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六話【大事な話】

last update 게시일: 2026-07-14 18:39:43

「ここが我が家だ」

 雅さんと一緒に来たのは高級マンションの一室。

 窓から見える夜景は絶景で見入ってしまう。隅々まで綺麗に掃除されており、整理整頓も完璧。

七瀬として生きていた時もそれなりには良い所に住んでいたのだけれど、あの男とは高級住宅街にある一軒家で共に暮らしていた。

 こんな景色見たことがない。

「まずは部屋を案内しよう」

 一室一室広い部屋を案内された後、まさかの一つ下の階の部屋にも案内された。

 下の階の部屋はそこまで使う事はないとの事だけれど……。

「どうだ? 気に入ってもらえたか?」

「ええ、とても」

 美桜さん、雅さんから凄く愛されていたんだな……。

 ごめんなさい、美桜さん。貴方の身体を受け取ってしまって。

 美桜さんは雅さんともっと一緒に暮らして幸せになりたかったと思う。それに辛い妊娠期間も舞桜に会いたいって気持ちで乗り越えてきたはずなのに舞桜には会えなかった。

 そんな美桜さんから受け継いだ命。必ず雅さんと舞桜を幸せにしてあげないと。

 それが私が美桜さんにできる唯一の事だから。

「しばらくは美桜の仕事は俺と舎弟の若集でするから美桜はゆっくり休んでくれ」

「私は何の仕事をしていたの?」

 私は桔梗組では組の事務作業を手伝ったり料理を振舞っていたけれど南雲組での仕事はなんなのかしら。

 同じ事だと新しく何も覚えなくて良いから楽なのだけれど……。

「仕事って言っても殆ど無いんだけどな。忙しい時期の事務作業を少し手伝ってもらったりしていたんだ。それと夜まで組事務所で事務作業をしている組員の夕飯を作ってもらっていたんだ」

「それくらいなら私にでもできそうね」

「その事は今は考えなくても良い。美桜は自分と舞桜の事だけを考えてくれれば良い」

 そう言うと雅さんはキッチンに立ち「何が食べたい? なんでも言ってくれ」と私に聞いて来た。

 雅さん、料理できるんだ。

「なら雅さんの得意料理が食べたいな」

 舞桜をベビーベッドに寝かせながら答えると雅さんは慣れた手つきで料理を始めた。

 雅さんが料理をしてくれている間、私はひたすら考えた。

 どうやってあの二人に復讐をしようかと。

 考えて考えて考えた。でもどれも最善策とは思えない。

 もし何の考えも無しにあの二人を殺したら間違いなく全面戦争になる。

 桔梗組と南雲組が全面戦争なんてしたら幾つの命が消えるか分からない。

 そんな迷惑をかけるわけにはいかない。

 そもそも女一人で慎吾を殺害するのは不可能に近い。

 慎吾はプライベート時以外は常に二人の組員を側に置いている。もし慎吾を地獄に落とせても直ぐに私に待っているのは間違いなく死。

仮にプライベート時を狙ったとしても力の差はあまりにも大きい。

 理想は私を殺したのがあの二人である事を証明して南雲組に罪はない事を証明しあの二人を地獄に送る事。

 けれどあの男が証拠を残すとも思えないし私が七瀬の生まれ変わりであの二人に殺されたと説明しても誰も信じるはずがない。

 やっぱり雅さんの力が必要……雅さんなら私の事信じてくれるかな。

「お待たせ」

 そんな事を考えていると机の上に美味しそうなハンバーグに色とりどりのサラダが並べられた。

「産後の身体には緑色の濃い野菜が良いみたいだからな。しっかり食べろよ」

「とてもおいしそう! ありがとう雅さん」

 手を合わせ感謝をしながらハンバーグを口へと運んだ。

「どうだ? 美味しいか」

「凄く美味しい! 雅さん料理上手なんだね」

「あはは、美桜の好みに変化は無いみたいで安心したよ」

 まるで理想の夫婦ね。昔は慎吾もこんな感じだったのに……。

 慎吾と結婚してからしばらくはこんな感じで夫婦円満の生活を送っていた。けれど徐々にダメな方向へと変わっていった。

 私が夕食を準備して慎吾の帰りを待っていても連絡一つなく帰ってこない事なんて数えられない程。私も組の事は把握していたから組関連で忙しいとかではなかった。

 思えばその頃から私じゃなくあの女と一緒に居たんだろう。

 いや、当時の私も心のどこかでそう思っていた。けれど慎吾の事を信じてその可能性を考えない事にした。

「ねぇ、雅さん。聞いてほしい事があるの」

「聞いてほしい事?」

 全ての真実は話さない。雅さんに話すのは事実を作り話の様に変えた出来事。

 私は成瀬美桜本人として生きるから。

「あのね、私――」

 雅さんに話をしようとすると舞桜が「ネェーネェー」と泣き始めてしまった。

「あ、お腹が空いたのね。ちょっと待ってね」

 入院中に急いで子育ての事について調べたから舞桜の鳴き声で何を求めているのかはなんとなく分かる。

 私は舞桜を抱き母乳を与える。すると舞桜はピタリと泣き止んだ。

 仕方がない、雅さんに話すのはまた後でにしよう。

 舞桜をお腹いっぱいにした後にゲップをさせて再び寝かしつけた。

 舞桜を産んでしばらくは不安しかなかったし睡眠時間も少なくなったけれど、雅さんも組の人も私を全力でサポートしてくれるし、美桜さんの変わりにしっかりお母さんをしないとって思いが込み上げてくる。

 何より舞桜の為って思えばどんなに辛いことだって耐えられる。

「それで? 話ってなんだ?」

「ううん。また後でゆっくり話すね」

「そうか。俺からも一つ美桜に伝えておかなければならない事があるんだ。しばらくの間は外出を控えてほしい。外出するとしても南雲組のシマだけにして必ずうちの組員二人以上と共に行動してくれ。必要な物とかは俺か組員に伝えれば用意する」

「……何かあったの?」

 もしかしたら雅さんから話をしてくれるかもしれない。

そう期待したけれど雅さんからは「ちょっとな」とはぐらかされてしまった。

「危険な事なの?」

「……安心しろ、俺なら大丈夫だ」

「…………雅さん、やっぱり今私の話しを聞いてほしい」

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