どんな場でも、いつも一緒に連れて行くのは高木だった。
だが、今回は初めて彼女を同行させたいと申し出た。
彼女はしっかり準備しないといけない。
オフィスを出た綾子は、すぐにそのことをあの人に報告した。
綾子の報告を聞いた浩之の顔に、冷ややかな笑みが浮かぶ。
そして背後の秘書に向かって言った。
「晴臣に佳奈への招待状を送らせてくれ。あの二人がまだ気持ちが残ってるのか、見ものだな」
一方その頃。
佳奈はずっと清司のそばにいた。知里が外で食事を買って戻ってくると、ちょうど美琴と誠健がオフィスから一緒に出てくるところを見かけた。
知里は奥歯をギリッと噛みしめ、見なかったふりをして彼らの横を通り過ぎた。
美琴は彼女に気づき、すぐに足を止めて声をかけた。
「知里さん、おじさんのお見舞いですか?」
知里はゆっくりと振り返り、無表情で彼女を見つめた。
「江原先生、何か御用ですか?」
美琴はにこやかに笑った。
「いえ、先輩と一緒にちょうど仕事が終わったところで、お見舞いに行こうかと思って」
「ありがとうございます。でも今、佳奈の気分が良くないので、そっとしておいてあげてください。江原先生のご厚意は私が受け取っておきます」
そう言って、彼女は背を向けた。
誠健はすぐに追いかけ、彼女の手首を掴んだ。
真剣な眼差しで彼女を見つめながら言った。
「知里、いつまで俺を避けるつもりなんだよ」
知里の冷ややかな瞳がゆっくりと細められ、唇の端に冷笑が浮かぶ。
「石井さん、あなたの彼女が見てますよ。誤解されたら困るでしょう?私たちはもう終わったの。これ以上、関わらない方がいいんじゃない?」
誠健は歯を食いしばった。
「何度言ったら信じてくれるんだよ。俺と美琴はただの同僚だ。何もないって……どうして信じてくれないんだ?」
「同僚?」知里は鼻で笑った。
「ずいぶん仲のいい同僚ですね」
そう言い残して、彼女はその場を去った。
彼女は決して忘れられない。
2年前に受け取った、あのメッセージ。
それは誠健と綾子がベッドに並んで裸で寝ている写真だった。
あんなのを見て、ただの同僚だなんて信じる方がバカだ。
仮に同僚だったとして