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風野うた
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Novels by 風野うた

訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました)

訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました)

 ヤドリギ横丁の占いの館『レダの家』には、毎日お悩みを抱えた方がいらっしゃいます。私ことカレンは訳ありまして、店主の占い師レダさんの身代わりをしております。最初は、ハラハラドキドキの連続でしたが、最近、人生相談くらいは人並みに出来るようになりました。――――と、油断していたところへ、元婚約者であるあの方が、何故か、こんな裏通りの占い館へ相談に来られたのです…
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Chapter: 銀狐と子猫 8
「手伝いたいのなら勝手にすればいいだろ。俺はカレンと二人で行く」 アルフレッドは銀狐の集団に色々言われても全く動じない。「ああ、もう若いんだから」「一人で突っ走るタイプはだいたい失敗してしまうんじゃ!」「もう、勝手にさせたらいいじゃん。あたしたちはこのまま別行動で行こうよ!」(ダメだ~、会話が早すぎて、誰が何を言っているのかが分からない!!)「カレン、こいつらのことは気にしなくていい」 アルフレッドはカレンに向かって優しく話し掛けた。 一方、五頭の銀狐たちには厳しい態度を取る。「無闇に俺たちに近づくな!!」(え、怒鳴った! 殿下が強いの? 一番、若造っぽいのに!?)「群れるな! 口を閉じろ! 敵に勘づかれるだろ!」 アルフレッドの強気な姿勢にカレンはハラハラしてしまう。「ああ、分かった、分かった!! 散るから! 俺たちは遠くからカレンさまの護衛を務める。それでいいか、アル?」「―――ああ、そうしてくれ」 アルフレッドが渋々了承すると、銀狐たちは一斉に四方八方へ散っていった。「ああ、もう、時間を無駄にした。最初から黙って護衛していればいいものを!!」「まあ、お手伝いに来て下さったようですし、そんなに悪く言わなくても……」「お手伝い? あいつらはカレンのことを見たかっただけだ!」(私を見たかったって……、どういう意味? 殿下に釣り合うかとか、そういう見極め的な……? こういう状況で、そういうのはお断りしたいけど……) カレンは真面目に考え込んでしまう。「そんなに悩まなくてもいい。理由は君が可愛いからだ」「―――可愛いから!? 流石にそんな理由ではないでしょう?」「さあ~、急いで目的地へ向かうぞ!」 アルフレッドはカレンの質問をはぐらかすと「遅れを取り戻す」と言って、再び、風を切
Last Updated: 2026-05-07
Chapter: 銀狐と子猫 7
「完了したわ!」 カレンの言葉を聞いて、アルフレッドは、レダに念話で荷物の確認をした。 『レダどの、二つ目の荷物の確認を!』 『ああ、二つ目が金だったんだね。無事に入ってるよ』 『分かった。カレンに伝える。それと、浮島にグリフォンがいた』 『はぁ? 何だって!?』 『真っ黒になっていて、とても神獣には見えなかった。レダどのには悪いが、遠慮なく倒した』 『はぁ~ぁ、そうだったんだね。まぁ、闇落ちしているなら、倒すしかないからねぇ。アルフレッド、面倒をかけてごめんよ。レベッカめ! あたしの眷属に手を出すなんて、千年早いんだよ!! 次の三つ目の倉庫も十分、気を付けていくんだよ。夜会ではなく、そちらにレベッカが現れる可能性もないとは言えないからね』 『分かった』 「カレン、レダどのに確認が取れた。荷物は無事だ。暗くなって来たから、次へ急ごう。ただ、少しだけ……」 「はい、どうしました?」 子猫のカレンは首を傾げる。 すると、突然、アルフレッドは銀狐の姿から人間に戻った。 「―――抱きしめたくなった」 アルフレッドは両腕を伸ばして、子猫のカレンを抱き上げる。 そして、ギューッと抱き締めた後、目線が合う高さまでカレンを持ち上げた。 「カレン、痛いところはないか。水面に打ち付けられただろう?」 「あ~、いえ、落ちた時の記憶はなくて……。ただ、どこも痛くないので、大丈夫だと……」 大好きな相手から、真っ直ぐ見つめられて、子猫は動揺する
Last Updated: 2026-05-06
Chapter: 銀狐と子猫 6
危険なグリフォンと対決しなくても良いよう、カレンは倉庫の内部には侵入せずに荷物を移動しようと決意した。 カレンはアルフレッドの耳元まで、ズッ、ズッ、ズッと落ちないように気を付けながら、腹ばいで移動する。 「アル、ここから内部の荷物を移動させようと思うの。サポートをお願い!」 敵に悟られないよう、かなり小声で……。 それでも、アルフレッドにはちゃんと伝わったようで、大きく頷いてくれた。 早速、カレンはアルフレッドの背中で集中を高め、先ほど透視した荷物を脳内に思い浮かべる。そして、一気にゴォ~~~~~~ッと、異空間へ引っ張った。 (ん~、上手く出来たかな? 倉庫の内部をもう一度確認してみよう。『透けろ!』―――おおっ! 倉庫が空っぽになってる!! ここまでは成功ね。あとは、あの荷物を……) ド、ドーーン!!!! 突然、鼓膜が破れてしまいそうな爆破音がした。 続いて、大きな衝撃波が来て、カレンの張った結界を粉々に破壊する。 強い風を受け、カレンはアルフレッドの背中から、宙に投げ出されてしまった。 スローモーションのように子猫のカレンは湖へと落下していく。 (あ~、殿下は無事みたい……。盾が利いて……、良かった……) 空中で強風に耐えたアルフレッドは、背中から滑り落ちた子猫のカレンを見失ってしまわないよう、視線で追っていた。 そして、風が止んだので、助けに向かおうとした、その時……。 「アル! 先に敵を!!」 (私は後でいいから……) ―――大声で叫んだ後、カレンの視界は真っ暗になった。 彼女の叫び声を聞いて、アルフレッドは冷静さを取り戻す。 今は攻撃を仕掛けてきた敵を無視している場
Last Updated: 2026-05-05
Chapter: 銀狐と子猫 5
「そう、エドの婚約者のローラさんです!」「カレン、会いに行かなくても、あのご令嬢なら今夜の夜会に乗り込んで来そうじゃないか? クククッ……」(殿下も私と同じ様なことを考えていたのね……)「私もローラさんなら、乗り込んで来そうだな~とは思いましたけど……。でも、今日の夜会は、黒魔女レベッカが来るかも知れないのでしょう? さすがに危険ですから、レダさんが登城を阻止しそうじゃないですか?」「いいや、レダどのなら喜んで乗り込ませるだろう。それも演出の一つにしてしまおうということくらい考えていそうだ。フッ、フフフ」 アルフレッドは下を向いて笑いを押さえ込む。―――ここからは真面目な話をしないといけないからだ。「カレン、話を戻すぞ。浮島の魔物で気を付けた方が良いのは、一頭のグリフォンだけだ。あいつはまあまあ強いから。それから、グリフォンを置いているということは、あの奥に金が隠されている」「グリフォンって、どんな魔物ですか? それから、金があるって、なぜ分かるの?」「グリフォンの見た目はライオンに羽が生えたような感じだ。飛んで来ると厄介だから、先に羽を燃やして動きを封じないといけない。グリフォンは金を好むといわれている。あいつらは大体、金鉱脈のある場所に巣を作るんだ。だから、金が隠されていると確信したんだ」 アルフレッドの話を聞いて、カレンは目を見開く。「なるほど! 金の近くにいる習性があるのね。で、グリフォンと私たちは真っ向から戦わないといけないの? さっきみたいに眠らせるのはナシ?」「カレン、戦うにしても、真っ向から突っこんでいくようなことはしない。出来るだけ気配を消して近づく戦法を取る。グリフォンは確実に仕留めたいからな。中途半端に眠らせて放置したりしたら、俺たちが去った後、グリフォンが暴れ出して、近隣の住民に被害を及ぼすかもしれないだろう?」 アルフレッドの説明は納得出来るものだった。カレンも近隣住民に被害が出るのは嫌だ。「分かりました。確実に仕留めましょう」
Last Updated: 2026-05-04
Chapter: 銀狐と子猫 4
「カレン、魔力なら、俺がいくらでも供給してやるから心配するな」(ん~ん、ウジウジしていても仕方がないわよね。だって、何が何でもしないといけないのだもの……)「分かった。やってみます。でも、魔力が足りないって、どうやったら分かるの?」「それは心配しなくていい。俺がカレンの様子を見て補充するから。取り敢えずやってみろ」(なんて、力強いお言葉!!)「では、まず姿を元に戻します」「ああ」 カレンは子猫の姿から、いつもの姿に戻った。 深呼吸を一回、二回、三回、息を整える。 両手を広げて、集中。(今日はズ~~~~~~ッと引っ張って、ゴォ~~~~~~ッと押し込むくらいの感覚でいかないと、この量は無理~!!) 荷物を強い力で吸い込むイメージを脳内に浮かべて、カレンは手先から魔力を放出する。 隣でカレンの指先から流れ出る魔力の強さを計っていたアルフレッドはまだ助ける必要はないと判断した。 カレンから、十分な魔力を感じたからである。 眼下の大荷物はスッと消えた。(次は『レダの家』の地下倉庫、左側の六枚目のドアの奥にある倉庫へ荷物を入れ込むわよ!!) カレンはゴォ~~~~~~ッと力いっぱい押し込んだ。 アルフレッドは上手く送られたかどうかを、即座にレダへ念話で確認する。『大丈夫、六番へバッチリ入ったわよ』と、レダから直ぐに返事がきた。 相変わらず謎の多い『レダの家』である。 今回の荷物は兵器と金品だ。横取りされてしまったら大変なので、『レダの家』を倉庫として大いに活用させてもらう。 金品については後日、周辺諸国へ返還することになっている。武器も全体量を把握してから、各国と協議する予定だ。「カレン、『六番へバッチリに入った』と、レダどのから返事があった。次に行こう!」「ああああ~、良かった!! 本当に良かった! 滅茶苦茶、緊張した~! 私、凄い!」 小声で喜びを伝えて来る、カレン
Last Updated: 2026-05-03
Chapter: 銀狐と子猫 3
「カレン、草が邪魔で見えないのなら、もう一度、俺の背中へ乗るといい。この草むらの先に大岩がある。見張りは5名。相手を傷つけたくないなら、俺が魔法を使って眠らせることも出来るが……、どうする?」 カレンはピョンとアルフレッドの背中へ飛び乗る。アルフレッドのいう通り、前方に大きな岩があった。 ところが、五名の見張りは見えない。「アル、見張りはどこにいるの?」「ああ、あの大きな岩は入口で、見張りはその奥にいる。カレン、透視して見てみろ」(透視なんて、したことがないのだけど!?)「どうやって?」「そうだな……。カレンは感覚的な魔法が上手いから、透けろと願ってみたらどうだ?」(感覚的って、何となく馬鹿にされているような気がするのは、なぜ……) カレンはアルフレッドのアドバイスが、あまりにザックリ過ぎていて、何となくイラッとしてしまう。 ただ、念のため……、以前、空間移動魔法で煮詰まっていた時にアルフレッドのアドバイスで上手く出来たので、一度くらいは試してみることにした。 カレンは大きな岩をジーッと見つめながら『透けろ~』と願う。 すると、軍服のようなものを身に纏った男の姿がボヤ~ッと見えてきた。(あっ、あ~~~~!? 見えた!? 本当に見えたわー!! ウソでしょ!?)「ああ、その様子……、見えたのか! やはり、カレンの能力は、感覚とか、感情に左右され易いということか」「なんで、そんなことが分かるんですか!?」「いや、アレと親子だからな……」 アルフレッドはカレンに聞こえないくらい小さな声で呟く。 彼の脳裏にはグジグジと思い悩むレダの顔が浮かんでいる。「え? 何?」「いや、何でもない。この後の二か所も結構遠いから、早く済まそう」「は~い。では、殿下、敵を眠らせてください。怪我人
Last Updated: 2026-05-02
大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)

大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)

 ローマリア王国には大斧を振り回し、多くの武勲を立てたビアンカという女戦士がいる。彼女は百七十八センチの長身で軍服をキリッと着こなし、肩口で真っ直ぐに切り揃えられたサラサラの黒髪をいつも靡かせ、切れ長の目元にはこの国では珍しい紫色の瞳。年は二十一。 ――――ある日、ビアンカは王太子に呼び出され、国軍から辺境伯領への移動を命じられる。『これはそなたにしか出来ない特別任務である』と王太子は強調し、何故か彼女には花嫁衣裳が用意された。 ――――リシュナ領(辺境伯領)へ向かったビアンカを待ち受ける運命とは?
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Chapter: 囮になってみた!!結婚4日目・神だろうと何だろうと 3
 神聖な空気に包まれた祭壇をまじまじと眺める、ビアンカ。 等間隔に並んだ柱と磨き上げられた白い石の床、壁、そして、調度品。――――当然のことながら、生活感など皆無の空間である。 生命体の気配もなく、神殿内には植物も見当たらない。(幻想のように浮かんでいる畑の風景は除いて……) 本当にこの神殿に神はいるのだろうか? ビアンカは疑う。(神は人間と違い、食事をしたり、誰かとお喋りをしたり、運動をしたりしないのか? それに使用人のような者もいないようだ。澄み切った空気は清々しくて気持ちいいが、少し殺風景過ぎるような気もする……) 神殿の静寂も少し不気味に感じる。ユリウスの話の通りなら、時の概念もビアンカ達のいる次元と違うのかも知れない。(既に『はい』と返事してしまったが、後継者の儀式とはどういったものなのだろう。もし、冒険物語のように『ドラゴンを倒してこい!』というような課題を与えられたら……。炎を防ぐ鎧くらい着用しておくべきだったか!? この軍服では防御力が……) 分からないことだらけで、ビアンカはとうとう防具の心配までし始めてしまう。 彼女が隣のユリウスをチラリと見ると、彼もビアンカの方を見ていて、パチッと目が合った。 胸にぬくもりを感じ、ビアンカの表情筋が少し緩む。「ユリウス、儀式は(難しいのですか)?」 ビアンカは誰に聞かれてもいいように控えめな発言を心がけ、本心は目で訴える。「いいえ、そんなに心配しなくても大丈夫……、ブッ、クククッ……」 真面目な質問をしただけなのに、なぜか、ユリウスは下を向いて笑い出した。(今の会話に笑うポイントなんて無かったと思うのだが?) ビアンカは眉を顰める。「―――ユリウス?」「ア、ハハッハ……、失礼しました。では、ここの主を呼びましょう」
Last Updated: 2026-05-07
Chapter: 囮になってみた!!結婚4日目・神だろうと何だろうと 2
(この規模の畑が城壁の中側にあるというのは本当に珍しい。領都バリードはやはり桁違いの要塞都市だな。―――その上、こんなに険しい峡谷が領都を守るように包み込んでいるのだから……、これは簡単に落とさせないだろう。ただ、魔法使いが仲間内に居れば、かなり違ってくるかもしれない。―――しかしながら、魔法使いは深刻な人手不足で……) ビアンカはバリー峡谷を眺めながら、領都バリードを陥落する方法を考えている。『何故?』と聞かれたら『職業病です』としか言えない。「―――権限させます」「へっ?」(ケンゲン!? えっ、どういう意味……) ユリウスは大地に両手を付いて、何かをブツブツと唱え始めた。―――小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、麦の穂のサワサワという騒めきなどの音が、一気に遠ざかっていく。(何だ!?これ……? 変な感覚……。音が奪われていく。鳥の声が……って、ん?)「なっ! 巨大な神殿だ!! ユリウス、これは一体どういう仕組み!?」(広大な畑を覆ってしまうくらい大きな神殿……。しかも、神殿はガラスのように透き通っているじゃないか。美しい……) 農園の上に透明な神殿が浮かび上がって来た。ビアンカは陽の光を浴びて、神々しく光っている神殿に目が釘づけになってしまう。「仕組み?―――そうですね~。同じ場所にある別次元と言ったら分かりますか?」「別次元?」 ユリウスは自分たちの暮らしている世界とは異なる世界が無限に存在しているという話を始めた。 物の重さや時間などの概念がそれぞれの世界で異なるということ、生命体もそれぞれの世界で異なる姿や能力を持っているということ、そして、それを創り出しているのは神々であるということをビアンカへ説明していく。 最初はチンプンカンプンだったビアンカも、彼の丁寧な説明を聞いて、何となく
Last Updated: 2026-05-06
Chapter: 囮になってみた!!結婚4日目・神だろうと何だろうと 1
「……ッ」 荘厳で巨大な神殿が突如、目の前に現れた。ビアンカはビックリして言葉を失う。(数秒前まで、たわわに実った麦の穂が風で気持ちよさそうに揺れていたのに!?)――――遡ること二十分。「ユリウス、二人で城の正面から堂々と出て行ったら騒ぎになりませんか」 今二人は、神殿で旧イリィ帝国の後継者の儀式を行うため、城の正面玄関から少し下ったところにある正門へ向かって歩いている。 共にリシュナ領軍の真っ黒な軍服を着用し、ビアンカは相棒の大斧を担いでいた。 この城は切り立った崖の上という地形的な理由と要塞都市の心臓部としての機能面から、出入り口はこの正門だけだ。 当然の如く、通常の城よりも門番は多いし、通り抜ける際には厳重なチェックを受ける必要がある。「―――騒ぎにはならないでしょう。城の前は農園ですから」「まぁ、そう言われてみれば……、そうですね。ただ、神殿まで歩いて行くとは思いませんでした。ここから近いのですか?」(神殿に行くというから、魔法を使って飛んでいくのだと思っていたのだが……)「はい、すぐに着く距離です。魔法を使っていくほどではないですね」「そうですか……」 ビアンカは空を見上げた。今日は雲一つなく晴れ渡っている。(教会で式を挙げた後、ここへ馬車で来るときに見えた景色の中に、神殿らしき建物など一つも見当たらなかったのだが……。―――ユリウスのいう『直ぐに』とは、一体どのくらいの距離を指すのだろうか。少なくとも、この領都内ではなさそうな気が……) ビアンカがキョロキョロと辺りを見回している間、ユリウスは他の考え事をしていた。 温室を出た時に庭師のグラードから『フォンデ王子殿下がビアンカ様の紫色の瞳のことを友達に伝えなければと話していらっしゃいました』という報告を受けたのである。 もし、フォンデが紫の瞳の本当の意
Last Updated: 2026-05-05
Chapter: 囮になってみた!!結婚4日目・成長期
 温室の外でグラードが必死にフォンデを追い払っていたということなど知らない二人は……。 世間に公表出来ない秘密の話を続けていた。「何故にいきなり儀式!? 勝手にそんなことをしたらマズいのではないですか?」(優しく笑ったと思ったら突然、飛んでもないことを言い出す……。この瞳がイリィ皇家の後継者の『証』だとしても、私は今までただの人間として生きてきた。それに今でも私は十分強い。だから、神の力など必要としていない。――というか、この大陸の国々に了承を取らなくていいのか? イリィ帝国は滅びた国とはいえこの大陸を治めていて、各国のルーツとなっている。私が後継者の儀式を強行して、何かしらの影響が他国に出たらどうするつもりだ?)「ビアンカ、あなたが後継者の儀式を終えたら、ターキッシュ帝国の侵攻を防ぐことが出来ます」「―――侵攻を防ぐ?」「はい、あちらは第四皇子が神の力を得ることを見込んで、この大陸を狙っているわけですから、あなたが儀式をして神の力を継承してしまえば、余程のバカじゃない限りこの大陸には今後、手を出さない筈です」「『余程のバカじゃない限り』ですか……」「ええ、そうです」(そうか……。私は神の力やこの大陸の国々のことばかり考えていたが、ユリウスはこの大陸を守る方法を考えていたのか!! あ~、視野が違い過ぎたな……。しかし……)「だとしても、せめてイリィ大陸の各国から了解をもらった方がいいのではないですか?」「了解なんて要りませんよ。どうせバレませんから」 サラッと恐ろしいことを言うユリウス。(迷いのない男の迷いのない発言!!でも~~~、バレないって、本当?) ビアンカはジト目でユリウスを窺う。彼はこんなに重要なことを話しているのに、バナナジュースを美味しそうに飲んでいる。(はっ!? ユリウスは十七歳……。もしかして、今、成長期なのか? 
Last Updated: 2026-05-04
Chapter: 囮になってみた!!結婚4日目・曲者
「ねぇ、ユール見なかった?」 ふらりと現れたのはサルバントーレ王国のフォンデ王子だった。 温室の前で休憩しているフリをして、辺境伯夫婦の警備をしていた庭師グラードは気を引き締める。「ごきげんよう、フォンデ王子殿下。申し訳ございませんが、わたしは閣下を見かけておりません。お探しでしたら、執事に聞いて参りましょうか」「うううん、大丈夫だよ。急ぎの用事じゃないから」「左様でございますか」 グラードはほっとした。この様子ならいつもより簡単に引き下がってくれそうだ。しかし……。「ああ、そうだなぁ~。それなら、ビアンカでもいいや。―――ねぇ、ビアンカは何処にいるの?」 フォンデ王子はグラードに笑顔を張り付けて詰め寄る。 グラードは彼が辺境伯夫人の名を呼び捨てにしたことを咎めたかった。だが、フォンデ王子はグラードを挑発するためにワザと言ったのかも知れない。 ここで相手の罠に掛かったら、長くなりそうだと判断したグラードはフォンデ王子の軽口を聞き流すことにした。「ビアンカ様は私室にいらっしゃいます。ここのところ、スケジュールが詰まっていらっしゃいましたから、午後はゆっくりなさるのではないかと……」 グラードは顔色一つ変えずに、あらかじめ用意していた文言をフォンデ王子に伝える。 ここで嘘を吐いているとフォンデ王子に悟られたら面倒なことになってしまう。 背後の温室に二人が居ると知ったら、相手の都合などお構いなしに飛び込んで行くと分かっているからだ。―――フォンデ王子というのはそういう人物なのである。「そっか~、疲れているのか~。うん、新婚さんだもんね。ユールはいいなぁ~」「閣下が楽しそうにしていらっしゃる姿を見るのは使用人として嬉しい限りです」 グラードは心からそう思っている。 当初、辺境伯としてリシュナ領を治めることになったユリウスは城の使用人たちやリシュナ領軍の兵士たちに厳しく正しく無駄のない態度を貫き、少し近寄りがたい雰囲気だった。
Last Updated: 2026-05-03
Chapter: 囮になってみた!!結婚4日目・証 2
「遠慮なく行って下さい。もう一人は誰ですか!!」「……」 数十秒ほど二人で見つめ合った後、ユリウスは重い口を開いた。「―――あなたです」「……?」「ビアンカ、あなたです」「はぁ? ユリウス、何を言っているのですか? 私と旧イリィ帝国に接点なんてありませんよ?」 ビアンカはユリウスに食って掛かる。 彼女の父はこの国の建国時から代々続いている侯爵家の一人っ子で、母もこの国に古くからある伯爵家の出身だ。 そのため、ネーゼ王国の王家と繋がる可能性など全くないという確信がビアンカにはあった。「ビアンカ……」「はい」「イリィ皇家の後継者の『証』はその紫の瞳です」「目が『証』!? 確かに紫色の瞳は少し珍しいかも知れませんけど……、かの国と私の間には何の繋がりもないのですよ?」(目の色だけで決めつけるのは流石に……)「ビアンカ、宰相(ピサロ侯爵・ビアンカの父)のお母上は、ネーゼ王国のご出身でしょう?」(父の母? 私の祖母のことか)「父方の祖母マーシャは現在、フーリー領(ピサロ侯爵家の領地)で隠居していますが、彼女の実家はこの国のクラン伯爵家です」「ビアンカ、イリィ皇家の血を引いているのは前妻のサヴァンヌ殿です。彼女はネーゼ王国フローレンス公爵家の出身で父親は王弟のヴィンセントです。あなたの祖父、モルト殿の元へ嫁いで来ましたが、あなたのお父上を出産する際に命を落とされました。マーシャ殿は後妻です」「嘘!? 前妻、後妻とか、全然、知らない……」 ビアンカはテーブルの上でこぶしを握り込む。(私の知らない祖母がいて、その祖母がネーゼ王国の王弟の娘!? そんな話は初めて聞いた! 母上や兄上はこのことを知っているのか? こんな重要なことを何故、私に隠していたんだ! 父上~!!!) ドン。ドン。 ビアンカはテーブルをこぶしで二回叩いた。破
Last Updated: 2026-05-02
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