悠良はそのまま会社を出て、商業施設に向かった。
史弥が自分で一緒に行くと言っていたこともあり、一応尊重してメッセージを送る。
【今空いてる?なければ、私一人で行くから大丈夫】
史弥からはすぐに返信が来た。
【こっちはまだ会議が終わってない。先に行っていいよ。お義父さんへのプレゼントなら俺のカードを使って】
その言葉を見て、悠良は薄く笑った。
きっと来る時間なんてないのだろうとわかっていたから、特に期待もしていなかった。
悠良と家族の関係はもともと良いとは言えない。
その中でかろうじて父親だけは少し気にかけてくれていた程度で、他のみんなからは厄介者扱いだったくらいだ。
それでも、もう二度と会えないかもしれないからと、せめて一通りの贈り物は選んでおくことにする。
買い物を終えても史弥からは追加の連絡もなく、まだ時間が早かったので、自分の服もいくつか選び、支払いには史弥のカードを使った。
仕方がない。
玉巳に服をあれこれ触られてしまったせいで、自分の手元にはほとんど服が残っていないし、潔癖気味な自分は他人が触れたものにはもう手を通したくない。
その頃、史弥はまだ玉巳をなだめていた。
伶にアポが取れないからと、玉巳は気が気でない様子だった。
目を赤く腫らし、涙ぐみながら史弥にすがりつく。
「史弥、どうしたらいいか教えてよ。悠良さんに頼んでもまだ取れてないって......悠良さんは寒河江社長といい関係なんでしょ?あのA8に乗ってたくらいなんだから」
史弥は眉間にしわを寄せ、玉巳が何を言っているか半分も耳に入らないままだった。
視線はスマホに向かっていた。
はじめは見間違いかと思ったが、よく見ればそれは間違いなく1000万円だった。玉巳は相変わらず腕にしがみつき、甘えたように声を落とす。
「史弥......」
「ちょっと待って。今メッセージ送るから」
史弥は手早く悠良にメッセージを送る。
【悠良、さっきカード使ったのは君か?買い物?】
メッセージを見た悠良は、口元に冷たい笑みを浮かべた。
やっぱり、どんなに忙しそうにしていても、自分に関心がなくなったわけじゃない。
返信する余裕くらいはあるらしい。
【ええ。この間ほとんど服を処分したから、新しい服が必要だったの。それに父さん一人にだけ買うのも気が引けるから、ついでに家族みんな