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ナタリアの友達

last update Huling Na-update: 2025-05-09 19:10:03

 ついに街に入った。

 建物の影に隠れたり、|塀《へい》に張り付いたりしてナタリアの後をついて行く。

「おじさんおはよう! 後で買いに来るかも!」

「おっ、ナタリアちゃん! お出掛けかい? 今日はサンドリザードのいい肉が入ったから楽しみにしてな!」

 ナタリアと屋台のおじさんが親しげに会話している。

 おそらく頻繁に買い物をする店なのだろう。

 対象の行動パターンを把握するのに重要な情報を手に入れた。

勇太:こちらアルファー、サンドリザードの串焼きが食べてみたい。

コメ:ブラボー了解。腹ペコ名探偵は任務を続けろ。

コメ:デルタ、ナタリアたんが可愛い!【一万円】

勇太:デルタありがとう!

コメ:もういいってそれ!w

 城から街の外まで続く真っ直ぐな大通りを、|遮蔽《しゃへい》に隠れつつ慎重に尾行を続けていく。

 すると、何かに気づいたナタリアが建物の角を曲がって路地裏に入った。

 俺は、その建物の壁に背中をつけ、片目だけ出して様子を確認した。

 そこには、手を振ってナタリアを呼ぶ少年の姿があった。

 おそらく、アレがディーという俺の娘についた虫だろう。

 ナタリアと同じく中学生くらいの年齢に見える。

 センター分けの短い銀髪は清潔感を感じさせ、大きなライムグリーンの瞳が美しい。

 闇皇帝に匹敵する整った容姿をしている。

 少し吊り上げた口角がニヒルな笑みを作り上げ、白いシャツに白いパンツが王子様のような雰囲気を出している。

コメ:イケメンやんけ!

コメ:美男美女のカップルだね。

勇太:みんなには、あの男がまともに見えるんですか? 名探偵ユートルディスしか気付いてないのか?

コメ:どういうこと?

コメ:爽やかな好青年て感じだが。

勇太:シャツのボタンを二つも外して胸元を|曝《さら》け出してる。アレは不良だ!

コメ:勇太くんて、すげえ馬鹿なんだねw

コメ:言い掛かりで草

 ディーの元にナタリアが駆け寄る。

 ディーは、ナタリアが上から手を乗
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  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   嫌だと言いましたけどね

     戦闘が終わると、兵士達が街道に散らばる緑の死体を一箇所に集め始めた。  ゴブリンの死体は食べる訳にもいかず、放置しては腐敗による悪臭や他のモンスターを呼び寄せる原因にもなる為燃やすしかないらしい。  魔法使いが火を放つと、肉の焼ける嫌な臭いが広がった。  立ち昇る黒い煙がどこか怨念を含んでいるようで、背筋に寒気を覚えた俺は、その光景を見続ける事が出来なかった。「わっ……私は、パパの顔って可愛い? ……と思いますけどねっ!」 アルが気を遣って俺を励ましてくれたが、あんまり頭に入ってこなかった。   コメ:おい! 何か言うことがあるんじゃないか? コメ:ふぅ。 コメ:勇太、見えてるんだろ? コメ:リーダーどこー? コメ:ふぅ。 コメ:緑色の勇太が居たなー? んー? 勇太:オレ ゴブリン オマエラ スマン コメ:馬鹿馬鹿しくてワロタwww コメ:しょうもなw コメ:俺は結構好きwww 俺の心に大きな傷を残した悲惨な事件があった気がするが、何事もなかったかのように行軍が再開された。 馬車が森を抜けると、小高い丘の上に聳え立つ巨大な城と、その麓に栄える街並みが見えた。  これからは城下町に行く機会が増えるだろうし、タイキンさんのように商品紹介なんかをやってみるのもいいかもしれない。  城での生活は長くなりそうだが、視聴者が楽しめるような企画を考えていくつもりだ。  『王様にドッキリをしかけてみた』なんてどうだろうか?  不敬すぎて首を刎ねられるかもしれないな。  さっきのゴブリンリーダーのように。 馬車は跳ね橋を渡り、巨大な城門を潜り抜ける。  そのまま街中を通り、緩やかな坂道を登っていく。  石畳の広場で馬車が停止した。「これより王に面会する! 部隊は解散せよ!」 兵士達が俺に一礼しながら去って行く。  中には俺に握手を求める者までいた。  いよいよ、新しい生活の始まりを感じる。

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