Search
Library
Home / 恋愛 / 結婚式の前に、彼は別の女に誓った / 第19話

第19話

Author: 毒リンゴ
写真には、晴樹が寧音を腕に抱いている様子が映っていた。カメラマンは構図を探しながらシャッターを切っている。

葉月は、ゆっくりとした動作でメッセージを送った。

【この写真は私が撮ったの。ウェディングフォトのカメラマンも、私が手配した人だった】

【後で寧音からわざわざメッセージが来たわ。あなたのおかげで素敵な写真が撮れた、って】

【晴樹、まだ証拠を出し続けてほしいの?】

チャット欄はこの三つのメッセージで静まり返った。

あれほど雄弁だった口たちも、まるで封じられたように黙り込んだ。

しばらくしてから、晴樹がようやく返信を打ち込む。

【葉月に非はない。悪いのは俺だ】

葉月は冷ややかな目で画面を見ていた。

遅すぎる謝罪なんて、見飽きるとただの嫌悪感しか残らない。

彼女は周囲の反応になど興味もなく、グループチャットを即座に退出した。

「俺のも退会させて。夫婦は一心同体だから」

そう言って茂人のアカウントも、彼女の手でグループから外した。

スマホを放り出すと、その代わりに茂人の手が添えられる。

指を絡めて、茂人は柔らかく微笑んだ。

部屋の中のぬくもりが、じんわりと葉月の心に染み渡っていく。彼女はふと自分の手元を見下ろし、自然と笑みをこぼした。

再び晴樹に会ったのは、翌日の夕暮れだった。

茂人と散歩から戻ると、晴樹が車のそばに立っていた。どれだけ待っていたのかはわからない。

「少しだけ話せないか?

今夜の便で帰国する。もうすぐ空港に向かわないと」

痩せこけ、目のくぼんだ晴樹の声音は、驚くほど卑屈だった。

葉月は茂人の方を見た。

茂人は彼女の頭を優しく撫でた。「俺は先に上で晩ご飯作ってるから。お客の話が終わったらおいで。寒いから、長居はしないようにな」

「うん」

茂人が「客」と呼んだことに、葉月は何も返さなかった。

彼女と茂人の親密さと信頼は、何のためらいもなく、自然にそこにあった。その光景は、晴樹の胸をえぐるように痛めつけた。

茂人が家に入るのを見届けてから、葉月はようやく晴樹に向き直った。距離をしっかりとったまま。

「話して。時間がないの」

「俺たち、丸五年も一緒にいたんだ。君がいないなんて無理だ。まだ本当に君のことを思ってる。葉月、もう俺のこと、少しも気にしてないのか?」

葉月の表情は変わらない。沈黙のまま。

晴樹
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP