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Synopsis

純愛

ハッピーエンド

聖女

人外

初恋

終末世界

「実を結ぶ花」の名を持つ伯爵令嬢・キルシュは、努力しても報われず、運命に見放された“徒花”。 『忌まわしき古き信仰の名残』とされる異能と孤児の出自により、学院や家族からも蔑まれる身分だった。 ある日、義兄の苛烈な言葉に傷つき家を飛び出した彼女は、真夜中の森で恐ろしい怪物に襲われる。 そこを救ったのは、機械仕掛けの青年ケルン――王子様のような彼は、キルシュの記憶から消えた大切な幼馴染みだった。 その再会は、孤独な心に初恋の花を咲かせる。しかし、その裏には残酷な運命の導きが秘められていた……。 これは、儚く甘い初恋と再会、そして別れの物語。産業革命・近世風×異能ロマンスファンタジー。
Chapter 1
プロローグ 終末を告げる大聖堂の鐘の音

 大聖堂に響き渡る鐘の音は、まるで終りの時を知らせるように寂しい音を響かせていた。

 誰も居ない筈の場所で、いったい誰が鳴らしているかは分からない。

 それはまるで、計り知れぬ悲壮に慟哭しているかのように聞こえてしまった。

 眼下に望む見慣れた錆色の町並みは、まさに終末と呼んで良い程……。

 横殴りの雪が降りしきる中で赤々とした炎の群れが至るところで広がり、崩れた落ちた建物から黒煙が上がっていた。

 そんな終末の大聖堂──頂点へと続く途方もなく長い石造りの階段を茜髪の少女はひたすらに駆け上っていた。その合間も砲弾が撃ち込まれる鈍い音と、尋常ではない振動が襲い来る。

 来た道を振り向けば、石造りの階段はバラバラと崩れ落ち、ぽっかりとした虚ろができていた。

 もう引き返せない。そう思いつつも、彼女は前を向き再び階段を駆け上る。

 窓の外に見える、屋根の上に佇むものは教会の雨樋〝ガーゴイル〟を彷彿させる姿の怪鳥だった。

 しかしそれは、鉄錆びた色合いの機械仕掛け。極めて人工的な姿をしていた。

 ……彼女自身も認めたくない事実ではあるが、これが彼女の愛した青年の成れの果てだった。

 ──ケルン。

 少女は身を焦がす程に恋した青年の名を呟き、溢れ落ちた涙を拭って再び階段を駆け上る。

 実を結ぶ花の名を持つ癖に、何をしても結果を出せず、努力さえ実を結ばず恩さえ仇で返す。よって〝徒花〟と、不名誉にも呼ばれた日々の事。彼と過ごした半年ばかりの短くも幸せ過ぎた日々の事。そして、忘却の彼方にあった断片的な記憶の数々。

 茜髪の少女、キルシュ・ヴィーゼは一つ一つを思い返した。

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