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第4話

Autor: ネコのネコ
千与は一人で学食へ向かい、砂を噛むような思いで食事を済ませると、そのまま教務課へ行き、退学の手続きをした。

退学の理由を「海外留学」と告げると、教務課の職員は、彼女のこれまでの優れた成績を惜しみつつも、最近話題になっている写真の件や、起きたばかりのレポート盗用事件を思い出したのか、事務的に理解を示すだけで、強く引き止めることはなかった。

「退学手続きの承認には数日かかります。それまでは通常通り出席してください」

「ありがとうございます」千与は表情を消し、静かに応じた。

彼女は心が壊れたかのように、一日中授業を受け続けた。終業のチャイムが鳴り、本を抱えて人波に紛れて外へ出ると、中庭を通りかかった際、多くの学生たちが血相を変えて一方向へ走っているのが目に入った。

興奮した話し声が聞こえてきた。「急げ!前の方で喧嘩が始まった!」

「嘘だろ、牧石鳴海だぞ!あの学校一のイケメンがあんなに怒るなんて、初めて見た!」

「佐々原凛夏のためだってさ!牧石も、好きな女のためなら何でもできるんだな」

千与は足を止めた。心臓に細い針が軽く刺さったような痛みが走った。誘われるように数歩近づくと、案の定、人だかりができている。

その中心で、鳴海が一人の男子学生と取っ組み合いになっている。

普段は冷徹で自制心の強い彼が、今はまるで痛いところを突かれたかのように、容赦のない拳を叩き込んでいる。その端正な顔には、これまで見たことのないほどの怒りが滲んでいる。

周囲の野次馬たちの声が、途切れ途切れに千与の耳に入ってきた。

「あの男は佐々原に告白して振られた腹いせに、無理やり手を出そうとしたらしいぜ……」

「あの冷静な牧石が、自ら手を出すなんてな……」

「でも、彼女は淡野じゃないのか?なんで佐々原のためにあんなに必死なんだ?」

「おいおい、わかってないな。淡野の写真があんなことになったんだぞ?牧石だって気にしてるだろ。もうとっくに愛想を尽かしてるはずだ……」

その言葉を聞くと、千与の冷え切った心に再び鋭い痛みが走った。

その時、人混みの中から凛夏が怯えたうさぎのように泣きながら、鳴海の背中にしがみついた。

「鳴海、もうやめて!怖い……お願い、やめて……」

鳴海の動きがピタリと止まった。

彼は顔を腫らした男を放り出すと、向き直った。その顔から刺々しさは一瞬で消え、代わりに千与が見たこともない、不器用なほどの優しさが宿っている。

彼は壊れ物を扱うように凛夏の涙を拭い、とろけるような低い声で囁いた。

「怖がらせてごめん。もうしないんだ。驚かせたのか?」

この上ない優しさと庇いは、毒を塗った氷の刃のように、千与の心にわずかに残っていた自己欺瞞の幻想を完全に打ち砕いた。

――彼は一度も、そんな目で私を見たことがない。

一度も、そんな声で私をなだめたことがない。

それどころか、肌を重ねるという最も親密な行為でさえ、彼は弟を身代わりに立てるほど私を忌み嫌っているのだ。

どれほど目が曇っていたのだろう。彼が私のことを好きだと信じていたなんて。

その時、鳴海の視線が無造作に人混みを通り抜け、千与の視線と真っ向からぶつかった。

彼は一瞬呆然とした。彼女がここにいるとは思わなかったのか、その瞳には彼自身も気づかない複雑な感情が一瞬よぎった。

彼は唇を動かし、何かを言いかけた。

だが、千与はそれよりも早く視線を逸らした。まるで、ただの無関係な他人を見るかのように。無表情のまま、彼女はその場を去った。

鳴海はためらうことなく立ち去る彼女の背中を見送り、無意識に眉間の皺を深くした。

「鳴海、どうしたの?」凛夏が彼の胸元に寄り添い、甘えた声で尋ねた。

「……何でもない」鳴海は視線を戻し、いつもの優しい声を作ったが、胸の奥に芽生えた違和感は消えない。

彼はスマホを取り出し、卓也にメッセージを送った。今日の千与との口論と、今の喧嘩のことを手短に伝え、【夜にそっちへ行ったら、なだめてやってくれ】と書き込んだ。

卓也からすぐに返信が来た。【まだ機嫌取る必要あるのか?さっさと別れちまえ】

鳴海はその返信を見つめ、指を止めた。

――そうだ、なぜまだなだめる必要があるのだろう?自分でもうまく説明がつかない。

沈黙の後、彼はもっともらしい理屈をひねり出した。

【推薦枠が凛夏に確定したわけじゃない。芝居は最後まで完璧にやる。千与は今、情緒不安定だ。騒ぎを起こされて凛夏に悪影響が出たら面倒だからな】

卓也から即座に返信が入った。【了解、兄貴。今夜帰ったらなだめとく】

夜、千与はマンションに戻ると、心身の疲れから早々に横になった。

ほどなくして玄関で物音がし、卓也が帰ってきた。

「千与、今日は寝るのが早いな」彼はいつもの遊び慣れた親しみやすい調子で近づいてきた。

千与は背を向けたまま、抑揚のない声で答えた。「別に。疲れただけ」

卓也は彼女の冷たい態度に気づき、背後から抱き寄せて、巧みになだめ始めた。レポートの件や喧嘩のことについて、例の偽善的な言い訳を並べて説明した。

千与はそれを無関心に聞き流しながら、心の中で思った。

――この兄弟のうち、一人は傷つけ、もう一人は癒やす。本当に非の打ちどころがない二役の芝居ね。

彼女は目を閉じ、もう一言も発したくない。

卓也は彼女の無視を気にせず、いつものように首筋にキスを落とし、その手を遠慮なく動かし始めた。

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