Se connecter強い悲しみを背負う極道 西龍会 若頭 西門龍之介にしかどりゅうのすけ33歳 ✖ 逃げてきた訳あり風俗嬢 滝川桜たきがわさくら23歳 父親の借金のかたに風俗店に売られ、客を取らされそうになって逃げてきた桜が迷い込んだのは、その風俗店を取り仕切る極道の敷地だった… ぶつかった拍子にアスファルトに叩きつけられ、怪我をして絶体絶命の中…桜は、若頭である龍之介の住まいへと連れて行かれる。 風俗店からは逃げてきたけれど、結局知らない極道に自分の心も体もいいようにされるのだと、桜は絶望するも…2人は意外な朝を迎える。 面白くないのは、風俗店を取り仕切る若頭補佐の弟、蔵之介。 それは、龍之介の勝手な振る舞い、売れそうな風俗嬢を持っていかれた怒りだけではないようで… 匿われるうちに知る、龍之介の悲しみの理由と決められていた未来。 暗い生い立ちのなか生きてきた桜に、初めて芽生えた恋心は…龍之介の心は。 それぞれの背負う生い立ちと、出会ってしまった2人の切ない恋のゆくえを描く極道恋物語。
Voir plus蔵之介の拳が顎の下に入り、勢いで後ろに吹っ飛んだ龍之介。 ぶつかったサイドボードのガラス扉が派手な音を立てて割れ、桜は驚いてソファから立ち上がった。 「…今回は俺に指図するんじゃねぇぞ」 「や…やめてください」 仰向けに倒れた龍之介の胸ぐらをもう一度掴んだのを見て、反射的に桜は蔵之介を止めた。 自分の手に重なる桜の手を払うことができず、蔵之介は龍之介を離し、立ち上がった。 「全部、教えてください。百合さんというのは、いったい誰なんですか…」 蔵之介が出ていき、唇から血を流した龍之介に手を貸してソファに座らせ、砕けたガラスを拾いながら聞く。 「…危ない。俺がやるから」 せっかく座ったのに、桜がつかんだガラスの破片を奪い、ビニール袋に放り込む龍之介。そんな龍之介を、桜はじっと見つめていた。そして、そんな桜の強い視線の意味を、龍之介はちゃんと理解していた。けれど…今はまだ言いたくない。それは、初めて会った時とは違う気持ちが芽生えているからだ。これまでつらい思いばかりしてきた桜を、傷つけたくない。「誤解させないように話したい。…だから話すまで、もう少し時間をくれ」「いつですか?」「…ん?「いつになったら誤解のない話ができるようになるんですか?」桜は強い視線を投げかけ、そんな話ができるはずないと言い放った。「正直に、話してくれたらいいんです」…すでに、涙で濡れているように見える桜の大きな目。今は、正直に話す方が彼女に対して誠実だと思い直した。 「百合というのは…2年前亡くなった妻だ。結婚して1年で病気になってな…あっという間に、逝ってしまった」 「亡くなった…奥さん…」 それを聞いて納得した。 …いつか、私を抱きしめて名前を呼んだのは… 「私は、奥さんに似ていたんですね」 「…あぁ。目を見張るほど似ている。組の者も…百合のことを知る奴は皆驚いた」 「…だったら、納得です。私が生きる事を許された理由が」 …すべては、百合さんという女性に似ていたから。 「だから怪我を心配してくれたんですね。…あ、そもそも、抱き上げて屋敷に入れてくれたのも、そういうことか」 優しい瞳で見つめてくれたのも…頬のガーゼをとめる紙テープに気を使ったのも…抱きしめてくれたのも、キスも… 「全部、私を通して百合さんを見ていたから…」 …溢れる
「どうやって…入ったんですか?」 「言ったろ?兄貴のマンションなんだから、鍵くらい持ってるってこと」 龍之介より線の細い、美青年…といった雰囲気の蔵之介。 組んだ手も足も細く見えるが、このマンションに移動する時、部屋を訪ねた時の裸の上半身を思い出す。 …極道というよりモデルみたいだけど、この人もいざという時は戦うんだろうから、きっと鍛えているのだろう。 そう思ったら、室内で2人でいることに息苦しさを感じた。 じっと見つめられて、心臓が妙な速さで拍動し始める。 …大丈夫。 苦しかったら、そっと後ずさりをして、玄関を出ればいい。 ソファに座る蔵之介と、リビングの入口に立つ自分には距離がある。…手を伸ばしてすぐに届く距離ではない。 大丈夫…自分に言い聞かせた。 「何やってんの?遠慮しないで入っておいで。別に、何もしないよ?」 組んだ手と足を解いて、前かがみになって桜を見つめる蔵之介。 「い…いえ」 辛かったら逃げていいんだ。…そうやって逃げ出したからこそ、今私はここにいられるんだから。 そう思うのに、ふいに足の力が抜けた。めまいを感じて、その場に崩れ落ちる。 「え…ちょっと、桜ちゃん…大丈夫?」 近寄ってきた蔵之介に、思わず強い視線を向けてしまう。 「…そんな目で、見る?」 「すいません、近寄らないでもらえますか?」 「でも、冷や汗かいてない?」 言ってから、その理由が自分にあると気づいたらしい。言われた通り、桜に近寄らないように壁に張り付いた。 「もしかして、男嫌い?…」 「過去にいろいろあったせいです。…それより」 意外にもこちらの様子を気にかけてくれて…それは龍之介より気遣いを感じるほど。だから、用件を聞く余裕ができた。 「私に用があるって言ってましたよね?どんな用件ですか?」 もしかしたら…Black Roseを抜け出してきたペナルティが課せられるのかと思った。 あの店に連れて行かれ、店長と面接して小部屋に入れられ、売られるまで丸一日世話になった。その間の食事代や光熱費を取るというなら、納得だ。 与えられたのは、コンビニのパンやお菓子、おでんのゆで卵、水…といった、栄養バランスも何もない食べ物ばかりだったけど。 「桜ちゃん、龍之介とはどんな関係なの?」 「関係…」 考えたこととまったく違う事を言われ
「Black Roseのあたりに深夜もやってる花屋があったな。そこへ寄ってくれ」「へい。かしこまりました」眠った桜に後ろ髪を引かれながら…エントランスで待つ和哉の車に乗り込む龍之介。「てもあの…大丈夫ッスかね…」「なにが」「いや、龍之介さんがこの時間にあの辺に行くと…志田川組の奴らと顔を合わせて、ドンパチになるんじゃないかと」そうか…まだ和哉にも言っていなかった。ふ…っと鼻で笑い、足を組む。「大丈夫だ。…もうすぐあの辺は、西龍会が仕切ることになるからな」「えぇっ!…マジッスか?すげぇ…だとしたら、俺らもいろいろやりやすくなります」そうだよな…と、心の中で思う。今まで、ちょっと顔を突き合わせれば、すぐにいざこざが起きていた界隈だ。そのわりにうちが管理する店も多くて、和哉や下の連中はやりにくかっただろう。「…俺、買ってきましょうか。Heart Barの愛ちゃんですか?…だったらピンクのバラがいいっすよ」「いや、自分で行く」後部座席から降りると、和哉は慌てて追ってきて、観葉植物や鉢植えの花を買い漁る俺を不思議そうに見た。「車に積め。全部だ」「へ、へい!」もう一度マンションに戻るよう言ったところで…和哉もどういうことか察したらしい。何も言わなくても、音を立てないよう注意しながら、部屋に運び入れるのを手伝ってくれた。朝起きて、この草花を見てどんな顔をするか…それから買い占めた赤いバラの花束も。想像して頬が緩む。「やっぱし…ほの字なんッスね」笑顔で言う和哉は、百合のことを知っている。いなくなって、俺が再起不能になったことも。俺は…和哉の笑顔に、答えられなかった。「…おかえり。ちょっと遅かったんじゃない?」屋敷に着いて、自分のテリトリーに入ってホッとしたところで…赤いガウンを羽織った女が現れた。「麗香、来てたのか」「約束の日だから、一応ね」「あぁ…それなら毎度悪いが…」麗香ならそれだけ言えば伝わるはずだ。…なのにこの日は、ソファに座った俺の膝の上に乗り、首に両腕を絡ませてくる。「…おい!」体を離そうと動いたのを利用して、俺の手を胸の膨らみに押し付ける。そしてガウンを脱いだ。「すげぇ色のガウンだな。…しかも下着まで赤って…」「…笑えるでしょ?」すでに呆れて笑う俺に、麗香も笑いながら言う。「それにしても相変わ
9花のプレゼント「…酒屋?」「はい。駅前の…ちょっと裏に入ったとこにある大きな店構えの、酒屋です」「酒なんて…重てぇだろ」多分オーナーと同じ心配をしているとわかって少しおかしくなった。「…なんだよ」「いえ、こう見えて、結構力はあるので大丈夫です…って言いたくて」携帯に何度も連絡が入っていることに気づいて、慌てて連絡を返すなり、マンションにやってきた龍之介。アルバイトが決まって、早速仕事をしてきたため、連絡に気付かなかったと説明した。「…ちょっと、聞いてもいいか?」龍之介は冷蔵庫からビールを出して飲み始めた。「どうしたんですか?」桜は何か作ろうとキッチンに立つ。冷蔵庫からハムときゅうりを出して千切りにし、卵を溶いて一緒に炒め、味を整えてから粉チーズを振る。そして自家製の鶏ハムに、ミニトマトを添えて…サッと出てくる料理に、感心して桜を見上げる龍之介。「お酒を飲み終わったら、何かご飯ものを…」言いかけて、長い時間ここにいるわけではないかもしれない…と思う。「…惚れる…」ボソッとつぶやいた言葉は、桜の耳には届かなかった。「…あ、先の話、でしたっけ?」「あぁ。もしかして…夢とかあるのか」「…そうですね。花屋さん…」突拍子もない言葉に、ビールを飲みかけた龍之介の手が止まる。その姿勢のまま…視線が落ちてきた。「今まで…1日を無事に過ごす事で必死だったので、気付かないふりをしてました。…お店を持ちたいです。花屋さんと併設したカフェ…とか」「花が好きなのか?あとなんだ、コーヒーとかも?」「花は…野生の草花が生い茂る田舎で育ったので、好き、というより見えないと不安になります。コーヒーは、好きってわけじゃなくて、人が集まる場所って意味で…」笑いながら答える桜。「…どうしてそんなこと聞くんですか?」「それは……これからも、支援したいと思うからで…」ビールが入ったグラスを傾け、少し照れくさそうに言う龍之介。「まぁいいや、お前も飲めよ」「あ…はい」どうしてそんなに支えようと考えてくれるのか。…聞きたい言葉をしまって、代わりに自然とこぼれてしまう笑顔を龍之介に見せた。「ワインを飲ませてもらって…いいですか?」龍之介に支えたいと言われるのは、戸惑うけれど、やっぱりとても嬉しい…明日もアルバイトだと告げると、龍之介はいつもの