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Novels by 風野うた

大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)

大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)

本編、完結しました! 番外編は9月から順次公開して行きます。よろしくお願いします。  ローマリア王国には大斧を振り回し、多くの武勲を立てたビアンカという女戦士がいる。彼女は百七十八センチの長身で軍服をキリッと着こなし、肩口で真っ直ぐに切り揃えられたサラサラの黒髪をいつも靡かせ、切れ長の目元にはこの国では珍しい紫色の瞳。年は二十一。 ――――ある日、ビアンカは王太子に呼び出され、国軍から辺境伯領への移動を命じられる。『これはそなたにしか出来ない特別任務である』と王太子は強調し、何故か彼女には花嫁衣裳が用意された。 ――――リシュナ領(辺境伯領)へ向かったビアンカを待ち受ける運命とは!?
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Chapter: ????結婚14日目・エピローグ(最終話)
 先日、ユリウスは言った。『タタラ工房で作ってもらった新しい武器にお好きな効果を付与しますよ』と。 ビアンカは何を付与すべきか、じっくりと考えたかった。だから、返事を少し待ってもらっていたのである。「はい、決めました」「では、聞かせて下さい」「『眠り』の効果を付けて下さい」「『眠り』ですか?」 首を傾げる、ユリウス これまで、武器に付与した効果といえば、攻撃力の上昇や体力の回復など、武器使用者のためになるものばかりだったからだ。「はい、大斧でわずかに触れて相手を眠らせられるのなら、命も奪わず、ケガも最小限で済みます」 ビアンカから『眠り』の効果を選んだ理由を聞き、ユリウスは目を見張る。―――最強の女戦士は誰よりも命を尊ぶのか……と。「眠らせて、命を守る……。素晴らしいアイデアだと思います。では、早速、大斧に『眠り』の効果を付与しましょう」 ユリウスは大斧の柄を握り、ブツブツブツと小声で呪文を詠唱する。(こうして欲しいと言ったことを、すぐに実現してしまう……、やはり、ユリウスは凄い) 宙に小さな魔法陣が浮かび上がった。そして、その小さな魔法陣は大斧の中へ、スゥ~と吸い込まれていく。 魔法使いが大好きなビアンカは彼の手際の良さと計り知れない能力に惚れ惚れしてしまう。「完了しました。どうします?  試し斬りをするなら、Xを呼びますが……」「X、まさかの試し斬り要員!?」「ええ、それくらい喜んでするでしょう」 ニヤリと悪そうな微笑みを浮かべるユリウス。「喜んで……?」(そういえば、ユリウスはXにどんな罰を与えたんだ? ん~、聞きたいような……、聞きたくないような……) 王国軍魔法師団の諜報員Xは先日、領都バリードで目立つ行動をしてユリウスを怒らせた。 その結果、彼には厳しい罰が与えられたらしい。ただ、ビアンカは罰の内容までは知らない。「では、次の休憩の時に呼びましょう」「ソウデスネ(X、ガンバレ……)」 ユリウスは向かい側の席に散らばっている書類に手を伸ばす。「ユリウス、仕事は大丈夫だったのですか?  ここのところ、かなり無理をしていたでしょう」 ハネムーンの出発ギリギリまで、ユリウスは連日徹夜で仕事を片付けていた。 そして、今朝、ようやくサジェやモルテに留守を任せられる状態になったのだという。「一応、区切りの
Last Updated: 2026-08-04
Chapter: ????結婚14日目・王妃の贈り物
 絹のような触り心地の銀髪を優しく撫でて、その後は車窓を流れる景色を見つめていた……。 ビアンカは今、ユリウスと馬車に乗っている。(峡谷からだいぶん下って来たな。海沿いの街道に入るには、もう少し掛かるだろうけど……) 視線を車内へ戻してみると、向かい側の席に散乱している書類が目に入る。―――ちなみに、その書類の持ち主は彼女の膝の上で爆睡中だ。(ユリウス、当分、起きないだろうな~~~) あの日、宰相が預かって来た王妃の手紙には『あなた達にハネムーンを用意したから楽しんで来て~』という旨が記されていた。 内容が内容なだけに、ビアンカはその場でユリウスに王妃の手紙を見せたのだが……。『―――出発は一週間後よ! 楽しみにしておいてね!!』と、軽い口調で締め括られた手紙を見て、ユリウスは愕然としてしまう。 なぜなら、彼はリシュナ領の業務、魔塔の業務、ターキッシュ帝国の面倒事を抱えていて手一杯だったからだ。 彼はすぐに日付を先延ばしにして欲しいと王妃へ打診した。 ところが『ハネムーンは今、行かないとダメよ!! それにポリナン公国の大公一族があなたたちの訪問を心待ちにしているの!!』と、あっさり却下されてしまう。 スケジュールの変更で頭を悩ませるユリウスの隣で、ビアンカは『どうしてハネムーン先がポリナン公国なのだろう』と考えた。 真っ先に思い浮かんだのは公子夫妻や魔法使いアントンの姿だ。 ビアンカのファンを公言する夫人と妻に優し過ぎる公子、そして、人を連れ去るのが好きな可愛い魔法使い……。―――ん~、彼らはハネムーンとは関係なさそうだ。 他にポリナン公国の知り合いは居なかったかな~と考えていると……、突然、閃いた!! 王妃がポリナン公国の前大公の弟の娘だったということを。 間違いなくこれが理由だろう。 また、王妃の実家があるということは、彼女の親族もそこに住んでいるということだ。ここで、あることを思いついたビアンカは、ユリウスにお願いごとをした。『ポリナン公国へ行ったら、ユリウスの御爺様と御婆様に会いたいです!』 期待に満ちた目で彼を見つめるビアンカに対して、ユリウスはクールな表情でこう答えたのである。『―――ビアンカ、私はポリナン公国の祖父母と会ったことがありません。それに相手は私のことを知らないと思います』『えっ、どうして?』『
Last Updated: 2026-08-03
Chapter: 色々決着!!結婚7日目・同じ顔をしている者同士 3
「主神ダイア、何度も言いますが、私は神の力を必要としていません」 ビアンカは改めて、断りを入れる。「しかし、このままではターキッシュ帝国が……、あっ!」 ここで主神ダイアは両手で口を塞いだ。 人の世に関することを神が口にするのはタブーとされているからだ。「ダイア、私達の世界に関与するつもりですか?」 ユリウスは彼の失言を追求した。「すまない。本来、神は人の世に手を出してはならないというのに……。ただ、ビアンカを狙っていると知ってしまったら……」「それは私があなたの娘に似ているからですか?」 ビアンカはつい口を滑らせてしまう。―――今まで、夢の中で見たことは不確かな情報だから……と、口に出すことは無かったのだが、本当に……、つい、ポロッと……、口から出てしまったのである。「そうだ。初めて会った時、あまりにもマイアに似ていて、つい隠れてしまった」(隠れた? ああ、あの時か……) ビアンカは初めて辺境伯城の前に広がる麦畑から、異次元の神殿に行った時のことを思い出す。(ユリウスが半笑いで柱の影に呼びかけて……、主神がここに女性が来るのは久々で~とか言い訳をして出て来た時のことだな) 娘が現れたと思って驚いた主神ダイアの気持ちも分からなくはない。ただ、ビアンカは主神にどうしても言っておきたいことがあった。「確かに私は主神の娘に似ているかも知れません。ですが、私はあなたの娘ではありませんし、マイア嬢の生まれ変わりでもないです。度を越えた特別扱いはしないで下さい」「ああ、ビアンカはビアンカだ……。それでいい」 主神ダイアは両腕を組んで、大きく頷く。「では、これを持って、神の力の件は終わりにしましょう。今後も人間は人間同士で新たな時代を作っていきますから、神様たちはくれぐれも見守るだけにしておいて下さい」 ビアンカは主神ダイアにクギを刺す。「分かった約束する。それから、魔塔主とビアンカだけではなく、私と似ている父上も、いつでも神殿に訪れるがいい。
Last Updated: 2026-08-02
Chapter: 色々決着!!結婚7日目・同じ顔をしている者同士 2
 ピサロ侯爵は自分の気持ちを落ち着かせるため、フゥ~と深呼吸をした。 ユリウスは気持ちの整え方が親子で似ている……と、冷静に観察してしまう。「父上、私は大丈夫です。ご心配なく」「お前はいつも……、本当に……」 ピサロ侯爵はあっけらかんとしているビアンカを見て、気が抜けた。「話を戻しましょう。ダイア、五百年前に女神マリアは何を?」 ユリウスに促されて、主神ダイアは女神マリアから聞いた話を語り始める。 女神マリアは主神ダイアが神の力『カリスマ』を子孫に与え続けることを懸念していた。『カリスマ』は時に不幸を呼ぶ。明らかに国を治める能力のない者が後継者に選ばれて、身に余るほどの力を得てしまうのは危険なことだからだ。 それでもずっと見守るだけにし、口を挟まなかったのはイリィ大陸が概ね平和で豊かだったからである。―――しかし、ついにその時がやって来た……。 五百年前に現れた皇帝カヴァールは皇帝となるべき器を持ち合わせていなかった。 彼は即位と同時に多くの妃を高位貴族から娶り『紫の瞳を持つ皇子だけを産め。それ以外は皇族として認めない』と、彼女たちに命令したのである。 幸か不幸か、四人の妃がそれぞれ一人ずつ紫の瞳を持つ皇子を産んだ。 つぎに皇帝カヴァ―ルは、四人の妃たちの目の前に『後継者に選ばれた者の母親を皇后にする』という餌を吊り下げた。―――彼は四人の皇子たちをゲームの駒にして、妃たちを競わせたのである。 その結果、イリィ帝国の貴族は四つの派閥に分裂した。自分の支持する皇子と妃に力をつけるため、裏金を不当に集めて支援者を増やし、敵陣を貶めようとスパイを放って、足を引っ張り合ったのである。 政治は腐敗の一途を辿り、経済は混乱した。民は重い税金を払うだけで精いっぱいになり、食べるものを買う金もなく、やせ細っていく。―――皇家や貴族への不満に対する暴動を民が始めるまで、左程、時間は掛からなかった。 愚かな皇帝カヴァ―ルのせいで、イリィ帝国は急速に衰退していく。 気
Last Updated: 2026-08-01
Chapter: 色々決着!!結婚7日目・同じ顔をしている者同士 1
 シトシトと穏やかに大地へ潤いを与えていた雨はいつの間にか止んでいて、雲の隙間から薄明光線が降り注いでいた。―――リシュナ大陸に主神ダイアが降臨するのは数千年ぶりのこと。 ところが、明るい光に包まれている主神ダイアの表情はどことなく冴えない。(表情も暗いし、何より顔色が悪い。この数日の間に何かあったのか!?) その上、ビアンカと視線が合うと彼は気まずそうに視線を足元に落とした。ビアンカは理由が分からず、首を傾げる。 トン。―――ピサロ侯爵はビアンカを肘で小突いた。(ああ、もう、父上……! 『こいつは誰だ?』と言いたいのだろう? しかし……『彼は神です』と、ここで口に出していいのか? ん~、こういう時は……、ユリウス~!!) 判断に困ったビアンカはユリウスの袖を引っぱる。「あのう、ユリウス。父上に彼のこと……」 ユリウスは十秒ほど顎に手を当てて考えてから、その場に居た者たちに指示を出した。「私が温室へ強固な結界を張ります。話はその中でしましょう」 ユリウスが結界を張ると言い出したので、ピサロ侯爵は『この自分とそっくりな人物は何者なのだろうか……』と困惑する。♢♢♢♢♢♢♢ 雨上がりの中庭は葉っぱや花に付いた水滴が、雲間から真っ直ぐ落ちて来る強い光に照らされて、ダイアモンドのように煌めいていた。 しかしながら、ここの四人は中庭の植物を鑑賞することもなく、そそくさと通り抜けて、温室へ急ぐ。 全員が温室に入った瞬間、ユリウスは強力な結界魔法を掛けた。「結界を張りました。これで盗み聞きされる心配もありません。では、まず、宰相にご紹介します。この方はこの世界を創造した主神ダイアです。それから、ダイア、彼はビアンカの父、ピサロ侯爵です。この国の宰相をしています」 ユリウスに軽い口調で神を紹介され、ピサロ侯爵の脳内に大きなクエスチョンマークが浮かぶ。
Last Updated: 2026-07-29
Chapter: 色々決着!!結婚7日目・鉄拳制裁 2
 テオドロスはビアンカが本領を発揮した姿を知らない。 渡り廊下で連れ去られそうになった時もビアンカはたいした抵抗もせず、おとり捜査のつもりで彼についていったし、その後も情報を聞き出すことに専念した。 まさか相手が略奪婚を狙っていたとは思わなかったが……。「テオドロス、あの時、お前は私が抵抗しないのをいいことに好き勝手なことをしてくれたな。今回はそのお返しだ。しっかりと受け取れ!!」 ボグッ。 重い音がした。テオドロスは頬に強打を食らい、口から血を吐く。―――ユリウスは背を向けた。 言うまでもないが……、怖いからではない。いきなり戦士モードに入ったビアンカを見て、笑いが込み上げて来たからだ。 ユリウスと一緒にいる時の可愛いビアンカと、戦士モードに入った時の鬼のような形相をしている彼女はギャップがあり過ぎて、色々と辛い……。笑い上戸なだけに……。「お前、紫色の瞳を持つ後継者候補だからと調子に乗って、良からぬことを企んでいたのだろうが……、残念ながら、今世の後継者はもう決定している。おい、分かるか? お前は選ばれなかったんだ。愚かな策略は海の藻屑となった。もう、誰も助けてはくれないぞ?―――裁判にかけて、しっかりと罪を償わせるからな!!」 ズドンッ。 二発目はボディに入った。 テオドロスは白目を剥く。全身から力が抜け、魔法の鎖に支えられる。「クソが!! 二発でへたばるんじゃね~!!」 ガツッ。 ビアンカはテオドロスの太ももを横から蹴り上げた。「ブッ、クッ、クッククク」 背後から笑い声がして、ビアンカは振り返る。ユリウスが床にうずくまって笑っていた。「なっ、そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか~!!」 可愛い口調……。いつもの声だった。「その切り替えの早さはちょっと罪…
Last Updated: 2026-07-28
訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました)

訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました)

【本編完結しました】番外編もよろしくお願いします♪✴︎あらすじ✴︎ヤドリギ横丁の占いの館『レダの家』には、毎日お悩みを抱えた方がいらっしゃいます。私ことカレンは訳ありまして、店主の占い師レダさんの身代わりをしております。最初は、ハラハラドキドキの連続でしたが、最近、人生相談くらいは人並みに出来るようになりました。――――と、油断していたところへ、元婚約者であるあの方が、何故か、こんな裏通りの占い館へ相談に来られたのです…
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Chapter: 番外編・ありがとう 2
レダとシュライダー侯爵が出かけた途端、貿易商のシューマンが店に現れた。 「レダ、お久しぶり~!」 「あ、シューマンさん! お久しぶりですね。買い付けの旅はいかがでしたか?」 「あれれ~? しばらく会わないうちに随分と僕に興味を持ってくれるようになったね~」 カレンはドキッとする。 ここ最近、レダが『カレンの好きにしていいよ~』と、甘やかしてくれるので、お客様とのおしゃべりを気兼ねなく楽しんでいたのだが……、まさか、そこを指摘されるとは思わなかった。 (シューマンさんとは、しばらく会ってなかったから、突然の変化に驚くわよね~。失敗したわ……) 「……」 「あ~、大丈夫? 僕のせい?」 シューマンはカレンが俯いてしまったので、心配する。 「いえ、大丈夫です。急に馴れ馴れしくしてすみませんでした」 「え~~~、そんなこと言わないでよ。気楽に話してくれた方が嬉しいから」 「そうですか?」 「そうそう! ごめんね、気を遣わせて~」 明るいシューマンの声を聞いて、カレンは顔を上げた。 もちろん、フードをしっかりと被っているので、シューマンの目にカレンの表情が映ることはない。 「今日は何を占いましょうか?」 カレンはテーブルの上の水晶に手を翳す。 「待って! 今日は先にお礼を言わせて!」 「お礼?」 「うん、前回、レダが香辛料を仕入れた方がいいってアドバイスをくれた件なんだけど……。イシュタル共和国とオルセント王国が一時険悪になって国境を閉ざしていた期間があっただろう?」 「あ~、ありましたね」 (レダさんが陰で両国に働きかけて国境を封鎖した時のことね) 「僕がキャラック船で順次ニルス帝国に送っていた香辛料が毎回、予約完売してしまう状態になって、信じられないほどの利益が出たんだ」 (羽振りのいいシューマンさんの言う『信じられないほどの利益』って、想像も付かないのだけど……) 「で、今回はレダにもボーナスというか、御礼!! これを受け取って!」 シューマンは懐から革袋を取り出した。 (まさか!? 金貨入りの袋? えっ、本当に?) 大金かも知れないと動揺しているカレンの前で、シューマンは手際よく、革袋の紐を解いて、中身を取り出す。 「は!? 凄っ!!」 シューマンが差し出したのは大きな真珠がのっている銀色の
Last Updated: 2026-07-30
Chapter: 番外編・ありがとう 1
 甲板の先端。 強い日差し、海面からの照り返し、酷く眩しい。 ニルス帝国を出て、早三か月。 白いスリーピースを着た男は水平線の先を見つめて、微笑む。 懐から、金属製のケースを取り出し、葉巻を一本取り出した。 シガーカッターで先端を切って、軽く口にくわえ、手でドームを作る。そして、ライターでゆっくりと丁寧に火をつけた。 ゆるりと吸い、フ~と吐き出すと、いつも旅の前に立ち寄るレダの家が思い浮かんだ。「レダは元気にしているかな~?」♢♢♢♢♢♢♢ 本日のランチのメインはカモ肉のローストをたっぷりの野菜と一緒に薄いパンで巻いたものだった。デザートはヨーグルト。トッピングはブルーベリー。「今日のメニューはあたし好みだね~」 レダは昔、東の国を旅したときにこういう料理を沢山食べたという話をしてくれた。「ここ最近は真面目に仕事をしていて、どこにも行ってないからね~。久しぶりに旅でもしたいね~」「侯爵と行ったらいいのでは?」「いや、カールと行くより、あんたたちといった方が楽しそ……」 バタン!!「レダ!!」(うそ!? 最悪のタイミングで現れた……)「あ~、カール!」「酷いじゃないか!! 私はのけ者か? 君の夫なのに……」 レダとカレンはアルフレッドの持って来たランチを三人で一緒に食べていたのだが……。 いきなり、カール(シュライダー侯爵)がダイニングに飛び込んで来た。 彼はこういう風に突然現れることが多い。「いや、カールと行きたくないという訳じゃなくて……。この二人は見ているだけで面白いというか、何というか……」「私が面白くないということか……?」「面倒くさいな…&hellip
Last Updated: 2026-07-01
Chapter: 番外編・カールとニック
 最近カールは皇帝の補佐のような仕事をしており、しばらく屋敷に帰ってない。「屋敷に戻っても可愛い娘はいないし、レダも……。というか、どうして、殿下は私の家族と一緒に暮らしているんだ?」 心の声がつい漏れ出てしまう。 どう考えてもおかしい。 カレンとアルフレッドは婚約者同士ではあるが、結婚式の予定もない。 なのに、義理の母も一緒に三人で同居? ズルすぎるだろ! カレンの夜間護衛? レダがいるのに護衛が必要なのか!?―――腑に落ちない。「カール、どうした? 険しい顔をして……」 ニックこと皇帝ニコラスは微笑みながら彼に問う。 聞かなくても理由は分かっているが……。少しでもピリピリとした執務室の空気を改善したかったのである。「陛下、ご子息をどうかしてください。私だけのけ者です」 カールはアルフレッドのことをワザとご子息と言った。殿下と言いたくなかったからである。「うちの息子がすまない。カレン嬢に夢中で……」 ニックはレダの名を出さなかった。これ以上、拗らせたくなかったからだ。「夢中……。だからといって、婚前に同居なんて……」「ああ、それなら、いっそのこと結婚させるか?」 ニックは子供たちの結婚式を想像した。 皇后に似て、綺麗な顔立ちをしているアルフレッドと、レダと瓜二つのカレンが並んでいる姿は人々を魅了するだろう。 最近、良くないニュース続きのニルス帝国としても、おめでたい報告を国民に出来るのは非常に良いことだ。「結婚……? 早すぎる!!」 反対の言葉と共にカールは勢いよく立ち上がった。ニックは驚いてビクッとする。「そ、そうか? 二人とも成人しているのだから、そんなに早くもないと思うのだが&hel
Last Updated: 2026-06-02
Chapter: 番外編・差出人不明の手紙 4
カレンは相手を知らないので、相手に見つけてもらうしかない。 正直なところ、もう半分くらい無理かもと思い始めている。それくらいアデンの丘の広場は人でごった返していた。 カレンはサクロの丘の上にある皇宮の方を見る。 巨大な皇宮は闇夜のなかでも、多くの明かりが灯されて、とても美しく浮かび上がっていた。 (殿下の生まれ育った皇宮……。私も今後はあの宮殿で暮らしていくことになるのよね) カレンはボーッと巨大な建物を眺める。 (殿下から、あれだけ毎晩一緒がいいと粘られたら、私が皇宮から『レダの家』に通った方が良さそうな気がする……) 「アルは明日帰って来るのかしら」 海軍の演習は一週間とアルフレッドは言っていた。 いつでも呼び出していいと言われたが、カレンは彼に連絡を取っていない。 手すりに頬杖をついて、アルフレッドのことを考える。 彼と離れていても、カレンの心はいつもあたたかな毛布で包まれているようだった。彼の底なしの優しさと愛情の毛布に。 「私もアルにぬくもりを与えられる?」 (少しは素直になりたい。殿下のように……。心をポカポカと温められるような愛の言葉を私も言えるようになるかしら) ボーン。 カレンが考え事をしていると午前0時を知らせる鐘が鳴り響いた。 (あ~、日付が変わった。ええっと……、私は何時までここにいたらいいの? まだ、夜と言えば夜だけど……) 夜に来て欲しいとカードに書かれていたため、カレンは終わりの見極めに悩む。 「!?」 後方から、誰かがカレンのフードを引き下ろした。サラサラサラと金髪の長い髪がフードの外へ零れ落ちる。 (誰!? お手紙をくれた人? それとも、人違い?) カレンはゆっくりと振り返った。 「あ、えっ?」 目を見開く、カレン。 後ろに立っていたのはアルフレッドだった。 (何で正装なの!? 猛烈に目立っているのだけど!!) 周囲も皇太子が現れたとザワツキ始めている。 (ああああ~、大きな騒ぎになってしまう) 「殿下、早く立ち去りましょう」 カレンはアルフレッドの袖をつかんで、小声で囁く。 しかし、彼は首を横に振って、彼女の提案を断る。 (―――どうして?) 次の瞬間、アルフレッドは彼女の前に跪いた。 一瞬だけ、周りから悲鳴が上がったものの、
Last Updated: 2026-05-31
Chapter: 番外編・差出人不明の手紙 3
 アルフレッドはカレンの涙にくちびるを寄せて優しく吸った後、羽が触れるくらいの軽い口づけをした。「カレン、やはり一週間も留守にするのは心配だ。毎晩、転移魔法を使って帰って来ようか?」(また、私のことを心配して、そんなことを……)「心配してくれてありがとうございます。でも、司令官がお仕事を抜けて家に帰るのは良くないですよ」「―――そうだな。だが、寂しい時は無理をしないでくれ。何とかするから」「はい」 カレンは涙を手の甲で拭って笑顔を作ってみせる。「途中で会いたくなったら、レダどのに頼んで俺を呼んでくれ。直ぐに帰ってくるから……」 アルフレッドはカレンをギューッと抱き締めた。「一人で泣いたりするなよ」「―――はい」(そんなに優しくされたら……)「では、行ってくる」「―――はい」 アルフレッドはカレンの頬にくちづけをしてから、部屋を出て行った。―――ポタ、ポタッ、ポタ……。 大粒の涙が床に落ちる。 もう我慢の限界だった。涙が止め処なく溢れて来る。「うっ、うううっ」(何も言えなかった……。『気を付けてね』の一言も……)♢♢♢♢♢♢♢ アルフレッドが出かけてから五日後の朝。 いつものようにマーガレットが一番乗りで占いにやって来た。「レダ、見習いちゃん、おはようさん! そろそろ新月だね~。新月は夜中に目が覚めたときに何も見えないから困るんだよ~」(ああ~、新月! あの手紙のことをすっかり忘れていたわ!!) カレンはマーガレットの世間話で差出人不明の手紙のことを思い出す。―――マーガレットが帰った後、カレンはレダに尋ねてみた。「レダさん、次の新月って何日ですか?」「ん?
Last Updated: 2026-05-31
Chapter: 番外編・差出人不明の手紙 2
 要するにアルフレッドは従来のルールを覆そうとしているのだ。カレンと一緒に居たいがために……。「殿下、今後もここから皇宮へ通い続けるというのは流石に……どうかと思いますよ。。皇子宮の方々も主が毎晩不在では困るでしょう? どう考えても、私がここから皇宮に出勤した方がスマートですよね?」「それは別居婚ということか!?」 アルフレッドはカレンの肩に乗せていた頭を上げて、カレンを見つめる。(近い、近い、近いわ!! しかも、目が怖い……。殿下、怒ってる?)「絶対に嫌だ!! 離れて暮らすくらいなら、俺はこのレダの家を破壊する!!」「な、何を言い出すの? そんなこと……」「俺なら出来る!!」(殿下がいうと本当に出来そうな気がして……怖いわ) カレンは悪寒がした。 なにより『レダの家』には多くの秘密が詰まっている。それに……。「ダメです!! このお家が無くなったら、レダさんはどこに住むのですか!!」「シュライダー侯爵邸でいいだろ!」 アルフレッドは即答する。「それは!」 カレンは反論するために勢い良く最初の言葉を口にしたものの、―――後が続かない。 シュライダー侯爵邸でレダが暮らすのも悪くないと思ってしまったからだ。(実はお父様とレダさんが屋敷で一緒に暮らすのは、何の問題もないのよね~。本当の夫婦だし)「―――そうかも」「だろう」「ただ、そうなってくると……。マーガレットさんが困りますよね~」「ああ、あのご婦人か!」 アルフレッドの脳裏にマーガレットの顔が浮かぶ。―――未だにアルフレッドはマーガレットのことをレダの仕込みではないかと疑っている。 留守番中のカレンへ世間の情報を届けるために用意された駒だったのではないかと……。「ランチメニューを考えるだけだろう。心配なら、皇宮のランチメニューを一か月分ずつ伝えておけばいいんじゃないか?」「それはダメですよ。いつもマーガレットさんが朝市場で仕入れたものを聞いて、メニューを一緒に考えているのですから」「案外、大変だな……」 アルフレッドは密かに『料理が出来なくても、メニューを考えることは出来るんだな』と思ったが、もちろん、口に出さない。「はい、大切な仕事です」「でも、毎日一緒に寝たいから、別居は嫌だ!」 話は結局、振り出しに戻ってしまう。「殿下、珍しく粘りますね」 カレン
Last Updated: 2026-05-29
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