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第6話

作者: ベーグル
震える看護師に付き添われ、私は診察室へ戻り、裂けた傷口を洗浄して、もう一度包帯を巻き直してもらった。

「マルケッティ夫人......」

看護師は電話の受話器に手を伸ばしかけたまま、私に尋ねた。

「やはり、ボスに連絡しましょうか?」

私は静かに手を伸ばし、受話器を押し戻した。

「必要ありません」

淡々と言ってから、私は続けた。

「自分で帰ります」

――

屋敷へ戻ると、私は2階の寝室へ向かい、クローゼットから簡単な服を何着か選んで、小さなスーツケースに詰めた。

そのとき、スマホの画面が明るくなった。

ミアがSNSを更新していた。

投稿された写真には、ジュリアンの濃いグレーのスーツの上着を羽織ったミアが写っていた。

彼の胸に頭を預け、幸せそうに微笑んでいる。

添えられた言葉は、【危険な世界だけど、私が心から安心できる場所は彼のそばだけ】だった。

私は表情一つ変えず、その目障りな写真をスワイプして通り過ぎる。

そして彼女のプロフィールを開き、「ブロック」をタップした。

正門の外には、あらかじめ手配しておいた車がすでに待っていた。

私はスーツケースを持って後部座席に乗り込み、運転手に行き先を告げた。

「中央駅まで。サン・セラーノ行きの夜行列車に乗ります」

エンジンが低く唸り、車はゆっくりと屋敷の鉄門を抜けていった。

大通りへ出ようとした、そのときだった。

向かい側から黒塗りのセダンが何台も連なって走ってきて、私たちの車のすぐ脇を通り過ぎていった。

先頭の車は後部座席の窓が半分ほど開いていた。

ジュリアンは隣に座る誰かのほうへ顔を向け、何かを優しく話しかけていた。

その肩にはミアが寄り添い、鳥のように愛らしい笑みを浮かべている。

二台の車列は、まるで示し合わせたかのように正反対の方向へ走り去っていった。

バックミラーの中で、私が6年間暮らした白い屋敷が少しずつ小さくなっていく。

やがて夜の闇に飲み込まれ、完全に見えなくなった。

17歳の私は、孤児院の鉄門を越えて、彼のあとを追った。

20歳の私は、バットを握って彼の隣に立ち、街で初めて自分たちの縄張りを手に入れるために戦った。

22歳の私たちは、サウスサイドの小さな教会で指輪を交換した。

28歳の私は、彼が何度も何度も帰ってくるたび、私のものではない香水の匂いを全身にまとっているのを見ていた。

それらすべての記憶が、窓の外を流れていく街灯のように、一つ、また一つと後ろへ置き去りになっていく。

私は手を持ち上げ、指にはめていた赤いルビーの指輪をゆっくりと抜いた。

窓を開け、手を外へ差し出す。

指輪はきらめく弧を描き、そのまま暗い側溝の水の中へ消えていった。

これで、本当に終わった。

窓の外では、ポートヘイヴンのネオンが相変わらず目を刺すほど眩しく輝いていた。

バーやカジノからは笑い声が流れてくる。

まるで、私とは無関係の華やかな賑わいが、今夜も続いているかのようだった。

私は座席に深く身を預け、目を閉じた。

これから私は、家へ帰る。

父の名が刻まれた、あの屋敷へ。

20年間、誰にも座られることなく私を待ち続けてきた、背もたれの高いマホガニーの椅子を受け継ぐために。

すべての始まりへ、戻るために。

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