闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい

闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい

last updateLast Updated : 2025-05-11
By:  伊藤ほほほCompleted
Language: Japanese
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女神によって異世界へと送られた主人公は、世界を統一するという不可能に近い願いを押し付けられる。 分からないことばかりの新世界で、人々の温かさに触れながら、ゆっくりと成長していく。

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Chapter 1

邪悪な女神

“피고 임유진, 음주 운전으로 피해자 진애령을 사망에 이르게 하였으므로 징역 3년에 처한다!”

“유진아, 미안한데, 그 일 때문에 우리 부모님이 널 반대하셔. 탓하고 싶으면 그 사고를 저지른 널 탓해. 그러게 왜 하필이면 진애령을 쳐 죽이냐고.”

“진애령은 진화 그룹 큰딸이자 강지혁의 약혼녀였어. 너 강지혁 몰라? S시에 있는 그 누구도 감히 그를 건드릴 수 없어. 그런데 왜 하필이면……, 우리 그만하자. 우리 집안까지 화를 입게 할 수는 없어.”

“임유진 씨, 죄송하지만 당신은 이미 변호사 자격을 박탈당했으므로 아무리 좋은 경력을 갖고 있더라도 채용할 수가 없습니다. 게다가 그 사건과 연루된 지라, 자격증이 있다고 할지라도…… 어려울 겁니다. 죄송합니다.”

“네가 무슨 낯짝으로 집에 기어들어 와? 그 일로 우리 집안이 얼마나 곤욕을 치렀는지 알기나 해? 네 동생은 여주인공으로 데뷔할 수 있었는데, 너 하나 때문에 무산됐다고! 넌 네 여동생의 앞길을 망쳤어. 당장 이 집에서 나가! 난 너 같은 범죄자를 딸로 둔 적 없어!”

……

유진은 꽁꽁 얼어붙은 손을 비볐다. 아직 추위가 가시지 않은 1월의 밤이었다.

남쪽에서 불어오는 바람은 그녀의 살과 뼈를 파고들었다.

노란 형광색의 환경미화원 복장을 입고 있는 유진의 청초한 얼굴은 찬바람을 맞아 어느새 붉게 물들었다. 예쁘고 맑은 두 눈 아래에 오뚝한 코와 빨간 입술, 긴 머리를 대충 질끈 묶어 올린 그녀의 모습은 온갖 풍파를 겪은 여성이라는 게 믿기지 않을 정도였다.

그녀의 얼굴만 보면 아마 갓 대학을 졸업한 사회 초년생 정도로 볼 것이다. 하지만 그녀의 눈에는 젊음의 활기 대신 사회의 모든 풍파를 겪은 듯한 체념과 무기력함이 담겨 있었다.

유진은 3년의 옥살이로 거칠거칠해진 자기 손을 한참 동안 바라봤다. 본래 새하얗고 보드라웠던 그녀의 손은 온데간데없었다.

손에 감각이 돌아온 그녀는 계속해서 빗자루를 들고 길을 쓸다가 돌연 그녀의 시선은 길 건너편의 검은 실루엣에 멈췄다.

이른 아침, 그녀가 이 거리를 청소할 때도 남자는 벽에 기댄 채 쪼그리고 앉아 있었다. 지금과 똑같이 돌담에 기대어 고개를 숙이고, 초라한 차림새로 말이다. 그는 이 거리에서 흔히 볼 수 있는 그런 노숙자 같았다.

하지만 그 남자가 똑같은 자세로 여전히 그 자리에 앉아 있을 줄은 몰랐다. 마치…… 죽은 것처럼.

“유진 씨, 뭘 그렇게 봐?”

유진의 동료 서미옥이 넌지시 물었다.

“저 사람…… 아까부터 저기 앉아 있었던 것 같아서요.”

“아유, 노숙자겠지. 신경 쓰지 말고 얼른 일이나 빨리 끝내자고.”

서미옥은 아무것도 아니라는 듯 대수롭지 않게 대답했다. 그녀는 유진처럼 27밖에 안 된 젊은 사람이 환경미화원으로 일하는 걸 처음 봤다.

편견이라면 편견이지만 유진을 처음 봤을 때 그녀가 일을 잘할 거라는 기대는 하지 않았다. 일이 어렵다며 불평불만을 늘어놓지 않으면 다행이라고 생각했다.

하지만 웬걸, 유진은 야무지고 빠릿빠릿했다. 남들이 선뜻 건들지 못하는 더러운 것들을 치우면서도 힘들다며 불평 한 번 하지 않았다. 그러니 유진을 바라보는 그녀의 편견도 사라졌다.

“아무래도 한번 가봐야겠어요.”

유진은 불안한 마음에 손에 든 빗자루를 내려놓고 길 건너편에 있는 남자를 향해 걸어갔다.

그의 앞에 도착한 유진이 떨리는 손을 뻗어 조심스럽게 남자의 코밑으로 갖다 대자, 남자는 천천히 고개를 들었다.

숨 막힐 정도로 잘생긴 얼굴이었지만, 그 순간 남자의 얼굴에는 아무런 표정도 없었다.

앞머리에 살짝 가려진 매력적인 눈매와 달리, 두 눈동자는 텅 빈 것처럼 공허하기만 했다. 마치 아무것도 눈에 들어오지 않는 듯이.

날카로운 콧날과 적당히 도톰한 입술, 그의 이목구비는 신의 손으로 빚어졌다고 할 수 있을 정도로 정교했다. 게다가 얼굴은 다른 노숙자와 달리 흙먼지 하나 없었고, 오히려 깔끔했다. 이는 그가 입고 있는 초라한 차림새와 대조적이었다.

‘설마 노숙자가 아닌가?’

문득 유진은 이런 생각이 들었다.

어찌 됐든 적어도 이 사람은 죽은 게 아니었다!

“유진 씨!”

그때 서미옥이 그녀를 불렀다.

이에 유진은 짤막하게 대답하고는 남자를 힐끗 바라봤다.

“얼른 집으로 돌아가세요. 이렇게 추운 날, 계속 밖에 계시면 입 돌아가요!”

말을 마친 그녀는 이내 길을 건너 청소하던 위치로 돌아갔다.

그날 밤, 두 거리를 다 쓸고 나서야 그녀는 퇴근할 수 있었다. 유진은 청소도구를 정리한 후, 작업복을 벗고 옷을 갈아입었다.

“혹시 그 소식 들었어? 소민준이랑 진세령이 약혼한대. 역시 사람은 끼리끼리 만나나 봐. 평범한 여자가 재벌 집에 시집가는 건 신데렐라 같은 동화책에나 있지, 실제로는 누가 그래? 재벌가 남자들은 모두 재벌가 여자들만 찾는데!”

탈의실에서 옷을 갈아입은 두 여자 동료가 핸드폰에 나온 뉴스에 대해 얘기하고 있었다.

하지만 말이 동료지 상대는 공무원에 속하는지라 계약직으로 들어온 그녀와 달리 사무실에서 일하곤 했다.

요즘 회사에 이력서를 넣는 사람들은 아무리 환경미화원이라는 직업이라도 젊고 능력 있는 고학력 인재들이 많이 지원하곤 했다. 두 사람도 그 부류에 속했다.

‘소민준’이라는 이름에 유진은 잠깐 멈칫했다. 이 얼마나 오랜만에 들어보는 이름인가?

한때 그녀를 사랑한다고 매일 속삭이며 평생 보호해 주겠다던 남자, 하지만 그녀가 그를 가장 필요로 할 때 가차 없이 버린 사람이었다

“그건 아니야. 소민준이 원래 사귀던 여자친구는 재벌녀가 아니었대. 물론 사고로 감옥에 가면서 헤어졌다지만. 아참, 그러고 보니 그때 그 여자가 진세령의 언니를 차로 치는 바람에 죽었다고 했던 것 같은데?”

“헐, 완전 막장 드라마가 따로 없네. 약혼녀의 언니가 전 여자친구 때문에 죽은 거야? 이게 어찌 보면 그 전 여자친구의 업보 아니야? 남자친구가 피해자의 여동생과 잘되고 있으니 말이야.”

두 사람은 대화를 주고받느라 정신이 팔려 사람이 온 것도 알지 못했다. 더욱이 그 전 여자친구가 바로 앞에 있다는 것도 전혀 알 리 없었다.

두 사람의 대화에 유진은 눈을 내리깔며 목도리를 두른 채 묵묵히 밖으로 걸어 나갔다.

마음은 그녀가 생각했던 것보다 많이 평온했다.

어쩌면 3년의 감옥 생활이 그녀의 모든 걸 빼앗아 버렸고, 더 이상 어떠한 희망도 품지 못하게 만들었을지도 모른다.

그녀는 집으로 돌아가는 길에 또다시 아까 청소하던 길을 지나게 되었다. 그리고 아까와 똑같은 자리에서 여전히 똑같은 자세로 앉아 있는 남자를 발견했다.

‘이 사람…… 아직도 집에 안 간 거야?’

‘요즘같이 밤만 되면 영하 10도까지 떨어지는 날에 밤새 여기 있으면 내일 무슨 일이 일어날지도 몰라.’

분명 쓸데없는 오지랖이란 걸 알지만 유진은 다시 방향을 틀어 남자가 있는 곳으로 걸어갔다.

“왜 아직도 안 돌아갔어요? 가족은 없어요? 전화번호는 알아요? 제가 대신 연락해서 데리러 오라고 할게요.”

남자의 앞에 우뚝 멈춰 선 유진이 맨 처음 내뱉은 말이었다.

그때, 남자가 천천히 고개를 들어 올리며 텅 빈 두 눈으로 그녀를 바라봤다. 하지만 여전히 입은 굳게 닫혀 있었다.

유진은 문득 이 남자가 그 무엇도 신경 쓰지 않는다고 느꼈다. 심지어 그게 그의 생사였어도 말이다.

유진은 잠시 옥살이를 하던 자신을 보는 것 같았다. 그 당시 그녀에게는 모든 것이 암울했고, 캄캄한 잿빛 세상 속에서 아무런 희망도 없이 살아가던 그때의 자신을.
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邪悪な女神
「あ~、夏休みだってのに補習なんて行きたくねぇ……」 俺――黒川 夜(くろかわ よる)は、照りつける太陽の光に目を細めながら、不満を漏らす。 高校2年の夏。数学のテストで壊滅的な点数(詳細は国家機密)を取ってしまったせいで、愛川かえで先生から補習を言い渡された。  しかも、俺だけじゃなく、同じような犠牲者があと3人いるらしい。教科ごとに分かれているせいで、各担当教師との二人きり。地獄のマンツーマンコースを強制されることに。 俺が通ってる白新高校は進学校。勉強はそこそこできるという自負がある。だが数学……てめえはダメだ。  数学とか、人生のどこで使うの……って思っちゃう。「まあ、言い訳だけどさ……はぁ……」 20分ほど歩いてようやく学校に到着。  ワイシャツの下に着ている母親がスーパーで買ってきた安物の肌着が、じっとりと汗を吸って気持ち悪い。 しぶしぶ机に教科書とノートを広げ、適当に漫画を開いて時間を潰していると── ガラガラガラッ…… 教室の扉が開く。 入ってきたのは愛川先生。そしてその後ろには……見知らぬ、異様なほど美しい金髪の女性。透き通るような肌、完璧な顔立ち、モデルどころかこの世のものとは思えないレベルの美貌。彼女は微笑みながら先生の肩にそっと手を置いている。 ……いや、先生の様子、おかしくね? 目の焦点が合っておらず、俺を見ているようでどこか別の場所を見ているみたい。 みんなからかえでちゃんの愛称で親しまれている彼女。栗色のショートカットに、教師らしいスカートタイプのスーツ姿。小動物を思わせる小柄で可愛らしい印象の先生が、なぜか今日は化け物のように感じてしまう。「黒川ぐん……ぎょうヴぁ補習し、じます。頭の悪い子はいでぃまぜん!」 ヨダレを垂らしながら、危ない薬でもやってるんじゃないかってくらい瞳孔が開いた目で俺を睨みつける愛川先生。その姿に、背筋がぞわりと粟立つ。「な、なんかやばくね……?」 絶対におかしい。あんなのかえでちゃんじゃない。  幸い、俺は窓から遠く、出口に近い席に座っている。逃げるなら今だ。自分の感覚を信じて席を立つ。  そして、一目散に走りだ……そうとした。「あら、補習はまだ終わっていませんよ?」 透き通った声が教室に響く。琴の音のように美しく、まるで脳に直接響くような、そんな声が。  金髪の
last updateLast Updated : 2025-01-27
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気絶
 どれくらい時間が経ったのだろう。  まぶたの裏に、ぼんやりと光を感じる。 そうだ、俺は補習中だったはず……。  そして、金髪の美女に触れられた瞬間、気を失って……。 意識があるんだから、俺はまだ生きてるんだよな。 いや、待て。この感覚、なんか分かるぞ。 ──夢だ! 漫画読んでて寝落ちしたに違いない! 安心しながら、ゆっくり目を開ける……というより、目を覚ますのほうが正しいか。あんな美女、想像の中でしかありえないもんな。ははは……。「は?」 目の前には、何もない光に包まれた世界が広がっていた。  地面もない、壁もない。ただ、眩い光の空間。  そんな中で、どういう原理か分からないが俺は立っていた。   「あれ、俺やっぱ死んだ?」 両手はある、足もある、服も着てるし声も出る。  これが天国ってところなのかな。「おーい、誰かいませんか~? さとしおじいちゃーん!」 大好だったさとしおじいちゃんなら、きっと天国でたくさん友人を作って楽しく暮らしているに違いない。もしかしたらと思った俺は、死んだ祖父の名前を呼んでみた。  しかし、返事はない。その時、背後から声がした。「あら、目が覚めたんですね?」 ──あの美女の声だ。  優しく、心に染み渡るような、俺にとっては生まれて初めて恐怖を感じた声だった。 背筋が凍る。全身が勝手に震えだし、汗が一気に噴き出す。 今回は体の自由は奪われていないようだ。なぜか振り返ろうとする体を全力で否定し、前に向かって走りだす。 光の中を走る。 どこまでも、どこまでも、後ろの恐怖から逃げるために。 心臓が痛い、呼吸が乱れる。 それでも走る。 もう限界だと思ったその時、前方にひときわ強く輝く光が見えた。「で……出口か!?」 最後の力を振り絞り、光へと飛び込む。「あら、いらっしゃい」 そして、俺は膝から崩れ落ちた。世界中の男性を魅了してしまいそうな美しい笑みを浮かべた金髪の美女が、まばゆい光の中から現れたのだ。「体育の補習ではなかったはずですけど、体を動かすのが好きなのかしら?」 美女は口角を上げ、くすりと笑う。「はぁ……ぜぇ……はぁ……ぜぇ……。な、なんですかあなたは?」 もう走れない。逃げれないのなら、対話を試みるしかない。全身の力が抜けるのを感じながら、俺は問いかけた。「あ
last updateLast Updated : 2025-01-27
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異世界転移
「さて、説明してもいいですか? 嫌と言われてもしますけどね」 相変わらずの微笑みを浮かべたまま、女神は話を続ける。 どうやら俺はグリードフィルという異世界へ行かなければならないらしい。そこには巨大な大陸があり、魔人族・獣人族・人族・巨人族の四つの種族が、それぞれ独自の国を築きながら暮らしているそうだ。  ただし、種族間の争いは絶えず、国境付近では小規模な戦争が常に勃発している。そして現在、各勢力の力関係はほぼ拮抗状態にあるとのこと。  俺は人族として転生し、4つの国を統一する手助けをしなければならないらしい。「あなたには人族として転生してもらい、四つの国を統一する手助けをしていただきます」「……いやいや待て待て、俺が? どうやって?」「それはあなた次第ですよ。方法は一つではありませんから、好きにやってください」 完全に他人事のような口ぶりだ。おまけに、めちゃくちゃ大変そうな役目を押しつけられている。「ちなみに、言葉は?」「通じるようにしてありますので、ご安心ください。あなたの得意なギャグも、ある程度は現地の言葉に変換されて伝わりますよ? 面白いと思われるかは分かりませんけどね」 おい、この女神……俺のことバカにしたよな?「ちなみに断ったら?」「断れませんよ?」 女神はくすくすと笑いながら言う。。「ここから先は強制です。あなたが異世界で何もしなくても、寿命が尽きれば終わり。逆に、統一に成功すれば、あなたを元の世界に戻し、補習に復帰させてあげます」「戻るだけかよ……」「それと、ちょっとだけ知能レベルを上げてあげましょうか? そうすればもっと面白いギャグが言えるようになるかもしれませんよ?」「……絶対バカにしてるだろ」 じろりと女神を睨むが、当の本人は涼しい顔だ。「さて、それじゃあ転移の準備をしましょうか。外見はそのままに、グリードフィルで生きていけるよう属性を身に宿した体に作り変わります」 次の瞬間、俺の体が光に包まれる。眩しさに目を細めながら、ふと気づく。 ──服が変わってる!? 麻を編んだような、通気性の良い長袖の上着とズボン。まるでファンタジー世界の農民みたいな格好だ。  控えめに言ってダサイが、まあしょうがないだろう。「さあ、これで異世界転移の準備は完了しました。向こうの生活に合わせて、服装も少し変更しておきまし
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新生活
「それでですねー、新しい世界ではレベルとステータスという概念が存在します」 女神がさも当然のように言う。 なに、ステータスだと!?  ゲームとかでよく見る、あの!?  もしかしてこれ、ちょっと面白いんじゃね!?  俺、ラッキーか!? ワクワクしながら、勢いよく叫ぶ。「ステータス!!」 その瞬間、脳内に数値が浮かび上がるような不思議な感覚が広がっていく。 黒川 夜  レベル:1  属性:闇 HP:10  MP:10  攻撃力:5  防御力:5  敏捷性:5  魔力:5 装備  ・村人の服  ・村人のズボン  ・麻紐のベルト  ・スーパーの肌着  ・クマ模様の靴下(水色)  ・スーパーのボクサーパンツ  ・薄汚れたシューズ(学校指定)  ・麻の袋(大銀貨30枚) スキル  ・シャドークロー レベル1「おぉ……」 目の前に広がる数値の羅列。  これは現実世界では味わえない感覚だ。 装備の下のほうは見なかったことにしよう。  クマ模様の靴下とか、異世界に持ち込むアイテムじゃないだろ俺……。 興奮を抑えきれず、ガッツポーズをしていると──「あら、話は最後まで聞いてほしかったのですが」 女神が微笑んでいた。「ステータスを確認するときは、声に出さずに念じるだけで大丈夫ですよ?」「……あっ」「だって、そんな大声で『ステータス!!』なんて叫んでいたら恥ずかしいじゃないですか? みっともないですよ、黒川さん」 言い方よ……。完全にバカにしてるだろ。「ちなみに、人族の成人男性の平均的なレベル1のステータスは、HPとMPが100、その他の能力値は25程度でしょうか」「……え?」「黒川さんは転移者ですから、少し優遇されているはずなのですが……どうでした?」 ちょっと待て。何か、聞き捨てならないことを言われた気がする。「あの、俺のステータス……かなり低いような気がするんですが……?」 まさか、何かの間違いか?  おかしいだろ。女神の言う通りなら、もっと凄い数値が出るはずだ。「どれどれ、見てみましょうか……」 女神が俺のステータスを覗き込む。「あらら、あらー。あぁーらららら。……ぷぷっ」「今笑ったよな?」 あらあらっておい……。  異世界転生とか転移ってアニメとかでたまに見るけど、大丈夫なの
last updateLast Updated : 2025-01-27
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スライム
 近くの茂みが揺れる音が耳に入った。  警戒しながら茂みを注視していると、地面をズリズリと縦横無尽に変形させながら、こちらへ向かってくる物体が見えた。「スライム!?」 そう、あのスライムだ。  流動性の体を持ち、丸く半透明な姿に中心部のコアが輝いている。  どうやら体内に何かの植物を取り込んでおり、ゆっくりと消化しているらしい。  動きは鈍く、危険性も低そうに見えた。直径はバスケットボールより少し大きい程度。「いけるかな?」 手に持っていた石を思いっきりスライムに投げつけた。 ビュッ! バチュン! 核を狙って投げたはずの石は、スライムの表面から約5cmほどのところまで食い込み、そのまま地面に落下。  すると、攻撃を受けたと認識したスライムは、頭頂部を地面側に凹ませ、勢いよく体を伸ばして体当たりを仕掛けてきた。その体当たりは、時速約120kmにも達するかのようなスピードで、直径40cmほどの体液で満たされた球状の物体として突進してくるのだ。「ヒッ……!」 運よく体に掠ることなく、反射神経のみで体当たりを交わすことに成功した……が、直撃していたら5歳児程度のステータスでは大怪我をしていた可能性がある。人生で初めて冷や汗をかくという経験をした。と同時に、思考を停止し一目散に逃げだす。「もっと距離が近かったら、とんでもないことになってた……」 まずはモンスターの脅威を再認識し、どうにかスライムを倒せる作戦を練らなければならない。  あまりにステータスが低いため、人族の成人男性なら力任せに踏みつけるだけで倒せるであろうスライムが、俺にとっては強敵そのものなのだ。  ちなみに、女神が特典かなにかで授けてくれたのか、俺の頭にスライムの情報がある。モンスター図鑑てきなやつかもしれない。  スライムはその核を破壊すれば、体液に含まれる消化能力が消滅する魔力生命体だという。この世界では常識のようだが、俺には到底信じがたい話だ。  ……知らない知識を当然のように知ってるって、なんか怖いね。「近づくと体当たりが来るから、遠くからなんとかしないと……」 周囲を見回すと、ひらめいた。  小石で5cm程度しか削れなかったのなら、樹上からもっと大きな石を落として、核ごと叩き潰せばいいんだ。  俺は直径20cmほどの石を拾い、木に登ってスライムの待ち伏せ
last updateLast Updated : 2025-01-27
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シャドークロー
「しっかし、せっかく魔法の世界でスキルが使えるっていうのにさー。木の上から飛び降りて踏み潰す方が強いってどうなの?」 辛うじて成功したとはいえ、先ほどのスライム討伐は苦い記憶だ。ぼそりと独り言をつぶやきつつ林を散策していく。危険を冒す気にはなれず、視界の悪い木々の間ではなく、少し開けた小道をキョロキョロと周囲を観察しながら進む。  あのとき、着地に失敗して足を骨折し、もしあのスライムに完全に捕まっていたら……。じわじわと消化されていたかもしれないという事実には、どうしても目を背けたくなる。「シャドークロウねぇ。どうしたものやら。もしかして、木は切れなかったけどモンスターにはすんごく有効な属性だったり?」  ふいに芽生えた謎の可能性に、わずかばかり心を躍らせる。再びスライムに遭遇すれば、今度こそ俺の『唯一の闇属性』が輝くかもしれないという、無茶な期待を抱いてみたのだ。(体をへこませたら体当たりが来ると予測できるし、一回くら試してみてもいいかも……) 樹上からのとんでもない滑落事故なんて、もう水に流してしまおう。鼻歌交じりに楽観的な気持ちで林の中をどんどん歩いていく。周囲には相変わらず樹木しか見えず、街がどこにあるのかも全く見当がつかない。 そして、増え続ける空腹感に耐えきれなくなったその時、ふと肉厚な葉を持つ一本の樹木が目に留まった。「実の生ってる木も見当たらないし、いっちょこれ、つまんでみますか? ほんのちょっと食べて具合が悪くなったら捨てればいいし。うん、それでいこう!」 ここが異世界だという事実を完全に忘れてしまえば、葉っぱに毒がある樹木なんてそう多くはない。猛毒の恐れを無視した黒川式毒見方法を考案し、少しかじってみる。「おや? レモンの皮のような風味に、甘みは無いが酸味はある。食べれなくは無い……かもな。一発目で当たり引いちゃったかこれ?」 もし本当に猛毒が含まれていたとしたら、1時間ほどで効果が出るだろう。食べかけの葉と、追加で10枚ほど千切ってポッケにしまった。  腹が減ったらどうせ死ぬしと、自嘲気味に笑いながら。 ……そのまま歩き続けて5分くらいたったかな。  うん、こりゃ毒だ。間違いない。「唇と口の中と、葉っぱが通ったであろう内臓の至る所に痒みが生じているな。よし、この葉はカユカユの木の葉と命名し、捨てよう!」 かぶれ
last updateLast Updated : 2025-01-27
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新たな敵
 かすかな振動とともに、シャドークローが触れた部分の汚れや埃を落としていく。なんと、木登り中についた汚れが、シャドークローの微妙な摩擦で綺麗になっていくのだ。  スキルを解除して左腕に手を触れると、なんともスベスベになっており、角質さえ削ぎ落としているようだった。「これは街で美顔マッサージ店なんて出したら流行るかもしれない……。って! なんだこの使い方は! 美容じゃなくてモンスター退治に役立てよっ!」 あまりの情けなさに落ち込んでいると、お腹が痛くなってきた。  先ほど食べたカユカユの木の葉の影響だろう。「いたたたたたた……。出るぞこれは……!」 すぐさま茂みに入り、周囲にモンスターがいないことを確認。身構えながら用を足す。   だが、トイレットペーパーなんてあるはずもない。仕方なく、近くの大きめの葉っぱで尻を拭こうと試みたその時、ふとひらめいた。シャドークローなら、手で直接触れずに尻が拭けるんじゃね……と。(右手 シャドークロー) ジジジジジジジ…… 葉っぱで拭くと切れる可能性があるし、面積が狭いから最悪な状況になる恐れがある。  しかしシャドークローなら汚れも綺麗さっぱり。紙で拭くよりいいかもしれない。  ……そう、これはもはやウォシュレット。  シャドークロー改めウォシュレットクローだ!「これはいい使い方を思いついたぞ! ……って、こんなんでいいのか?」 自身のスキルの不甲斐無さに、素直に喜べなかった。「まずいな。日が暮れてきたぞ」 野宿をしてたらスライムに溶かされて死んじゃってました……では済まされない。  最悪な未来を想像し、夜に怯え始める。  早急に街を見つけるため、オレンジ色に染まり始めた森の中を早足に進んでいく。 この世界にも夜はくるらしい。とうぜん夜行性のモンスターも存在するだろう。  視界の悪い夜は、昼間とは危険度が大幅に違う。 女神が言っていた通り、この辺りは人族成人男性基準では危険なモンスターも少ないはずだが、5歳児レベルの俺には到底太刀打ちできそうにない。  半日以上も食事を取っていないうえ、水分もほとんど摂っていないため、体調はかなり危うい状態だ。「……いや、どうすんだこれ?」 やがて、辺りは漆黒の闇に包まれてしまった。自分の手のひらさえも見えないほどの暗闇。  木々の隙間からも、かすか
last updateLast Updated : 2025-01-27
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ミドルハウンド
 暗闇でギラリと光る赤い瞳がこちらを見つめている。距離は5メートル以上も離れているが、油断はできない。  俺のステータスは5歳児並みらしいからな。走って逃げたところで、アニメみたいに尻を噛まれる。  いや、それですめばいい。捕まったら間違いなく食い殺されるだろう。生きたまま食われるなんて考えたくもない。(犬と対峙した時は、目線を逸らしてはいけないって本で読んだことあるな……) 精一杯の睨みを効かせながら、ゆっくりと後ろに下がっていく。(右手 シャドークロー) 万が一のためにスキルを発動させる。すると、その瞬間、先ほどまで数歩先も見えなかった視界が驚くほど広がった。  もちろん、夜の闇は変わらない。しかし、まるで月や星の光が増したかのように、しっかりと目の前のミドルハウンドの姿が掴めるようになった。 昼に比べても半分ほどの視界の広がりだ。  その変化に驚きながら、思わず声を発してしまった。「え!?」 その声を皮切りに、ミドルハウンドが一気に距離を詰めてきた。「うわああああ!」 俺の喉元を目がけて獣が飛び上がる。  牙を突き立てようとした瞬間、とっさに右手のシャドークローを前に突きだした。 ズジュウウウウ! 痛みを覚悟して目を閉じてしまったが、自分の身体が無事であることに思わず驚く。  恐る恐る目を開けると、目の前には首から上を失ったミドルハウンドが横たわっていた。「やった! やはり俺のスキルはモンスター用だったんだ!」 命の危機を回避した俺は安堵し、その場にへたり込んでしまう。  同時に猛烈な空腹感に襲われた。「これ、食べちゃおっか……」 右手のシャドークローを当てると、昼間の光景が嘘のようにモンスターの体を切り裂いていく。  自炊経験はないが、なんとなく皮や骨を削ぎ落とし、可食部を切り分ける。  右手にシャドークロー(ナイフ)、左手にフォーク(素手)。テーブルマナーなど無視だ。さっそく生肉を食べてみた。(この獣臭さがジビエってやつか? 臭すぎるけど、空腹よりはマシだ。吐くのを我慢すれば、なんとか食えるな) 血がしたたる生肉のおかげで、飢えと渇きをしのぐことができた。「百獣の王黒川……ってか?」 レバーの部分を口に含み、得意げにニヤリと笑う。  命のありがたみを嚙みしめるとき、ライオンさんもこんな気持ちなんだろ
last updateLast Updated : 2025-01-27
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初めての異世界人
 もう空が明るい。遠くに朝焼けが見える。 さすがに歩き続けて足が棒のようだ。半日も動き続けていたら当然か。 ちょっと先の木々の合間に、座って休めそうな倒木がある。周辺は少し開けていて、辺りを見渡すことが出来そうだ。 少し腰をおろしたところで罰は当たらないだろう。この森を抜けるまで、まだまだ俺は歩き続けなければならないのだから。「あ~、疲れた。限界だよもう」 倒木に座ろうとしたら、ひざが言うことを聞かない。体を支えることを放棄して、ドサッと崩れ落ちてしまう。 太ももが、足の裏が、じんわりと蓄積した疲労を訴えかけてくる。 なぜか背中まで筋肉が張っていて、上半身を丸めると楽になると気づく。 ふぅと息を吐くと、急激な眠気に襲われた。さすがにこの状況で寝たらまずいだろうな……。 朝を告げる鳥のさえずりが聞こえてくる。今の俺には子守歌だ。 木々の隙間から差し込む光が、寝るな寝るなと注意してくれてるみたい。(ステータス) 黒川 夜 レベル:2 属性:闇 HP:10 MP:10 攻撃力:5 防御力:5 敏捷性:5 魔力:5 眠気に負けないように、ステータスを開いてみる。「おかえり5歳児……」 残酷な現実を突きつけられた。 今の俺ではスライムにすら殺されるだろう。 先ほどまで張っていた気もショックで緩み、一瞬で眠りに落ちてしまった。********** ……ザシュ ザシュ ザシュ 何かの足音と、いつの間にか眠ってしまった自分に驚く。「うわっ!」 叫びながら眼を覚ます。 音のした方に目を向けると、同じような服装をした男性が斧を持ってこちらに歩いてきている。 長身でガタイがいい。40代後半くらいだろうか。自分とは違う緑色の短髪を見ると、異世界の人だなぁと感じてしまう。
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優しい人々
「なんじゃエミル、騒がしいのう……そのガキはなんじゃ?」 村長が俺を指さしながら目を細め、エミルさんに問いかける。彼の目には、少し不安そうな表情が浮かんでいた。栗色の瞳に口元とあごに長い白髭をたくわえた老人だ。「村長、こいつはラカンの森で迷子になってたんだ。どうやら記憶喪失らしく、自分の名前くらいしか覚えていないらしい。しばらく村で世話をしてやりたいんだが」 エミルさんの言葉に反応した村長は、顎の下のひげを撫でながら、眉を落として深い思索に沈んでいく。顔には深いしわが刻まれているが、その瞳はまだ若々しく輝いていた。  せっかく紹介してもらったので、それに続く。「ジョール村長、お初にお目にかかります。俺はヨールといいます。この村で食事がとれる場所と宿を紹介していただけますか? あと、何も分からなくって……。この世界の常識やお金の稼ぎ方、近くの街などの情報も教えて頂きたいのですが」 俺は、グリードフィルで生きていく上で必要なことを聞く。  ふむふむと口の周りのヒゲを動かし、村長はゆっくりと語り始めた。 女神の話していた通り、この世界には4つの大きな国が存在し、北に巨人族の国アトラストリア、東に魔人族の国デモネシア、西に獣人族の国ビーストリア、南に人族の国ヒューマニアがあるという。  ジョール村はヒューマニアの南西に位置しており、なんと自分が通ってきた森の道を逆方向に進むと、この辺りの領主が治める少し大きな街、レギンの街に着くのだとか。  なんでも、レギンの街には冒険者ギルドという何でも屋の集まりみたいな場所があるらしい。そこで日銭を稼ぐこともできるようだ。「2週間後にレギンの街へ税として穀物を収めに行くんじゃが、その時について来てもええぞ。この村には食堂や宿なんかは無いからエミル、お前のところで世話してやりなさい」 村長が見ず知らずの俺なんかにメリットしかない提案をしてくれた。この世界に来てから、優しい人ばかりだ。  仕事を斡旋してもらえるかもしれない。とりあえずは冒険者ギルドで話をしてみようと思う。「分かった。このヨールは、変な奴だが悪人ではなさそうだ。村のみんなにも、俺
last updateLast Updated : 2025-02-12
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