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月姫乃映月
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Novel-novel oleh 月姫乃映月

若頭の元夫に殺された私は、敵対組織の若頭の嫁として生まれ変わり可愛い我が子と幸せに暮らし復讐します

若頭の元夫に殺された私は、敵対組織の若頭の嫁として生まれ変わり可愛い我が子と幸せに暮らし復讐します

東京の殆どをシマとする極道組織、桔梗組の若頭皐月慎吾の妻である私は何者かに誘拐された。 薄暗く汚れた部屋。手足を縛られ身動きの取れない私の目の前には一人の女と男。手にはチャカが握られている。 始めは敵対組織である南雲組関係の者かと思っていたが、犯人は皐月慎吾とその愛人だった。 私の死を南雲組の仕業に仕立て上げ、大義名分として南雲組に攻め込むつもりなのだ。 私の最期は愛していた元夫の手により向えた。 だが一度意識が無くなった私は再び意識を取り戻す。 意識を取り戻し最初に見た光景は知らない病院の天井と隣で私の手を握る南雲組若頭、成瀬雅だった。 成瀬雅の嫁に転生した私は自分を裏切り殺した皐月慎吾と愛人に復讐する。
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Chapter: 八話【元夫からの通話】
静まり返ったリビングに、テーブルの上へ置かれた雅さんのスマートフォンの着信音が鳴り響いた。 突然の音に舞桜が少しだけ身じろぎをしたため、私は慌ててベビーベッドを優しく揺らした。「よしよし……大丈夫だよ」 舞桜は再び静かな寝息を立て始める。 その一方で、スマホを手に取った雅さんの表情は一瞬で引き締まっていた。 画面に表示された名前を見た瞬間、私は嫌な予感がした。「……親父だ」 雅さんは私に一言だけ告げると、そのまま電話へ出た。「俺です」 電話口から聞こえてくる声は私には聞こえない。 それでも雅さんの表情だけで、良い話ではないことは十分伝わってきた。「……そうですか」 数秒の沈黙。「分かりました」 雅さんは短く返事をすると電話を切り、スマホをゆっくりと机へ置いた。 そのまま数秒間、雅さんは何も言わない。「……雅さん?」 恐る恐る声を掛けると、雅さんは私を見つめながら口を開いた。「桔梗組から連絡が来たらしい」 胸が大きく跳ねた。「俺宛てにな」 やっぱり……慎吾が動いた。「内容は?」「話し合いだ」 雅さんはソファへ腰を下ろした。「皐月七瀬の件について、若頭同士で直接話がしたいそうだ」 私は思わず息を呑む。 慎吾が自分から話し合いを持ち掛けるなんて。 けれど、よく考えてみたら当然かもしれない。 自分が犯人だからこそ相手の反応を直接確かめたい。 そして南雲組へ揺さぶりを掛けたいのだろう。「場所は?」「港区にある料亭『紫苑亭』どこの組にも属していない中立の場所だ」 なるほど。 互いの組事務所では警戒される。 だからこそ第三者が管理する場所を指定したのね。「日時は?」「明日の午後二時」 思ったよりもずっと早い。「断ることはできないの?」 私が尋ねると、雅さんは静かに首を横へ振った。「できない」「どうして?」「これは正式な申し入れだからだ」 雅さんは真剣な表情で説明を続ける。「極道には暗黙の了解がある。正式な話し合いの場を設けると言われた以上、正当な理由なく断れば『南雲組は後ろめたいことがある』と他の組から見られる。」「……」「そうなれば桔梗組は俺達南雲組がやったに間違いないと思うだろう」 つまり断ること自体が相手の思う壺。「逆に向こうも話し合いの場では手を出せない。」「どうして?」
Terakhir Diperbarui: 2026-07-15
Chapter: 七話【犯人の特徴】
私が話しだそうとすると「長くなりそうか?」と聞かれ無言で頷くと「まずは料理を食べてからにしよう」と言われ、雅さんに作ってもらった料理を平らげた後二人でソファに腰を掛けた。「それで? 話ってなんだ?」 優しい声色で聞かれ、私は少し間を開けて口を開いた。「私舞桜を産むときに意識を失ったでしょ? その時に変な夢? のようなものを見たの」 私の言葉に雅は表情を変えず「どんな夢なんだ?」と返した。「場所は分からない。薄暗くて気味の悪い場所に私……いえ、知らない女の人が手足を縛られながら血を流していたの」「知らない女……」「その女の人の前に一人の女と男が立ってて、手にはナイフと銃を持ってたの。それが凄く不気味で、今まで誰にも話せなかったんだけど私の記憶喪失とかに関係あるのかなってちょっと思っちゃって」 それっぽい事を話しながら雅さんになんとか話を続ける。「その女性とか男性に見覚えはないのか? 特徴とか、もしかしたら美桜の知っている人かもしれない」「男の人は身長が高くてフードを被っていたから顔はあまり覚えていないの。もう一人の女の人は首元に黒子があった気がする……」「……首元に黒子のある女性……分からないな」 雅さんはしばらく考えてくれたけれど私の周りに一人も首元に黒子のある女性は居ないみたい。 つまりあの女は南雲組とは深く関係のない。桔梗組に居た時もあの女は一目も見たことがない。 けれどあの女、人の死に慣れている……いや、裏社会に慣れている感じがする。 普通チャカやドスを握ると少しは躊躇いが生まれるけれど、あの女は躊躇なく私にドスを当て、銃の引き金に指をかけていた。 どう考えても堅気の人じゃない。 そうなると別の組に関係する女……。「それで、縛られていた女性に関しては特徴はないのか?」「えーっと……」 どうしよう。素直に皐月七瀬と言われていたと言うべきなのかな。 でもここで遠回しに特徴だけを言っても中々前に進まないと思う。 それに何よりも長引かせてしまったら雅さんの身に危険が起きるかもしれない。それだけは絶対に避けたい。舞桜の為にも……。「確か……七瀬って、皐月七瀬って呼ばれていたはず……」「ッ⁉ 今何て言った⁉」 私がそう言うと雅さんは初めて表情を変えて私の肩を掴み慌てて聞き返してきた。「女の人が縛られている女の人にナイフ
Terakhir Diperbarui: 2026-07-15
Chapter: 六話【大事な話】
「ここが我が家だ」 雅さんと一緒に来たのは高級マンションの一室。 窓から見える夜景は絶景で見入ってしまう。隅々まで綺麗に掃除されており、整理整頓も完璧。七瀬として生きていた時もそれなりには良い所に住んでいたのだけれど、あの男とは高級住宅街にある一軒家で共に暮らしていた。 こんな景色見たことがない。「まずは部屋を案内しよう」 一室一室広い部屋を案内された後、まさかの一つ下の階の部屋にも案内された。 下の階の部屋はそこまで使う事はないとの事だけれど……。「どうだ? 気に入ってもらえたか?」「ええ、とても」 美桜さん、雅さんから凄く愛されていたんだな……。 ごめんなさい、美桜さん。貴方の身体を受け取ってしまって。 美桜さんは雅さんともっと一緒に暮らして幸せになりたかったと思う。それに辛い妊娠期間も舞桜に会いたいって気持ちで乗り越えてきたはずなのに舞桜には会えなかった。 そんな美桜さんから受け継いだ命。必ず雅さんと舞桜を幸せにしてあげないと。 それが私が美桜さんにできる唯一の事だから。「しばらくは美桜の仕事は俺と舎弟の若集でするから美桜はゆっくり休んでくれ」「私は何の仕事をしていたの?」 私は桔梗組では組の事務作業を手伝ったり料理を振舞っていたけれど南雲組での仕事はなんなのかしら。 同じ事だと新しく何も覚えなくて良いから楽なのだけれど……。「仕事って言っても殆ど無いんだけどな。忙しい時期の事務作業を少し手伝ってもらったりしていたんだ。それと夜まで組事務所で事務作業をしている組員の夕飯を作ってもらっていたんだ」「それくらいなら私にでもできそうね」「その事は今は考えなくても良い。美桜は自分と舞桜の事だけを考えてくれれば良い」 そう言うと雅さんはキッチンに立ち「何が食べたい? なんでも言ってくれ」と私に聞いて来た。 雅さん、料理できるんだ。「なら雅さんの得意料理が食べたいな」 舞桜をベビーベッドに寝かせながら答えると雅さんは慣れた手つきで料理を始めた。 雅さんが料理をしてくれている間、私はひたすら考えた。 どうやってあの二人に復讐をしようかと。 考えて考えて考えた。でもどれも最善策とは思えない。 もし何の考えも無しにあの二人を殺したら間違いなく全面戦争になる。 桔梗組と南雲組が全面戦争なんてしたら幾つの命が消えるか分か
Terakhir Diperbarui: 2026-07-14
Chapter: 五話【最優先事項】
「お疲れ様です成瀬の頭、姐さん」 舞桜を産んで五日後。退院した私達を待っていたのは黒塗りの高級車二台と私達に頭を下げる四人の男性。その内の一人が後部座席のドアを開け「どうぞこちらへ」と私達を案内した。「真辺、分かっているよな? 舞桜と美桜が乗っている」「はい、勿論です」 そう言い真辺という男性は車を出した。「しばらく組に顔を出さずに悪かったな。組は大丈夫か?」「それが……」「何かあったのか?」「どうやら大事の様で未だ一部の幹部陣の兄貴にしか話されていないらしく、頭には親父が詳しく話すそうです」 雅さんは「そうか」とだけ返して舞桜の頭を優しく撫でる。 大事な事。それも幹部の一部にしか知らされない程の事。 まさか私の死について? 私が死んでから一週間……一週間も死体が放置されているとは思いたくはない。「真辺、組の者全員にこう伝えろ。親父の次に守るべき対象は俺ではなく舞桜と美桜だと」「はい。組に付き次第直ぐに知らせます」 しばらく車に揺られ、組に着くと数十人の組員の人が私達を迎えた。「お疲れ様です頭に姐さん。組長室で親父がお待ちです」 そう言う男性に私は見覚えがあった。 この人は確か南雲組の若頭補佐の|月城仁志《つきしろひとし》だったはず。 頭も良く喧嘩も強いと桔梗組で良く話を聞いていた。「俺がいない間色々ありがとな月城」「いえ、俺にできる事なら何でもします」「ほら、娘の舞桜だ。後で顔でも見てくれ」 私達は部屋の奥に進み組長室と思われる部屋の前で止まった。「ここが親父の部屋だ。美桜に記憶がない事は俺から話すから大丈夫だ。それに親父は凄く優しくてな」 そう言って雅さんは部屋をノックしてドアを開けた。「失礼します親父」「おお、雅久しぶりだな。美桜さんも大変だっただろう。ご苦労だった」 そして南雲組組長の|南雲
Terakhir Diperbarui: 2026-07-06
Chapter: 四話【退院】
「今日で退院か」 朝の柔らかな日差しが病室へ差し込む。 私は眠っている舞桜を抱きながら小さく息を吐いた。 たった五日しか経っていないのに、ずっと前のことのように感じる。 死んだこと。 目覚めたら妊婦だったこと。 出産して母親になったこと。 何もかもが一気に起きすぎて頭も心も全然追いついていない。「どうした?」 荷物をまとめていた雅さんがこちらを見る。「いえ……」 私は舞桜を見つめた。「私本当にお母さんになったんだなって」 雅さんが小さく笑った。「今更だな」「だって実感がないんです」 私がそう言うと、雅さんは荷物を置いてこちらへ歩いてきた。 そして舞桜の顔を覗き込む。「俺もだ」「え?」「俺もまだ父親になった実感はない」 雅さんは苦笑する。「ただ……」 そう言って舞桜の小さな手に自分の指を近付ける。 すると。 きゅっ。 舞桜が雅さんの指を握った。「……」「……」 二人とも思わず固まった。 数秒後。 ふっ。 雅さんが優しく笑った。「こういうことされると実感が湧くな」 その顔を見て、私は目を見開いた。 初めて見る顔だった。 組の若頭の顔じゃない。 一人の父親の顔。 穏やかで、優しくて、どこか嬉しそうな顔。「……そんな顔するんですね」「何だそれは」「いえ」 私は小さく笑う。「何か新鮮で」 すると雅さんが私を見る。「美桜もだ」「私も?」「ああ」「私、何か変ですか?」「変じゃない」 雅は少し考える。「よく舞桜を見て笑うようになったな」 私はきょとんとした。「そうですか?」「ああ」「前の私は違ったんですか?」「舞桜を産んだ後は不安そうな表情ばかりだったからな。今の美桜は幸せそうに笑う」 私は言葉を失った。 幸せそう。 私は今、そんな顔をしているんだ。 前世ではどうだっただろう。 慎吾と一緒にいて、本当に笑えていただろうか。 思い出そうとしても、出てくるのは無理をしていた自分ばかりだ。 嫌われないように。 迷惑を掛けないように。 妻として失格だと思われないように。 私はずっと慎吾の顔色を窺っていた。 でも今は。 少なくとも舞桜を見ている時だけは違う。「……私、幸せそうですか?」「ああ」 雅さんは迷いなく答えた。「そっか……」 私は舞桜を見
Terakhir Diperbarui: 2026-06-24
Chapter: 三話【可愛い我が子を想い】
「…………んっ」 あれ、私……うっ、身体中が痛い……。 そうだ、私慎吾に銃で撃たれて…………。 「あ、美桜さん目覚ましました」 「良かった……よく頑張ったな美桜」 ッ⁉ 違う! 私さっき子供を! 目を覚まし横を振り返ると私を見つめる男が居た。 「な、成瀬雅……よね?」 「そうだ! お前の夫の成瀬雅だ。大丈夫か美桜」 「なんで……私死んだはずじゃ……」 一体どういうことなの。どう見ても私の身体じゃない。爪もこんなに長くないしそもそも私は妊娠なんてしていない。 何より私の名前は美桜じゃないし成瀬雅の妻でもない。 生まれ変わり……まさか、そんな馬鹿な事があるの? 信じられない。 でもこれが夢だとも思えないし実際私は確実に死んでいる。 あの女に蹴られ殴られた痛み、慎吾に撃たれた時の痛みも熱も覚えている。 でも出産の痛みも覚えている。どっちも夢じゃない……。 もし本当に私が生まれ変わったなら……あの二人に復讐ができる。 あの二人だけは絶対に許さない。あんな外道はなんとしても地獄に落とす。 そのためならなんだってする。南雲組だって天鬼組だって利用する。あんな男の居る組が一番大きな組織なんて絶対にダメ。 そう思うと同時に自分にも怒りを覚える。 なんであんなクズ男に惚れてしまったのか、何故気づけなかったのか。一体どこで間違えたんだろう。 「成瀬さんは意識が無くなっただけで死んではないですよ。ほ~ら、元気で大きな赤ちゃんですよ」 そう言ってナースの女性は赤子を抱きかかえて私に見せてきた。 「抱っこしますか?」 「え……あ、……はい」 私は赤子を受け取り抱っこした。 「この子、私の子供なの……私が産んだの?」 「そうですよ。難産でしたけどよく頑張りましたね」 「ごめんなさい。私記憶が……」 私が言葉を口にするとナースの人は「少しだけ待っててくださいね」と言って部屋を出て行った。 しばらくすると一人の女性を連れて戻ってきた。 「成瀬さん、自分の名前は分かる?」 「成瀬美桜ですか?」 「そうね、じゃあ貴方の旦那さんの名前も分かる?」 「成瀬雅ですよね」 「じゃあお子さんの名前は事前に決めていたそうだけれど分かる?」 私は首を横に振るう。 私が今分かるのは自分が成瀬雅の妻であ
Terakhir Diperbarui: 2026-06-12
クズな夫に捨てられた私を拾ったのは冷徹と噂の若頭だった

クズな夫に捨てられた私を拾ったのは冷徹と噂の若頭だった

結婚三年目。 主人公・真嶋美月(旧姓・白石美月)は社長である夫・真嶋圭吾に尽くし続けていた。 だがある日、夫は若い女と腕を組みながら言い放つ。 「お前もういらない」 しかも不倫相手は、関東最大級の極道組織《黒瀬組》が仕切る高級店“クラブ・レイラ”のNo.1キャバ嬢だった。 夫はその女に入れ込み、店の売上金にまで手を出していた。 その額数千万規模の横領。 当然黒瀬組が黙っている訳もなく粛清に動く。 すべてを失い、雨の夜を彷徨っていた美月に声をかけたのは、黒瀬組若頭・九条蓮。 “冷酷無慈悲”と噂され恐れられる男だった。 「お前の夫を回収しに来た」 地獄の底から始まる、危険で甘い溺愛復讐劇。
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Chapter: 十二話【普通の生活】
黒蛇の車が去ったあとも部屋には重たい空気が残っていた。 私はソファへ座ったまま、膝の上のケースを見つめる。 中には小型の拳銃。 まだ現実感がない。「……変な感じします」 思わず呟く。 九条さんが煙草を咥えながらこちらを見る。「何がだ」「全部です」 私は苦笑する。「私の知らない世界ばかりで、まるで生まれ変わったみたいです」「……だろうな」 九条さんは短く返す。「普通は一生関わらねぇ世界だ」 その言い方が少し寂しそうに聞こえた。「……九条さんは」 私はケースを閉じながら聞く。「普通の生活に憧れたりしなかったんですか」 九条さんは私の問に沈黙した。 榊さんが空気を読んだように「少し外見てきます」と部屋を出ていく。 静かになったリビングで、九条さんがソファへ深く座り直した。「昔はあったな。普通の学校行って、普通に仕事して、普通に家庭作るみてぇなの」 やっぱり九条さんにもそんな時期があったんだ。「でも無理だろうな「……どうしてですか」「結局、こういう世界でしか生きられねぇ人間もいる。それにこの渡世に足を踏み入れるって事は表の世界からの離脱みたいなもんだ」 その横顔は妙に大人びて見えた。 私はぼんやり九条さんを見つめる。「……でも、九条さんは思ってた極道の人と全然違います」 そう言うと、九条さんが小さく笑った。「どんな想像してた」「もっとこう……すぐ怒鳴って殴る感じというか」「偏見酷ぇな」 珍しく声を出して笑う。 その瞬間だった。 ブブッ――。 再びスマホが震えた。 九条さんが画面を見る。「……椿か。なんだ」『九条、黒蛇のやつら明日にでも本格的に動くかも』 空気が変わる。「根拠は」『さっき港側で人動かしてた。しかも結構な人数』 九条さんの目が細くなる。『でも殆どの人はこっちの世界の人間とは思えない見た目と雰囲気だった。多分高額債務者達か逆らえない半グレ連中ね」「……なるほどな」『美月ちゃんは一人にしない方がいいよ』「分かってる」 電話が切れる。 私は嫌な予感に胸がざわついた。 九条さんが煙草を揉み消す。「黒蛇が何か仕掛けてくる可能性がある」 怖いけど今までみたいに、ただ震えているだけなのも嫌だった。「……私、何かできますか」 九条さんがこちらを見る。「何かって?」「
Terakhir Diperbarui: 2026-06-21
Chapter: 十一話【黒く重たい物】
その言葉を聞いた瞬間、不思議なくらい胸の奥が静かになった。 普通なら怖くてたまらないはずなのに。 九条さんがそう言うと、本当に大丈夫な気がしてしまう。 その時、部屋のドアが開いた。「失礼します」 入ってきたのは黒いスーツ姿の榊さんだった。 いつも通り落ち着いているけれど、空気が張っていた。「あいつら、かなり露骨ですね」 榊さんが苦笑する。「黒蛇の連中、隠す気ありませんよ」「三流の脅しか、それとも余裕アピールか」 九条さんが煙草を揉み消す。「どっちにしろ気に食わねぇな」 榊さんは私を見る。「美月さん、大丈夫ですか」「……はい」 本当は全然大丈夫じゃない。 でも二人を見ていると、不思議と落ち着いてしまう。 すると榊さんが少し真面目な顔になった。「若頭、流石にそろそろ必要かと」「あぁ」 九条さんが短く返す。 何の話だろうと思った瞬間。 九条さんが棚の引き出しを開けた。 中から取り出されたのは黒いケース。 私は嫌な予感がして息を呑む。 カチャ、と音を立ててケースが開かれる。「……っ」 中から取り出された物を見て私の心臓は跳ねた。 ……本物だ。 映画でしか見たことのないような冷たい黒。「九条さん……これ……」「護身用だ」 そう言って見せられたのは小型の拳銃だった。「今後、万が一って事もある」「で、でも……!」 私は思わず後ずさる。「わ、私なんかに無理です……!」「必ず撃てとは言ってねぇ」 九条さんが静かに言う。「ただ持っとけ」 その目は真剣だった。「黒蛇は脅しだけで済む相手じゃねぇ。お前が一人になる可能性もゼロじゃない」 怖い……こんな人の命を簡単に奪える物が目の前にあるなんて……。 ナイフなんかの比じゃない。これは人の命を奪うための道具。「……そんな顔するな」 九条さんがこちらへ来る。「これはお前を怖がらせるためじゃねぇ」 大きな手が私の頭へ触れた。「生き残らせるためだ」 胸が詰まる。 私は小刻みに震えながらケースを見る。「……私、こんなのを人に向けるなんてできません」「出来なくていい。いや、できない方が本来は良いんだ。俺達極道だってこの道に足を踏み入れると自らが決めたやつでも引き金を引く……いや、持つことすらビビるやつなんて大勢居る。それにチャカは持ってるだけで状況
Terakhir Diperbarui: 2026-06-14
Chapter: 十話【狙われる立場】
朝。薄い光がカーテンの隙間から差し込み、私はゆっくり目を開けた。「……あれ」 体を起こしかけて、動きが止まる。 肩へ何か柔らかいものが掛けられていた。 黒いジャケット。 九条さんのだ。 昨夜、いつの間にか眠ってしまったらしい。 リビングを見回すとソファの向こうで九条さんが煙草を指に挟みながら書類を見ていた。 横顔が妙に静かだった。 窓の外はもう朝なのに、この部屋だけ夜が続いているみたいに感じる。「起きたか」 視線を上げないまま、九条さんが言った。「……おはようございます」「体調は」「大丈夫です」 本当は少し怠い。 でも昨日よりはずっとマシだった。 九条さんは灰皿へ灰を落とす。「なら良かった」 短い言葉なのに、胸の奥がじんわり温かくなる。 私は毛布を畳みながら小さく息を吐いた。「……私、ここで寝ちゃってたんですね」「途中で部屋戻そうとしたが起きなかった」「っ……」 寝顔を見られたと思うと恥ずかしくなる。「す、すみません」 そういうと九条さんは少し笑っていた。  その時だった。 テーブルの上のスマホが震える。 九条さんの目が変わった。「……榊か」 電話を取る。「どうした」『若頭、少し厄介です』 スピーカー越しの榊さんの声は珍しく硬かった。『黒蛇側が動き始めました』 私は無意識に肩を強張らせる。「具体的には」『美月さんの周辺調査です。以前通っていた美容院、買い物先、交友関係まで洗われています』「……そんな」『どうやら本格的に狙いを定めたようです』 九条さんが静かに煙を吐いた。「圭吾はもう諦めたか」『えぇ。今は完全に“美月さんを押さえる”方向です』 電話が切れる。 部屋が妙に静かだった。 私は自分の指先を見つめる。 震えていた。「……怖ぇか」 九条さんが低く聞く。「……はい」 隠せなかった。「知らない所で、自分の事を調べられてるのが……気持ち悪くて」 九条さんは少し黙ったあと、ゆっくり立ち上がる。 そして私の前へ来た。「顔上げろ」「……え」「いいから」 恐る恐る顔を上げる。 次の瞬間、大きな手が頬へ触れた。「っ……」 親指がそっと震えを止めるみたいに撫でる。「今のお前、追い詰められた猫みてぇな顔してる」「……そ、そんな顔してますか」「あぁ」 九
Terakhir Diperbarui: 2026-06-12
Chapter: 九話【黒蛇の車】
九条さんに見つめられるだけで心臓がうるさい。 こんな感情もう二度と抱かないと思っていたのに。「……そろそろ寝ろ。今日は頭使いすぎだ」 九条さんはそう言って離れようとする。 でも。「……ま、待ってください」 気づけば私は九条さんのシャツの裾を掴んでいた。「……っ」 自分でやっておきながら顔が熱くなる。 九条さんも少しだけ目を見開いていた。「……なんだ」「その……」 うまく言葉が出ない。 一人になるのが怖かった。 部屋へ戻って、暗い場所で一人になった瞬間、全部思い出してしまいそうだったから。 圭吾に裏切られた事。 黒蛇に狙われている事。 普通の生活には戻れない事。 絶対に色々考えちゃう。「……一人にしないでほしいです」 小さな声だった。 九条さんはしばらく黙る。 それから深くため息を吐いた。「……はぁ」 呆れたみたいな声。「ほんと調子狂う女だな」 でもその声はどこか優しかった。 九条さんは私の隣へ座り直す。「これでいいか」「……はい」 胸の奥が少しだけ落ち着く。 静かな夜だった。 窓の外には東京の夜景。「……眠れねぇのか」 九条さんが煙草を咥えながら聞く。「……少しだけ」 本当はかなり。 すると九条さんが私を見る。「じゃあ少し話すか」「え?」「無言だと余計な事考えるだろ」 意外だった。 この人、自分から誰かと話すタイプじゃないと思っていたから。「……九条さんって、いつからこの世界に……極道になったんですか?」 聞くと九条さんが小さく笑う。「随分踏み込むな」「す、すみません……!」「別に謝らなくていい」 そう言って煙を吐く。「まぁ、生まれた時からこんな世界だ」「……」「親父が組の人間だったからな」 静かな声だった。「だから普通の学校行って、普通に就職して、普通に家庭作って……って人生とは無縁だな」 私は言葉を失う。 そんな風に言う横顔が、少しだけ寂しそうに見えた。「……嫌じゃなかったんですか」「昔はな」 短い返事。「だが今さら抜けようとも思わねぇ」 九条さんは窓の外を見る。「この世界じゃ、綺麗事だけじゃ守れねぇもんもある。実際幾つもこの身で経験してきた」 その言葉が胸に残る。 私はぼんやり九条さんの横顔を見つめた。 この人の眼差しは凄く真っ直ぐ
Terakhir Diperbarui: 2026-06-11
Chapter: 八話【放っておけない】
九条さんのマンションへ戻った頃には時刻は深夜三時を回っていた。 玄関へ入った瞬間一気に力が抜ける。 「……疲れたか」 後ろから低い声。 「……少しだけ」 本当は全然“少し”じゃない。 圭吾と完全に終わった。 自分の口で終わらせた。 それだけで心も体も限界だった。 九条さんはそんな私を見て、小さく煙を吐く。 「今日は色々ありすぎたな」 「……はい」 静かな部屋。 でも不思議と落ち着く。 すると奥から榊さんが姿を見せた。 「若頭」 「どうした」 「真嶋圭吾ですが、別室へ確保しています」 私は思わず顔を上げる。 「逃げられないよう、今は組の管理下です」 「暴れてねぇだろうな」 九条さんが不機嫌そうに聞く。 「最初は騒いでましたが、今は静かです」 「そうか」 九条さんは興味なさそうに煙草を咥える。 「まぁ逃げ場ねぇって理解したんだろ」 その時だった。 ――ピンポーン。 深夜とは思えない軽いチャイム音。 九条さんが露骨に嫌そうな顔をした。 「……はぁ、アイツか」 「え?」 ガチャ。 「やっほ〜」 明るい声と共に入ってきたのは、派手な巻き髪の美女だった。 情報屋の椿さんだ。 「九条〜。仕事終わった〜?」 「何時だと思ってんだ。帰れ」 「冷たっ」 椿さんは笑いながら部屋へ入る。 でも今日は前よりより空気が違った。 笑っているのに、目が笑っていない。 「……何かあったんですか?」 私が恐る恐る聞くと、椿さんはじっと私を見る。 「うん。あんまり良くない話」 空気が明らかに変わった。 「……黒蛇か」 「さすが話早い」 椿さんはソファへ座り、足を組む。 「黒蛇、真嶋圭吾探して結構派手に動いてたみたい」 私は息を呑む。 「でも――」 椿さんがこちらを見た。 「もう見つかってるって気づいたっぽい」 九条さんの目が細くなる。 「……どこでバレた」 「今日のホテル」 静かな声。 「黒蛇の下っ端が周辺見張ってたみたい。そこで見られてる」 私は嫌な予感がした。 「……何を」 椿さんは小さく息を吐く。 「九条とあなたが一緒に居るところ」 背筋が冷えた。
Terakhir Diperbarui: 2026-06-10
Chapter: 七話【調子が狂う】
圭吾は榊さんに腕を掴まれたまま顔を青くしていた。「ま、待ってくれ……! 本当に話すから……!」 さっきまで女とホテルにいた男とは思えないくらい情けない声だった。 九条さんはそんな圭吾を冷たく見下ろしている。「お前さ」 煙草を咥えたまま低く言う。「今、自分がどれだけダサいか分かってるか?」 圭吾の顔が歪む。「っ……」「自分に尽くしてくれた女捨てて逃げ回って、別の女抱いて最後は命乞い。救いようがねぇな」 その言葉が胸に刺さったのか、圭吾は悔しそうに唇を噛んだ。 「……行くぞ」 榊さんが圭吾を押す。 エレベーターへ向かう途中、圭吾が突然こちらを見た。「美月……!」 私は足を止める。「お前、本当にそっち側行くのか?」「……そっち側?」「極道だぞ!?」 圭吾が声を荒げる。「そんな奴ら信用するのか!? 危ない連中なんだぞ!!」 一瞬、空気が止まった。 でも。 次の瞬間、九条さんが小さく笑った。「おもしれぇな」 低い声。「誰のせいでこうなったと思ってんだ? そもそもその危ない連中に協力したのは誰だ」 圭吾が言葉に詰まる。「お前が捨てた女を俺が拾っただけだろ」「美月!」 圭吾が焦ったように言う。「騙されるな! こういう奴らは利用価値なくなったら簡単に捨てるんだよ!」 その瞬間。 九条さんの目がすっと細くなった。「……お前がそれ言うのか」 静かな声だった。 でも圧が怖い。 圭吾もすぐに青ざめた。「っ……」  圭吾が黙り込む。 私はそんな圭吾を見ながら、胸の奥がじわじわ痛むのを感じて
Terakhir Diperbarui: 2026-06-09
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