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桜立風
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Novels by 桜立風

極道と、咲き乱れる桜の恋

極道と、咲き乱れる桜の恋

強い悲しみを背負う極道  西龍会 若頭 西門龍之介にしかどりゅうのすけ33歳 ✖ 逃げてきた訳あり風俗嬢 滝川桜たきがわさくら23歳 父親の借金のかたに風俗店に売られ、客を取らされそうになって逃げてきた桜が迷い込んだのは、その風俗店を取り仕切る極道の敷地だった… ぶつかった拍子にアスファルトに叩きつけられ、怪我をして絶体絶命の中…桜は、若頭である龍之介の住まいへと連れて行かれる。 風俗店からは逃げてきたけれど、結局知らない極道に自分の心も体もいいようにされるのだと、桜は絶望するも…2人は意外な朝を迎える。 面白くないのは、風俗店を取り仕切る若頭補佐の弟、蔵之介。 それは、龍之介の勝手な振る舞い、売れそうな風俗嬢を持っていかれた怒りだけではないようで… 匿われるうちに知る、龍之介の悲しみの理由と決められていた未来。 暗い生い立ちのなか生きてきた桜に、初めて芽生えた恋心は…龍之介の心は。 それぞれの背負う生い立ちと、出会ってしまった2人の切ない恋のゆくえを描く極道恋物語。
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Chapter: 54.家政婦として
「はじめまして。滝川桜と申します」鹿威し《ししおどし》の特徴的な音にビクッとしてしまう。……深く頭を下げた桜の隣には、龍之介、そして麗香がいる。「……家政婦か」「はい。うちのゴタゴタに巻き込んでしまったお嬢さんです。今外へ出すのは危険なんで、うちで働きながら時がすぎるのを待つことに」龍之介が説明したのを合図に、麗香が桜に頭を上げるよう小声で伝えた。テーブルのない広い和室。龍之介や蔵之介によく似た男性が、腕を組んでこちらを見ている。切れ長の鋭い目、高い鼻……年齢相応の渋みまで加わって、桜はこんなに美しい中年男性を見るのは初めてだと思っていた。「桜さん、と言ったか」「は、はい」「うちがどんな家業かはご存知か」桜はコクンとうなずきながら答える。「存じております。……今回、私の父親もご迷惑をかけておりまして」「そうか。私の信条として、外の世界の方はうちにはあまり関わらない方がいいとしてきた。……だが、何やら事情がありそうだな」そこへ、シャッと襖を開ける音。「組長、ただいま戻りました」背後から聞こえる声は、蔵之介だ。「この子のことは、俺に任せてください。屋敷にいる間も、晴れてここを出てからも」視線を落とした目の端に、龍之介と麗香の指先が映る。2人とも、ギュッと拳を作った。「いいだろう。……ただ、」組長は蔵之介に返事をして、改めて桜に目をやる。「君は、とても似てるなぁ。……百合さんに」龍之介、蔵之介、そして麗香に順に視線を送り、組長は立ち上がった。襖を開けると、そこに女性がいる。それは初めてこの屋敷に来た時会った、龍之介と蔵之介の母、そして組長の妻だ。目が合って、頭を下げる桜に会釈を返し、組長の後を追っていく。「……ったく、なんなんだろうな、この部屋の硬い空気は。緊張しかしねぇわ」蔵之介はその場にあぐらをかいて座り、龍之介は反対に立ち上がった。「あの、蔵之介さん……しばらくお世話になります。よろしくお願いします」正座のまま蔵之介に向き直り、頭を下げた。「うん。わからないことは俺に聞いて。……ほら、この2人は結婚式の準備で忙しいから!」「……はい、ありがとうございます」隣にいた麗香も立ち上がり、龍之介の隣に行く。……が、龍之介が動かない。「なに、寄り添っちゃって。……先に行けばいいじゃん」「蔵之介も早く出ろ。こ
Last Updated: 2026-04-12
Chapter: 53.龍之介の部屋で過ごす最後の夜
「……何もかもを、捨てられたらいいな」リビングを掃除していた桜を自分の部屋に入れ、改めて抱きしめる龍之介。「でも……皆さん困りますよね。龍之介さんがいなくなったら」「皆さん……か、」ふふ…っと笑う龍之介に、少しだけ抗議したくなって見上げれば、優しい視線にとらわれて、動けなくなる。「2年で、何とかする」「……2年」「志田川組の強化と独立をさせて、麗香と離婚する。……西龍会若頭は、蔵之介に譲る」こういった組織を抜けるのは、決して容易いことではないと聞いたことがある。それは……映画やドラマだけの話なのだろうか。「待てるか?」甘い視線に、わずかな不安が宿るのがわかった。……強さと美しさを兼ね備えた龍之介のような人が、自分をそんな目で見るなんて、改めて信じられないと思う。「待ってます。……ずっと、龍之介さんだけを思って生きます」真剣に伝えたのに、フッと軽く吹き出すなんて……ちょっと意地悪が過ぎるような気がした。「笑ってごめん。可愛くてな」頬に指先を這わせ、優しくなでる龍之介。「俺は……お前しか抱かないから」「でも……」「お前以外無理だろうし、その気になれるはずがない。だからお前も、俺以外に触れさせるな」本当にそんなことが可能なのだろうか。正直なところ、いくら形式的な結婚だとしても、子供を望まれることは十分考えられる。麗香が、というより組織が、跡継ぎを望んだとしたら……そこまで考えて、胸が激しく痛んだ。……嫌だ。龍之介がほかの女性に触れるなんて、絶対に耐えられない。自分から龍之介の胸に飛び込み、広い背中に腕をまわす。ありったけの力を込めて、しがみつくように抱きしめた。気持ちを理解してくれたのか、抱きつく桜を包み込むように腕のなかに閉じ込める龍之介。「本当は、お前を家政婦として働かせたくねぇよ。だが志田川組も出入りするようになって、全員に役割が必要なんだ」自分のような若い女が、役割も持たずに屋敷をうろついていれば……龍之介や蔵之介との関係を想像させてしまうということだろう。「わかってます、大丈夫。……何もしないでお金をもらうようなこと、私にはできないので」「あぁ。桜らしいな」「頑張って、この屋敷を綺麗にしますね」ビー玉のような瞳で見上げる桜の頭をクシャと撫で、髪に、おでこに……キスを落とす龍之介。やがて貪るように桜の唇を
Last Updated: 2026-04-11
Chapter: 52.麗香からの話と桜の覚悟
「……意外と女らしい部屋でしょ?」龍之介の部屋に帰った桜を訪ね、麗香は自分の部屋に彼女を招いた。「意外と、っていうわけじゃないですけど、女性らしい落ち着いた部屋ですね」おしゃれな家具と観葉植物、見たことのある絵画が壁を飾っていて、上手にベッドを隠している配置は素敵だと思った。この部屋でもお茶の用意ができるようで、麗香は香り高い紅茶を淹れてくれた。「どうだった?齋藤専務は」「あ……落ち着いた大人の方で、あの…私みたいな人の手助けをするボランティアをしているって言ってました」知ってるはずの情報を改めて伝えてしまった……麗香は嫌な顔ひとつせず、優しくうなずいてくれる。「桜ちゃんは、しばらくここで働いたらいいと思う。……龍之介は自分の専属家政婦とかバカなこと言ってたけど、そうじゃなくて、屋敷の家政婦として」「……はい、ありがとうございます」美紀に借りたお金を奪われて、返金しなくてはならない。だから仕事をしてお金を得る必要があった。けれど外に働きに行くことは、龍之介や麗香だけではなく、西龍会に迷惑をかけることになりかねないと……さっき自覚したばかりだ。「わかってくれて嬉しい」それとね……と、紅茶をひとくち飲んで、麗香が続ける。「結婚式の日取りを、決めることになったの。私……龍之介と結婚する」「……はい」「愛があるわけじゃないよ。お互いの組のため。……っていうか、どっちかって言うと志田川組が助けてもらうためかもしれない。だから私は、龍之介と結婚する必要があるの」蔵之介のことを口に出すことは出来なかった。こういう決断をしたということは、必然的に諦めたということだから。「それからこれは……桜ちゃんにしか言わないけど」迷いを含んだ言い方に、桜の伏せた瞳が上がる。「龍之介は、計画的に私との結婚を終わらせるつもりでいる」「それは……計画的離婚のことですか?」「そう。龍之介は、2年かけて離婚するって言ってる。でもね、結婚したら……親が出てくるのよ。うちの父親、志田川組の組長が、娘婿になった西龍会の若頭を離すかどうか……」少しずつ、取り巻く環境に手足をとらわれる龍之介が見える気がした。「だから、離婚がそううまくいくかは、約束してあげられない」……返事はできなかった。それは仕方のないことで、自分に何かできるわけではないとあきらめるしかないのに
Last Updated: 2026-04-10
Chapter: 51.龍之介の想い③
麗香に言われて出かけた桜が屋敷に戻ってきたようだ。……遠目に俺を見て、立ち尽くしている。「帰りは夜になる」すれ違いざま声をかけると、弾かれたように、通り過ぎる俺を振り返る桜。…優しい視線を感じる。…しばらくして、今度は俺が振り返った。白いワンピースの裾を揺らし、薄茶色のロングヘアをなびかせて歩く桜を、俺は花を愛でるような気持ちで見つめた。……齋藤という松白屋の専務と会ってきたのだろう。麗香にそう言われたときは、ただの嫉妬が心に渦巻いた。まるでガキと一緒だ。「ちゃんと、話をしよう。龍之介」桜が出ていって、麗香に腕を掴まれた。まだ、桜との未来を諦めてはいなかった。この時は……まだ。「親に、式の日取りを決めろって言われてる」「蔵之介を諦めて……組のために俺と結婚するって決めたのか」「うん。決めた」……深いため息を漏らす俺に、麗香がこれ以上ない本音を打ち明けた。「やっぱり似てるから。蔵之介の面影を乗せて、龍之介を見てる。多分それで私…結婚生活やっていける」「俺は桜以外、抱けねぇぞ」本音に本音をぶつければ、麗香は諦めたような笑みを浮かべた。「適当に欲望を発散する手助けをしてくれたらいいわ」「そんなこと…ごめんだな」「…ひど」本気で言っているわけではないことはわかったが、俺がどこまで譲歩するか確認している気がした。「計画的離婚についてはどうだ?式を挙げて1年後までに志田川の組織を変えるつもりだ。うちの後ろ盾がなくてもやっていけるようにする」「…うちの組長がどう言うか…」「組織を強くして、文句なんかねぇだろ」タバコに火をつけ、唇の端で咥えながら続けた。「志田川組を独立させたら、さらに1年後までに、俺たちは離婚」「晴れて、桜ちゃんのもとに行けるってわけ?」「うちの組織と組員、蔵之介の力があれば可能な計画だ。お前に話をつけたら、うちの組長に伝えようと思っている」自分の質問に答えない俺を見上げ、意味深に笑う麗香。「……桜ちゃんを離さないつもり?」「どうしてそんなことを聞く?」「あの子のためにならないからよ」…それは何度も頭をよぎったことだった。離してやるのが桜のためで、自分のような極道のそばに置くことは、静かな幸せから遠ざけることだと…十分すぎるほどわかっている。過去……百合にも同じことをした。結果あいつは病気になり、
Last Updated: 2026-04-09
Chapter: 50.離れてゆく…?
「家庭環境に恵まれず、進学を断念したり夢を諦める若者の支援をしています」「そう…なんですか。あの、麗香さんとは……?」「松白屋のお客さまです。そのお付き合いで担当者が何度か櫻川へ行ってまして、あなたの美しさに魅了されたようです」意外な話の流れに、頬を染める桜。「いえ、私なんてまったくの素人で…お恥ずかしいです」「担当者が麗香さんにあなたの話を聞いて…私に伝えてきました。それで、あなたを指名して櫻川へ行ったのですが…」担当者は、齋藤がボランティア活動をしていると知る、数少ない人物だったそうだ。桜はちょこんと頭を下げる。「すみません。私は櫻川に出なくなったあとでしたね…」齋藤は緊張をほぐすように笑った。「桜さんに支援が必要な時は、ぜひ連絡をしてください。私は社会的立場もあり、決して怪しいものではありませんから」「…はい」ありがとうございます…なんて言っていいのか。桜の迷いに寄り添うように、齋藤は明るく言った。「さぁ、冷めないうちにコーヒーとケーキをどうぞ」齋藤は、押し付けがましさがなく、終始落ち着いた紳士で、育ちの良さを感じさせる人という印象。そんな彼との間に不思議な縁があることがわかったのは、コーヒーを飲み終えた頃のこと。「櫻川の前は、どんな仕事をなさってたんですか?」「室井酒店というお店で働かせてもらってました」「……室井?」ふと考え込み、齋藤は愉快そうに言った。「もしかしたらオーナーは、室井昭仁…ですかね?」「え、昭仁さんをご存知なんですか?」「はい。大学の同期で、今も連絡を取り合ってますよ」携帯に収められた写真を何枚か見せてくれた。それはよく知る昭仁に間違いない。「恋人ができたって言ってたなぁ…」…美紀ちゃんのことだ。なんだかとても嬉しくなった。「一緒に働いていた女の子のことです。美紀ちゃんと言って、とても優しい人で…」「…そう!それならぜひ今度、4人で食事でもしましょう!」「はい、ぜひ!」2人に会えるとしたら、こんなに嬉しいことはない。坂上や父親が雲隠れしている今、1人で出かける事も2人に会う事も危険かもしれないが……。齋藤と別れ、屋敷に向かう。出てきた時と同じ裏門に近づくと、中にいた男性が桜に気づき、門を開けてくれた。「和哉さん、ありがとうございます」「おかえりなさいまし…桜さん」「あ
Last Updated: 2026-04-08
Chapter: 49.桜を支える人
「どうしてお前が勝手に決める……?」「櫻川を私に任せるって言ったのは龍之介でしょ?せっかく大企業の御曹司と接点ができたのに、これをビジネスに変えなくてどうするのよ」「その御曹司とやらに、どうしても桜を会わせると言うなら、俺も同席する」「だめよ」2人のやり取りをハラハラする思いで見守る桜。…龍之介さんにこんな風に意見ができるのは、麗香さんと…蔵之介さんくらいだろう。「龍之介が出ていったら、櫻川は西龍会と繋がってるって思われるわ。あの店は、もう私のものよ?西龍会とも志田川とも一線を引いた……私の店なの」そこまで言われ、さすがの龍之介も黙った。「確かに経営は譲った。それぞれの組がバックにあるなんて知られちゃあ、うまくないわな」こちらに視線をよこす龍之介に気づき、桜も隣にいる龍之介を見た。……どことなく悲しそうに見えるのは、気のせいだろうか。「桜ちゃん、裏の門から出て…大通りにある『川北珈琲』って店に行ってくれる?そこで齋藤専務が待ってるから」「はい…わかりました」そう答えたものの、そんな大企業の偉い人が、自分にどんな話があるというのだろう。「齋藤専務…すごくいい人よ。…とは言っても、坂上の裏の顔を見抜けなかったんだから、信用できないか…」裏門まで送ってくれた麗香が、桜の肩に手をかけながら自嘲気味に笑う。桜も曖昧に笑顔を返して、門を出ようとした時…「桜ちゃんは、もっと外の世界を知った方がいい」「……え?」「龍之介のことが好きな気持ちはわかる。……でも、あいつと一緒にいるってことは、わかるでしょ?普通の幸せから遠ざかることなんだよ?」もしかしたら、麗香さんは。「2人の邪魔をするつもりはない。でも龍之介は……最終的に私に任せて」「それは……どういう意味ですか?」「もう1人、支えてくれる人を作っておくの。龍之介と別れたあとに、支えてくれる……男を」返事を待たず、行きなさい…と、そっと背中を押された。若い衆の1人が飛んできて、門を開け、通してくれた。振り返った麗香の顔は…決して意地悪なわけではない。多分今の自分と同じような表情。どうしようもなく悲しくて、どこか諦めがまじって……さっき龍之介さんも、同じような表情をしていたっけ。喉の奥に涙のかたまりを秘めながら、桜は言われた通り大通りに出た。川北珈琲というカフェは、すぐに見つかっ
Last Updated: 2026-04-07
死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?

死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?

以前から見えていた。 上司の背中に大きなカマが背負われているのが… 「それ…危なくないですか?」 ある日指摘してみたら、血相を変えた上司が詰め寄る。 「いつから見えていた?誰かに話したか?」 そして有無を言わさずキスをしてきた… それは忘却のキス、そして私を操るキス。 「…何してるんですか、初めてのキスなんですけど!?」 「特異体質か。めんどくさい人間だ!」 身分を隠した上司の正体は、寿命が来た人間に、カマを振って冥界へと誘う死神。 他の人間とキスをされたら正体がバレると知った上司は、恋人になれと言って、同居に持ち込みました… 毎日せっせと繰り返されるキスは、やがて甘くなって… 死神✖人間の恋。 最後はどうなるの…?!
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Chapter: 26.蓮の食欲期
「……おはようございます。朝食、出来てますよ!」おにぎりTシャツのまま、キッチンから顔をのぞかせる鮫島。バターの甘い香りはフレンチトースト、コンソメの香りは野菜スープのようだ。「……すごい!これ全部鮫島くんが?」「いや、俺1人で作ったんじゃない。……なんて言ったら怖いよね?…ねぇ?!」「あはは!どうでもいい冗談!」朝から明るい2人を横目に、隙のないスーツ姿で部屋から出てきた蓮。「俺は先に行く」「え……梅干し、食べないんですか?」「今日はそんなにしょっぱい気分じゃないんだ」大股で玄関に向かう蓮を小走りに追う凛花に、蓮は苦しげに言った。「…あ、もしかして……食欲期?」「そうだ」クルッと凛花の正面を向いた蓮は、恨めしげに彼女を見下ろす。「今朝、鮫島の高らかないびきに起こされてな。ふと空腹を感じて冷蔵庫の非常食を食べようとした」「あ………それ、」「あぁ。見事に食べ尽くしてくれたようだな。愛しい凛花」腹いせのつもりで食べてしまったバタークッキー、そしてアイスクリーム……ごめんなさい……と素直に謝りながら、慌ててキッチンを指さした。「だったら、鮫島くんが作ってくれたフレンチトースト食べていけばいいじゃないですか!甘い香りがしてましたよ?」「いや。男の手料理は口に合わん」言いながら、凛花の腰を素早く引き寄せる蓮。「非常食がないのなら、凛花を食べることにしよう」「は…っ…むぅ、うぁ…ん」まさに食べられそうな勢いで、唇をふさがれる凛花。同時に腰に回った手が下に伸びていく。やだ……冗談でしょ?私を食べるって、アダルトな意味?!鮫島くんがいるのに、こんなところであられもない姿になるわけにいかない!必死に大きな手から逃れようとするのに、蓮は容易く凛花の動きを封じる。キスは次第にはじめの勢いを失い、代わりにねっとりと、エロスを感じさせてくる。中指がお尻の間をなぞり、もう片方の手が胸元を探った。この死神……本気だ。鮫島が自分たちの雰囲気を感じないはずはない。必死に蓮の胸を押して、やっと離れた。ゼイゼイと息の上がる自分とは違い、今すぐ玄関を出ていっても平気なくらい、冷静な蓮。あ……ダメだ。それなりに反応しているのがわかる。「あの、鮫島くんが同居してることを忘れないでください」「忘れてないが」「だったらわかるでしょ?人がいてこ
Last Updated: 2026-04-12
Chapter: 25.鮫島が同居?!
「…火事?」「うん。…焼け出されちゃったんだよ」なんだか既視感がありすぎる…同じ思いをしたので、やって来た鮫島を追い返す事も出来ない。そこで、彼を部屋に上げる事にした。「それにしても…もう少し、なんか持てなかったの…??」焦って出てきたのがわかる鮫島の格好…両手に抱えてきたのは、枕とパソコン…そして服らしき布切れ。「…頑張ったんだけどさ…!とりあえずその辺に散らばってる服をつかんで…気づいたら逃げてた」その中にスーツがひと揃いあったことは奇跡だと、鮫島は笑った。「ところで、課長は?」「あ、今…ちょっと出かけて…」「そっか…家主がいないときに上がり込んで、悪かったかな」ふと…鮫島から焦げ臭い匂いが漂うのを感じた。焼け出されて逃げる時、煙に巻かれたのかもしれない。「…そんなのいいよ。私とは同期で、部長とは上司と部下なんだから…」「そう…かな」「それより、お風呂に入ったら?鮫島くん、焦げ臭いよ?」そう言われて遠慮するわけにもいかず、鮫島は案内されるままバスルームに消えた。「はらい〜せよ〜かんなら〜ばったぁ〜ほいっ!」しばらくして聞こえてきた歌は、外国語なのだろうか…意味はわからないが、鮫島の陽気な歌声は、とても焼け出された人とは思えなかった…『…本日18時過ぎ、М区S町のマンションから火が出て、3時間後に消し止められました』テレビをつけると、ニュース番組の映像に、煙と炎に包まれた知らないマンションが映る。「あ、これこれ!ここがうちのマンション!」いつの間にか風呂から出た鮫島が、バスタオルを腰に巻きつけ、背後に立っていた。「ボヤとかじゃなかったんだね。…本格的に燃えちゃって…これは戻れそうもないけど…」「うん。だから俺…いっそここに住もうかなって!」バスタオルを巻いた腰に両手を当て、なぜか清々しい決意表明をされた。…いや、私も居候だからいいともダメとも言えないけど。「…課長が戻ったら聞いてみて…って!近いっ!」振り返って立ち上がった瞬間、行く手をふさぐ鮫島。…そうだった。こいつはこういう不意打ちが得意だったっけ。「何をしている?」鮫島の背後、リビングの入口に、厳しい表情の蓮。そう…彼もまた、音をさせずに帰ってくる天才だった。「あの…鮫島くんが火事で焼け出されて…」「凛花には聞いていない」一歩近づいて説明する凛
Last Updated: 2026-03-31
Chapter: 25.鮫島が同居?!
「…火事?」「うん。…焼け出されちゃったんだよ」なんだか既視感がありすぎる…同じ思いをしたので、やって来た鮫島を追い返す事も出来ない。そこで、彼を部屋に上げる事にした。「それにしても…もう少し、なんか持てなかったの…??」焦って出てきたのがわかる鮫島の格好…両手に抱えてきたのは、枕とパソコン…そして服らしき布切れ。「…頑張ったんだけどさ…!とりあえずその辺に散らばってる服をつかんで…気づいたら逃げてた」その中にスーツがひと揃いあったことは奇跡だと、鮫島は笑った。「ところで、課長は?」「あ、今…ちょっと出かけて…」「そっか…家主がいないときに上がり込んで、悪かったかな」ふと…鮫島から焦げ臭い匂いが漂うのを感じた。焼け出されて逃げる時、煙に巻かれたのかもしれない。「…そんなのいいよ。私とは同期で、部長とは上司と部下なんだから…」「そう…かな」「それより、お風呂に入ったら?鮫島くん、焦げ臭いよ?」そう言われて遠慮するわけにもいかず、鮫島は案内されるままバスルームに消えた。「はらい〜せよ〜かんなら〜ばったぁ〜ほいっ!」しばらくして聞こえてきた歌は、外国語なのだろうか…意味はわからないが、鮫島の陽気な歌声は、とても焼け出された人とは思えなかった…『…本日18時過ぎ、М区S町のマンションから火が出て、3時間後に消し止められました』テレビをつけると、ニュース番組の映像に、煙と炎に包まれた知らないマンションが映る。「あ、これこれ!ここがうちのマンション!」いつの間にか風呂から出た鮫島が、バスタオルを腰に巻きつけ、背後に立っていた。「ボヤとかじゃなかったんだね。…本格的に燃えちゃって…これは戻れそうもないけど…」「うん。だから俺…いっそここに住もうかなって!」バスタオルを巻いた腰に両手を当て、なぜか清々しい決意表明をされた。…いや、私も居候だからいいともダメとも言えないけど。「…課長が戻ったら聞いてみて…って!近いっ!」振り返って立ち上がった瞬間、行く手をふさぐ鮫島。…そうだった。こいつはこういう不意打ちが得意だったっけ。「何をしている?」鮫島の背後、リビングの入口に、厳しい表情の蓮。そう…彼もまた、音をさせずに帰ってくる天才だった。「あの…鮫島くんが火事で焼け出されて…」「凛花には聞いていない」一歩近づいて説明する凛
Last Updated: 2026-03-30
Chapter: 23.キスの約束と梅干し
「…ダメだ。そんなこと許されると思ってるのか?」 「でもあれもこれもダメじゃ、僕…いつか爆発して、課長の秘密を暴露してしまいそうです…」 肩を落とし、うつむく鮫島に、蓮は意外な事を言った。 「わかった。…君の要求を飲む。ただし、俺の前で、1週間に1度だけだ」 「本当ですか?…やったぁ〜!」 「え…?!ちょっと、どうしてそうなるの?」 鮫島の要求とはこうだ。 …たまに凛花とキスをする。 至ってシンプルながら、凛花の意向を聞かずにOKした蓮に不満が募る。 「…どういうことですか?週に1度のキスって、そんなことさせて、蓮さんは平気なんですか?」 スキップしながら鮫島が帰り、凛花は蓮をつかまえて、その真意を問い正した。 「…あいつが本当に俺の正体をバラしたり、誰かれ構わずキスしまくったら困るだろう?」 「でも、命を奪うって…」 「それはある意味脅しでしかない」 脅しだったとは…さすがに凛花も言葉が詰まる。 「人間の寿命を操作するなど、やってはならないんだ。…俺はすでに何度も、命の期限を延ばしてやるという違反行為を繰り返した。だからここにいるのだからな」 つらそうな表情になった蓮を見て、凛花は少し、寂しい気持ちになった。 …死神らしく振る舞わなかったから人間界に降りてきて、だからこそ私ども出会えた。 それは…嬉しいことではないのかな。 けれど私だって…言うことを聞かない人間を躊躇なく闇に葬る事ができる蓮を、愛しただろうか。 死にたくない、という人間の希望を無視できず、カマを降り下ろせなかった彼の方が好きなはず。 死を司る神なのに…どこまでも人間らしくて、微笑ましい。 「…クセが強くておかしな言動を繰り返す蓮さんが好きです」 「…いきなりどうした?」 「私の…人間の常識をすっ飛ばすし、ちょっとナルシストで裸を見せたがるけど…やっぱり好きです」 「…クセが強いとかナルシストとか。まさか俺が…?」 表情が、少しずつ明るくなる。 私に好きだと言われて嬉しいなら、私はもっと嬉しい。 「悪口を言われているのか愛の告白なのかわからないが…」 「大好きです」 「愚かだな…そんな可愛いことを言って、ただで済むと思うなよ?」 手を引いて膝に座らせ、凛花の唇をふさぐ蓮。
Last Updated: 2026-03-28
Chapter: 22.死神の嫉妬
『もしもし!?…何をしたんですかっ?』ガチャン…と携帯を取り落としたような音の後、凛花の慌てた声が聞こえる。「大したことはない。ちょっと火を噴いてやっただけだ」『…火って…っ!』「ムカつくから。俺の凛花にキスしやがって…」素直な言葉に、凛花の頬は赤く染まった。『別に、火傷のようなことにはなってないみたいですけど…どうするんですか?…延びちゃってますよ?』「今行くから」…次の瞬間、居酒屋の扉を開けた蓮。「…はやっ…」凛花はまだ携帯を耳にしたままだ。「外にタクシーを待たせてある。サッサとこいつを乗せよう」鮫島よりずっと背が高く、体格もいい蓮には、彼をタクシーまで運ぶなど楽勝のようだ。「…いいんですか?1人にして…秘密を漏らしたりしませんかね?」「…そうだった」結局3人でタクシーに乗り、蓮のマンションに帰り着く。ぐったりした鮫島を引きずって部屋に運んだので、彼の革靴には穴が開いた。「ど…どこに寝かせますか?」「リビングでいいだろう。ソファにでも横にして…」「待ってください!」凛花はソファの前のテーブルを片付け、そこに布団を敷く。「ソファじゃ、寝返りを打って落ちるといけないので…」自分の部屋から、大きな豚が万歳しているビッグサイズのバスタオルを持ってきて、横たわる鮫島に掛けてやる凛花。蓮は眉間にシワを寄せ…唇を噛んだ。「これ、凛花の匂いがするぞ?」「私の…?」不審げに、バスタオルの端を自分の鼻にくっつける凛花。「…別に、臭くはないと思いますけど」「バカめ。…お前の匂いとは、臭いではない。フェロモンだ。甘ったるくて、酔いそうな…」「どっちにしても、不快にさせません?」「させません。させませんけど、させてください…」凛花の手を取り、彼女の部屋に連れて行く。ワタワタと慌てる凛花の唇を、蓮は素早く奪った。灯る炎は、いつでも蓮から先につく。「ちょっと…待って…鮫島くんがいるのに!」「大丈夫。明日の朝まで起きることはない」起きたなら、見せつけてやりたい…俺の手で、色づく凛花の肌を。「バスタオルを掛けてもらったからって、特別だと思うなよ…」だらしない顔で眠っている鮫島の寝顔を思い出し、憎らしくその頬をギュッとつまむ妄想をしてから、蹴落とすように記憶を消す蓮。目の前の凛花を見て頬を緩め、ブラウスの裾から手を忍ばせ
Last Updated: 2026-03-27
Chapter: 21.めぐみに相談
「…そう、不意を突かれてキスをされて、背中のカマが見える人間が増えてしまったと…」「あぁ。こういう場合どうしたらいい?」「そうねぇ…こんな場面に直面した死神、初めて見るから…困ったわ」「お前、俺の指導係だろ、何とかしろ」めぐみのオフィスに押しかけ、事態を説明する蓮。腕組みをして立ちながら、つま先をイライラと鳴らす足を、めぐみがピンヒールの踵でギュッと止めた。「…いってっ…!」「こんな出来の悪い死神は初めてでね?すぐに対処法が思いつかないわよ」慌てて靴を脱いでつま先を確認する蓮。…まだ謝罪の言葉を言わない彼に、めぐみは白けた顔で言う。「とりあえずキスしなさいよ。忘却のキス」「男に…?冗談だろ?」「だったらそうねぇ…凛花さんにさせてみたら?」「…は?」背中にカマが見える、と言い出した鮫島を、とっさに連れ去った凛花。とりあえず酒を飲ませてうやむやにすると、連絡をもらったばかりだ。「あの…ごめんなさい」「やっとわかった?少しは学習しなさいよ?」人にものを聞く態度がなっていないと、めぐみがブチ切れてそう言ったのだと気づく蓮。「まぁ…知られたけれどキスができないなら、仲間に引き入れるしかないわよね」「仲間?」「そうねぇ…見えたことについて、第三者に言おうとした瞬間、命が消える…とか何とか言って」「それは、本当にそうなる可能性があるってことか?」めぐみは少し考え…思いついたように言う。「確か、聞いたことがあるわ。あなたみたいに、キスの連鎖で正体がバレた死神が、3人目以降はカマを振り下ろしたって」「それは、鮫島が秘密を口外したら…俺が、カマを振るということか?」「そうなるわね」これまで…人間界で知り合った者を冥界に送ったことはなかった。どの死神が、誰に命を断ち切るカマを振るのかは…直前までわからない。…呼ばれるまま赴き、死に際にいる者にカマを下ろす。死神の仕事とは、そういうものだった。「もし鮫島が秘密を誰かに喋ったら、その瞬間、あいつの寿命が急変する…」死に際…俺が見える人間には、頭を下げられたことが何度もある。今はまだ死ねない…子供が大きくなるまでは、先に親を見送るまでは…夢を叶えるまでは…人間は、さまざまなことを言って命の期限を延ばそうと足掻いた。「そのくせ、時間を無駄に使うくせに…」「人間も、それを歯がゆいと思
Last Updated: 2026-03-26
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