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第63話 身内会議

last update Last Updated: 2025-05-03 09:26:02

 春、夏と半年間を鍛冶に目一杯打ち込んだおかげで、俺の鍛冶の腕前はかなり上がった。

 扱える素材はずいぶん増えて、今は魔法銀を主体にやっている。

 魔法銀は名前の通り、魔力が含まれた銀色の金属だ。

 軽い上に魔法と相性がいいので魔法使いに愛用されている。

 ただ頑丈さはやや難あり。

 なので生粋の戦士たちには、耐久度抜群のアダマンタイトのほうが人気がある。

「ユウ様よぉ。ダンジョンでグリーンドラゴンをぶっ殺したら、こんな素材が手に入ったぜ」

 ある日、ルクレツィアが変わった素材を取ってきてくれた。

 緑色でツヤツヤした鱗である。

「おっ、これは竜鱗だな! 素材としては最高クラスだよ。やるじゃないか!」

 俺が目を丸くすると、ルクレツィアとクマ吾郎は得意げな顔になった。

「へへっ。あたしらにかかれば、ドラゴンだって敵じゃないんだよ」

「ガウ!」

 まったく頼もしいな。

 俺の手の竜鱗を覗き込みながら、ルクレツィアが言う。

「ドラゴンは色違いが何種類もいるだろ。そいつらの鱗も素材になるの?」

「もちろんだ。ドラゴンは属性を持っているからな。例えばこのグリーンドラゴンは、弱い冷気属性。レッドドラゴンは火属性」

「へぇ~。じゃあ、色んな色のドラゴンの鱗をむしり取ってくりゃあ、ユウ様の鍛冶の役に立つな?」

 俺はうなずいた。

「今の俺の実力じゃ、竜鱗はちょっと難易度が高いが。もっと練習すれば、必ず扱えるようになる。そうすればお前たちの武器や防具を作ってやれるよ」

「いいね! ユウ様が作ってくれた斧、切れ味よくてさ。気に入ってるんだ」

 そんな話をしていると、バドじいさんがひょっこり顔を出した。

「今、竜鱗がどうとか聞こえたんじゃが」

「うん、ほらこれ。ルクレツィアとクマ吾郎が取ってきてくれた」

 グリーンドラゴンの鱗を見せると、彼は目を輝かせた。

「おおお、素晴らしい! 竜鱗は宝石加工スキルでも最高ランクの素材でしてなあ。これがあれば、効果の高い護符が作

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     そうしているうちに季節は巡り、三度目の春がやってくる。 俺は記憶喪失で誕生日を覚えていないので、難破船から放り出されて洞窟で目覚めた日を誕生日代わりにしている。 だからその日、俺は十七歳になった。「ユウ様、お誕生日おめでとうございます!」「おめでとう!」「おめっとさん」「ガウ~!」 家の皆が盛大に祝ってくれて、ちょっと照れくさかった。 その日の食卓はいつもより豪華な食事が並んで、みんなでおいしく食べた。 今さら誕生日を祝うような年齢ではないが、こうやってパーティ気分で楽しくやるのは悪くない。 食後のケーキはエリーゼとレナの手作りだそうで、おいしかった。みんなすっかり満腹、満足。 エミルが「僕もお手伝いしたんだよ!」と胸を張っていたので、頭を撫でてやったよ。 レナとバドじいさんの生産品はますます品質が上がって、店の売上は絶好調。 ひっきりなしにお客が来るものだから、店が手狭になってきたので、拡張を決意する。 ついでにいよいよ、俺も鍛冶スキルの練習を始めよう。 王都の大工に出張を頼んで、店舗スペースを広げてもらった。 さらに家の横に鍛冶場を作る。 それなりにお金がかかったが、資金はしっかり貯めてある。問題ない。 これで準備は整った。 ダンジョン攻略と素材採集はルクレツィアとクマ吾郎のコンビに任せる。 ルクレツィアは突撃癖がまだ抜けきっていないが、クマ吾郎がいれば安心だろう。あいつは頼れる熊だからな。「いいか、二人とも。くれぐれも『命大事に』だ」「へいへい。分かってるよ」「ガウー!」 そうして俺は鍛冶に取り掛かる。 最初は扱いやすい青銅なんかを叩いて、そのうち鉄に。 カーン、カーン……。 熱した鉄は真っ赤になって、叩くたびに火花が散っていく。 叩き具合によって金属の硬度

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第61話 鍛冶はじめ

     統率スキルの効果が確認できたので、俺たちはますます仕事に励んだ。「なあ、ユウ様よ。たまにはあたしもダンジョンに連れて行ってくれよ。腕がなまっちまう」「まあ、そうか。今のとこ店に強盗が来たわけじゃなし、実戦の機会がなかったもんな」 女戦士のルクレツィアがそう言うので、自宅の警備をクマ吾郎と交代してダンジョンに行ってみた。「ヒャッハァ! 死ね、死ねー!」 ルクレツィアはぱっと見、美人なんだけど。 戦い方はバーサーカーだった。「ちょ、ルクレツィア、ストップ! 一人で突っ込んだら危ないだろうが」「ユウ様のサポートが届く範囲までしか、行ってないぜ?」 しかも野生の勘が鋭いバーサーカーである。 彼女の戦士としての腕前の割に、奴隷の値段が安いのはなんとなく察した。 狂犬すぎて御するのが大変だったんだろう。 ボスを見つけて単身で突っ込んでいったときは肝が冷えた。 しかも瀕死になるまでダメージを受け続けて、後一撃で死んでしまう! となってから回復ポーションを飲むのだ。 いくらレナのポーションが効果抜群だと言っても、これはない。「お前、ほんっとーにやめろよ! そんな戦い方してたら、いつか死ぬぞ!」「いいじゃん。戦士は戦いで死んでなんぼよ」 ケロッとした口調で言うので、俺は怒りを覚えた。「いいわけあるか! 俺は誰にも死んでほしくないんだよ。俺自身、今まで必死で生きてきた。生きたくても生きられない人の気持ち、考えたことあるか!?」 この世界で目を覚ましてから、理不尽な死者は何人も見てきた。 あんなふうに死にたくない一念で俺はここまで来たんだ。 ルクレツィアは気圧された様子で口ごもる。「え、あの……?」「お前が死んだら、家のみんなが悲しむと分かって言ってんのか? エミルは泣いて夜寝られなくなるぞ。他の大人だってどれだけ落ち込むことか。それ分かった上で言ってんのか!?」「……悪

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第60話 特殊スキル

     表示されたステータスに妙なものを見つけて、俺は思わず叫んだ。「え! なんだこの『特殊スキル、統率(小)』って!」 メダルで習得した覚えはないし、それっぽい行動も特に覚えはない。 思わず声を上げると、エリーゼも不思議そうに言った。「でも、何となく味方がパワーアップしそうな名前ですね。統率」「確かに」 いつの間にこんなの生えてたんだろうか。 俺たちは首をかしげながらも、分からなかったので保留となった。 統率のインパクトがすごすぎて忘れていたが、ついに魅力が上がったのも地味に嬉しい。 エリーゼが教えてくれた歌唱スキルのおかげだと思う。もう音痴とは言わせない。 後日、王都で色々と調べた結果。 統率は多くの仲間を引き連れたリーダーに与えられるスキルだと判明した。 仲間の数と忠誠心によって会得する。 効果は仲間にさまざまなボーナスを与えるのだという。 俺は今年になって奴隷をたくさん買った。 奴隷というより仲間に近い感覚で彼らに接していた。 そりゃあそんなに甘やかすつもりはなかったけど、彼らはあくまで人間。仕事仲間だ。その思いは変わらない。 だからみんなも俺に心を開いてくれた……と思う。 それが忠誠心という形で表れて、統率スキルになったのか。 確認されている統率スキルの効果はさまざまだが、その中に「仲間の潜在能力を引き出し、成長を促す」というのがあった。 ここ最近のみんなの急激な成長はそのおかげだろう。 そういえば、俺自身の成長よりもクマ吾郎パワーアップのほうが上なんだよな。 統率スキルの影響だったのか。「そんなことってあるんだなぁ」 思わずつぶやくと、「ガウガウ!」 クマ吾郎が得意げな顔で鳴いた。 まるで「分かってたもんね!」とでも言いたそうだ。 そん

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