「痛っ、茂人、そこじゃなくて
違う、まずは……
茂人、元カノ多いんじゃなかったの?」
暖色のライトが、茂人の額に浮かんだ汗をやわらかく照らしていた。
「いないよ。君だけだ」
葉月は一瞬、言葉を失った。
じゃあ、あの元恋人対処法は何だったの?
彼の黒い瞳がほころび、囁く声が耳元をくすぐるように響いた。
「葉月、教えてよ」
彼女の思考が真っ白になる。その後起こったことは全てが混乱し、制御不能だった
額をそっと寄せ合い、茂人の瞳は熱を帯びて燃えるようだった。
その声は、低く甘く、耳の奥をくすぐる。
「葉月、もう一回、いい?」
葉月は心の奥が激しく震える。なぜか、「ダメ」とは言えなかった。
翌朝。
目を覚ました瞬間、茂人の顔が視界に飛び込んできた。
「俺、初めてだったんだ」
葉月の頭の中が一瞬、真っ白になった。
茂人は笑いながら言った。「だからさ、責任取ってくれる?」
責任を取らないなんて、難しかった。
今のところ、葉月は彼に不満なんてひとつもない。
その日のうちに、茂人はInstagramに【恋人ができた】と投稿した。
葉月の名前こそ出さなかったが、例のグループでの発言との関連性に気づいた者がいて、すぐに話題になった。そして茂人は、それを否定することもなかった。
午後、葉月は夏帆から電話が入る。
「晴樹、頭おかしくなってる。酒飲みすぎて胃から出血して、病院に運ばれた」
「ふーん」
「葉月、グループでみんな噂してるよ。茂人と付き合ってるって本当なの?」
葉月はちらりと茂人を見た。彼は一見落ち着いているが、持っていたペンを逆さに握っていた。
「うん、本当」
電話の向こうで夏帆が声を上げる中、茂人はペンを持ち直し、書類にサインした。耳が、じんわり赤く染まっていた。
「あの半月で晴樹がまたホテル取り直して、式場も決め直して、あなたが戻るのを待ってたんだよ?今さら遅いって。
今日、病院に運ばれてようやく慌てて、あなたの情報を探してるけど、ほんとバカみたい。自分のものだって思い込んでたんだろうね。
海外赴任の話も、たぶんもう隠しきれない。でも気にしないで。放っておけばいい。勝手にどうにかなればいい」
その男の話を聞いても、葉月の感情はまったく揺れなかった。
「うん、わかった」
通話を切った瞬間、晴樹の章は、完全に終