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架月ひなた
架月ひなた
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Novels by 架月ひなた

ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される

ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される

【あらすじ】 会社のドムたちに虐げられすっかりドム嫌いになってしまった月見里空良(やまなしそら)は、同僚に追われている時にとても綺麗な一人の妖(あやかし)に出会う。初めて会うその妖は何故か空良を知っているようで——? ※人外×人間の、一方的に甘やかされる甘々イチャラブストーリー。 ※短編よりの中編。妖の世界と現世を行ったり来たりする。 ※Dom/Subユニバースなんですけど、甘々なのでドムサブ初心者向けかもです。
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Chapter: 25、終焉(サブスペース)
「空良、大丈夫?」 いつ移動したのか、屋敷の中で心配そうな顔をした白月に顔を覗きこまれていた。「平……気。助けてくれてありがとう、白月」 伊藤の時はグレアで恐怖を感じていたのに、白月が放つオーラは余りにも綺麗で温かくて心地良過ぎて、頭の芯から思考を蕩けさせられた。 安堵を通り越してケアコマンドを発令されている時みたいに高揚感に満たされていく。「ん、ん……ぁ。白月……?」 やたら鼻にかかった声が吐息と共に口からこぼれる。 どうしようもない程のサブの本能に支配されていた。白月からコマンドが欲しくて欲しくて堪らない。「しら……つき」「あ、しまった。グレア解くの忘れてた。私の気に当てられちゃってサブスペースに入りかけているね」 荒く甘ったるい息を短くハフハフと繋げる。「白月、白月ぃ、好き。……かれたい。白月に抱かれたい。コマンド……欲しい」「ふふ、可愛い」 前にサブスペースに入った時よりも頭の中がフワフワと飛んでいて、自分が何を言っているのか、何をしているのかも分からなくなっていた。「空良。——私に|口付けて《Kiss》?」 白月の首に両腕を回して、啄むように何度も唇を押し当てる。「——|ちゃんと出来て偉いね《good》、空良」 意識が何度も途切れ、空良は恍惚とした表情を見せた。触れられる度、言葉を貰う度、心地よくて仕方ない。「白月、もっと欲しい。白月のコマンド、欲しい」 意識が一旦戻ってきた時には、白月に体中に口付けられていて、もう互いに服を着ていなかった。 意識が飛んでいる時に解されたのか、白月を受け入れる準備も済まされている。内部で出し入れされる指が良い所を掠める度に、気持ち良くて自らも腰を擦り付けた。「空良、可愛いね。——私の上に|おいで《Come》?」 白月の言葉に酔わされて頷く。 言われるままに胡座をかいて座っている白月の上にゆっくり腰掛けると、そのまま後孔に白月の陰茎が入り込んできた。体に快感という名の衝撃が走り、弓なりに背がしなる。「ん、中、きもち……いい」「ちゃんと私を呑み込めて良い子だね、空良。もっと気
Last Updated: 2026-02-20
Chapter: 24、こんなの初めてだ
「空良、そんなに嫌だった?」「嫌というか、居た堪れない……」「私が好きでやってるんだから気にしなくて良いのに」 口付けられた後、持ってきた小瓶の蓋を外して、白月は中身を手のひらに出していた。 その指で奥まった窄まりを撫でられ、思わず腰を浮かせてしまう。「初めは異物感や違和感が凄いと思うけど、少しだけ我慢してくれる?」「分かった」 白月の形の良い綺麗な指が滑りを帯びて、内部に入ってくる。異物感に息を詰めそうになって、力を抜いてソッと息を吐く。 何度か出し入れされて上の部分を探られた瞬間体が戦慄いた。「んん、んーーー!」 ある一点を白月の指に刺激される度に、自分の体じゃないみたいにビクビクと跳ね上がった。押し寄せる快感の波が強くて異物感も違和感も全てなくなっている。「空良の良いとこ見つけたよ」「あ、んぅ、白月、何……コレ」「前立腺だよ。空良、気持ち良い?」 指を追加されて集中的に擦られると背中が大きくしなった。 一度吐精して萎えかけていた空良の陰茎がまた勃ち上がって、透明な雫をこぼし始めている。白月はそれにも指を絡めて刺激しながら、また指を追加した。「あ、あ、白月ぃ……またイクから……、ぁ、離し……て」 もうイクと思った瞬間、手を離されてしまい絶頂は空回りする。後孔からも指を抜かれたが、その代わりに少し間を置いて肉感のある硬いモノを押し当てられた。「空良、体の力を抜いて息を吐いてて」 頷くと、指とは質量の違ったモノが入ってきて布団のシーツを握りしめる。圧迫感が今までの比ではない。 小刻みに動きながら入るところまで収められ、短く息を吐き出した。「空良、大きく息を吐いて深呼吸して」 白月の言う通りに深呼吸する。慣れたのを見計らい「動くよ」と言われて、また頷いた。 さっき指で刺激されていた前立腺を陰茎で擦られると、途端に中を擦られるのが快感に変わり上擦った嬌声しか出なくなる。「あ、あ……っ」「空良、気持ち良い?」「ん、あっ、……ちいい。白月、中……ッ気持ち良い」 パチュンと音が立つ度、聴覚からも快感を呼び
Last Updated: 2026-02-18
Chapter: 23、繋がる
「実は神楽はもう説得済みなんだ。そしたら、神楽がね、現代の人の子と生きていきたいなら、ちゃんと今の暮らしを覚えるべきだって煩くて。体の主の記憶を頼りに色々教えてくれたんだよね。投資やら株やら覚えさせられたから空良が仕事に行っている間は、神楽が持ち込んだノートパソコンとやらで一緒にそればかりしていたよ。私は空良と生きていきたいから頑張る」「ありがとう白月」 つけてもらったカラーを指でなぞると、心の奥が温かくなった気がした。 ——嬉しい……。 思わず顔が綻ぶ。「鏡で見てみる?」「見たい」 白月に渡された手鏡で確認する。白月の瞳の色と同じ鉱石が嵌め込まれたチェーンタイプのカラーが付けられていた。「白月みたいで綺麗。大切にする」「空良に喜んで貰えて良かった」「セーフワードなんだけど、白群ってどう? 白月の瞳の色だよ。僕、白月の瞳の色がすごく好きなんだ。ああ、でも好きなものをセーフワードにしたらダメかな。て、待って。えええ⁉︎ 何でまた泣くの? これもまた前と同じだった?」 涙を流した白月が空良の肩に額を預ける。「空良。空良……大好き。やっぱり空良は空良なんだね。嬉しい」 また泣かせてしまった。白月の頭を抱え込んで撫でる。「白月、そんなに寂しがり屋で泣き虫なのにどうやって五百年も待てたの? 何で白月を置いていけたのか、僕は今、前の僕にイラっとしてるんだけど……。人間は妖になれないの?」「人の子と私たちは根本的な在り方が違うからね。そろそろ始めていい? 私、空良に触れたい」 頬に触れられて口付けられた。「うん」「少しでも違和感を覚えたらすぐにセーフワード使ってね」「分かったよ」「返事出来て——|偉いね《good》、空良」 気持ちが上向いていき、驚いて瞬きする。もう始まっていたようだ。布団の横に腰掛けた白月が自身の右太腿を二度叩いてみせる。「——|おいで《come》」 心や思考とは別で自分の体が意思を持っているように立ち上がり、白月の元へと引き寄せられた。「良い子だね。次はここに——|横向きに座って?《Kneel》」 指示通りに
Last Updated: 2026-02-17
Chapter: 22、カラー
「自分からもう来ないって言ったのにまた来ちゃった……僕は意思が弱くて困るね。ごめん、離してあげられなくて」 白月が左右に首を振った。「私は嬉しかったよ。だからこそ空良を離したくないってまた思った。思わせぶりな態度で空良を振り回したのに、また空良の人としての人生を奪っちゃうのかなって思ったら怖くなった。空良の事を思うなら、初めっから会わない方が良かったのかなって考えたりもしたけれど、空良との再会を私は後悔していない。本当に自分勝手でごめんね。そのせいで空良を傷付けてしまった」 正面から緩く抱きしめられて、肩に額を乗せられた。「僕は白月が好き。白月以外と……一緒にいたくない」「うん。私もだよ」「好き……っ、白月の側にいたい」 泣き止むまで背中をさすられていた。どれだけ時間が経ったのだろう。 二人して無言のままずっと庭を見ている。優しく包み込むような月が真円を描いていた。「白月って本当に月みたいだよね。包み込まれるくらいの優しい明るさが僕にはちょうどいい」 出会った時の事を思い出して言うと、白月がまた泣いているのが分かり、出会った時と同じ様に本気で焦った。「白月、泣かないでっ。もう言わないから。嫌だったかな? ごめんね」「ううん。空良にそれ言われるのも二回目だよ。嬉しい。何回でも聞きたい」 座ったままの白月の上で横抱きのまま座らせられる。「ねえ、空良」「どうかしたの?」「空良を抱きたい。空良の気持ちがちゃんと私に向くまでは手は出さないって決めてた。もう、いい? 全部私のものにして愛したい」 ゆっくり頷くとそのまま風呂場へと連れて行かれた。裸体を晒し出すのはまだ恥ずかしくて、タオルを取ろうとするとその手は阻止される。「今からもっと恥ずかしい思いするんだから慣れよう?」「うー……、意地悪」「ずっと空良に会ってなかったから空良不足なんだよ、私。言葉っ足らずだったし、自業自得なのは分かってるんだけど……会いたかった」 後ろから首筋に口付けられて、ビクリと身を揺らす。脇腹を撫でられてまた体を震わせると、白月がフッと笑いをこぼした。「本当に可愛いね、空良」
Last Updated: 2026-02-14
Chapter: 21、なんで……っ
——何いまの? 辺りを見渡しても気が付いている人物は誰一人いない。 これって……。白月と初めて出会った時みたいだ。 心臓がドクリと脈打った。 『空良』 耳馴染みの声が聞こえてきて、また周りを見渡した、白月の姿はない。 『空良』 ——え? やっぱり白月!? やはり白月の声が聞こえた気がして周りを見渡す。しかし、どこにも白月の姿はない。もう一度ため息をこぼす。 ——幻聴まで聞こえるなんて、本当にダメだな僕は。 鞄を手にしてタイムカードを切ると、また空気が脈打った。 『空良』 「白、月? 本物?」 思わず声に出してしまい、誤魔化すように口に手を当てる。 『そう。私……』 ——え? 何で? 『ちゃんと話がしたい』 「ごめん。僕には……何も、話す事はないよ」 誰にも聞き取れないくらいの小声で言った。 『一方的でごめんね。空良が来るまでずっと待ってる』 「僕は……会いたくない」 声が震えた。 ——嘘だ。会いたくて会いたくて仕方ない。 『うん、いいよそれでも。どれだけ月日が経っても、会ってもいいって空良が思えるようになるまでずっと待ってる』 脈打っていた妙な空気の捩れがなくなって、いつもと変わらない空間に戻った。ギュッと握り拳を作る。 ——五百年も待ってたのに、何でまた待つなんて言えるの……っ。 不覚にも泣きそうになって、水で膜を張っている視界をどうにかしようと手で瞼ごと押さえつけた。 早歩き気味に会社の出入口に進んで扉を潜った瞬間走った。もう通い慣れた道を行き、白月のいる神社に向かう。 白月に会う事ばかりを考えていて、いつもみたいに誰かに見られていないか確認するのを怠ってしまった。
Last Updated: 2026-02-13
Chapter: 20、危機
 *** 次の日もそれは続いた。ただ会社の中では素知らぬフリをされたので、不思議に思いながらも仕事をして、他の社員と交流を育む。 今日は充実した日を送れ、アパートに帰ってからも気分よく過ごせた。 こんなのは白月といた時以来だ。そこまで考えて、また白月との時間を思い出していた自分を叱咤するように頭を振る。「ダメダメ、忘れるんだろう?」 自らに言い聞かせるように声に出して言うなり、テーブル席で頭を抱えた。 ピンポンと来客を告げるインターフォンが鳴り響く。最近通販もしていなければ両親から訪問を告げる連絡も来ていない。 訝しげに思いモニターを見ると、そこには配達員の制服を着た男が立っていた。『はい』 応答するとやはり『宅配便です』と言われたので『どこからの配達ですか?』と尋ねてみた。この手の詐欺が多いのを知っていたからだ。『え、と。宛先と同じ月見里となっていますね』『今開けます』 母親が送ってくれたのだと思い、扉を開く。しかしそこには伊藤とその他見た事のない男三人がいるのが分かって、すぐに扉を閉めかけた。扉の隙間に靴をかませられて閉じられない。「何なんですか! 出ていって下さい!」「てめえ、最近マジで目障りでムカつくんだよ! ヘラヘラしやがって気持ち悪ぃ」「ストーカーしてまで張り付いてくる貴方の方が気持ち悪いです!」 ハッキリ告げると取り巻きの三人の男が笑った。「何伊藤、お前こんな奴のストーカーしてたわけ?」「うるせえ」「いかにもな可愛い系じゃなくて、志島尊留みたいな美人ならオレらも大歓迎だったのによ」「つっても山ん中置き去りにしちゃったから今頃もう……、なあ?」 下品な笑い声が響いていく。 ——山? 置き去りって……嘘……何それ……もしかして……。 嫌な想像しか出来なくて怖くて堪らなかった。手が震えてくる。「ほら、お前がいらん事言うから怯えちゃってるじゃん」 自分の部屋に入られてしまっている時点でもう詰んでいる。外に逃げ出そうとした瞬間に捕えられて両手を引き抜かれたベルトで拘束され
Last Updated: 2026-02-12
パライバトルマリンの精霊王は青い薔薇のきみの夢をみる

パライバトルマリンの精霊王は青い薔薇のきみの夢をみる

魔法大学院に通うレオンは、精霊族の第二皇子であるランベルトと〝恋人ごっこ契約〟を結んでいる。 軽薄な男だと思っていたが、恋人になったランベルトは思いの外優しかった。 両片思いからのすれ違いや、大きな勘違いからのすれ違いで、レオンはランベルトに無理やり孕まされてしまう。 だが、精霊族の国王が暗殺される事件が起こりランベルトは国へ帰ってしまい……? ※魔法大学院〜3年か4年後辺りまで。ドラゴン属。魔法師。体格差。身分差。異世界ファンタジー。男体妊娠。執着&溺愛。 物語の性質上ラブシーン多めだけどエロはテーマじゃありません。 ※わりと甘めでイチャイチャしている。一部に無理やりの場面もある。
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Chapter: 第30話、終幕
 *** ちびっ子達の悪戯で、レオンはまた青いドラゴンを産んだ。今度は女の子だったので、それを知った同じ青いドラゴンのフィーリアが喜びを隠しきれない様子で目の前にある広間ではしゃぎ回っている。「フィーとおなじおんなのこ! レオンまたうんで!」 それを聞いてレオンが遠い目をする。そんなレオンを横抱きにして歩きながらランベルトが苦笑していた。「ねえおねがい!!」「あー、でも次に産まれても男の子かも知れないぞ?」 このままだと永遠に出産させられそうだ。それだけはさすがに勘弁して欲しい。せっかく青いドラゴンになれるようになったのに、どちらかといえばランベルトに特訓をして貰いたかった。「フィーリア、レオンは疲れているから休ませてあげよう」「はーい」 ランベルトがその後会話を交わしながら何とか宥めすかして、女官たちにフィーリアを預ける。部屋に入りベッドに腰掛ける。毎回貧血で死にそうだ。「あー、もー、あいつらには本当に振り回されてばっかりだ」 そこまで考えて、ランベルトを見つめる。「なんかさ……」「え? 何? 何言おうとしてるか分かったけど言わなくて良いよ?」 ランベルト自身も痛感しているらしい。気まずそうな顔をしていた。隣に腰掛けてきたランベルトに向けて口を開く。「良かったな、ランベルト。仲間がたくさんできたからもうお前一人だけ〝異質〟じゃないだろ?」 揃いも揃ってあのチート加減だ。育てばランベルトと並ぶかそれ以上になるだろう。今後が楽しみだ。「覚えてたの?」 ランベルトが大きく瞬きした。「当たり前だ。ランベルトの言葉は覚えてるよ」「ふふ、嬉しい」 持ち上げられて膝の上に乗せられる。背後から抱きしめてくるランベルトを見る為に上を向く。長く伸びたランベルトの髪の毛が顔にかかった。「お前は髪伸びるの早いよな。俺全然伸びないんだよな。昔はそうでもなかったのに何でだろ?」「レオンにはその長さが一番似合うからね。俺が魔法で調整してるし伸びないの当たり前だよ」「……」 無邪気に笑われ、唖然としたまま閉口せざる
Last Updated: 2025-12-13
Chapter: 第29話、勝手に作ってはいけません
「ランベルト、一回抜いてやろうか?」 風呂で萎えかけていたランベルトの陰茎を、ソープを垂らした手で包み込む。柔らかい手付きで弄っていると質量が増してきたので、片手は先端を刺激しながらもう片方の手で上下に扱いた。「……っ」 息を詰めたランベルトに気をよくして、何度も繰り返していく。伸びてきたランベルトの手が上半身を掠め、胸の突起を緩やかに刺激されて体が跳ねた。「あ……!」 もう片方の手では下肢のモノを同じ様に刺激される。「イかせてくれるんでしょ? 手止まってるよレオン」 ソープがクチクチと音を立て、もう誰の所から聞こえているのか分からなかった。 上半身に伸びていた手が下半身に伸びていって、膝の上に乗せられて兜合わせにさせられる。ランベルトだけをイかせるつもりが、セックスする流れになっていた。「俺のとレオンの両方扱いててね。俺は後ろやるから」 魔法で生成された潤滑剤を纏った指が潜り込んできて思わず「んんっ」と声が出る。 言われた通りにランベルトのと己の陰茎を纏めて擦り合わせていると、イキたくて腰の奥が重くなってきた。「あ、あん、ふ……ッぁ、あ……ん!」「腰揺れてるよ」「ラン、ベルト……っ」「可愛いね、レオン。顔蕩けてるよ。もしかしてもう中に欲しい?」 頷くと、指を抜かれてソープを流した陰茎をあてがわれた。対面座位で挿入され一旦呑み込むのを止めようとすると、両膝の裏を掬われて結腸まで押し込まれる。「や、ぁ、ッあ、あああ!」「っは、キツ」 手で何度も押し込まれる度にイッて、精液が混じった潮が飛んだ。「ああ、ん……っ、ァ、あ、ああっ、ランベルト……気持ちいい!」「ん、俺もッ気持ちいいよレオン」 艶めかしいランベルトの声にも感じていて、腰の奥に力を込めた。「ランベルト……、あ、んん、アアッ! もっと……っ」「ふふ、もっと……なに?」 分かっているくせに聞いてくるランベルトに口付ける。「あ、ん、ぅ……っ、もっと……欲しい!」 シャワー中なのもあり水音が激しく響く。「レオン、ベッド行こうか」
Last Updated: 2025-12-12
Chapter: 第28話、真面目な話は邪魔が入るもの
「お前は役立たずなんかじゃない。俺をこうして助けてくれるのはいつもランベルトだ。昔からそうだっただろ。家族もランベルトの事をちゃんと考えてくれる優しい人たちだったんだよ。それにランベルトは家族や周囲の意志を継いでこうして立派に国も立て直した。新しい医療魔法も作った。あれも今後の医療にとても役に立つ。ランベルトが役立たずな訳がない。俺が保証する。お前は偉業を成し遂げた凄い男だよ。ランベルトはもっと誇りに思ってもいいと思う。俺にとってお前は昔からの憧れで一番大切な人だ。仮に誰も必要としなくても俺にはお前が必要だよ。そんな風に言うな」「レオン……」「それに俺はお前を嫌った事もないよ。これからも嫌いにならない。あの時はごめんな、ランベルト。俺、本当は二年の時にはもうお前が好きだったよ。契約に抵触してお前の側にいるのが辛かったから、俺は自分が楽な方に逃げたんだ。お前の事、傷付けてるなんて考えてもみなかった。本当の意味で嫌った事もない。愛してるよ。これからもずっとランベルトだけを愛してる」 ランベルトの顔を上げさせて、誓うように口付ける。正面から視線が絡んで破顔してみせると、照れたように微笑み返された。それからまた何度も口付ける。「「あーてるー」」「こら、めっ!」 双子とエスポワールの声が聞こえてきて、ハッと横を向いた。「レオンとパパなかよししてるから、めっ!」「「めっ」」 エスポワールの言葉を聞いて双子が頷いていた。途端に恥ずかしくなってきて、ランベルトと顔を見合わせるなり笑ってしまった。「そういえば、うちの赤い皇子にも名前をつけなきゃだな」 ランベルトを見ながら言った。「うん。それにしてもコイツらも大活躍だったね。いつの間にあんな魔法使えるようになったの?」 不思議そうにランベルトが首を傾げる。「ゆかにまるいおえかきしたの。ねんねしてるときね、レオンがわるいのにつかまってたの。ばあばにいったらね、おしえてくれたの」 エスポワールが眦を下げて笑う。こういう笑い方もランベルトにそっくりだった。「丸いってもしかして魔法陣かな。エスあれ描けたの? マジで⁉︎ 古代文字だよ。天才じゃんエス!」 ランベルトに抱き
Last Updated: 2025-12-11
Chapter: 第27話、繋がる
「ちっ」「せ、んせい……何で?」「レオンが言ってた奴ってコイツか! オレが知ってる奴と全然顔が違うじゃねえかよ」 ケミルが叫ぶように口にする。やはり違っていたみたいだ。「アンタ一体いつから生きてる?」「知っているのかサーシャ」 ランベルトからの質問にサーシャが忌々しそうに口を開いた。「知ってるも何も、うちの主人を殺した張本人だからね。青いカルト教団の教祖本人だ。だからレオンを知っていたのか」「あの男は青の一族の血を引きながらドラゴンにもなれない、青いドラゴンの魔法さえも使えない出来損ないだったじゃないか。生きる価値もない。それに比べてレオン・ミリアーツ君は素晴らしい変化を遂げてくれたよ。本当は男児を産ませる為に子宮を作ったんだがな。まあ、青の一族が復活したのなら、青の一族が王になるべきだろう? ミリアーツ君は皇后の座につかせる」 ザウローの言葉を聞いて、サーシャが顔を歪める。「お前たち……スライムと拘束だ」「はい!」「「あいっ」」 サーシャに答え、ベッドの下にいた三人が元気よく返事をした瞬間、ザウローの体は水色のスライムの中にいた。「なっ! くそ、何だこれは!」 スライムを取り囲むように上から白と青の紐がまるで結界のように絡みつき、実質上縛られた形になっている。それでも子どものかけた魔法だ。手間取ってはいたものの、拘束からは逃れていた。かえって刺激してしまったようで、こめかみに血管を浮き上がらせてザウローが怒りに肩を震わせている。「くそ、この紛い物どもが!」 標的とする矛先が子どもたちに向こうとしていた。青い炎がザウローの手に宿る。「アンタ……まさかアンタも青の一族なのか!」 サーシャが言うと、皆も目を見開く。「そうだ。だったらどうした!?」 ここまで熱狂的に青の一族を支持する理由が分かり、舌打ちした。そのまま自らが王になる事で復活させる気なのだ。その隣の座に自分を欲している。ザウローの魔法力が増していく。バチバチと音を立てて、体の周りに青い雷光をまとわり付かせていった。 ——このままじゃ、犠牲者が出る! レオンは咄嗟に魔法
Last Updated: 2025-12-10
Chapter: 第26話、黒幕
「どうしたんだエス? パレンティアとフィーリアも」「れおー」「うー、れおー」「エスたちね、たたかいごっこするの!」 我が子たちが円陣を組むように遊んでいる。ここは転んでも大丈夫なように床が柔らかく作られている場所だ。三人を女官たちや乳母が微笑ましく眺めていた。「チビ共なにしてんだ?」 背後から顔を出したのはケミルだった。普段は護衛や偵察隊をしているので、王宮を離れる事が多いが今回からは役目が変わっている。レオン専用の護衛になっていた。「戦いゴッコらしい」「うはは、勇ましいな! あ、オレ出産の時に治癒魔法含めて防御魔法係も兼任するから。実は大学院でも成績優秀だったんだぜ?」「そうなのか? 凄いなケミル。俺はどっちも並以下だったよ。あ、大学院といえば三ヶ月前くらいだったかな、初めてドラゴン化した時にあの人見かけて驚いたよ。大学院の時にいたザウロー先生。あの人も精霊族だったんだな。知らなかったよ」 直後、何故かケミルが固まった。「え、誰だって?」 ケミルの問い掛けに戸惑う。「誰って、カメリナ・ザウロー先生だよ。男の先生で魔法学を教えていただろ?」「ちょっと待て、レオン。魔法学を教えていたのは、サリミワ・キャメロン先生で女教師だぞ」「え……。いや、そんな筈は……」 クラスが違うとは言え、教師は変わらない。意見が食い違う筈がなかった。記憶があやふやになる程過去の話でも無い。ケミルは即座にmgフォンを取り出し、通話していた。「王、大学院内で青の一族としてレオンに目星を着けていた人物が分かったかもしれません。魔法学を教えていたカメリナ・ザウロー。オレの記憶ではサリミワ・キャメロンだった人物です。どっちが本当の顔かは分かりません。レオンの話ではソイツはもう王宮内にいます。三ヶ月前に見かけたと話していて……」 ケミルがそこまで言った時だった。血液が全て沸騰してしまいそうな熱を感じて膝をついてしまった。「あ、ああああああ!」 体が熱くて堪らない。下半身を中心に直火で炙られているような痛みが全身を駆け巡る。「レオン!」 ケミルが即座に治癒魔法を施
Last Updated: 2025-12-09
Chapter: 第25話、青のドラゴン
*** 次の日。王宮の前の広場にランベルトと向かい合わせで立った。これからドラゴン化しながら気をコントロールする術を身につけていく事になっている。遠巻きに王宮の皆んなが眺め、自分たちの仕事をこなしながらまた戻って来たりしていた。 ——あれ? あの人確か……。 一瞬姿が見えただけですぐに見えなくなってしまった。ザワリ、と首元の毛が逆立つ。頭を触られた気がして振り返るが、そこには誰もおらずに首を傾げる。大学院生だった時にも一度同じ事があった。あれは……。「どうかしたの、レオン?」 ランベルトの声で意識を戻される。「ううん……何でもない。俺さ、ランベルトがドラゴンになった姿も見てみたい」「レオンには百聞より一見だったね。先にそうしようかな」 ランベルトが脱力したように力を抜くと、バチンと何かが弾け飛んだ音がした。体の周りを幾重にも連なったパライバトルマリン色の雷光が横向きに走る。輪郭がボヤけて行き、十メートルはありそうな大きな体に、背にある翼も全身を覆い隠せそうな程に大きい。四本の手足が地に降ろされると振動が来た。『怖い?』 頭の中に直接語りかけられる。「ううん、怖くない。かっこよくて綺麗だランベルト」 フワリと空を舞って、ドラゴンになったランベルトの鼻先に口付ける。それから真似をするように力を抜いた。 空にいる筈なのに、水の中を揺蕩っている気がして、流れに身を任せる。肩甲骨あたりがやたらむず痒くなった。バサリと音がしたのと同時に体の感覚がおかしい事に気がつく。視界がやたら高い。「レオン、目を開けてみて?」 言われた通りにすると人型に戻っているランベルトにmgフォンで連続で写真を撮られた。抜かり無い。「レオン可愛いね。綺麗。俺の大好きな青」 ニッコリと微笑まれる。「ちゃんとドラゴンになれたじゃないか」「レオン~かっこいいね」 サーシャとエスが混ざり、その後ろから城にいる者たちが数名駆け寄ってきた。その中にケミルもいる。「レオン、マジで青の一族だったんだな!」 喋ろうとすると「グルル……」と喉が鳴った。このまま言葉は喋れ
Last Updated: 2025-12-08
異世界クロスオーバー 〜例え愛してはいけなかったとしても年下皇子と愛を紡いでいきたい〜

異世界クロスオーバー 〜例え愛してはいけなかったとしても年下皇子と愛を紡いでいきたい〜

バイトの連勤が終わった玲喜を家で待っていたのは、自らをゼリゼ・アルクローズ、マーレゼレゴス帝国の第三皇子だと名乗る男だった。 迷子のコスプレ男だと思った玲喜は、ゼリゼを交番に届ける事にするが、家に帰されてしまう。 不可思議な現象は「魔法だ」とゼリゼに言われ、目の前で言葉を変えられたり玄関の鍵を開けられると信じるしかなかった。 外国人だと思っていたセレナが異世界人の王族だと知り、平凡な庶民だと信じて疑わなかった玲喜自身もまた異世界の王族の血を引いていた。 異世界に転移する事によって、次々と明るみに出てくる祖母のセレナの事と玲喜自身の持って生まれた運命が絡む。
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Chapter: 最終話
 ゼリゼが新しい仮の王として立ち、玲喜が皇后の座に収まると街中が喜んだ。 異論を唱える者など存在しなかった。一ヶ月後には遅れて行われる戴冠式、その前に玲喜の出産予定日が組まれている。 王位継承権の順番で言えば、次の王はマギルかジリルなのだが、二人揃って世継ぎが生まれるのを理由にして、ゼリゼに押し付けたというのもあるが。 その二人と新しい政治の話をしていたゼリゼは、執務室で憤慨していた。「ふざけるなよ、このクソ兄共! 暇なら貴様らが動けば良いだろう! 王直々の命令だ!」「んじゃ、玲喜ちょうだ~い。玲喜いるなら僕が代わりに王さまやって何でもしてあげるからさ~」「あ、それならおれも王さまやるぜ」「玲喜は俺だけのものだ。貴様らはもう死ね」 王族会議という名の兄弟喧嘩が勃発して、近くの山が消し飛んだ。 玲喜が過去にうっかり作ってしまった無人島の大陸もまた海に沈んだのだが、街の人たちも含めて、地響きを感じながら「またあの三人か……」と生温い目で見守っている。 その時の事を色々振り返り、ラルが笑みを浮かべた。 また二人の元へ向かい、ゼリゼに声をかける。「ゼリゼ様、玲喜様をベッドにお連れしましょうか?」「俺が連れていく」 玲喜を横抱きにしてゼリゼはラルと共に歩き出す。「結局世継ぎは双子だったんですか?」「いや……一人だ」「そうですか」 生まれるまであと僅かだ。 もしかしたら玲喜は、子が自分と同じ境遇になってしまうことを嘆くかもしれない。 だが、何も言いはしないが、玲喜はもう知っていてその上で受け止めているような気がゼリゼはしていた。 二人の会話で意識が浮上したのか、玲喜が目を開ける。「あれ……。ごめん、寝てた」「良い。寝ていろ。ベッドまで運ぶ」「平気だ、歩く。動いた方が良いと言われてるし」 ゼリゼに下ろして貰い、玲喜はすっかり重たくなってしまった足を動かす。 喉元が小さく動いた気がして、玲喜は手を当てた。 レジェはまたここで眠りについている。だけど、たまに動く気配をみている限りでは、もう邪悪な気配は感じなかった。 いつか兄弟として普通に話せる日が来るんじゃないかと思ってしまうが、あまり期待はしないようにしている。「なあ、ゼリゼ……ラル、もし生まれる子が、さ……」 どこか言い難そうに言葉を口にした玲喜の頭は、ゼリゼとラルに
Last Updated: 2025-07-31
Chapter: 一時的に皆で日本へ避難
「大丈夫だ。元気に暴れている」「……良かった」 ゼリゼの首に両腕を回して抱きつく。 今なら、セレナが言っていた〝アクアマリンのネックレスが導いてくれる〟と言った本当の意味が分かった気がする。それはきっとレジェを封じる事を指していたのだ。「……」 マギルは色々な意味で凹んでいて、皆と遅れながらも、無言のままマーレゼレゴス帝国へと帰って行こうとしている。 しょんぼりした後ろ姿を見て、玲喜は何だか悪い事をしたような気になった。「マギルごめんな……色んな意味で」 一応謝罪の言葉を口にする。「あー、良いよ玲喜なら」 マギルが後ろ手に手を振り、肩を落としたまま帰って行った。「少し歩くか?」「うん、ありがとうゼリゼ」 相変わらずの田舎具合だが、住み慣れていた空間は心地いい。「アタシは此処で待ってるからごゆっくり~」「分かった。一回りして戻るから」 リンにも手を振って、玲喜とゼリゼは久しぶりの日本の地に歩を進めた。「玲喜、くん? もしかして玲喜君なのか?」「交番のおじさん……」 もう既に定年退職していたが、近くに住んでいたのもあり、たまたま出会した。 玲喜とゼリゼを見て、そのままの姿なのに驚いたものの、元警官は喜んで泣き崩れた。 その時に、玲喜はその後の経過を知る。 日本では、玲喜は失踪扱いされており、交番にいた警官がゼリゼを覚えていたのもあって、二人とも事件に巻き込まれたのではときちんと捜査されていた。 しかし強盗や事件への関連性は薄く、いつしか神隠し扱いとなっていたようだ。そんないわく付きかもしれない場所を買い取る物好きはいない。家の売却の話は瞬く間になくなってしまったらしい。 当時の元警官にも手を振って、家に戻る。もう古くなって埃と泥のようなものに塗れていたが、玲喜は家中にあった喜一郎やセレナの荷物を魔法で綺麗にしてから宙に浮かせた。 引っ越しにも魔法は便利だった。そしてゼリゼと共にマーレゼレゴス帝国へと帰る。その日から、ゼリゼと玲喜も城の再建に取り掛かった。 復興作業から数ヶ月後。短い期間にもかかわらずに、もう殆どが形になっている。「ちょっとマギル、サボり過ぎじゃなーい?」 ジリルの声掛けにマギルが面倒臭そうにため息をついた。「はいはい。やればいいんだろ! ていうかあのバカップルも同じだろう!」「な~に言ってるの
Last Updated: 2025-07-31
Chapter: セレナの絵本
  5 マーレゼレゴス帝国には、いつからか持ち込まれた一冊の絵本が人気を博していた。 双子の少年たちの冒険譚である。 誰かが手書きで書いた絵本らしき異国語の読み物は、マーレゼレゴス帝国では珍しがられて、口伝で広まりその絵本を読むために老若男女問わず列を成して順番待ちをする有様だった。 日本語で書かれた読み物は皆が読めるように今では翻訳されている。その有様を知った新王が、その本を大量にコピーして、街中に無償で配った。 皆喜んで手にして読み、古くなった絵本を魔法で修復しては何度も人々を楽しませた。 もうそれは絵本ではなく、マーレゼレゴス帝国の歴史の教科書にさえなりそうな勢いだった。「~で、双子の少年たちと、皇子さまたちは街の人たちと城を再建させましたとさ」 噴水のある大広場にある木陰で読み聞かせをしていた少女が、絵本を読み終える。すると話を聞いていた男の子が少女に視線を上げた。 薄い水色がかったシルバーの髪色の男の子の首元には、小ぶりにしたアクアマリンのネックレスが光っている。 少女は、アレキサンドライト色をした瞳を持つ男の子に手を伸ばして、そのネックレスを撫で上げた。 大きな粒の中に赤い点が一つだけ深く深く沈みこんでいる。だがあまりにも儚くて消え入りそうだった。「ねえ、リンちゃん」「どうしたの?」 少女の癖っ毛の短い髪の毛が風で揺れる。「どうしてこのお話はここで終わってるの? 続きはー? 結局悪い人はどうしたの?」 ふふ、と笑みをこぼした少女……リンが男の子としっかりと目を合わせた。 リンの黄色の瞳が、チェシャ猫のように細められる。「王さまと皇后さまに聞いてみるといいよ」 すると男の子がムスッとした顔をした。「やだよ。父様も母様もさ、いーーーっつもイチャついてばっかりなんだもん! いつになったら倦怠期っていうやつ来るの? 夫婦ってやつには来るもんなんでしょ? 友達が言ってたよ。でも来ないんだもん。本当っーに嫌になる!」 そう言うと、リンは芝生の上を転げ回りながら大笑いした。「あはははは。仕方ないじゃないか。だってこれ王さまと皇后さまたちの昔のお話なんだから。たくさん苦労した分、平和になった今はイチャイチャくらいさせといてあげなさいよ」「ええええーーーっ!」 男の子が驚きの声を上げる。「なんだよそれ、これ父様と母様の
Last Updated: 2025-07-31
Chapter: ラルが……!
 先程リンが想像した事態となっている。そこで玲喜はある事に気がついた。「なあ……ラルは? ラルもいた筈だろ?」 ゼリゼが痛々しそうに眉根を寄せる。それを見て玲喜は分かってしまった。「う、そ。嘘だ!」「ああ。それはそこの銀髪の皇子を庇って、真っ先に逝ったこの男の事か? お陰でそこの銀髪は殺し損ねた。そのアクアマリンの目を見ていると、不愉快で堪らないと言うに」 空に翳したレジェの左手が、時空の狭間から何かを掴んで引き摺り出す。見慣れた姿が変わり果てた状態となって床に転がされる。「ラル!」「邪魔ばかりするのでな、空気のない時空に閉じ込めておいた」「何してんだよっ、お前!」「うるさい。お喋りもそろそろ飽きた。お前らも目障りだ。全員纏めて消えろ」 ニンマリと嫌な笑みを浮かべる。 レジェの左手の中で、赤黒い炎が生まれて大きくなっていく。マグマが迸る火山火口にでもいるような気分だった。 特大級クラスの火属性魔法攻撃が来る。レターナとレジェ以外の体が硬直した。 ——熱い……っ。 体内の水分も血液も全て沸騰しそうなくらいの熱に、全員顔を顰める。玲喜の腕はゼリゼに掴まれて引き寄せられた。「玲喜、マギルのそのネックレスを引きちぎれるか? それはマギルの魔力制御装置だ」 耳打ちされた言葉に無言で応えるように、玲喜は首元にネックレスを引きちぎった。続いて、ジリルが己の耳に付けていたカフスを全て引き抜く。横でもゼリゼが指輪とネックレスを取り除いた。 途端に三人の魔力が増幅する。「その程度では無駄な足掻きだ」 含み笑いを漏らし、レジェが可笑しそうに肩を揺らして笑った。「玲喜、絵本を思い出せ」「絵本て……セレナの?」「そうだ。あれは絵本というより予知書に近い。セレナはいくつも布石を置いていた。王族の衣装、装飾品、ラルを日本に招いたのも恐らくはセレナだ。俺も布石の内の一つだったのかも知れない。絵本に書かれていたように、全力で浄化魔法と前にラルが教えた闇属性の攻撃魔法を打て。セレナを信じろ」 返事をする間も惜しむように、玲喜が呪文を言葉に乗せていく。 隣にいるゼリゼの言う通りに口にすると、白と緑の魔力が混ざりあう。 マギルの魔力も乗せられているようだ。その上にゼリゼの黒い魔法壁が展開されていき、ジリルの水魔法と全てが融合した。「あ、出遅れてしまいま
Last Updated: 2025-07-31
Chapter: 無くなった筈のセレナの指輪
 ジリルは薄目を開けて、しっかりと玲喜を見ている。「玲喜、来たら……ダメだ……」 ジリルの目の良さは霊体を捉える能力なのだと初めて知る。 以前に入れ替わっていたのを考えると、マギルもまた同じなのだろう。 玲喜は何も出来ない己が歯痒くて唇を噛み締める。 何とか魔力だけは使えないだろうかと試してみたが、肉体に入っていたように上手くはいかなかった。「……、逃げて」 ジリルの目が虚になり、やがて閉じていく。「いやだ! お前らを置いて逃げたくない! リン、何で? どうやったら魔力を使えるようになる⁉︎」 レジェの手から何とかゼリゼとジリルを解放させようと、リンが体を捻ってレジェの足を払うように仕掛ける。 動きは読まれていて簡単に避けられてしまった。「玲喜っ、おれの体に入れ! それならたぶんいける!」「入るって……」「ジリルとおれは昔っから妙な能力があるんだよ。前にやって見せたのもその力だ。ジリルは目、おれは肉体だ。普段はジリルとしか体の入れ替わりをしてないが、今はとにかく時間がない! おれの体の向きに合わせて……っ、自分の体を重ねてみろ。おれの体に入れる筈だ!」 マギルの言う通りにすると、体が吸い込まれるような気がした。 唐突に全身に酷い痛みが走り、顔を顰める。 どうしてこんな酷い状態でマギルが普通に会話出来ていたのか、玲喜には不思議なくらいだった。 背骨や肩甲骨は所々が砕けていて、大腿骨も折れているだろう。左肩も右手首も脱臼していそうだ。 魔力が体内に巡るのを感じて、玲喜が即座に二種の治癒魔法を施す。 マギルがこうなら、ゼリゼとジリルも似たような状態の筈だ。 玲喜は体が完治するなり、勢いよく立ち上がった。 視線の高さが普段と全く違う。動かし難い体を持ち上げて、玲喜はゼリゼとジリルに向けて防御壁を飛ばして、浮遊魔法と数種類の治癒魔法もかけた。「ごほっ、ごほ!」 咳き込みながら二人が床の位置で浮いている。見る間に傷が癒えていき、二人は目を開けた。「お前ら、もしかして巫覡《ふげき》みたいなものなのか⁉︎」 慌てたようにリンが叫んだ。 巫覡とはシャーマンや巫女のような存在で、その身に神や精霊を落として情報を視て知り又は他者に伝えることが出来る。「何それ。よく……っ、分からない~。皇后の血だとは言われたけど、僕たちは産みの親にな
Last Updated: 2025-07-31
Chapter: リンと一緒に
 口々に説明された現実を受け入れたわけでもなければ、理解したわけでもない。 それでも一人だけ此処にいてこの国や日本が壊れて行くのを見るのは、考えるだけで嫌な気持ちになった。 助けてくれた人がいた。こんな己でも必要だと言って、愛してくれた人がいた。家族になってくれた。一緒に食を共にして笑ってくれた人がいた。気にかけてくれた人がいた。 玲喜にもそれだけで充分だった。 淀み切った心がフワリと持ち上げられて、浄化された気になる。刀が刺さった喉元が、とても温かく感じた。 例え何もかもが上手く行かずに滅んでしまうとしても、最後までゼリゼの隣に居たかった。 ——オレの全てはゼリゼにあげた。「オレも行きたい。頼む、連れて行ってくれ」 小さく、しかし言葉はハッキリと玲喜から紡がれた。 真っ直ぐに顔を上げた玲喜が少女を正面から見据える。 曇りの無い瞳は憂いは帯びているが先程のような弱々しさはなく、迷いも見えなかった。そんな玲喜を見て、初めて少女が目を細めて優しく微笑んだ。「改めて、初めまして玲喜。アタシは猫又。リンと呼んで。セレナの残した希望はアタシが守りたい。これは役割とは別にあるアタシの意思。最後まで貫き通させて」「ありがとう、リン」 もう誰も失いたくない。 城の中の人たちも、ラルもアーミナも、マギルもジリルも、料理人たちも、セレナが親友と呼んだこの人も……。誰かが傷付くのは見たくない。 守るなんて強い言葉は言えない。大層な大義名分も掲げていない。 だけど、先程見た惨劇のような光景を見ているだけなのはごめんだった。 せめて、手の届く範囲の人くらいはどうにかしてやりたいと思った。 直接何かが出来なくても、手助けの補助くらいならやれるかもしれない。「リン、急ごう」「偉いね玲喜。セレナの孫だけある。強い子だ」「なあ、なんでセレナは負のエネルギーを生み出したんだ? オレにはそれだけがどうしても分からないんだ」 記憶の中のセレナも、周りから話を聞かされるセレナも、いつも穏やかで優しくて笑っている。玲喜からの問いに、リンが口を閉ざす。固い表情をしながら、再度口を開いた。「詳しい答えは聞かない方がいい。あの時のセレナの悲しみは、例え貴方でも理解出来ないと思うから。それくらい当時のセレナは、王と教会からの裏切りと絶望と痛みと耐え難い屈辱の中にずっとい
Last Updated: 2025-07-31
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