色の瞳、整った端正な可愛らしい小顔に茶髪のロングヘアーをしている。
んで、現在あの学と付き合っていたりするし、その関係か今日の服装は学とペアルックだったりする。
雫さんが学に惚れたのは、感性が高く学の魂の強さと優しさを感じ取れたからじゃないのかなと俺は思っている。
スイさんは後部座席を覗き見て「ふふっ、二人とも仲がいいんですね? 羨ましい……」と、自身の手を口元にあて上品な笑みを浮かべている。
(おお、笑っているスイさんも可愛らしいな! 結果オーライだがナイスだ、悪友っ!)
俺はなんか得した気分になり、満足げにウンウンと頷く。
雫さんは「え? そう見える?」と、若干顔を赤らめ、まんざらでもないって顔をしている。
「え? 俺らそんなんじゃねーから。……って、痛っ……⁈」
カーミラー越しで分かったが、学は雫さんから足を踏みつけられ悶絶している。
(……いい気味だ。リア従はそのまま爆死してはぜろや(怒)……)
と、俺が嫉妬心を噴火させていたその時、後ろから急接近してきた車が何故かパッシングしてくる⁈
「うわ、眩しいっ⁉」
カーミラー越しに光が反射し、俺は思わず目を細めてしまう。
「……あの車、黒のクラウンだし、なんかやばそうなんで先に行かせたほうが良くないです?」
「あ、そうだよね!」スイさんの言葉に超同意だった俺は、急いで運転していた車を道路の端に寄せる。
なんか気まずかったからか、スイさんは「あ、ごめんなさい! ちょっと知人とライムのやり取りするんで、しばらく無言になるね?」と、自身のスマホを忙しく触りだす。
これには俺も「あ、どうぞ」、と返すしかなかった。
(く、くそっ! 折角のスイさんとの楽しい時間を邪魔しやがって! あのクソクラウン野郎……っ!)
俺は漆黒のクラウンを憎悪の眼差しで睨みつけ、そいつが遠くにいったことを確認し、車の運転を再開させる。
その気マズイ雰囲気に、シンと静まり返る車内。
(ひ、暇だ……)
ぼっちで暇になった俺はカーミラー越しに後部座席に目を移す。
(て、おい⁈ 学と雫さんは缶ビールを飲んで楽しそうに騒いでいるじゃん!)
よく見ると、雫さんは学に体をそっと預け学の耳元で何やら呟いているご様子。
しばらくすると、今度は学が雫さんの耳元で何やら呟いている姿が見えた。
(こ……こいつら! 人が真面目に運転している時に何イチャついてるんですかね?)
と、その直後、「……え、ウソ?」と、雫さんの大声が車内に静かに響き渡る⁈
(えっ、一体どうしたんだ⁈ まさか、いきなりの痴話喧嘩か?)
その声の大きさに、俺はまるで雷に打たれたようにビックリし、そう感じざるを得なかった。
当然、隣のスイさんも驚き、急いで後部座席に目をやるくらいであった。
……。
暫く車内は静寂に包まれる。
(う、うわあ、これダブルデートとしては最悪の展開じゃね?)
俺がそんな考えの最中、何かが俺の顔横をかすめ飛んでいき、「あ、あぶなっ⁉」と、俺は情けない悲鳴を上げてしまう。
カンっと軽い音をたて、飛んできたそれが俺の握っていたハンドルにぶつかったのが理解できた。
(あっ、これ! もしかして、さっきあいつらが飲んでいたビールの缶……⁈ で、でも何故?)
俺はこのトラブルに急いで状況を把握する。
(そ、そうかっ!痴話ゲンカしてたからかっ!)
そんな考察をしてる間にも、その缶は社内をせわしくバウンドし、結果不幸にもブレーキペダルの真下にスッポリはまってしまったっ⁈
(まっ、まじか―――お、おおおイイイイイイイイい――――――――――――!)
当然ブレーキが使えない!
俺は咄嗟の判断で、なんとかハンドルだけで必死こいて車を操作していく!
(うおおおっ! ハリオカートで毎日鍛えているゲーマーの腕なめんなよっ!)
「う、うわー⁈」
「キャー⁈」揺れる車体に当然、一同は阿鼻叫喚し、感情も激しく揺れる始末!
スイさんが「えっ、ああっ⁈ さ、さっきのクラウンがま、前にっ! ぶ、ぶつか……」と、甲高い声で絶叫し、震える手で前を指さしてますが⁉
(不幸は重なって起きるってことかよっ! このクソ野郎っ、後で覚えてろよっ!)
俺は心の中で先程の車を心底恨みながら「ええい! こなくそっ!」と、叫びながら咄嗟にハンドルを切ってしまう!
が、虚しくも慣性の法則が働き、俺達の乗った車はそのまま勢いよくスピンしてしまう結果に⁉
「う、うおおおおおおおおおっ⁈」
「キャ―――――⁈」急回転の恐怖に、思わず絶叫する俺達!
しかし、不幸はそれだけに留まらない。
そう、俺達の車はその勢いのため、道路から放り出され、真っ黒な闇夜を勢いよくダイブしてしまったのだ!
「ひ、ひえええええ――――――⁈」
「い、いや――――――⁈」直後、超高層ビルのエレベーターに乗った時に感じられる真下に落ちていく気味の悪い感覚に包まれ、体中がぞわぞわし、たまらず俺達は大声を張り上げてしまう。
本能的に体が危険信号を出しているからか、俺の脳裏に過去の出来事が走馬灯のように蘇ってきた。
(ああ、俺と学は捨て子として孤児院に拾われ、兄弟のように育ったんだったな)
その孤児院も幼少期に謎の火事にあい、実の兄弟のように育った学とは離れ離れで引き取られることになって……。
(くそっ、両親の愛情を知らない不幸の連続だった俺達にもこうして青春を謳歌する時が来たってのに……)
何よりもスイさんに告白もしてないのに……。
何故こんなことに?
そんな考えが俺の脳裏に浮かび上がる。
(こ、こうなったらこのさい……)
俺は急いでスイさんを真剣な目で見つめる。
「す、スイさんっ聞いてくださいっ!」
「はわわっ? はいっ」「俺っスイさんのことっ……」
「ば、馬鹿野郎っ、今そんなことしている場合じゃねーだろ?」と、続きの言葉を遮るように、学から叱咤される俺。
(あ、スマン、確かにそうだよな。冷静さをに欠けてたわ……)
が、一体どうすればいい? 正直空中に放り出されているし、万事休すだぞ?
「みんなっ、俺の手に掴まれっ」
俺の心配をよそに力強く叫ぶ学だったが、何故かその姿はほんやりと不思議な光に包まれていた。
何故そうしたか自分でも分からない……。
けど、そんな学に惹かれるように俺はあいつの手を掴んだ。
他の皆もだ。
その手を繋いだ瞬間、俺らは真っ白い不思議な光に包まれ意識を失う……。
うっすらと温かい光に包まれる中、俺は昔の孤児院時代を思い出していた……。
そんなこんなで楽しいひと時はあっという間に終わり、深夜自室にて俺はベッド横たわり窓から闇夜に見える綺麗な満月を眺めながら物思いに耽る……。(いよいよ明日から異世界ルマニアに行くわけだけど、なんだか寂しくなるな……。それに学や雫さんとの関係は上手くやれるんだろうか……?)「失礼します……」 その時、静かにドアをノックする声が聞こえて来る。「……この声ガウスか。……どうぞ」「失礼します。少しお話をしたいので会議室によろしいですか……?」「……そうだね。俺達がいなくなったこととかも話しときたいしね」 という事で俺はガウスと共に話しながら会議室に移動していく。 「……色々心配されているようですが、まあ後は私達に任せてください……」「そうだね……申し訳ないけど俺達に出来る事はそれしかないからね」 俺は苦笑しながらガウスに答えるし、ほんそれである。「まあガウス達には色々と世話になったし、ホント感謝しきれないよ」「はは、まあそれが自分達の仕事ですしね。当然の事をしたまでですよ……」 ガウスは謙遜しているのだろうが、その当たり前のことが当たり前に出来ない人が本当に多いのだ……。 なので、俺は本当にガウスやギール達には感謝している。「ということで自分の話はこれで終わりです」「え? じゃ会議室に行く意味ないじゃん」「まあ、そこは守様に用事がある人達がいるからですね……」 ガウスは片目を閉じ、俺に対しウィンクして見せる。(ああ、他の重臣やゴリさん達もか……。まあ、最後になるかも
……数時間後、此処はファイラス城内の会議室。 そんなこんなでファイラス城内に戻った俺達は事の顛末をガウスなどの重臣達を呼び簡潔に説明した。「なるほど、そうだったのですか。なんにせよ魔王スカードの件お疲れ様でした……」「はは、あガウス達のバックアップがあったお陰でだからね……?」 俺はガウス達重臣一同が椅子から起立して深々と頭を下げるのを制して、苦笑する。「……それにしてもにわかには信じられないですが守様達は異世界からの転生者だったとは……」「うん、そうなんだ」「では、貴方達の変わりに本来此処にいるべきレッツ第1王子とゴウ王子達はどちらに?」 「親父の話だと、どうやらルマニアに転移しているらしい」 ザイアードのそもそもの魔王達も当然ルマニアに転生しているらしいし、エルシードのエルフの女王についても然りだ。 これはこの異世界アデレとルマニアが対になっている関係らしいけど、親父達も詳細は分っていないらしい。 なので俺がルマニアからこちらの世界に戻ってきたとしても「ガウス達との繋がりがどうなってしまうかな?」と俺は危惧していたりもする。「……ま、なんにせよ1つの大戦は無事終結し、貴方達の頑張りのお陰でこの世界に平和が訪れた事実があります。という事で明日早速凱旋バレードをしましょう!」「お、いいねえ!」「うん! 国の勝利を伝える大事な行事よね!」「のじゃっ!」 ガウスの言葉に両手を空高く上げガッツポーズを取り、すっかりテンションアゲアゲの俺達。 ……という事で翌日の朝。 俺と雫さんは雫さんの愛馬シルバーウィングに跨りファイラス城外の凱旋門で静かに待機する。 そして雲一つない澄んだ青空の中、その上空にはエンシェントフレイムに変化した双竜、即ち学とノジャが優雅に大空を舞っている。 更に
……オヤジのしばらくの沈黙後に女神様がとんでもない回答を述べる。 「……え?」「俺も後で知ったんだが、アデレと対となる双子の星、『ルマニア』に転生しているらしい」「アデレとルマニアは双子の星にして1つの世界。そしてそこにいるスカードとサイファーはそのルマニアの住人なのですよ」「え、ええっ!」 女神様の話の内容に驚くしかない俺達だった。「うーんそうなると、スカードがこちらの世界に来たのも多分偶然じゃないかもね……」「ええっ! 雫さんがそんな事言うとなんか妙に説得力があるんだよね」(となるとスカード達は双極の星からの使者ってことかあ……) 「あの博士、少し訪ねたい事があるんですが?」「ん、なんだい雫さんとやら」「何故、私達にこの世界でこんな経験を積ませたんです?」「理由は大きく2つある。1つは母さんを探すのに純粋に力と仲間が必要だった」(なるほど、結果的にはなるが魔王スカードと出会えたのも必然だったのかもね) 俺はもう1つの星の住人である魔王スカードとサイファーを見つめ、納得せざるを得なかった。(だってさ魔王スカードみたいな強者がルマニアにはまだいるってことだろ? そうなると、女神様が俺と魔王スカードを戦わせたのは納得なんだよな)「で、親父。もう1つの理由は?」「多分、異世界転生計画の真の目的じゃないかしら? 私は組織から月面移住計画と並行して進められた新しい地球の代替えとなる新天地が目的って聞いていたけど……?」 「へ?」 俺達はスイさんの難しい言葉に目を細め唖然とする。「月面移住計画って、私の両親も確か関わっているって聞いたけど。確か月を探索して資源や新しい土地を求める計画よね?」「ああ、そうだ。月じゃなくて地球に類似した異世界を探す方が早いからな」「ぶっ飛んだ計画ではあるけど、理には適ってる
「……えっと? あのそうじゃなくて俺の両親は?」 俺は訳が分からず女神様の目を見つめる。「ああっ! なによ! 『古代図書装置ユグドラ』が転生した月神博士だったの? もう、ずっと私の目の前にあったものがそうだったなんて……!」「ってええ? ス、スイさん?」「て、こ、この植物が月神博士?」 俺達は色々と驚きながら、いつの間にかまじかに姿を現したスイさんを見つめる。「あ、そっか! スカードが全生物を生き返らせたから……」「そ! 私魔法使いだから瞬間移動の魔法も使えるしね!」「スイあんた……」「ご、ごめんなさいっ! 私も立場上色々あって仕方なくやってたの! でも、もう色々と諦めたから本当に許して! お願いっ!」 スイさんは俺達の目の前で深々とひれ伏し土下座して謝っている。「なあ、スカードどうする?」「俺はもうこやつを一度断罪したので、正直どうでもいい。だが、お前はFプロジェクトの事を知っておく必要があるだろうし、こいつと仲良くやった方が俺はお前の為になるとおもうのだががな……」(そっか、そうだよな。流石スカード、戦っていないときは非常に頼もしいし、キレのある回答をしてくるな) なんか位置付き的に神様みたいだしね。「うんまあ、完全には信じられないけど本当に罪悪感を感じているなら色々教えてくれると嬉しいかな……」 その、正直俺の初恋の人でもあるしね……。 俺は少しだけ顔を赤らめながら、ぼそりとつぶやく。「んんっ……そうよね。じゃお詫びに私の知っている事を全て話すね」「まあ、貴方の嘘を看破するスカードもいるしね?」 雫さんは少しの皮肉を込め、苦笑いしてますが? 中々辛辣である。「ば、ばかっ! そ、そんなんじゃないって!」「ふむ、半分
ファイラス城に向かうのは勿論、いつもの隠し通路から女神の神殿まで移動するためだ。 と、その時突風とともに真横に凄い勢いで何かが通り過ぎる! それはファイラス城の城壁に轟音を立て突き刺さる! よく見るとそれは樹齢百年は超えている大木そのものであった! ……更にはパラパラと音をたて、崩れる城の城壁……。「き、きゃあ――――――?」 そして、城内からは女中のけたたましい金切り声が多数上がっている……。「ひええええっ?」 思わず俺達もそのアクシデントに慌てまくる。(こ、これはま、まさか?) 嫌な予感を確かめるべく俺は恐る恐る後方を振り返る。「に、が、さ、ん!」 すると巨大化した魔王スカードが2本目の大木をこちらに向い、まるでやり投げの槍の様に投擲しようと振りかぶっている姿が見えたのだった!「ま、学っ! 急げっ!」「ひ、ひえええっ⁈」 学は蛇行飛行をし、スカードに的を絞らないようにさせながら城内を目指していく。 その間にも2本目の大木が軽々と投擲され、またもや俺達の真横を通りすぎ轟音をたて城内に突き刺さる! と同時にまたもやガラスの割れる鈍い音、女中の甲高い悲鳴が聞こえて来る。 最早城内は地獄絵図だ……。 不幸中の幸いで、俺達はその割れたガラス窓から、神殿に向かうための隠し通路に急いで向かえた。 ……3本目の投擲の様子が無い所を見ると、ガウス達が上手く囮になってくれているのだろう……。(ごめんな皆、しばらく耐えてくれよ……?) それからしばらくして、俺達はなんとか女神の神殿にたどり着く事が出来た。 進んでいくと周囲がうっすらと光輝くうす透明な紫色の水晶で出来ている部屋にたどり着く。
(本当は、俺よりも剣術が優れている雫さんがこれを使う予定だったけどね) だから、俺に雫さんはあの時この黄昏の剣を託したのだ。 よく見るとサイファーも元の姿に戻りスカード同様地面にうずくまっていた。(おそらくアーマーアームドの耐久が限界値を超えたんだろうな……) それを見たガウスは俺の右手を握り、掲げ勝どきを上げる!「聞け! ファイラスの全兵そして国民よ! ザイアードの大将魔王スカードをファイラス国王守様が打ち取ったぞー!」「うおおおおっ! やったぞ皆っ! 俺達の勝利だっ!」「ファイラス軍万歳っ!」 遥か後方に下がっていた全兵が歓喜の大声を上げながら、次第にこちらに近づいてくる!(よし、もういいだろう)「……アームド解っ!」 俺は学のアームドを解除し、その場にへたり込む。 学も同様にへたり込んでいた。「守、学っ!」 気が付くと雫さんも俺達の元へ駆け寄ってきた!(この感じ、終わったのか……?) 俺は隣で親指を立て、爽やかな笑顔でこちらを見つめている学を見ながら激しい戦闘に終止符が打たれた事を実感したのだ。「ッ⁈」 何故か急に寒気と、胸騒ぎがする……⁉ 俺は反射的にスカードが倒れていた場所に目を移す。 何とスカードは驚いた事にその場に立ち上がり、仁王立ちしているではないか!「ば、馬鹿なっ! お前は守様によって心臓を貫かれたはずだぞっ!」 ガウスは剣を再び抜き、その切っ先をスカードに向け威嚇する。 俺達も急いで立ち上がり、警戒態勢をとるが……?「……なんかスカードの奴、ぼーっとしているし様子が変じゃないか?」「う、うん……。目がなんか真っ赤に変わっているし…&hellip
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