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伊藤ほほほ
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Novels by 伊藤ほほほ

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

ノブルス子爵家の長女マーガレットは、幼い頃から頭の回転が早く、それでいて勉強を怠らない努力家。 婚約者も決まっており、相手はなんと遥か格上の侯爵家で、王都で噂されるほどの美貌の持ち主らしい。田舎貴族のノブルス子爵家にとって、奇跡に等しい縁談であった。 そして二人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ……と、なればよかったのだが。 新婚旅行の当日、マーガレットは何者かに殺されてしまった。 しかし、その数日後、マーガレットは生き返ることになる。 全財産を使い、蘇りの秘薬を購入した人物が現れたのだ。 信頼できる仲間と共に復讐を誓い、マーガレットは王国のさらなる闇に踏み込んでいく。
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Chapter: 67.敵の狙いは、侯爵家の失墜
 慈善会が終わり、最後の客を見送ったころには、夜もだいぶ更けていた。 ダグルド侯爵家の大広間から灯りが消え、使用人たちが片づけに入る。表向きには何事もなく成功した慈善会だ。寄付目録にも不備はなく、参加した夫人たちも侯爵の面目を潰すような真似はできなかった。王都の社交界では、きっと「立派な会であった」と評されるだろう。 だが、その裏では確かに何かが動いていた。 その夜、マーガレットは平民街の家ではなく、ダグルド侯爵家の一室を借りていた。  遅くにまた移動するより、このまま整理に入った方がいいと判断したからだ。 机の上には、今日得た情報が全て並べられている。 慈善会の席順。  招待客の名簿。  ヴェルン商会の搬入記録。  クリスが覚えていた給仕たちの動線。  ネルコが追った先の報告。  そして、マーガレット自身が控え室の窓から見ていた人々の視線と動き。 机を囲むのは、マーガレット、エンヴィ、クリス、ネルコ、そしてダグルド。  皆、疲れている
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: 66.幕の裏で、花は入れ替わる
  慈善会の後半に入ると、大広間の空気はわずかに緩み始めた。 寄付目録の朗読が終わり、主だった挨拶も一段落したことで、来客たちはそれぞれ親しい者同士で小さな輪を作って談笑している。給仕が運ぶ紅茶の香り、花瓶に活けられた白い花、控えめな弦楽器の調べ。どこを切り取っても、侯爵家らしい穏やかな慈善会の光景だった。 けれど、その穏やかさの下で、人の視線だけが別の熱を帯びている。 二階の控え室から会場を見下ろすマーガレットは、窓辺にそっと身を寄せたまま、ゆっくりと呼吸を整えた。今日はここから動かない。表に出ない。ダグルドお父様とも、エンヴィとも約束したことだ。 それでも、こうして見ているだけで分かることはある。「ヤーサック男爵夫人、もう三度目ね」 マーガレットが小さく呟くと、隣で給仕女に化けているネルコが目を細めた。「うん。さっきから何回も同じ方向を見てる」 同じ方向。  それは会場の右奥、商会の出入りに使う脇扉の辺りだった。 ヤーサック男爵夫人は、いかにも慈善に心を寄せる貴婦人といった顔で、周囲の夫人たちと談笑している。手にはティーカップ、唇にはやわらかな笑み。だが、その目だけは落ち着きなく、何度もあちらへ向いていた。
Last Updated: 2026-06-15
Chapter: 65.花の名で集う者たち
 ダグルド侯爵の名で催される慈善会は、思った以上に早く形になった。 王都では、貴族が何かを始めようとするとき、時間がかかるものと相場が決まっている。招待状の文面、使う会場、料理の格、呼ぶべき顔ぶれ、呼んではならない顔ぶれ。どれもこれも面倒で、しがらみだらけだ。  しかし今回は違った。 呼びかける名がダグルド・ファーブリック。  あの裁判のあとも、侯爵として揺るがぬ顔で社交界に立ち続けている男だ。その彼が、戦や病で親を失った子供たちのために慈善会を開くと言えば、表立って拒むのは難しい。まして、最近は夫人会の動きが妙に活発だったこともあり、王都の貴婦人たちは「顔を出しておいた方が無難」と判断したのだろう。 招待状は広く、だが絶妙に選ばれた先へ送られた。  ヤーサック男爵夫人。ジロルエン子爵夫人。その他、モルガン夫人と親しかった者たち。さらに、それを目立たなくするために、純粋に寄付活動へ熱心な夫人たちも混ぜてある。商会の方も同じだ。ヴェルン商会だけが特別に見えぬよう、花商、茶商、菓子職人の名店がいくつも名を連ねていた。 その準備のほとんどを、マーガレットは平民街の家から指示していた。 元侯爵家の令嬢が、正体を隠して平民街の小さな家に潜みながら、王都の慈善会を裏で仕切っている。文字にすれば滑稽だが、いまさらそんな感想を抱く余裕はない。やるべきことが山ほどあるのだ。
Last Updated: 2026-06-14
Chapter: 64.侯爵の名で開く花会
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Last Updated: 2026-06-13
Chapter: 63.止まった荷車、走り出した使い
 午後の王都は、石畳の上にまだ昼の熱を残していた。 ヴェルン商会から休業中の工房へ荷が運ばれる坂道。その向かいにある仕立て屋の二階から、マーガレットは通りを見下ろしていた。  窓辺には薄いカーテン。外から中は見えにくいが、こちらからは坂道の様子がよく見える。 少し離れた位置には、巡回中の騎士を装ったクリス。  坂の上には、古びた野菜荷車の横で肩を丸めているエンヴィ。帽子を深くかぶり、そこらの平民にしか見えない格好をしているが、姿勢のよさだけは隠し切れていない。「始まるわね」 マーガレットが呟くと、同じ部屋の隅にいたネルコが小さく笑った。「緊張してる?」「ええ」「いいこと。緩んでるよりずっといい」 その直後、坂の下から一台の荷車が現れた。  布で覆われた木箱がいくつも積まれている。車体には商会の紋章がない。だが、昨日ヴェルン商会の裏口で見た荷と、箱の大きさが同じだった。 荷車は坂を上り始める。
Last Updated: 2026-06-12
Chapter: 62.仕掛ける側の夜
 翌朝、マーガレットはいつもより早く目を覚ました。 窓の外はまだ薄暗く、平民街の通りにも人の気配は少ない。だが、眠気はほとんど残っていなかった。昨日持ち帰った情報が頭の中で何度も組み替えられ、目を閉じていても思考だけが先に起きていたからだ。 夫人会。  ヴェルン商会。  裏で動く金属部品。  そして、第一王子の近習。 もう疑いの段階ではない。  相手は確実に何かを準備している。こちらが動かなければ、向こうの都合が整うだけだ。 ベッドを抜け出し、一階へ降りると、すでにエンヴィが起きていた。  台所で湯を沸かしていたらしく、こちらに気づくと赤い瞳を細めた。「おはよう。早いね」「あなたも」「君が考え事してる夜は、だいたい僕も眠りが浅い」 軽く言ったその一言に、マーガレットは少しだけ言葉を失う。  気遣わせている自覚はあったが、そこまで分かりやすいの
Last Updated: 2026-06-11
異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜

異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜

技術革新により、超長距離ワープが可能となった日本では、別の世界に行けるようになっていた。 ワープの際に肉体が変質し、スキルと呼ばれる特殊能力に目覚めることが判明した。 別世界での冒険を配信する異世界配信が流行し、 若者達は有名配信者を目指した。 ―――――――――――――――――――――――――― 勇太のセリフは、滑舌が悪いため※で翻訳しています。
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Chapter: 決意
 ベッドで横になればすぐに眠れると思った。  目を瞑れば楽になれると考えていた。  部屋に戻ってきた時は、頭の中が真っ白だったのに。  その白は、白い文字の塊だった。  少しずつ脳が冷えてくると、パズルが崩れるように今日の会話が蘇ってくる。  言葉のピースが溢れてくる。  どれだけ試しても、決して完成しないパズルだ。  途端に思考の渦に飲み込まれた。 ナタリアの友達は、魔王ディアブラ・サイクスだった。  魔王は、ナタリアと結婚する為に誓を立てた。  俺が魔王と戦うまで、この世界は平和である。 そこに、新しいピースが加わる。  この世界に来てからの会話、見た景色、食べ物、色々な思い出が混ざりあって、頭の中がぐちゃぐちゃになる。  もう眠りたいのに。  俺の頭はそう言っている。  でも、心がそれを許してくれない。  パズルを完成させろと急かしてくる。 王様と出会い、ランデルと冒険に出た。  初めて見た魔法はとても美しかった。  ミノタウロスに殺されかけた。  四天王の一人、狂乱の一角獣ライトニングビーストを倒し、世界が平和に近づいた。  そして、アルに出会った。  優しさ、怖さ、愛らしさ、アルという最愛の人を知った。  そして、ナタリアという天使が産まれた。  ネフィスアルバが死に、闇皇帝が消えた。  魔王さえ倒せば、この世界は平和になる。 もう分かっている。  あと一つピースをはめればパズルは完成する。  公園で魔王が契約をした時点で気付いていた。  ただ、考えたくなかっただけだ。  早く眠らせて欲しい。  この苦しみを和らげたいだけなのに。「ただいまー!」 ナタリアが帰ってきた。  目に入れても痛くない、俺の天使。「にゃちゃりあ、きょっちにおいぢぇ?」 ※ナタリア、こっちにおいで?「どうしたの?」 首を傾げたナタリアが、不思議そうに歩
Last Updated: 2025-05-12
Chapter: 再会
「あたし! あ、あたしは……ディーは初めて出来た友達だし、その……あたしも好きだけど……でも、まだ結婚とかは違うと思う。それに、あたしはダディより強い人がいいなって」「ふむ、そんな簡単な事でよいのか。|勇者よ《・・・》、お手並み拝見だのう?」 ディーが右の口角を歪め、邪悪な笑みを浮かべる。  小さな体から漆黒のオーラが解き放たれた。  それは渦を巻き、龍がうねるかのように立ち昇っていく。  膨大な闇が衝撃波を発生させ、大地が砕け散る。  ナタリアは咄嗟に後ろに飛んで回避したようだが、俺はそうはいかない。  竜巻に巻き込まれたかのように吹き飛ばされ、|錐揉《きりも》み状に|捻《ねじ》れた全身の骨がメキメキと音を立てて折れていくのが分かった。  空に投げ出された俺は、痛みと共に目の前が暗くなっていくのを感じた。 終わった……。 そう思った時、後頭部に感じたポヨンと柔らかな感触が意識を繋ぎ止めた。  誰かに抱き留められたようだが、どうやら俺は死ぬ寸前らしい。  目を開けることすら出来ない。 抱き上げられたまま地上に着地すると、口に何かが入ってくる。  カレーのようなスパイシーな香りだ。  その臭いで脳が覚醒した。  何かを思い出したかのように喉が動き、その液体を飲み込もうとする。  あまりの不味さに体が拒否反応を起こし、吐き出したくなるが、そんな力すら残されていなかった。  ただゆっくりと、俺の体に染み込んでいくのが分かった。 なんだか体の調子が良くなった気がして目を開けると、涙を浮かべて俺の顔を覗き込むアルがいた。  俺はアルに助けられたらしい。   「私もナタリアちゃんのお友達が気になっちゃいましたっ。ナタリアちゃんを探してたら、パパが飛んで来てびっくりしたんですよっ! えへへっ」「ありゅ……」 ※アル…… 胸が締め付けられるような気持ちになり、俺はアルを抱きしめた。  アルの柔らかさが、体温が、生きている事を実感させてくれた。 すぐにナタリア
Last Updated: 2025-05-11
Chapter: このガキ、いっちゃっていいすか?
「にゃちゃりあしゅみゃにゃい! おりぇは……」 ※ナタリアすまない! 俺は……「ダディ、何してるの? あ、ディーを紹介するね! この子、あたしがダディやママと一緒に居ると、恥ずかしくて会いに来れないみたいだから!」 コメントから散々脅されていたので全力の謝罪をしようと思ったのだが、ナタリアは気にしていない様子だ。  それどころか、ディーと話す機会をくれるらしい。 ナタリアに話しかけられたディーは、表情に不満を浮かべて嫌がっている。  ナタリアに腕を掴まれたディーは、観念した様子で俺の前にやって来た。「ひゃじみぇみゃしちぇ。にゃちゃりあにょぴゃぴゃぢぇしゅ」 ※初めまして。ナタリアのパパです「うむ、話には聞いている」 ……それだけ? この少年は、挨拶をしたら挨拶を返すという礼儀を知らないのだろうか。  自己紹介をされたら自分も返すという当然の事が出来ないのだろうか。  ナタリアがディーを紹介するという事は、俺やアルと一緒の時にも会いに来て欲しいという表れでもある。  それほどに、ナタリアは初めて出来た友人を大切に思っているのだろう。 握りしめた俺の右手がプルプルと震えている。勇太:さて、一発くれてやりますかね。 コメ:ナタリアちゃんより強いディーに? コメ:一発貰うのはお前だけどなwww コメ:尾行がバレた上に、ガキにボコボコにされる情けない父親の姿を見せたいのか?w コメ:とりあえず会話を広げようぜ?「じーきゅんは、きょにょちきゃきゅにしゅんぢぇりゅにょ?」 ※ディー君は、この近くに住んでるの?「さあな」 ……さあな? 俺は、「はい」か「いいえ」で答えられる簡単な質問をしたはずなんだけど。  まさか斜め上の回答を貰うとは思わなかった。 二人で楽しく遊んでいた所を邪魔してしまったのは、俺が悪いと思う。  ディーが機嫌を損ねても仕方ないだろう。  でも、今後ナタリアと友達として付き合っていくのなら
Last Updated: 2025-05-10
Chapter: ナタリアの友達
 ついに街に入った。  建物の影に隠れたり、|塀《へい》に張り付いたりしてナタリアの後をついて行く。「おじさんおはよう! 後で買いに来るかも!」「おっ、ナタリアちゃん! お出掛けかい? 今日はサンドリザードのいい肉が入ったから楽しみにしてな!」 ナタリアと屋台のおじさんが親しげに会話している。  おそらく頻繁に買い物をする店なのだろう。  対象の行動パターンを把握するのに重要な情報を手に入れた。勇太:こちらアルファー、サンドリザードの串焼きが食べてみたい。 コメ:ブラボー了解。腹ペコ名探偵は任務を続けろ。 コメ:デルタ、ナタリアたんが可愛い!【一万円】 勇太:デルタありがとう! コメ:もういいってそれ!w 城から街の外まで続く真っ直ぐな大通りを、|遮蔽《しゃへい》に隠れつつ慎重に尾行を続けていく。  すると、何かに気づいたナタリアが建物の角を曲がって路地裏に入った。  俺は、その建物の壁に背中をつけ、片目だけ出して様子を確認した。  そこには、手を振ってナタリアを呼ぶ少年の姿があった。 おそらく、アレがディーという俺の娘についた虫だろう。  ナタリアと同じく中学生くらいの年齢に見える。  センター分けの短い銀髪は清潔感を感じさせ、大きなライムグリーンの瞳が美しい。  闇皇帝に匹敵する整った容姿をしている。  少し吊り上げた口角がニヒルな笑みを作り上げ、白いシャツに白いパンツが王子様のような雰囲気を出している。コメ:イケメンやんけ! コメ:美男美女のカップルだね。 勇太:みんなには、あの男がまともに見えるんですか? 名探偵ユートルディスしか気付いてないのか? コメ:どういうこと? コメ:爽やかな好青年て感じだが。 勇太:シャツのボタンを二つも外して胸元を|曝《さら》け出してる。アレは不良だ! コメ:勇太くんて、すげえ馬鹿なんだねw コメ:言い掛かりで草 ディーの元にナタリアが駆け寄る。  ディーは、ナタリアが上から手を乗
Last Updated: 2025-05-09
Chapter: 尾行
 魔王の調査が始まってから三週間が経過した。 ダメ元でやってみた商品紹介は大不評だったし、城下町探索ツアーも二日で飽きられた。  特にイベントが起きない城での配信は、企画力の無い俺にとって厳しいものであった。  アルとナタリアのファンだけが残り続けてくれている。  あの二人がキャスターだったら、花のある配信になるのだろうが。 以前アルは、産まれてから一カ月で大人の姿になったと言っていたが、ナタリアは少し背が伸びたくらいでそんなに変わっていない。  愛らしい少女のままだ。  俺とアルの子供なので、ここからは人間のようにゆっくりと大人になっていくのかもしれないとアルが言っていた。  親としては、成長を見守れるので嬉しい限りだ。 成長といえば、教育ママと化したアルが、ナタリアにお金の使い方を覚えさせるべきだと言い出した。  金貨を渡して好きに買い物をさせれば、金の価値が分かるようになると。  人間の世界で暮らすナタリアにとって、知らない人と接する事も重要であり、俺やアルが近くにいない状態で色々と経験させるべきだというのが、アルの意見だった。  俺は、一人で行動をさせるのは危ないのではないかと心配したが、プァルラグを瞬殺するナタリアに何か出来るような人間がいる訳がないと説得された。  そんなこんなで、ナタリアは一人で出かけるようになり、寝る前に彼女が何を経験したのかを聞くのが日課となった。 驚くべき事に、初めて買い物に出かけたナタリアは、その日の内に友達を作って帰ってきた。  同じくらいの身長で、ディーと名乗る男の子だという。  道端で腹を空かせて|蹲《うずくま》っていたディーに、屋台で買った肉串を分けてあげたのがきっかけで仲良くなったらしい。  彼はいつも一人らしく、おそらく孤児だと思われる。  ナタリアが一人で外出すると、必ず声を掛けてくるみたいだ。  俺やアルと一緒にいる時は姿を見せない不思議な少年である。  毎日のように二人きりで遊んでいるらしい。 友達が出来たのは喜ばしいのだが、俺としては見過ごせない状況である。
Last Updated: 2025-05-08
Chapter: 魔王捜索
 四時間くらい空の旅を楽しんでいたら、空が暗くなる頃にジャックス王国に到着した。  明日の朝、今後についての会議をするらしい。 俺達家族にはベッドが四台ある城の客室が割り振られていたようで、部屋に入るとアルとナタリアが笑顔で抱きついてきた。「パパっ! お帰りなさいっ!」「ダディお帰り!」 愛しい家族の頭を撫でまわし、俺は鎧を脱いだ。  その動作が、物語に出てくる|一仕事《ひとしごと》終えて家に帰った騎士のように思えた。  自分とはかけ離れた別の人間になった気がして、少し歯痒かった。 少し疲れたのでベッドに横になった。  すぐさま布団を掻き分け、ナタリアが潜り込んでくる。  あっという間に俺の右腕が枕にされてしまう。  二の腕にほっぺたの柔らかさを感じた。 嫌な予感がする。  アルを見ると、悪戯を考えている子供のような表情を浮かべていた。「私もっ!」 アルがベッドに飛び込んできた。  俺の体は押しつぶされ、車に|轢《ひ》かれた蛙のような情けない声が漏れる。  俺の左腕も枕にされてしまった。  頭を擦り付けてくるので、角が当たって痛い。  二の腕の皮が|捲《めく》れていなければいいのだが。「ねえダディ、闇皇帝はどうだった? どうやって倒したの?」「しりゃにゅいぢぇいっしゅんぢゃっちゃよ」 ※|不知火《シラヌイ》で一瞬だったよ「えぇー! やっぱりダディは強いんだね! 闇の中のドラキュリオはママでも勝てないって聞いてたから、少し不安だったんだよね」「ナタリアちゃん、パパは誰にも負けまちぇんよっ!」コメ:不知火なんて使えねえだろ!w コメ:子供の前でカッコつけようとすんなwww コメ:判決を言い渡す。美女独占罪で死刑! コメ:ナタリアたん可愛いんじゃあ【二万円】 コメ:僕はアルちゃんに一票!【一万円】 コメ:羨ましくてムカつくから勇太に不知火食らわせたるわ。で、不知火ってどうやんの? コメ
Last Updated: 2025-05-07
闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい

闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい

女神によって異世界へと送られた主人公は、世界を統一するという不可能に近い願いを押し付けられる。 分からないことばかりの新世界で、人々の温かさに触れながら、ゆっくりと成長していく。
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Chapter: 旅路へ
 ヨールとして冒険者にになり、3年が経った。 今ではオリハルコンランクの2級。名ばかりで何もできなかった頃から考えると、随分と遠くまで来たもんだ。気がつけば、上級冒険者として名簿に名を連ねるようになっていた。 人族の国『ヒューマニア』に点在するダンジョンは、ほぼすべて踏破した。命を削るように戦い、身ひとつで切り抜けてきた。貯金もそれなりにできたし、生きていく上での不安はもうない。 ――やっと、次に進める。 旅の最初に立てた目標は、世界平和。笑われるような理想だった。薄暗いボロ宿で一人、シミだらけの汚い天井を眺めながら、どうやって世界を統一しようか……なんて、一生懸命に考えていたあの日が懐かしい。  でも、それはただの夢じゃない。俺がこの異世界に飛ばされた理由は、世界を一つにしなければ元の世界に帰れないからだ。 次に目指すのは、獣人の国『ビーストリア』。 人族とは何世代にもわたり対立してきたと聞く。けれど、俺には失うものも、守るものもない。その分、恐れずに飛び込める。冒険者という立場が、せめて対話のきっかけになればいい。 まずは向こうの冒険者たちと関係を築こう。共に依頼をこなし、実力を認めてもらえれば、やがては国の中枢に声が届くかもしれない。急がない。
Last Updated: 2025-05-11
Chapter: 最強の肉体 side健崎 加無子
 戦斧と盾を置き、岩山を駆け登っていると、ロックリザードが懲りもせず襲いかかってきたが、噛みつきをバックステップで避け、ハンマーのように右手を脳天に叩きつけると岩のような表皮は砕け、頭蓋を砕く音が聞こえ、ロックリザードは舌を出してぐったりと力なく倒れた。回収する数が増えてしまったけどラマツンがいるから大丈夫だろう。 2体のロックリザードを回収すると、山間を薄いオレンジ色に染め上げながら太陽が昇ってきていた。そろそろラマツンも交代しているだろう。地面を慣らすように尻尾を持ってトカゲを引き摺りながら大急ぎで岩山を降りた。 門に近づくと、ラマツンと交代した門番が目を丸くしながら口をあんぐりと開けていた。「ラマツン、行くよ」「よ、よし行くか。回収したやつはアジャが見てくれるから、門の横に並べておこう」 交代した門番はアジャというらしい。ラマツンよりも小さいが「お、おいラマツン。その怪力の女の子は彼女か?」「ラマツンは僕の手下」「そう、私はケンザキ様の下僕……って違うだろ!」「行くぞ我がラマツン」「だから違うって! 武器は持っていかないのか?」 無視して山を登り始める。ラマツンはやれやれと首を振っているが、僕は早く終わらせて寝たい。 上から順に回収していく。一往復で大体1時間半くらいかかり、僕が2体、ラマツンが1体の計3体だと7往復で終わる計算だ。 3往復し、4往復目に差し掛かるとラマツンが遅い。「ラマツン遅い」「ぜぇ……はぁ……少し休憩しないか?」「だからモテない」「な……!? やるよ、やりますよ!」 ラマツンが元気になったみたいだ。両頬を叩いて気合を入れているようだが、顔面蒼白で体調が悪そうだ。恐らくそれが巨人族の絶好調なのだと思う。 途中ラマツンがロックリザードに襲われた。武器を持っておらず、疲れから反応できていない様子だったので、飛び上がって
Last Updated: 2025-05-10
Chapter: ゴネ side健崎 加無子
「街に入りたい」 僕は今街の門の前にいる。門番が街の中に入れてくれなくて困っている。「だからダメだと言っているだろう! 夜間の門の開閉はゴールド級冒険者以上もしくは許可された者以外には出来ない!」 僕よりも背の高いメロンのように逞しい肩をした巨人族の門番がガミガミと怒っている。「ねえ、街に入りたい」「いつまで続けるつもりだ!」「街に入れるまで」「それでは朝になってしまうな」「じゃあそうする。街に入れて」「気でも触れてるのかこの娘は! 怪しい格好に怪しい言動、通せるわけがないだろう!」「じゃあ脱ぐ」 盾と戦斧を地面に置き、上着のボタンを1つ外す。「何をしている貴様! 服を着ていようが着ていまいが朝まで街には入れんのだ!」「僕を通さない、冗談も通じない。つまらない人」「な、なに……。この俺がつまらないだと!? よーし分かった。貴様はどうせ朝まで街に入れんのだ、門が開くまで俺が話に付き合ってやろう! 俺の名前はラマツンだ」「僕はケンザキ」 ラマツンは肩に担いでいた5メートルはあるだろうロングハンマーの先端を下にして地面に立てるように置き、腰に手を当てて仁王立ちになった。「ケンザキは冒険者なのか? 何故1人でゴールド級が依頼を受けるような場所にいる?」 返答に困る質問だ。なんて答えようか。「冒険者じゃない。岩トカゲを倒してた」「岩トカゲってロックリザードのことか? 南の森にいるストーンリザードではなくてか?」「ちょっと待ってて」 辺りは真っ暗で月明かりと星明かりしか頼るものがないが、何も見えないわけではない。盾を地面に突き刺し、岩山を駆け上がり、一番街に近い位置で倒したトカゲの尻尾を掴んでラマツンの元へ持って帰ってきた。「これ」「ロックリザードじゃないか! ふむ、確かにソロで倒すには骨が折れる相手だ。日が暮れてしまうのも頷けるな。ちなみに俺ならソロで1時間もかから
Last Updated: 2025-05-09
Chapter: お友達 side八王子 麻里恵
「じゃあこのリパッパデルコーサをお願いしまーす!」「かしこましましたー、こちらの席へどうぞ」 自信満々に注文したけどわたしは何を頼んだんだろう。日本円で1300円てまあまあの値段だったから失敗してないといいんだけど。 ウエイトレスさんが持ってきてくれた水は薄くピンクがかった色をしている。氷は入ってないけどひんやりと冷たい。「頂きます!」 あ、これ多分ワインを薄めたやつだ。アルコールはあまり感じないけれど、ほんのりと赤ワインの香りがする。「お待たせしましたー、リパッパデルコーサでーす!」 透けるように薄く切られた円形の巨大な大根で魚や色彩豊かな野菜が包まれてる。美術展に展示されていても気づかない程の完成された美しさに、ほぅと思わず溜息が出る。 木のナイフとフォークで食べるようだ。大胆に半分に切ると、中からソースがとろりと溢れ出し、同時にわたしのヨダレも溢れ出した。恐る恐る一口大に切り分けたそれを口に運ぶ。「うんまっ! なにこれー!」 これは当たりだ、大当たりだ。息つく間もなくぺろりと平らげてしまった。さて、デザートが気になりますねぇ。「ウエイトレスさーん、甘いものってありますー?」「こちらのゲロンデなど如何でしょうか?」「はーい、それにしまーす!」 名前は不吉な感じがするけど、このお店のならなんでも美味しい気がする。大丈夫でしょ。「こちらゲロンデになります」「はー……何これ?」「こちらゲロンデというカエルのモンスターの鼠径部付近の脂肪をギロングヤシの実からとれたミルクで味付けしたものになります」「な、なるほど……」 カエル……。ぶつ切りの白くてシワシワでぶにゅぶにゅした見た目の塊がココナッツミルクのような液体に浸っている。どうしようか、勇気を出して食べてみようか。えーい、いっちゃえ!「お、美味しい。美味しすぎる!」 甘みが強く酸味のある香り高いココナ
Last Updated: 2025-05-08
Chapter: 軍団 side八王子 麻里恵
「うわぁ……。大分増えちゃったなぁ」 わたしの目の前には187体のゴブリンが規則正しく整列している。更にまるおを含めた25体のスライムが私の周りでぴょんぴょん飛び跳ねていて、5体の体毛が全くないかわりに苔に覆われている猪が近くで寝ている。モスボアという名前らしい。フカフカの苔が日差しを浴びて温かくなっているので、寄りかかってソファー代わりにすると凄く気持ちがいい。何故モンスターの名前が分かったかというと。(ステータス) 八王子 麻里恵  レベル:17  属性:魔 HP:420  MP:1410  攻撃力:210  防御力:210  敏捷性:210  魔力:3600 スキル  ・モンスタールーム レベル1  ・モンスター合成 レベル1 魔法  ・テイム レベル2 このモンスター合成というスキル、例えばゴブリンを指定してみると。(ゴブリン30体を合成し、ボブゴブリンを作成しますか?) こんな感じに脳内に文字が表示される。テイムしたモンスターにしか使えないけど、これでモンスターの種類が分かるようになったってわけ。あ、テイムもレベルが上がって3000体までモンスターを従えることが出来るようになったよ。 で、ですね。何故仲間になったモンスター達を集めているかと言うと、どのタイミングでモンスター合成をしようかなって話なんだよね。スライムはどんどん合成していった方がいいとは思うんだけど、モンスターを見つけて来てくれるゴブリン達を合成するとかなり効率が悪くなるのよね。「キモスケ、キモジロウ、こっち来てー!」「「ゲギッ!」」 右手を挙げて返事をすると、2体のゴブリンが駆け足でやってきた。(モンスター合成) スキルを使用するとキモスケと他の29体のゴブリンが眩い光に包まれ、29体のゴブリンが丸い光の玉となりキモスケに集約された。 キモスケを包む光は徐々に大きくなり、霧散するように光が弾け飛ぶと、中からはゴムのよ
Last Updated: 2025-05-07
Chapter: 冒険者 side武藤 零ニ
 最初にこちらを威圧するような態度だったので高圧的な嫌なやつかと思ったが、中々話のできる良い奴そうだ。「俺も冒険者になりゃあ強くなれんのか?」「ははは、試してみるといい。良いパーティーが見つかるといいな」「1人じゃ駄目なのか?」「ふむ、パーティーを組めばより強いモンスターと戦える。ソロでダンジョンに挑む馬鹿はおらんしな。早く強くなりたいのであれば、仲間を探すべきであろうな」「そういうもんか、じゃあ俺も冒険者ってのになってみっかな! 強くなったら俺のパーティーにおっさんも誘ってやるよ!」「それは熊ったなー。ぶぁーっはっはっはっは!」「おいおっさん、つまんねえぞ!」「ぶぁーーっはっはっはっは!」 冒険者か、今は何より強くならなきゃいけねえしいいかもしれねえ。しかしパーティーか、よええのと組まねえように気をつけねえとな。街の中心に冒険者ギルドってのがあるらしいから、そこで登録すりゃあ誰でもすぐに冒険者になれるみてえだ。 頭の中でおっさんの話をまとめていたら閂の外れる音の後にゆっくりと門が開いた。クリスと……なんだありゃ、首の長え奴がいやがる。キリンの獣人か、あんなのになってたら生活に不便すること間違いなしだったぜ。「お待たせしましたー! 衛兵長のジラフォイですー!」 声高すぎだろ、しかもジラフォイってなんだよ。こいつ笑わせにきてやがんな!「あ、あぁ。こっちは待ってる間にそこのおっさんにいい話が聞けて良かったぜ。街には入れるのか?」「まずはテストをするフォイ! 合格したら入れてやるフォイ!」「ぶふぉ……くっ、くく……。そ、そうか」 このキリン野朗畳み掛けてきやがった。笑いを堪えてたとこにこの不意打ちは卑怯だろ。獣人てのはこんなのばっかりなのか?「ジラフォイ隊長、いい加減笑う奴はいい奴っていうテストはやめた方がよいのではないか? 意味がない気がするのだが」「今日はもう遅い、この狼獣人の子供も早めに宿をとっ
Last Updated: 2025-04-28
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