彼女はこの間ずっと抱えていたすべてのつらさを、母に打ち明けた。
まだ語り終えていないのに、もう涙でどうしようもなくなっていた。
墓碑の前にそのまま座り込み、冷たい石に刻まれた名前を、掌でそっと撫でる。
そうすると、母の存在が今も自分のそばにいるような気がして。
「お母さんがいてくれたら、こんな寂しい気持ちにならずに済んだのに......きっとあなたは、私の味方になってくれたよね」
「わからないの......あんなに私を愛してくれた人が、どうしてこんなふうになっちゃったんだろう......愛って、本当に変わるものなの?」
今となっては、史弥が自分を玉巳の身代わりにしていたかどうか、もうどうでもよかった。
だが、どちらにせよ、二人の関係はもう腐りきっていた。
ただの悪臭に変わっていたのだ。
ようやく感情を吐き出した悠良がふと時間を見ると、すでに一時間半が過ぎていた。
さっきまでは「すぐ着く」と自信満々に言っていた史弥の姿は、どこにもない。
彼にもう、ほとんど期待はしていなかった。
来ようが来まいが、どうでもよかった。
悠良が立ち上がろうとしたとき、スマホがふるえた。
メッセージは葉からだった。
【お金はお手伝さんに渡したよ。彼女が「ありがとう」って】
【迷惑かけたのはこっちなのにね】
彼女にはわかっていた。
伶に接触できるような人物は、きっとどこかの組織の中枢にいるエリートだ。
その人にとって、今回の伶の徹底調査はキャリアにとって大打撃だっただろう。
今後、この業界で生きていけるかどうかさえ危ういはずだ。
そんな相手に助けを求めたのだ。
それは、相手の未来を犠牲にする行為だった。
帰り道、ふと悠良は玉巳のSNS投稿を目にした。
ただの興味でタップしただけだった。
最初の写真は、お粥を煮ている場面。
次は、テーブルの向かい側に座る人物が粥を飲んでいる構図だった。
顔は映っていなかったが、悠良にはわかった。
それは、史弥の手だった。
玉巳はこう添えていた。
【これからは、毎朝愛する人のために朝ごはんを作ってあげたい。彼、とってもおいしそうに食べてくれた】
三枚目の写真には、史弥の碗を指差す玉巳の手。
悠良の表情は相変わらず穏やかだったが、手の甲にはうっすらと血管が浮かんでいた。
彼らはもう、こんなにも我慢がで