晴樹はじっとスマホの画面を見つめていた。しかし、「追加許可」の通知は、いつまで経っても来なかった。
葉月は、自分と寧音のことを知っているのか?
そんなはずはないはずだ。
彼は部屋を見渡した。ここは、葉月との新居として準備していたマンションだ。
家電から家具、窓に貼られたステッカーまで、どこを見ても葉月の痕跡はなかった。
彼は手のひらは汗でぐっしょりと濡れている。胸のざわつきが、もうどうにも止まらない。
そのとき、ドアが開いた。入ってきたのは、寧音だった。
「部屋にこもってばかりだから、みんな心配してるのよ」
晴樹は彼女を鋭く見つめる。「教えてくれ。葉月はどうやって、あの結婚写真を手に入れた?」
「ほんとに知らないの」
寧音の目に涙が浮かぶ。「写真は、サブ垢で投稿しただけだったの。まさか誰かに見られるなんて」
「見せろ、そのアカウント」
彼女が投稿した写真は、ホテルで葉月が目にしたものと同じものだった。
晴樹は一言も発せず、ひとつひとつ丁寧に写真を見ていった。最後の一枚まで確認し終えた。
「晴樹、どうしたの?葉月はもう……」
「この写真は偽物だ」
寧音が動きを止める。
「偽物じゃなきゃ困る。いいか、よく聞け」
晴樹の表情は暗く、眼差しに凄みが宿っていた。寧音は思わず背筋を伸ばした。
「……わかった」
晴樹は立ち上がり、ドアの方へ歩き出した。「寧音。葉月が戻ってきたら、君は俺の妹に戻るんだ」
バタン、とドアが閉まった。
寧音は机に手をついて、やっとの思いで立っていた。
そして低く冷笑を漏らした。
妹ね。
残念だけど、葉月の目には、寧音が晴樹の妹でいられる余地なんて最初からなかったのよ。
すべて元通りになる?そんな夢、見てる方がどうかしてる。
晴樹が部屋を出ると、家族や親戚たちが一斉に詰め寄ってきた。
「どうなってるの?晴樹?」
「話してくれよ、親戚中から電話きてるんだ」
「なんで寧音と結婚写真なんか撮ってたんだ?」
飛んでくる質問の嵐に、晴樹のこめかみがズキズキと脈打つ。
「写真はフェイクだ。葉月が誤解してるだけだ。辞職して俺をブロックして……説明もできない」
二度目の言い訳。それは、自分自身にも言い聞かせるような言葉だった。
「葉月もひどいわよね。あの家族環境じゃ、ほとんど孤児みたいなもんだし。私たち