「大石社長はどうして奏を狙うの?二人の間に何か恨みでもあるの?もし前から恨みがあるなら、どうして彼はここに来たの?」とわこはどうにも納得がいかず、首をかしげながらつぶやいた。
「前回、二人で酒を酌み交わしてたぞ」ボディーガードは真剣な表情で言った。「金持ちの世界なんてそんなもんだ。今日の友は明日の敵。すべては利益次第で、関係性なんか関係ない」
とわこは心配そうに山の上を見上げた。
そういえば、昨夜、彼のスマホに、妙なメッセージが届いていた。
あれが何か関係しているのでは?
山の上。
奏は大石社長の姪に連れられ、社長の部屋に足を踏み入れた。
大石社長は細長い目を細め、彼を見た。
「奏、まさかお前、ここまで読んでいたとはな。油断してたよ」彼は感心したように言った。「一体、誰が耳打ちしたんだ?」
奏は机の上に置かれたタバコの箱を無造作に取り上げ、その中から一本を抜いた。
「とわこを山から下ろして、自分だけここに残るとはいい度胸だな」大石社長はその余裕ある態度に感心し、思わず声を漏らした。
「聞いた話では、昨夜、お前の操縦士が飛行機を運んできたとか。つまり、お前は逃げるつもりだったってわけか?」奏はタバコを指にはさみ、低い声で問い詰めた。
大石社長はふと興味を示し、口を開いた。「もしお前がここで死んだら、俺に何かしらの不都合があると思うか?」
奏は笑った。「俺が死ぬ時は、お前も道連れにする。むしろ聞きたいのは俺がここで死んだ場合、お前の家族にどんな報いがあるかってことだ」
大石社長の顔が、一瞬で真っ青になった。
その異変に反応したボディーガードたちが、ぞろぞろと奏を囲み始める。
「そうそう。お前の飛行機、青山からは飛び立てないぞ」奏はボディーガードたちなどまるで眼中にない様子で、さらりと言い放った。「今はもう、お前の父親の時代じゃない。情報技術も兵器も、進歩してるんだよ。お前が呼んだ客の中で一人でも被害が出れば、大石家は終わりだ。俺たちを爆殺しようなんて、正気か?健康食品でも食いすぎて、脳ミソまで柔らかくなったんじゃないのか?」
大石社長は怒りに震え、体まで小刻みに揺れていたが、どうすることもできなかった。
「さあ、誰がこんなくだらない計画を持ちかけたんだ?」奏は時計を見ながら冷ややかに言った。「時間は、もうあまり残ってないぞ」
「な、