LOGINThe first time I met Alessio Russo I was eighteen. He’d barged into my room. I yelled. He yelled. We argued. I slammed the door into the jerk’s face. Then I discovered that the drool-worthy prick was my best friend’s oldest brother -- who had connections to Cassio King and the mafia. The freaking mafia! The second time I saw him was at his mother’s funeral. He didn’t seem to recognize me. Or so I thought until we ended up tangled up between the sheets and he referred to our first encounter. The next time we saw each other was at his father’s funeral - the funeral of the very same man that had threatened my life. It turned out Alessio Russo was a gentleman even when he was a savage. We bickered. We kissed. We fought. We made love. He thrilled me and scared me. Still, we slowly started to find a way to each other but before I had a chance to come clean with him, I had to leave the country. Then all hell broke loose.
View More離れの朝は、いつもと同じ音で始まっていた。
庭の砂利を箒が撫でる音。遠くで車のドアが閉まる低い響き。本家の方からかすかに聞こえる男たちの声。短く交わされる挨拶は、朝の空気の中で乾いていて、それでも美緒には、もう長いあいだ耳に馴染んだ音だった。
黒瀬本家の敷地内に建つ離れは、夫婦だけの住まいだった。けれど、完全に外から切り離された家ではない。庭を挟めば本家の気配があり、石畳を辿れば渡り廊下へ続く。季節ごとに手入れされた植え込みも、朝早くから動き出す人の気配も、ここがただの住宅ではなく、黒瀬の内側なのだと毎日知らせていた。
美緒は、その音を背に受けながら湯を沸かしていた。
やかんの底から小さな泡の音が立つ。湯気が細く上がり、台所の空気に淡い湿り気が混じった。美緒は棚から湯呑みを二つ出した。指が自然に、いつもの位置へ伸びる。迅が使う濃い灰色の湯呑みと、自分の白磁の湯呑み。何年も繰り返してきた朝の所作だった。
けれど、今日はその動きのすべてが、どこか空々しかった。
居間の低い机の上に、白い紙が置かれている。
離婚届。
その三文字を目でなぞらないようにしても、白さだけが視界の端に残った。畳の色も、湯呑みの丸みも、丁寧に畳まれた布巾も、壁際に掛けられた迅の黒いスーツも、すべていつも通りそこにあるのに、その紙一枚のせいで部屋の重心が変わっていた。
美緒は湯呑みに茶を注いだ。ほうじ茶の香ばしさがふわりと立つ。けれど喉は少しも温まらなかった。茶托の位置を直し、布巾の端を揃え、机の角度までほんのわずかに直す。しなくてもいいことばかりをしていると、自分でも分かっていた。
時間を稼いでいる。
そのことに気づいた途端、胸の奥が冷えた。
美緒は二十九歳だった。鏡の前で低くまとめた黒髪は、今日も乱れていない。生成りのブラウスの襟元を指先で整え、落ち着いた色のスカートの皺を掌で払う。装いは控えめだったが、粗末には見えないようにしていた。派手に飾るためではない。黒瀬の家にいる以上、誰の目に触れても礼を欠かないようにするためだった。
仕立屋の娘だった頃から、服は人を映すものだと教えられてきた。
襟が浮いていれば、その人がどこか落ち着かないことがある。袖口がくたびれていれば、手元をよく使う仕事をしている。肩の線が合っていなければ、本人も気づかないまま息を詰めていることがある。
美緒は人を値踏みするために見てきたのではない。相手が少しでも楽に立てるように、その人の癖や疲れを見てきた。
それなのに今朝は、自分の服の皺ばかりが気になった。胸元の布が、呼吸のたびにわずかに浮く。指先で押さえても、内側の乱れまでは整わない。
居間に戻ると、迅(じん)はすでに向かいに座っていた。
三十五歳。黒瀬興業の若頭で、次期三代目候補。六つ年上の夫は、いつものように仕立てのいい黒いスーツを着ていた。広い肩に布がきれいに落ち、袖口の長さも、背中の線も、乱れがない。黒い布地は朝の淡い光を吸い込み、迅の輪郭をいっそう硬く見せていた。
切れ長の目。整った横顔。薄く結ばれた唇。長身で、ただ座っているだけでも場の空気を沈めるような男だった。
美緒は、その姿を何度も見てきた。
本家へ向かう前。夜遅く帰ってきた後。急な呼び出しに立ち上がる時。煙草に火をつける前。ほんの少し疲れた顔で、何も言わずにネクタイを緩める時。
迅はいつも言葉が少なかった。けれど、美緒はその少なさの中にある違いを見てきたつもりだった。声がいつもより低い日。肩の力が抜けない日。眠れていないのに眠れているふりをする日。食事の箸が進まない日。
以前なら、声をかけていた。
「少し、休んだ方がいいと思います」
そう言えば、迅は面倒そうに眉を動かして、それでも湯呑みに手を伸ばした。礼を言うことは少なかったけれど、飲み干した茶の温度で、彼が少しだけ息を緩めたことが分かった。
けれど今朝の美緒には、その一言を口にする資格がないように思えた。
迅は美緒を見なかった。
机の上の離婚届。自分の手元。火をつけていない煙草。袖口。視線はどこかに置かれているのに、美緒の顔だけは避けていた。
美緒は湯呑みを迅の前へ置いた。
「冷めないうちに」
いつものように言ったつもりだった。けれど声が少し掠れた。
迅は湯呑みに触れなかった。指先だけが机の上に置かれている。長い指は、火のついていない煙草をゆっくりと転がしていた。吸う気があるようには見えない。ただ、そこに何かを置いておかなければならないように、指先で触れているだけだった。
外で、砂利を掃く音が一度止まった。
離れの中だけが、音を失ったように静まり返る。
美緒は座った。低い机を挟めば、迅との距離は近い。手を伸ばせば湯呑みに触れられるほどで、膝を少し寄せれば机の下で足が触れそうなほどだった。それなのに、迅はひどく遠かった。
机の上の白い紙が、二人の間に横たわっている。
美緒はその紙を直視できなかった。白さが目に痛い。何も書かれていない欄がある。そこに、自分の名前を書くことになる。そう思っただけで、指先に冷えが上がってきた。
まだ、何か言ってくれるかもしれない。
美緒はその細い希望を、胸の奥で握りしめていた。理由があるのなら聞きたかった。自分が知らないところで何かが起きているのなら、せめて話してほしかった。たとえ結果が変わらないとしても、夫婦だった時間に対する言葉が欲しかった。
迅が黙っているから、美緒は息を吸った。
「本当に、これでいいんですか」
声は思ったより静かだった。
迅の指先が止まった。煙草が机の上でわずかに傾く。ほんの小さな変化だったが、美緒の目はそれを拾ってしまう。何か言いかけたのかもしれない。顔を上げるのかもしれない。そう思った瞬間、迅は指を離した。
そして、低く言った。
「決めたことや」
その言葉は短く、隙がなかった。
美緒は唇を結んだ。
決めたこと。
それは、二人で決めたことではなかった。少なくとも美緒には、決めた記憶がない。相談された記憶も、迷いを分けられた記憶もない。ただ、すでに用意された紙を前にして、終わりだけを差し出されている。
「私は、何も聞いていません」
美緒の声は震えていなかった。震えなかったことが、かえって痛かった。
迅は視線を上げない。
「聞いても変わらん」
「変わらなくても、聞く権利くらいはあると思っていました」
迅の手が、わずかに握られた。
美緒はそれを見てしまった。黒いスーツの袖口から覗く手首。大きな手。昔なら、その手が自分の肩に置かれるだけで、心臓が静かになることもあった。夜遅く帰ってきた迅が、何も言わずに背後から手を回し、短く息を吐いたこともあった。
今は、その手が机の向こう側にある。
触れることも、触れられることもない場所に。
迅は言った。
「理由を聞いても、何も変わらん」
美緒は、その言葉の奥に何かがないか探そうとした。声の低さ。間の長さ。煙草に触れない指。どこか強張った横顔。見れば見るほど、分からなくなる。
この人は、本当に何も感じていないのだろうか。
そう思った次の瞬間、美緒は自分を責めた。感じているのなら、なぜ言わないのか。何かあるのなら、なぜ自分を外へ置くのか。
夫婦だったはずなのに。
美緒は、息を整えてから言った。
「岩本さんのことですか」
その名前を口にした途端、部屋の温度が変わった気がした。
岩本由香。
美緒が知っているのは、表面だけだった。岩本組の娘であること。最近、迅の周辺でその名前が出るようになったこと。本家の中に、どこか言いにくい空気が流れていたこと。美緒が部屋に入ると会話が途切れる日が増えたこと。
それ以上は知らされなかった。
知ろうとしても、誰もはっきりとは言わなかった。
迅の指先がまた止まる。今度は、煙草ではなく、机の端に置いた手がわずかに強張った。目を上げるのかと思った。けれど迅は、結局美緒を見なかった。
「お前には関係ない」
息が止まった。
由香に負けたのだと感じるより先に、その言葉が胸の真ん中へ落ちた。
関係ない。
美緒は、喉の奥がゆっくり狭くなっていくのを感じた。怒りよりも、悲しみよりも先に、体がその意味を理解してしまう。
自分はもう、迅の隣で事情を分け合う相手ではない。
妻でありながら、夫の抱えるものから締め出されている。黒瀬の内側にいて、黒瀬の朝の音を聞き、迅の帰りを待ち、茶を淹れ、スーツの袖を整えてきた。それでも、肝心な場所には入れてもらえなかった。
「私は、関係ないんですか」
声が小さくなった。
迅は答えなかった。
外で誰かが短く挨拶をした。低い声が二つ重なり、すぐに遠ざかる。いつもの朝だった。黒瀬本家はいつも通り動いている。誰かが車を回し、誰かが庭を掃き、誰かが本家の玄関を出入りしている。
この離れだけが、朝から切り離されていた。
美緒は迅を見た。
いつも整っている横顔。黒いスーツ。低く伏せられた睫毛。年上で、黒瀬を背負う男。美緒よりずっと先に危険を見て、ずっと先に決めて、必要なものを選び取ってきた人。
迅はいつも、先に決める人だった。
黒瀬のこと。組のこと。危険なこと。自分が負うべき痛み。美緒に見せないと決めたもの。
それを、強さだと思っていた時もある。頼もしさだと思いたかった時もある。けれど今朝、その強さは美緒を守るものではなく、美緒を遠ざける壁になっていた。
「迅さん」
名前を呼ぶと、迅の喉がわずかに動いた。
それでも、顔は上がらない。
「私は、あなたの妻だったんじゃないんですか」
迅は黙っていた。
その沈黙で、美緒は自分がまだ問いの形を保っていることに気づいた。答えを期待している。否定してほしいと思っている。違うと言ってほしい。そうではないと言ってほしい。お前には関係ないなど、本心ではないと言ってほしい。
けれど迅は、低く言った。
「そう思ってくれてええ」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
分かった時、美緒の胸の奥で、何かが静かに割れた。
そう思ってくれてええ。
それは、否定ではなかった。弁解でもなかった。美緒が傷つく方へ受け取ってもかまわない、という言葉だった。迅が本当はどう思っているのか、美緒には分からない。ただ、その言葉は、美緒の前にあった最後の細い糸を切った。
湯呑みから上がっていた湯気が、いつの間にか薄くなっている。
美緒は膝の上で両手を重ねた。指先が冷たい。けれど震えなかった。震えてしまえば、何かを求めているようで嫌だった。泣けば、引き止めてほしいとすがっているようで、自分がもっと惨めになる気がした。
本当は、まだ引き止めてほしかった。
一言でよかった。
待て。
そう言われたら、美緒はこの紙を見ずに済んだかもしれない。
けれど迅は言わない。
美緒は、もう一度離婚届を見た。署名欄は空白だった。そこに名前を書くまでは、まだ何も終わっていないはずなのに、心のどこかはすでに終わりを告げられていた。
離婚届そのものよりも先に、迅の言葉が美緒を妻ではなくしてしまった。
迅が机の上の紙へ手を伸ばした。
その動作は乱暴ではなかった。むしろ、あまりにも静かで丁寧だった。指先で端を押さえ、離婚届を美緒の前へ少し滑らせる。紙が机の上を擦るかすかな音がした。
その音が、美緒にはひどく大きく聞こえた。
庭の砂利を掃く音が、また外から届く。誰かの足音。車のエンジン。朝の空気。日常は止まらない。黒瀬は動いている。動いているのに、美緒だけがこの白い紙の前で立ち止まっている。
迅は言った。
「書いてくれ」
美緒はペンを見た。
黒い軸の、何の変哲もないペンだった。昨日までなら、帳簿に名前を書く時にも、荷物の宛名を書く時にも、何気なく手に取れたはずのものだ。けれど今は、その一本がとても重く見えた。
まだ、名前は書いていない。
けれど美緒は分かってしまった。
自分はもう、選ぶ側にはいない。
迅が一人で決めた終わりに、ただ署名する側として、ここに座らされているのだと。
Before I could ponder the meaning of her words, she strode in slow, heavy steps towards her dresser while I closed the distance between my sisters and me. Taking Branka into my arms, Icradled her and pulled up the little shirt up to check her wound.“I-is she gonna die?” Mia’s voice shook like a leaf in the wind.I shook my head. “We have to clean it,” I told her and shot to my feet. Mia followed, her auburn mane a mess and her eyes watching me like I was her savior. I fucking failed. I always failed. If I was a savior, I’d have taken my sisters and disappeared.Forever. Somewhere where nobody would find us.A simple life. I could fish and hunt, feed them. I was good with building furniture. I could sell it. I could teach my sisters whatever I knew. We’d be safe; we’d be happy.The smell of smoke filled the room and I whirled around. My mother flicked a box of matches onto the curtains that were already burning and my chest froze.We’d burn. She meant to burn us.“He won’t hurt us an
“Do you know them?”Her eyebrows furrowed, recognition in her gaze. “They’re my brother’s friends.”My eyes flickered back to the two men striding towards us like they owned this joint. Danger was part of these two men, and not because of the ink that marked their skin on their necks and hands, but it was the harshness in their gaze. Darkness in their eyes that resembled that of Alessio Russo.“Are you sure?” I barely got the words out when the two men stopped in front of us. “Ladies. I’m Cassio King and this is my brother, Luca. We’ve come to take you home.”Branka and I shared a glance. We planned on hanging out here for another week before I headed out for my assignment. Asia. Kuala Lumpur. My finger itched to start snapping photographs.Branka waved her hand as if that would send them away. “No, thank you.”“I’m afraid, I’ll have to insist,” the other guy chimed in. Luca King. Cassio and Luca King. In the back of my mind, I searched for that name. It was familiar. I’ve heard it be
My eyes roamed over the room where Branka and I spent so much time together over the last four years. It wasn’t grand or super luxurious, but I loved my room nonetheless. Pink and white bedding over the mahogany canopy bed. The antique white dresser and the vanity were the only other furniture in my bedroom.Frames with my parents’ pictures stood on the dresser. Our trips all over the world. It was where I got my taste for adventure and the will for justice.Nostalgia hit me. One more night and I’d no longer lay my head down to sleep under my parents’ roof. One more night and I’d be thousands of miles away.“I guess it’s part of growing up,” I mumbled under my breath softly.I shook my head, then took off my dress, leaving me only in my white panties and bra. Discarding it into my hamper, I reached for my dress, hanging it on the rail of my canopy with my back to the door. It slipped off the hanger, falling silently to the floor.Bending over, my ass in the air, my fingers curled arou
AUTUMnFOUR YEARS EARLEROkay, celebrating your college graduation on top of a bar, dancing and shooting darts wasn’t exactly the most mature way to get recognition for four years of hard work.Yes, it took us an extra semester. The first year was hard. Both Branka and I failed mostof our classes the first semester and never caught up. We weren’t geniuses. Just two average girls with an artistic gene. Or something like that.But we finally graduated. Yes, summer was behind us, but we had our entire lives ahead of us.Many more summers.My dreams were finally coming true. I got an offer for an internship with National Geographic and my first assignment started in a week. A freaking week. I would travel the world taking pictures. My father was always a fan of the old adage “a picture's worth a thousand words.”I wanted my pictures to make a difference in this world. Hopefully, make the world a better place. “Another shot for the girls,” someone shouted in the back.It was amazing what
PROLOGUEThe rain pounded against the hospital windows. Exhaustion lingered in my bones. Every single inch of me ached.But the moment I held him in my arms, I knew he was my most beautiful creation.Dark hair. Stormy eyes.Though the latter could be the fact he was just born and they were more mur






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