Search
Library
Home / 恋愛 / 結婚式の前に、彼は別の女に誓った / 第11話

第11話

Author: 毒リンゴ
電話の向こうは、ぴたりと静まり返った。

葉月は、彼が何か言い出す前に通話を切った。

「ごめんなさい、変なところを見せちゃって」

「ブロックしないの?」

葉月は一瞬ぽかんとした。

茂人は変わらぬ表情で言った。「元彼に希望を与えなければ、自分も煩わされずに済む」

葉月は思わず茂人の顔を見た。

言い慣れてる。元カノ、多かったりして?

でも、それが茂人なら、好かれて当然かもしれない。

彼の言葉に背を押されるように、葉月は晴樹をブロックした。

その様子を見て、茂人の目元にかすかな笑みが浮かんだ。「行こう。君をマンションまで送るよ」

到着して初めて、彼が自分の隣室に住んでいることを知った。

「ここのことは俺の方が詳しいから、一緒に生活用品を買いに行こう」

そこまで言われては、葉月にも断る理由がなかった。

買い物を終えたら、ささやかながらのお礼にと、彼女は食事をごちそうすることにした。

「好きなもの頼んでね」

茂人は遠慮せずメニューを見て注文したが、出てきた料理は、すべて葉月の好物ばかりだった。

「偶然だね」

葉月は目元を緩めた。異国の地で同じチーム、似たような好み。きっと気持ちよくやっていける気がした。

食後、二人で散歩しながら帰路についた。

マンションの入り口に着いたところで、葉月のスマホに夏帆からのビデオ通話が入る。

画面越しに、彼女はあれこれ気遣ってきた。

葉月は微笑みながら、丁寧にひとつひとつ答える。

ふとカメラが揺れた拍子に、茂人の姿が映り込んだ。

夏帆が大きく目を見開いた。「えっ、ちょっと待って!先輩じゃん?」

葉月はカメラを少し傾け、茂人の全身を画面に入れた。

彼らは同じ大学の卒業生だった。茂人は学内の王子様と呼ばれた存在で、夏帆が覚えていても不思議ではない。

だが、その反応は想像以上だった。

「昨日別れたって話したばっかじゃん!展開早すぎじゃない?」

葉月はぽかんとした。

彼女はようやく意味を理解して、茂人を見た。

彼の顔色は変わらなかった。

「葉月、聞いて。茂人って絶対あんたに気が……」

大声で喋る夏帆の声を遮るように、葉月は通話を切った。

顔が一気に熱くなる。

「す、すみません、学長がそんなつもりじゃないってわかってる、夏帆がちょっと大げさで……」

茂人は彼女の言葉を遮った。

「謝る必
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP