若頭の元夫に殺された私は、敵対組織の若頭の嫁として生まれ変わり可愛い我が子と幸せに暮らし復讐します

若頭の元夫に殺された私は、敵対組織の若頭の嫁として生まれ変わり可愛い我が子と幸せに暮らし復讐します

last updateHuling Na-update : 2026-07-15
By:  月姫乃映月Ongoing
Language: Japanese
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東京の殆どをシマとする極道組織、桔梗組の若頭皐月慎吾の妻である私は何者かに誘拐された。 薄暗く汚れた部屋。手足を縛られ身動きの取れない私の目の前には一人の女と男。手にはチャカが握られている。 始めは敵対組織である南雲組関係の者かと思っていたが、犯人は皐月慎吾とその愛人だった。 私の死を南雲組の仕業に仕立て上げ、大義名分として南雲組に攻め込むつもりなのだ。 私の最期は愛していた元夫の手により向えた。 だが一度意識が無くなった私は再び意識を取り戻す。 意識を取り戻し最初に見た光景は知らない病院の天井と隣で私の手を握る南雲組若頭、成瀬雅だった。 成瀬雅の嫁に転生した私は自分を裏切り殺した皐月慎吾と愛人に復讐する。

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Kabanata 1

一話【夫から向けられる銃口】

汚れた部屋。手足を縛られ身動きの取れない私の目の前には一人の女と男が立っている。男は深くフードを被っており顔は確認できないが手には真っ黒なチャカが握られている。

私の服は自身の血で汚れ、頭から流れる血で視界はどんどん悪くなる。

冷え切った身体と鼻孔を刺激する血の匂いが死へのカウントダウンが刻一刻と迫っているのを実感させる。

「はぁ、はぁ……貴方達私が誰か分かっているの!?」

散々殴られ、蹴られた私は残り少ない体力を使い二人に吠えた。

私の問いに二人は不敵に笑った。

「痛ッ!?」

「貴方が誰かって? 桔梗ききょう組若頭、皐月慎吾さつきしんごの妻……皐月七瀬ななせでしょう?」

女は私の髪を鷲掴みにして至近距離でそう答えた。

女の顔に見覚えは無い。一体この女は誰なの……。

「なら私をこんな風にしたら桔梗組が黙ってるはずがないって分かるでしょ!」

桔梗組は極道三大組織の一つ。

その中でも桔梗組は東京の殆どをシマとしている最大の極道組織。

「……もしかして南雲なぐも組!?」

南雲組は桔梗組と同じ極道三大組織の一つ。

そして桔梗組とは東京の土地や利権等で長年敵対している組織。

私を拉致して何かの交渉材料にでもするつもりなのかしら。でも殺したら交渉材料にならない……何が狙いなの。

「ふふ、確かにここは南雲組のシマの建物……でもね、私は南雲組の人間でも雇われた身でもないわ」

「じゃ、じゃあ貴方は誰なの……」

「どうせ死ぬのに知る必要なんてあるのかしら」

そう言って女は男からチャカと光り物を受け取り私の目の前でゆっくりと抜いた。

そして私の首にドスを当て「特別に選ばせてあげる、ドスかチャカどっちで逝きたい?」と聞いてきた。

首からはわずかに血が滴り落ち間近に迫る死に呼吸が早くなるのが分かる。

「い、今なら命だけは見逃してあげる……私を殺せば慎吾さんが黙ってないわ。桔梗組を敵に回すのがどういう意味なのか分かってないわけじゃないでしょ! 桔梗組を敵にする覚悟が貴方達にあるの?」

私を殺せばこの女もそこに居る男も死ぬ。それもただ死ぬだけじゃない。死にたくても中々死ねない程の拷問を受けながら殺される。

桔梗組と南雲組だけは敵に回すな。この言葉は古くから長年言われている言葉。

構成員の数も武闘派の質も他の組とは一つ……いや二つは群を抜けている。

南雲組でもないとしたらもう一つの天鬼あまき組? いや、そんなはずはない。天鬼組とは今は友好関係を築いている。私をこんな風にしても天鬼組にはメリットが微塵も無い。

じゃあ一体どの組織が……。

「慎吾さんが黙ってない……ね~」

女は私の首からドスを離し不敵に見下ろしてくる。

そして私のスマホを目の前に差し出してきた。

「慎吾さんが助けてくれるなら電話で助けを求めたら?」

続けて女はここの住所を教えてきた。

両手を縛られている私は身体を捻りながらスマホの通話ボタンを押す。

「……な、なんで…………」

目を見開きながら震えた声を発する私を見て女は高らかに笑う。

「嘘でしょ……なんで、なんであんたのスマホが鳴っているのよ!」

フードを被った男からスマホの鳴る音が聞こえる。

たまたま……そう、たまたま同じタイミングで誰かがあの男に電話を掛けただけ。

「偶然だと思うなら通話を切ってみたらどう?」

そうだ、今通話を切っても音が鳴りやまなければただの偶然。

でも――

「なんで……」

音は鳴りやんだ。

「嘘よ! 誰か別の人がタイミングを見計らって電話を鳴らしているに決まってるわ!」

「信じられないのも無理はないわ。でもこれが現実。ほら、大人しく死んでいれば辛い現実を知ることなくあの世に逝けたのに」

血と涙が混じった液体が私の口に入り込んでくる。

そんな私に男がゆっくりと近づいてくる。

「やめて、来ないで!」

男は私の目の前に座り込むと、ゆっくりとフードを上げた。

男の顔を見た私は胸が抉られ、鷲掴みにされている感覚に襲われる。次第に呼吸が困難になりその場で倒れこんだ。

女は慎吾さんにくっ付き「私達の関係に貴方は邪魔なの。だから消えて」と言い私に銃口を向ける。

「そう言う事だ。お前には悪いが最後まで利用させてもらう」

「利用……」

「ここは南雲組のシマの建物。そこで俺の妻……いや。元妻であるお前の死体が見つかったらどうなると思う」

その言葉で全てが理解できた。

「私の死を南雲組になすりつけて大義名分を桔梗組に持たせるってわけ」

「南雲組は長年目障りな存在なんだ。今時任侠だけでやっていける訳がないのにな。でも他の組の目もある。大義名分がなければ動くにも動けない。だから俺達の大義名分になってくれ」

「いくらここが南雲組のシマだからって南雲組が私を殺した証拠なんて無いじゃない!」

「そんな物は必要ない。必要なのは南雲組のシマでお前が死体で見つかる事。そして目撃者が一人もいない事だ。俺達がお前を殺した証拠さえなければそれで良いんだよ」

慎吾は私に銃口を向け「ドスに比べたらチャカは少ない痛みで逝ける。弾が貫通すればだが」と言った。

「ああ、冥土の土産にお前の知らない桔梗組の本当の顔を教えてやる。何故俺達が南雲組の土地を奪いたがっていると思う?」

「そ……そんなの知らない……何も話さなかったじゃない!」

「知る必要は無かったからな。俺達裏稼業は政治とも大きな関係がある。そうすると自然と情報が来るんだよ、数百億が動く再開発の話が」

「そ、そんな事で私を……」

「それだけじゃないがな。後は来世に期待しろ」

そしてゆっくりと引き金を引いた。

乾いた銃声と共に私の胸にコツンと軽く叩かれたような感覚を覚えた。

視線を下に向けると私の胸から血が噴き出しているのが分かった。

ああ、私死ぬんだ。

一瞬にして私の周りは血だまりができて胸が焼けるような痛みに襲われた。

意識がどんどんと遠ざかっていく。

私が最期に見た光景は、私に銃口を向ける最愛の人だった。

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一話【夫から向けられる銃口】
汚れた部屋。手足を縛られ身動きの取れない私の目の前には一人の女と男が立っている。男は深くフードを被っており顔は確認できないが手には真っ黒なチャカが握られている。 私の服は自身の血で汚れ、頭から流れる血で視界はどんどん悪くなる。 冷え切った身体と鼻孔を刺激する血の匂いが死へのカウントダウンが刻一刻と迫っているのを実感させる。 「はぁ、はぁ……貴方達私が誰か分かっているの!?」 散々殴られ、蹴られた私は残り少ない体力を使い二人に吠えた。 私の問いに二人は不敵に笑った。 「痛ッ!?」 「貴方が誰かって? 桔梗組若頭、皐月慎吾の妻……皐月七瀬でしょう?」 女は私の髪を鷲掴みにして至近距離でそう答えた。 女の顔に見覚えは無い。一体この女は誰なの……。 「なら私をこんな風にしたら桔梗組が黙ってるはずがないって分かるでしょ!」 桔梗組は極道三大組織の一つ。 その中でも桔梗組は東京の殆どをシマとしている最大の極道組織。 「……もしかして南雲組!?」 南雲組は桔梗組と同じ極道三大組織の一つ。 そして桔梗組とは東京の土地や利権等で長年敵対している組織。 私を拉致して何かの交渉材料にでもするつもりなのかしら。でも殺したら交渉材料にならない……何が狙いなの。 「ふふ、確かにここは南雲組のシマの建物……でもね、私は南雲組の人間でも雇われた身でもないわ」 「じゃ、じゃあ貴方は誰なの……」 「どうせ死ぬのに知る必要なんてあるのかしら」 そう言って女は男からチャカと光り物を受け取り私の目の前でゆっくりと抜いた。 そして私の首にドスを当て「特別に選ばせてあげる、ドスかチャカどっちで逝きたい?」と聞いてきた。 首からはわずかに血が滴り落ち間近に迫る死に呼吸が早くなるのが分かる。 「い、今なら命だけは見逃してあげる……私を殺せば慎吾さんが黙ってないわ。桔梗組を敵に回すのがどういう意味なのか分かってないわけじゃないでしょ! 桔梗組を敵にする覚悟が貴方達にあるの?」 私を殺せばこの女もそこに居る男も死ぬ。それもただ死ぬだけじゃない。死にたくても中々死ねない程の拷問を受けながら殺される。 桔梗組と南雲組だけは敵に回すな。この言葉は古くから長年言われている言葉。 構
Magbasa pa
二話【転生した先は】
「んっ……」 眩しい光が瞼を刺した。 耳元では慌ただしい声が飛び交っている。 「意識戻りました!」 「美桜さん! しっかりしてください!」 美桜……? 誰のこと? 重たい瞼を開けると、白い天井が視界いっぱいに広がった。 病院……? 鼻をくすぐる消毒液の匂い。 周囲にはナース服を着た女性達。 状況が理解できない。 その瞬間だった。 「いっ……たぁぁぁぁぁ!!」 お腹の底から突き上げるような激痛が全身を貫いた。 思わず悲鳴が漏れる。 「痛い!! な、何これ!?」 お腹が張り裂けそう。 腰は砕けそうなほど痛い。頭痛も激しい。 下半身は引き裂かれるような感覚に冷や汗が噴き出す。 今まで経験したどんな痛みとも違う。 「いいですよ! 陣痛来てます!」 「次の波でいきみましょう!」 陣痛? いきむ? 何を言って――。 ふと私は自分のお腹を見た。 大きく膨らんだお腹。 妊婦そのものだった。 「え……?」 頭が真っ白になる。 どうして。 何でこんな――。 「美桜!」 低く落ち着いた男の声。 視線を向けた瞬間、私は息を呑んだ。 「っ!?」 そこにいたのは黒いスーツ姿の男。 整った顔立ち。 鋭い眼光。 そして私の手を強く握っている。 見間違えるはずがない。 南雲組若頭、成瀬雅。 桔梗組と激しく敵対していた南雲組の若頭だ。 どうして彼がここにいるの? 「頑張れ美桜。もう少しだ」 その声には焦りと心配が滲んでいた。 まるで愛する妻に向けるような。 いや。 実際にそうなのだろう。 看護師も成瀬さんも今私を『美桜』と呼んだ。 つまり私は――私じゃない。 別人になっている。 成瀬雅の妻、美桜として。 「うそ……」 信じられない。私は夫に裏切られて死んだはず。 何で敵対組織の若頭の妻として生きているの!? 何の夢⁉︎ 「美桜さん! 集中してください!」 看護師の声で意識が引き戻される。 同時に再び激痛が襲った。 「ああああああっ!!」 「来ました! いきんで!」 「赤ちゃんも頑張ってますよ!」 赤ちゃん。 その言葉に私は目を見開いた。 お腹の中にいる命。 混乱して
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三話【可愛い我が子を想い】
「…………んっ」 あれ、私……うっ、身体中が痛い……。 そうだ、私慎吾に銃で撃たれて…………。 「あ、美桜さん目覚ましました」 「良かった……よく頑張ったな美桜」 ッ⁉ 違う! 私さっき子供を! 目を覚まし横を振り返ると私を見つめる男が居た。 「な、成瀬雅……よね?」 「そうだ! お前の夫の成瀬雅だ。大丈夫か美桜」 「なんで……私死んだはずじゃ……」 一体どういうことなの。どう見ても私の身体じゃない。爪もこんなに長くないしそもそも私は妊娠なんてしていない。 何より私の名前は美桜じゃないし成瀬雅の妻でもない。 生まれ変わり……まさか、そんな馬鹿な事があるの? 信じられない。 でもこれが夢だとも思えないし実際私は確実に死んでいる。 あの女に蹴られ殴られた痛み、慎吾に撃たれた時の痛みも熱も覚えている。 でも出産の痛みも覚えている。どっちも夢じゃない……。 もし本当に私が生まれ変わったなら……あの二人に復讐ができる。 あの二人だけは絶対に許さない。あんな外道はなんとしても地獄に落とす。 そのためならなんだってする。南雲組だって天鬼組だって利用する。あんな男の居る組が一番大きな組織なんて絶対にダメ。 そう思うと同時に自分にも怒りを覚える。 なんであんなクズ男に惚れてしまったのか、何故気づけなかったのか。一体どこで間違えたんだろう。 「成瀬さんは意識が無くなっただけで死んではないですよ。ほ~ら、元気で大きな赤ちゃんですよ」 そう言ってナースの女性は赤子を抱きかかえて私に見せてきた。 「抱っこしますか?」 「え……あ、……はい」 私は赤子を受け取り抱っこした。 「この子、私の子供なの……私が産んだの?」 「そうですよ。難産でしたけどよく頑張りましたね」 「ごめんなさい。私記憶が……」 私が言葉を口にするとナースの人は「少しだけ待っててくださいね」と言って部屋を出て行った。 しばらくすると一人の女性を連れて戻ってきた。 「成瀬さん、自分の名前は分かる?」 「成瀬美桜ですか?」 「そうね、じゃあ貴方の旦那さんの名前も分かる?」 「成瀬雅ですよね」 「じゃあお子さんの名前は事前に決めていたそうだけれど分かる?」 私は首を横に振るう。 私が今分かるのは自分が成瀬雅の妻であ
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四話【退院】
「今日で退院か」 朝の柔らかな日差しが病室へ差し込む。 私は眠っている舞桜を抱きながら小さく息を吐いた。 たった五日しか経っていないのに、ずっと前のことのように感じる。 死んだこと。 目覚めたら妊婦だったこと。 出産して母親になったこと。 何もかもが一気に起きすぎて頭も心も全然追いついていない。「どうした?」 荷物をまとめていた雅さんがこちらを見る。「いえ……」 私は舞桜を見つめた。「私本当にお母さんになったんだなって」 雅さんが小さく笑った。「今更だな」「だって実感がないんです」 私がそう言うと、雅さんは荷物を置いてこちらへ歩いてきた。 そして舞桜の顔を覗き込む。「俺もだ」「え?」「俺もまだ父親になった実感はない」 雅さんは苦笑する。「ただ……」 そう言って舞桜の小さな手に自分の指を近付ける。 すると。 きゅっ。 舞桜が雅さんの指を握った。「……」「……」 二人とも思わず固まった。 数秒後。 ふっ。 雅さんが優しく笑った。「こういうことされると実感が湧くな」 その顔を見て、私は目を見開いた。 初めて見る顔だった。 組の若頭の顔じゃない。 一人の父親の顔。 穏やかで、優しくて、どこか嬉しそうな顔。「……そんな顔するんですね」「何だそれは」「いえ」 私は小さく笑う。「何か新鮮で」 すると雅さんが私を見る。「美桜もだ」「私も?」「ああ」「私、何か変ですか?」「変じゃない」 雅は少し考える。「よく舞桜を見て笑うようになったな」 私はきょとんとした。「そうですか?」「ああ」「前の私は違ったんですか?」「舞桜を産んだ後は不安そうな表情ばかりだったからな。今の美桜は幸せそうに笑う」 私は言葉を失った。 幸せそう。 私は今、そんな顔をしているんだ。 前世ではどうだっただろう。 慎吾と一緒にいて、本当に笑えていただろうか。 思い出そうとしても、出てくるのは無理をしていた自分ばかりだ。 嫌われないように。 迷惑を掛けないように。 妻として失格だと思われないように。 私はずっと慎吾の顔色を窺っていた。 でも今は。 少なくとも舞桜を見ている時だけは違う。「……私、幸せそうですか?」「ああ」 雅さんは迷いなく答えた。「そっか……」 私は舞桜を見
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五話【最優先事項】
「お疲れ様です成瀬の頭、姐さん」 舞桜を産んで五日後。退院した私達を待っていたのは黒塗りの高級車二台と私達に頭を下げる四人の男性。その内の一人が後部座席のドアを開け「どうぞこちらへ」と私達を案内した。「真辺、分かっているよな? 舞桜と美桜が乗っている」「はい、勿論です」 そう言い真辺という男性は車を出した。「しばらく組に顔を出さずに悪かったな。組は大丈夫か?」「それが……」「何かあったのか?」「どうやら大事の様で未だ一部の幹部陣の兄貴にしか話されていないらしく、頭には親父が詳しく話すそうです」 雅さんは「そうか」とだけ返して舞桜の頭を優しく撫でる。 大事な事。それも幹部の一部にしか知らされない程の事。 まさか私の死について? 私が死んでから一週間……一週間も死体が放置されているとは思いたくはない。「真辺、組の者全員にこう伝えろ。親父の次に守るべき対象は俺ではなく舞桜と美桜だと」「はい。組に付き次第直ぐに知らせます」 しばらく車に揺られ、組に着くと数十人の組員の人が私達を迎えた。「お疲れ様です頭に姐さん。組長室で親父がお待ちです」 そう言う男性に私は見覚えがあった。 この人は確か南雲組の若頭補佐の月城仁志だったはず。 頭も良く喧嘩も強いと桔梗組で良く話を聞いていた。「俺がいない間色々ありがとな月城」「いえ、俺にできる事なら何でもします」「ほら、娘の舞桜だ。後で顔でも見てくれ」 私達は部屋の奥に進み組長室と思われる部屋の前で止まった。「ここが親父の部屋だ。美桜に記憶がない事は俺から話すから大丈夫だ。それに親父は凄く優しくてな」 そう言って雅さんは部屋をノックしてドアを開けた。「失礼します親父」「おお、雅久しぶりだな。美桜さんも大変だっただろう。ご苦労だった」 そして南雲組組長の|南雲
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六話【大事な話】
「ここが我が家だ」 雅さんと一緒に来たのは高級マンションの一室。 窓から見える夜景は絶景で見入ってしまう。隅々まで綺麗に掃除されており、整理整頓も完璧。七瀬として生きていた時もそれなりには良い所に住んでいたのだけれど、あの男とは高級住宅街にある一軒家で共に暮らしていた。 こんな景色見たことがない。「まずは部屋を案内しよう」 一室一室広い部屋を案内された後、まさかの一つ下の階の部屋にも案内された。 下の階の部屋はそこまで使う事はないとの事だけれど……。「どうだ? 気に入ってもらえたか?」「ええ、とても」 美桜さん、雅さんから凄く愛されていたんだな……。 ごめんなさい、美桜さん。貴方の身体を受け取ってしまって。 美桜さんは雅さんともっと一緒に暮らして幸せになりたかったと思う。それに辛い妊娠期間も舞桜に会いたいって気持ちで乗り越えてきたはずなのに舞桜には会えなかった。 そんな美桜さんから受け継いだ命。必ず雅さんと舞桜を幸せにしてあげないと。 それが私が美桜さんにできる唯一の事だから。「しばらくは美桜の仕事は俺と舎弟の若集でするから美桜はゆっくり休んでくれ」「私は何の仕事をしていたの?」 私は桔梗組では組の事務作業を手伝ったり料理を振舞っていたけれど南雲組での仕事はなんなのかしら。 同じ事だと新しく何も覚えなくて良いから楽なのだけれど……。「仕事って言っても殆ど無いんだけどな。忙しい時期の事務作業を少し手伝ってもらったりしていたんだ。それと夜まで組事務所で事務作業をしている組員の夕飯を作ってもらっていたんだ」「それくらいなら私にでもできそうね」「その事は今は考えなくても良い。美桜は自分と舞桜の事だけを考えてくれれば良い」 そう言うと雅さんはキッチンに立ち「何が食べたい? なんでも言ってくれ」と私に聞いて来た。 雅さん、料理できるんだ。「なら雅さんの得意料理が食べたいな」 舞桜をベビーベッドに寝かせながら答えると雅さんは慣れた手つきで料理を始めた。 雅さんが料理をしてくれている間、私はひたすら考えた。 どうやってあの二人に復讐をしようかと。 考えて考えて考えた。でもどれも最善策とは思えない。 もし何の考えも無しにあの二人を殺したら間違いなく全面戦争になる。 桔梗組と南雲組が全面戦争なんてしたら幾つの命が消えるか分か
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七話【犯人の特徴】
私が話しだそうとすると「長くなりそうか?」と聞かれ無言で頷くと「まずは料理を食べてからにしよう」と言われ、雅さんに作ってもらった料理を平らげた後二人でソファに腰を掛けた。「それで? 話ってなんだ?」 優しい声色で聞かれ、私は少し間を開けて口を開いた。「私舞桜を産むときに意識を失ったでしょ? その時に変な夢? のようなものを見たの」 私の言葉に雅は表情を変えず「どんな夢なんだ?」と返した。「場所は分からない。薄暗くて気味の悪い場所に私……いえ、知らない女の人が手足を縛られながら血を流していたの」「知らない女……」「その女の人の前に一人の女と男が立ってて、手にはナイフと銃を持ってたの。それが凄く不気味で、今まで誰にも話せなかったんだけど私の記憶喪失とかに関係あるのかなってちょっと思っちゃって」 それっぽい事を話しながら雅さんになんとか話を続ける。「その女性とか男性に見覚えはないのか? 特徴とか、もしかしたら美桜の知っている人かもしれない」「男の人は身長が高くてフードを被っていたから顔はあまり覚えていないの。もう一人の女の人は首元に黒子があった気がする……」「……首元に黒子のある女性……分からないな」 雅さんはしばらく考えてくれたけれど私の周りに一人も首元に黒子のある女性は居ないみたい。 つまりあの女は南雲組とは深く関係のない。桔梗組に居た時もあの女は一目も見たことがない。 けれどあの女、人の死に慣れている……いや、裏社会に慣れている感じがする。 普通チャカやドスを握ると少しは躊躇いが生まれるけれど、あの女は躊躇なく私にドスを当て、銃の引き金に指をかけていた。 どう考えても堅気の人じゃない。 そうなると別の組に関係する女……。「それで、縛られていた女性に関しては特徴はないのか?」「えーっと……」 どうしよう。素直に皐月七瀬と言われていたと言うべきなのかな。 でもここで遠回しに特徴だけを言っても中々前に進まないと思う。 それに何よりも長引かせてしまったら雅さんの身に危険が起きるかもしれない。それだけは絶対に避けたい。舞桜の為にも……。「確か……七瀬って、皐月七瀬って呼ばれていたはず……」「ッ⁉ 今何て言った⁉」 私がそう言うと雅さんは初めて表情を変えて私の肩を掴み慌てて聞き返してきた。「女の人が縛られている女の人にナイフ
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八話【元夫からの通話】
静まり返ったリビングに、テーブルの上へ置かれた雅さんのスマートフォンの着信音が鳴り響いた。 突然の音に舞桜が少しだけ身じろぎをしたため、私は慌ててベビーベッドを優しく揺らした。「よしよし……大丈夫だよ」 舞桜は再び静かな寝息を立て始める。 その一方で、スマホを手に取った雅さんの表情は一瞬で引き締まっていた。 画面に表示された名前を見た瞬間、私は嫌な予感がした。「……親父だ」 雅さんは私に一言だけ告げると、そのまま電話へ出た。「俺です」 電話口から聞こえてくる声は私には聞こえない。 それでも雅さんの表情だけで、良い話ではないことは十分伝わってきた。「……そうですか」 数秒の沈黙。「分かりました」 雅さんは短く返事をすると電話を切り、スマホをゆっくりと机へ置いた。 そのまま数秒間、雅さんは何も言わない。「……雅さん?」 恐る恐る声を掛けると、雅さんは私を見つめながら口を開いた。「桔梗組から連絡が来たらしい」 胸が大きく跳ねた。「俺宛てにな」 やっぱり……慎吾が動いた。「内容は?」「話し合いだ」 雅さんはソファへ腰を下ろした。「皐月七瀬の件について、若頭同士で直接話がしたいそうだ」 私は思わず息を呑む。 慎吾が自分から話し合いを持ち掛けるなんて。 けれど、よく考えてみたら当然かもしれない。 自分が犯人だからこそ相手の反応を直接確かめたい。 そして南雲組へ揺さぶりを掛けたいのだろう。「場所は?」「港区にある料亭『紫苑亭』どこの組にも属していない中立の場所だ」 なるほど。 互いの組事務所では警戒される。 だからこそ第三者が管理する場所を指定したのね。「日時は?」「明日の午後二時」 思ったよりもずっと早い。「断ることはできないの?」 私が尋ねると、雅さんは静かに首を横へ振った。「できない」「どうして?」「これは正式な申し入れだからだ」 雅さんは真剣な表情で説明を続ける。「極道には暗黙の了解がある。正式な話し合いの場を設けると言われた以上、正当な理由なく断れば『南雲組は後ろめたいことがある』と他の組から見られる。」「……」「そうなれば桔梗組は俺達南雲組がやったに間違いないと思うだろう」 つまり断ること自体が相手の思う壺。「逆に向こうも話し合いの場では手を出せない。」「どうして?」
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