大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)

大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)

last updateآخر تحديث : 2026-08-04
بواسطة:  風野うたمستمر
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本編、完結しました! 番外編は9月から順次公開して行きます。よろしくお願いします。  ローマリア王国には大斧を振り回し、多くの武勲を立てたビアンカという女戦士がいる。彼女は百七十八センチの長身で軍服をキリッと着こなし、肩口で真っ直ぐに切り揃えられたサラサラの黒髪をいつも靡かせ、切れ長の目元にはこの国では珍しい紫色の瞳。年は二十一。 ――――ある日、ビアンカは王太子に呼び出され、国軍から辺境伯領への移動を命じられる。『これはそなたにしか出来ない特別任務である』と王太子は強調し、何故か彼女には花嫁衣裳が用意された。 ――――リシュナ領(辺境伯領)へ向かったビアンカを待ち受ける運命とは!?

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الفصل الأول

何も知らない0日目・プロローグ

「くっそー!! あの野郎!! 何を企んでいるんだ!?」

ビアンカは地団太を踏む。あの野郎とはこの国の高貴なお方、王太子マクシムのことである。

彼とビアンカはこのローマリア王国の貴族子女が通う王立学園の同級生だ。プライベートでは共通の友人も多く、それなりに気安い仲である。

だが、マクシムが結婚したことを機にビアンカは彼と仕事以外で会うことを止めた。これは他国から嫁いで来た王太子妃に配慮してのこと。

(正直なところ、マクシムとは恋仲になる可能性もないただの友人だ。しかし、恋愛脳の貴族たちに男女の友情を語っても通じるはずがない。不用意に一緒にいて、ありもしない噂でも立って、王太子妃様を不安にさせてしまったら、それこそ可哀想だ。女の私から見ても王太子妃様は見た目も性格も可愛い御方だからな。あのマクシムには勿体ないくらいに……)

――――昨日、ビアンカは王太子から王宮へ呼び出された。

『王国軍・指揮官ビアンカ、辺境リシュナ領への転任を命じる。今後はコントラーナ辺境伯の下でこの国を守れ。期限は定めない。出発は明日の朝だ』

『殿下、突然のお話で驚きました。もしや、辺境の地で何か異変でも?』

『――――ビアンカ、異変は……、起きていない。だが、この任務はそなたにしか任せられない特別任務だ。詳しいことは辺境伯に聞け。よろしく頼んだぞ!』

ビアンカはマクシムが何かを誤魔化しているような気がして、眉間に皺を寄せる。

『殿下、私しか出来ない特別任務とは何ですか? 一人で向かうということは国軍を動かすようなことではないということ……。まさか、私にスパイ活動でもしろというのか!?』

『ビアンカ、そんなに構えるな。こちらで段取りは整えておく。そなたは向かうだけでいい』

(くう~、マクシムは私の質問に答える気が無さそうだな。仕方がない。特別任務の内容は現地で辺境伯に聞くとするか)

彼女はその場で一度、深呼吸をし、覚悟を決めた。

『――――分かりました。謹んでお受けいたします』

『ああ、気をつけて向かってくれ』

――――ここまで思い返して、ビアンカは今の状況を考える。

昨日のやり取りは茶番だったのだろうか?

何故なら、今し方、ビアンカの部屋へ押しかけて来た侍女たちが手にしているのはどう見ても純白の花嫁衣裳にしか見えないからだ。

(マクシムよ。この花嫁衣裳を着て、私にどうしろというのだ。――――まさか辺境伯の花嫁として私をリシュナ領へ送り込むつもりなのか!? ならば、特別任務とは、やはりスパイ作戦だったということじゃないか。どうして言葉を濁したのか、さっぱり分からない。で、私に辺境伯の何を探らせるつもりだ? うむ、可能性としては彼が隣国と繋がっているとか……。或いは王位の簒奪しようとしているとかだろうか?)

これからビアンカが向かうリシュナ領を治めているのは、ユリウス・フルゴル・コンストラーナ辺境伯爵だ。彼は元ヴェロラーナ公爵家の次男で、その母親は現国王の妹である。

いうまでもなく、ユリウスは王家の血を引き、王太子マクシムとは従兄弟関係。そして、王太子夫妻にはまだ子が居ないため、ユリウスと彼の兄、マリウス・ヴィータ・ヴィロラーナ公爵令息も王位継承権を持っている。

(王位継承権か……、王太子妃に子が生まれれば返上することも可能なのだろうが……。やはり、辺境伯が何か国に対して不穏な動きを見せていて、マクシムがそれを警戒して私を送り込んだと考えるのが一番、簡単ではあるけども……。しかし、本当にそうなのか? マクシムよ、余りにも情報が少なくて困るのだが……)

考え事をしていたビアンカが顔を上げると、不安そうな面持ちで侍女たちが彼女を見ていた。

「――――すまない。取り乱してしまった。私が拒否したら、あなた達に迷惑が掛かってしまう」

「いえ、――――お気遣いありがとうございます、ビアンカ様」

花嫁のドレスと靴、ベールなどを抱えている侍女たちはビアンカに引き攣った微笑みを返す。彼女たちは王太子の命により、ビアンカの宿舎へやってきた。

ビアンカは大斧を振り回し、数々の武勲を立てている戦士だ。

頭一つ以上大きな彼女(身長百七十八センチ)を目の前に侍女たちは緊張している。部屋の隅に置いてあるビアンカ愛用の大斧が彼女たちの恐怖心を更に煽っているのだが、彼女は気付いていない。

(それにしても、私が花嫁衣裳を着る日が来るとは……。まぁ、任務だが……)

「よし、覚悟は決めた。準備を頼む!」

ビアンカは腹を括り、侍女たちにその身を任せることにした。

 長身のビアンカへ着付けをするため、次女たち用の踏み台が二つ運び込まれてくる。そして、彼女の前には大きな姿見が置かれた。

 ビアンカは周りにいる侍女と自分を見比べてみる。

 ビアンカと侍女は身長だけではなく身幅も全然違っていた。侍女たちは折れそうなくらい細く、ビアンカは折ろうとしても折れないくらい太い……。

(辺境伯から『こんな大女は嫌だ!』と断られる可能性は十分にあるな……)

「硬い~!! 紐を引けません。ルマリさま!!」

「ちょっと、そこのあなたも一緒に紐を引いて頂戴!!」

侍女たちのリーダーのルマリは部屋の後方で控えている侍女たちにも声を掛ける。

(しかし、辺境伯と面識がないのは厳しいな。この格好で『軍部から移動して来ました。閣下の片腕にして下さい』っていうのは、どう考えてもおかしいし。かと言って『結婚して下さい』と結婚適齢期を過ぎた私が口にするのはもっと厳しい。せめて、花嫁候補を王太子が送ったと辺境伯が理解してくれるといいのだが。マクシムは案外、雑だからな~)

いつもなら、王太子の足りない言葉を彼の側近が補足してくれるのだが、今回は何故か同席してなかった。

(きちんと根回ししているのだろうか〜、んー、怪しい。まぁ、それでも引き受けたからには行くしかないのだが)

「「「せーの!!」」」

「あー、これは……、かなり厳しいわ」

サブリーダーのメリーが弱音を吐く。

『どうしてコルセットの紐が簡単に引けないのか? 』

 それはビアンカの鍛えられあげた筋肉が原因だった。それでも、侍女たちは彼女に花嫁衣裳を着せなければならないため、必死に紐を引き続ける。

――――ビアンカは彼女たちの奮闘を静かに見守るのだった。

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正面の扉が閉じられるとビアンカは横に控えていた女性から白バラのブーケを手渡され、ベールを被せられた。一同は既に起立していて、ピサロ侯爵家の父と娘に注目している。 荘厳な造りの教会の内部は想像以上に絢爛豪華だった。 頭上には天使たちが舞う天井画が描かれ、柱や床には大理石をふんだんに使用し、繊細な金の装飾も至るところに施されている。祭壇の先にあるステンドグラスも見たことがないような意匠で……。 これは著名なアーティストがつくり上げたものに違いないとビアンカは目を凝らす。 ―――ただ、一番知りたい祭壇の前にいる人物は逆光を浴びており、シルエットが辛うじて分かるくらいで、顔も服装もよく見えなかった。 (こんなに豪華で立派な教会がこの辺境の街にあるなんて知らなかった。大体、私の仕事柄、教会に行くことなど皆無、知らなくて当然なのだけども。それにしても……、あの左の壁の巨大な陶板レリーフの迫力!! 凄いなぁ……、天地創造の場面か?) 歩み始めようとするとタイミング良く、柔らかな音楽が流れて来た。前方の右手に楽団がいるようだ。 ビアンカは父親と一歩一歩進みながら、視線を動かして室内を隈なく観察していく。ピサロ侯爵は彼女の行動に気付いたが、参列者がこちらへ注目しているため、直ぐに注意を入れず、慎重にどう対処すべきかを考えた。 この結婚は王位継承権を持っている辺境伯と国内で一番力を持つ貴族と言われているピサロ侯爵家の縁を繋ぐもの。 参列者も国内の有力貴族だけではなく、近隣国の王族の代理人、この国と取引のある外国の貴族など名立たるメンバーが集結している。だから、一つでも失敗でもしたら、後々まで語り継がれて、碌なことにならない。―――ということで、絶対に隙を見せてはいけない場面なのである。 しかし、ビアンカの思考回路は良くも悪くも戦士仕様のため、一筋縄ではいかない。―――ピサロ侯爵は作戦を考えてから、真っ直ぐに前を向いた状態をキープして、横のビアンカへ小声で話しかけた。 「ビアンカ、キョロキョロするのではなく、前だけを見なさい。参列者がこちらに注目している」 「心配しなくとも顔は前に向けています。ベールで隠れているので多少、視線を動かしたとしても参列者には分からないでしょう」 ス――ッ。 ピサロ侯爵は音を立てないように大きな息を吐く。 「戦
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 花嫁と父親が何やらボソボソと楽しそうに話していると周りは勘違いし、温かな視線を向けている。だが当の二人は長過ぎるバージンロードで疲れ切っていた……。 三分の二ほど歩いてきたところで演奏曲が変わり、結婚式定番の曲が流れ始める。(ああ、これは結婚式の時に使われる聖歌か。まさか自分の結婚式で聞く日が来るなんて思わなかったな……。しかし、未だに相手の顔が逆光で見えないというのはどうなんだ。別に美男子がいいとか、筋肉マンがいいとかそういう希望はないが……。ただ、性格が悪いのだけは嫌だ。辺境伯とはどういう人物なのだろう。ヴィロラーナ公爵家と交流もないし、本当に何の想像もつかないな)――――ヴィロラーナ公爵家は現国王の妹、レティアのために用意された新しい家門で、当主のリカルトはデュラム領を治めているポロネーズ伯爵家の出身で次男。家督は長男が継いだ。 レティアとリカルトは王立学園の同級生時代から愛を育み、それを知った前国王が可愛い娘のために尽力したという話は広く知られていて、この身分違いの恋は小説や大衆演劇でもよく演じられている。 しかし、ヴィロラーナ公爵家は貴族としての身分は高いものの、商売に長けているわけでもなく、お金を沢山生み出してくれる領地も無いため、息子たちは結構苦労していた。 実際に長男マリウスは外交官として、他国と行ったり来たりの激務をこなしているし、次男のユリウスは国防の要であるこの地を辺境伯として治めなければならないのである。―――ビアンカは最前列にこちらの方を向いて、目元をハンカチか何かで押さえている女性がいることに気付く。(最前列ということは、もしかして、辺境伯のお母上か!?―――ということは現国王の妹……。 よし、今後のことを考えて、しっかりと対応しておこう) ビアンカは謎の女性に向かって、にっこりと微笑んだ。(相手の表情は逆光で見えないが……。まぁ、大丈夫だろう。それにあと少し進んだら、新郎の顔も見えて来るはず……。―――はっ、ええっ!?この気配は!!) ビアンカは突如、複数人の殺気を感じ取った。「父上、刺客の気配を感知しました」 隣のピサロ侯爵にビアンカは小声で伝える。教会の中は穏やかな音楽が奏でられていて、誰も不穏な空気を感じていない。「ビアンカ、出来るだけ騒ぎにならない方法を……」「任せて下さい。さっきの短剣だけで十分
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いきなり挙式!?結婚1日目・淡い色合い
ピサロ侯爵がビアンカのドレスの状態を目で確認すると、背中がパックリとキレイに裂けていて、薄いベールだけではとても隠し切れない状況だった。 「ビアンカ、これは……」 言葉に詰まり、床に視線を落とすピサロ侯爵。ビアンカも同じように下を向いて、対処方法を考える。 (下手に動いて裂けたところが広がってしまってもマズイし、だからといって長々と立ち止まっている訳にも行かない。ベールは長いけど薄くて役に立たないし、どうしたら……) その時、ビアンカの前に大きな影が出来た。 「ん?」 ―――気配もなく突然、現れた人物をビアンカはゆっくりと見上げる。 光り輝く銀髪に薄いグレー色の瞳を持つ美しい少年がそこに立っていた。 (真っ白~、髪も瞳も肌も透明感が凄い! 教会に天使が舞い降りた!?―――いや、それは無い。しかし、この子は一体……) 「ビアンカ、大丈夫ですか?」 (はぁ~!? 本当にこの子は誰なんだ? 私のことを呼び捨てにするということは、何処かで会ったことがあるということだよな。ん~、全く分からない……) 淡い色合いの美少年は自身の肩マントの留め金を外し、ビアンカのドレスとベールの間に手際よく滑り込ませる。 ――――純白に金糸の刺繍が入ったマントは花嫁のドレスとお揃いで誂えられていたようで、ビアンカのドレスと組み合わせても違和感がなかった。 彼はマントの端に装飾で付けられていた組み紐の端を上手く絡ませて結び、ビアンカの胸元の装飾に隠す。これでドレスの裂けた部分を人に見られる心配は無くなった。 「辺境伯、ありがとうございます」 ピサロ侯爵が背後から礼を告げる。 (あ、え、父上!? 今、辺境伯と言ったよな? ということは……、この少年が辺境伯?――――嘘だろ。彼は何歳なんだ!!! 私は二十一歳だぞ!!) 彼女は酷く驚き、そして、動揺した。それは半歩前にいる『絵本から出て来たような王子様』が花婿と判明したからである。 しかも、彼は見た目がかなり若い。ローマリア王国では十七歳から結婚出来るが、彼はそれよりも下に見えた。 ビアンカは辺境伯に色々聞きたいことがどんどん湧いて来る。 しかし、司祭がタイミングよく視界に入って来て、現在の状況を思い出した。 「辺境伯、マントをありがとうございました。とても助かりました」 「いや、礼には及びま
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いきなり挙式!?結婚1日目・深い意味 2
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