GRACE ANSLEM

GRACE ANSLEM

last updateLast Updated : 2021-09-27
By:  NoraspunkyOngoing
Language: English
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Synopsis

"Maybe I was destined to forever fall in love with people I couldn't have..." Grace was a soft touch, yet remained tough when the tough gets going. It was his guess that she would always forgive. She cleared her throat, gave another wink and sighed. "Laura said that's all part of moving on. But this love thing is hard to find, to forget nor keep." "True" Laurel replied. "Love is never supposed to hurt. It seems you high hopes on him". "Not really. I only hoped, but was totally wrong". "Don't you think it's for the better?" "Maybe". She said smiling. Right there, he knew he'd have to hold on to her. What do you think?

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Chapter 1

Chapter one

天才ピアニストと結婚して十年目、私は奇妙な病にかかった。

ひと月前――夫は病弱な義妹の看病を理由に、私の誕生日パーティーを欠席した。私はその日も彼の帰りを待ち続け、やがて待つことすら忘れて早くに眠り込んでしまった。

半月前――夫は義妹を伴い、大切な舞台に立った。普段の私なら嫉妬で怒りを露わにしていただろう。だがその夜、私は声を荒げることもなく、ただ静かにひとり帰路についた。

三日前――私が高熱で倒れたとき、夫は遠方から慌てて戻ってきた。けれど彼が駆けつけたのは、火傷を負った義妹を案じてのことだった。

病院の廊下で偶然出会ったとき、かつてなら激しく嫉妬したはずの私は、異様なほど平静でいられた。私たちが白髪になるまで添い遂げようと誓った言葉も、彼が小さな擦り傷を気遣ってくれた優しさも、もはや遠い記憶の彼方に霞んでいた。

夫が「義妹を一生面倒みるために家に迎えたい」と告げたその瞬間、曖昧になっていく記憶の中で、私はシステムを呼び出した。

「元の世界に帰りたい」

「かしこまりました、ご主人様。別の世界で用事がありますので、三日後に、迎えに来ます」

システムの懐かしい機械音が耳の奥に響き、私は蒼ざめた顔に無理やり微笑みを浮かべて答えた。

「ええ、待ってる」

十年前。私はこの世界に残る道を選んだ。佐野晋佑(さのしんすけ)と白髪の生える日まで共に暮らせると信じ、二度とシステムには頼らないと心に決めた。だが十年の時を経て、私は現実に敗れたのだ。

ドアが開き、晋佑が帰宅する。冷たい印象の顔立ちは、私を見た途端にやわらいで優しい笑みに変わった。彼は足早に近づき、私を強く抱きしめる。

「ねえ、今日はお弁当を持ってきてくれなかったの?お腹空いちゃった」

甘えるような声音で続ける。

「いつもは忘れずに持ってきてくれるのに」

悲しそうに見せかける夫の顔を見ながら、私はまぶたを伏せ、小さな声で言った。

「……忘れてたの」

晋佑は多忙な人で、しばしば食事を抜き、そのせいで胃を痛めていた。だから私は十年もの間、雨の日も風の日も欠かさず弁当を届け続けた。彼が苦しむ姿に耐えられなかったからだ。

けれど今日、私はそれを忘れてしまった。

お弁当を忘れるのは、ほんの些細なことにすぎない。だが私が忘れたものは、ほかにも数え切れないほどある。

システムから聞いたことがある。この世界に残った者が、攻略対象と生涯添い遂げることは決してない、と。

私は信じず、システムと賭けをした。もし晋佑が心変わりすれば、私は彼にまつわる記憶を徐々に失い、体は弱り、やがて命を落とす。

実際には、記憶はすでに失われはじめていた。ただ私が、それにようやく気づいただけだった。

晋佑は眉をひそめ、私の額に触れながらじっと見つめた。

「本当に忘れたの?それとも、この前佳音の看病で病院に行って、君を構ってあげられなかったから……わざと僕を空腹にさせてるの?」

私は首を振った。

「本当に忘れたの。システムが……」

「もういい」晋佑はため息をつき、諦めたように立ち上がった。

「ねえ、僕たち結婚して十年だよ?僕が君を大事にしてこなかったと思うのか?この世にシステムなんて存在しない。そんな言い訳で僕を脅さないでくれ」

その言葉に、私は硬直したまま彼を見つめた。

彼は一度たりとも、私を信じていなかった。私がただの嘘つきだと思っていたのだ。

かつての私なら必死で弁明しただろう。だが今はもうどうでもいい。三日後にはここから消える。彼が信じようと信じまいと、何の意味もない。

晋佑は精巧な箱を取り出し、私の手のひらにそっと置いた。蓋を開けば、ルビーをあしらった一輪のブローチが光を放つ。

「もう怒らないで。僕が悪かった。このブローチは特別注文の限定品で、世界に二つしかないんだ。君にぴったりだと思う。明日は結婚記念日だろう?としちゃんも連れて、郊外の桃山公園へ出かけよう」

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