Masuk強い悲しみを背負う極道 西龍会 若頭 西門龍之介にしかどりゅうのすけ33歳 ✖ 逃げてきた訳あり風俗嬢 滝川桜たきがわさくら23歳 父親の借金のかたに風俗店に売られ、客を取らされそうになって逃げてきた桜が迷い込んだのは、その風俗店を取り仕切る極道の敷地だった… ぶつかった拍子にアスファルトに叩きつけられ、怪我をして絶体絶命の中…桜は、若頭である龍之介の住まいへと連れて行かれる。 風俗店からは逃げてきたけれど、結局知らない極道に自分の心も体もいいようにされるのだと、桜は絶望するも…2人は意外な朝を迎える。 面白くないのは、風俗店を取り仕切る若頭補佐の弟、蔵之介。 それは、龍之介の勝手な振る舞い、売れそうな風俗嬢を持っていかれた怒りだけではないようで… 匿われるうちに知る、龍之介の悲しみの理由と決められていた未来。 暗い生い立ちのなか生きてきた桜に、初めて芽生えた恋心は…龍之介の心は。 それぞれの背負う生い立ちと、出会ってしまった2人の切ない恋のゆくえを描く極道恋物語。
Lihat lebih banyak「斉藤さん、メンズスーツのフランドを起ち上げるらしいんだわ」「メンズスーツ……」「名前が|Matusiro.Homme《マツシロ.オム》だと。ちょいダサいけどな。あの人頑固だから聞かねぇんだ」そんな話は初耳だった。確かに、カタギになった龍之介は、これからどんな仕事をしていくつもりなのか、気になってはいたけれど、まさか紳士服ブランドなんて……「起ち上げに協力するということは、デザインして型紙起こして……生地を裁断してミシンをかけるって、そういうことですか?」「あっはは……っ!そっか、桜の頭のでは、そんな風に想像するのか!」桜の頭を撫でながらひとしきり笑ったあと、龍之介はなんとか笑いをおさめて説明を続ける。「デザインはちゃんとデザイナーがやるんじゃねぇの?……服を作るのもその道のプロがやってさ、俺はなんていうんだ……その出来上がった服を着て、写真を取られたり歩き回るだけでいいっていうんだよな」「龍、龍之介さん……それ、モデルってこと?」「あぁ、そのモデルだ。モデルといえば女だろ?……男のモデルなんか見たい奴、いるのかねぇ?」……いると思います。この、整いすぎて冷たそうにすら見える顔で、鍛え上げられた筋肉を隠した体でスーツなんか着たら……「あ、あの、ファンがいっぱいできちゃいそうで、私……」ヤキモチ爆発します、とは言いにくい。そこで足元で遊ぶ龍桜の横にしゃがんで、目の前を通るアリの行進を眺めた。「大丈夫だ。ファンができたとしても、そのへんの対応は斉藤さんがやってくれるだろ」龍桜と桜の頭に手を置いて、見上げる桜と目を合わせる。龍之介さんをモデルになんて、斉藤さん、先に話してくれたら良かったのに……「そんな話したら、桜ちゃん心配しすぎて倒れちゃうと思ったから……いきなり本人に言ってごめんね?」義母の家で一泊した翌日の夕方、蔵之介を送り、自宅へ帰ってきた。カフェは結構な忙しさで、美紀も手伝いに来てくれている。桜は留守を預かってくれたお礼を伝えながら、斉藤にこそっと龍之介のモデルの件を聞いたことを話した。「人気者になっちゃったら、どうするんですか?もぅ……」「任侠者から人気者へ。西門龍之介、華麗な転身……なんちゃって?」「斉藤さん、龍之介さんを売り出すつもり?さすが、松白屋専務!」美紀も話に入ってきて、2人で龍之介をモデルする構
「いいところだろ。海風が気持ちいい……」「あぁ。高台で、人に見下されたくない親父には最適な墓だな」助手席を降りて空を仰ぐ龍之介の言葉に、運転席を降りた蔵之介が感想を言う。2週間の入院の後、さらに自宅で1週間休んでから、組長……龍之介と蔵之介の父親の墓参りにやってきた。「早いうちにお墓を買っておいて良かったわ」「ハァイ…!」お義母さまに抱かれた龍桜も一緒だ。龍之介が墓前に報告した。「桜が産んでくれた俺の息子、龍桜だ。親父に言った通り、これから俺は……嫁と子供のために生きていく」桜の肩を抱く龍之介。見よう見まねで手を合わせる龍桜に、そこにいる皆が目を細めた。「まさか我ら一族に、こんな平和な時間が訪れるとはね」「そうだな。……組長の最後は壮絶ではあったが、あの行動があってこその、今かもしれない」西龍会を守るために。家族を、そして組員たちを守るためにすべてを背負い、1人で逝った組長。お義母さまがそっと涙を拭った。「怪我はしても命まで取られなかったのは、組長に守られたからだ」龍桜を囲むようにして、全員で手を合わせる。組長への感謝、そしてこれから先のの、静かで平穏な日々を祈って……墓参りを終えた一行は、母が1人で暮らす家へと場所を移動した。今日はこのまま泊まる予定。桜のカフェは、斉藤が桜に代わって営業をしてくれることになっている。「別に……斉藤ちゃんに頼まなくてもさ。1日くらい休んでもお客さん離れねぇだろ?」「離れませんけど、あのカフェはもう、私だけの居場所じゃないんですよ?……斉藤さんがお手伝いを申し出てくれたときは、お言葉に甘えるんです」「あぁそうですか。……甘えるのは言葉だけにしろよな」「……何か言いました?」「何でもありましぇん……」桜が斉藤を頼りにする素振りを見ると、とたんに面白くなさそうにする龍之介。「斉藤さん、料理できんの?」そんな龍之介に呆れた顔をしてみせて、蔵之介が聞いた。「どうなんでしょう?でもあまりキッチンに入ってこないので、苦手なのかもしれませんね!」「今後は入れない方がいいと思いますよ?キッチンなんて狭いんだから……」「はい、だから今日はランチはお休みして、ケーキと飲み物だけで営業してもらってるんです……けど」龍之介が話に入ってきて口をとがらせ、その顔を見て、また蔵之介が呆れた。「龍之
「志田川の若い者たちに、俺を良く思わないのが多くいたらしい」組長の葬式の最中のこと……突然乱入してきた数人の若い男にいきなり切りつけられたという龍之介。「麗香のこともそうだが、手を組んで3年で俺たち兄弟がいなくなって西龍会解散とは……納得いかなかったんだろうな」「そういうことか。……で、母さんは?」「祖父さんが晩年を過ごした地方の家に、骨になった組長と一緒に行った。……向こうなら、母さんの姉妹もいるから、心配ないだろ」蔵之介との話が終わったあたりで……桜が龍之介に向き合う。「……その怪我、本当はまだ治療中なんじゃないですか?もしかして、点滴を勝手に外して病室を出てきたんじゃ……」心配そうに龍之介を見上げる桜の目は、憂いを帯びて、ひどく色っぽい。……そんな表情は、彼がいる時しかしないことに、いち早く気づく自分に呆れてしまう。「まぁ、看護師には散々止められたがな、必ず戻ってくるって約束して出てきたから大丈夫だ」龍之介も桜を見下ろし、これまた彼女にしか向けない柔らかい表情をして見せる。相思相愛とは……彼らのためにある言葉のようだ。「志田川の奴らにやられたことは、咎めねぇつもりだ。足を洗う俺に対する組員たちからの別れの挨拶ってことで、この痛みは受け入れる」「俺のときはなんもなかったのに……」不服そうな蔵之介に、龍之介は笑顔を返した。「当然だ。たった1人の弟に、こんな痛い目見せてたまるかよ」「蔵之介さんの分もまとめて切られたってことですか……カッコよすぎでしょ?」「いや、蔵之介が組を抜ける決断をしたから、俺も抜ける事が出来たんですよ」兄弟の話に入る斉藤に、龍之介は少し眩しそうな目を向けた。「蔵之介に後のことは任せたいと思ったことはあったが……志田川とまとまってからは、あいつには若頭も組を継ぐことも、任せられねぇって思った。だから、蔵之介が組を抜ける決意を固めなきゃ、俺も今頃ここにはいねぇってことです」話を聞く限り、龍之介さんは組長の死という形で西龍会に幕を引き、志田川組へ礼儀を通し、報いをうけたことになる。確かにもう、自由の身だ。そして確信する。桜への、自分の想いは叶わなかったと。けれどここであっけなく退散したくはない……「状況は、わかりましたよね?皆さん」しんみりしたムードをわざと壊してやった。話は、先を見越して弟を組
「あのバカっ!……いったい何をやってんだか」龍之介がやって来たあの夜から、まもなく3ヶ月が過ぎようとしていた。「麗香共々、連絡してもまったく捕まらないんだよねぇ……和哉の後の舎弟とはろくに話さないで屋敷を出たから、連絡先知らんし、櫻川も閉まってるんだよなぁ」「気長に、待ってみます」桜も携帯の番号はすでに変わっていて、連絡を取り合う手段がなかった。あの夜、龍之介が来てくれた時の言葉を信じるだけ。でも最近思う。もしかしたらもう、会わない方がいいのかもしれないと。「蔵之介さんは、もう屋敷には入れないんですか?極道さん辞めちゃったから?」「なに美紀ちゃん。俺に偵察に行けってか?」「あんな怖いとこに近づけるの、蔵之介さんだけでしょ?悪いけど……美紀は行かせられないよ?」美紀を引っ込め、昭仁が身を乗り出した。ちょうど来てくれた時間が同じで、美紀と昭仁と同じテーブルに案内した蔵之介が口を尖らせる。「はいはい。近く行ってみますよ。……そんで、いい加減待たせすぎって怒鳴りつけてやる!」そんな言葉に、つい目を伏せてしまう。会いたいのに、会いたくない。このまますべてを忘れてしまえたらいいのに……と、思うようになったから。そこへ、斎藤に抱かれ、龍桜が帰ってきた。「まだ遊ぶ気満々だったんだけど、やたら目をこすってグズりはじめてさ……こりゃ眠いんだなと思って帰ってきた」「それは……お手数かけました」「そんなのいいから!……あ、皆さん、いらっしゃいませ」蔵之介たちが来ていることに気づき、挨拶をしたものの、自分の店じゃなかった、と言って赤面する斎藤。……あの日から、確実に距離は近づいている。麗香さんの妊娠を聞いて、やはり龍之介を忘れなくちゃいけないと思った。泣き出す私に胸を貸し、やがて頬に手をかけ、見つめ合った……けれど、キスはできなかった。もちろん彼も、無理強いする人ではない。でもあの日から、ハッキリと好意を示し、顔を見せてくれる日は確実に増えている。龍之介と2度と会えなくなっても、彼で寂しさを埋めるようなことをしてはいけない。慣れた様子で龍桜を寝かせに行ってくれたけれど……桜は斎藤にも、決意を伝えようとしていた。「斎藤さん、優しいよね。ちゃんとした人だし、最高じゃない?」「もう……美紀ちゃん、その話は無しで!」「俺もそう思うよ?」
Ulasan-ulasan