Войти世良(せら)玲太(れいと)は大学生RPGマニアでレトロゲームにも造詣が深い。 そんな彼が手に入れたレトロゲームをプレイしようと思ったら画面の中に吸い込まれちゃいました。 8bitゲームの世界から物語が進むたびに16bit32bitとビジュアルやゲームシステムが進化していく世界で戦うレイトは元の世界に戻ることができるのでしょうか?
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じきに就職活動が始まるというのに準備をするでもなくゲームに逃避する程度の男だ。
大学院に進めるほどの頭脳も経済的余裕もない。
かといって将来に目標があるとか、憧れの職業なんてのがあるわけでもない。
でも「働いたら負け」とか思っているわけでもない。
なんとなく意思決定から逃げている。
そんな状況だ。
今日も今日とて休日なのをいいことにワンルームマンションにこもってゲーム三昧を決め込もうと、ついさっき近所のスーパーで特売の菓子や惣菜、飲み物なんかを買い込んできたところ。
RPGマニアの彼は、ガチオタである。
古今東西のRPGを研究し、バイトで貯めたお金をレトロゲームなんかに費やしている。
むしろ、大学の専攻よりよっぽど博識である。
まぁ、今の所こっち方面は一般社会に認められていないので、在野の研究者にしかなれないから仕方ない。
玲太は昨日買ってきた全く見たことのないゲームのパッケージを取り出す。
王国の勇者
SHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用と書かれている。
八十年代のゲームだけれど、見たことも聞いたこともない。
昨日は帰ってきてから深夜まで、ずっとネットで調べてみたけれど、ついに情報を探し出すことができなかった。
「いわゆる同人ゲームってやつかな?」
同人界隈では同じくSHARP製16bitパソコンX-68000シリーズが有名だけど、それは九十年代に入ってから。
8bit時代は自分たちでプログラムを組むのが普通だったから、機種が同じなら友達うちでコピーして回していたと母方の叔父さんが言っていた。
これもその一つかもしれない。
「でも、パッケージまで作るとか、凝りまくってるな」
ご丁寧に「定価:4,800円」と書かれている。
もちろん消費税の表記はない。
パッケージを開けると中にはディスクが二枚。
ペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクだ。
8ページ平閉じのマニュアルもついている。
「ぷぷ、凝り過ぎ」
ディスクが生きているのは、ショップのオヤジが確認している。
ただし、起動して画面が映るのを確認しただけ。
「まぁ、二百円だったし」
玲太は、X-1 turbo Z IIの実機に2つあるフロッピーディスクドライブにディスクを両方差し込んで電源を入れる。
IPLが起動し、フロッピーディスクをブートし始める。
テレビモニタにCGが描かれていく。
この時代のグラフィックとしてはまぁまぁの出来だ。
画面中央下部に「スタート」の文字。
カーソルを「スタート」に合わせてreturnキーを押すと、「はじめから」「ロード」と文字が変わる。
「『はじめから』と『ロード』って、表現は統一しろよな」
などと独り言を言いながら「はじめから」を選択すと、画面が変わって非常にシンプルな入力画面になった。
「なまえ」の欄にカーソルが点滅している。
玲太は自分の名前「レイト」と入力してreturnキーを押す。
やがて、画面が白い光に覆われていくというアニメーションが表示され……
「あ!」
真っ白になったテレビモニタに玲太は吸い込まれた。
「…………」 おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。「なんじゃあ、こりゃあ!!」二回目だね、それ。 さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。「ん……ここは?」 愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。「なんなの、ココ!?」 アシュレイが驚くのも無理はないよねー。 玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。 それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか? しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。「ええと、なにから説明しよう?」 混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。 さすがだね。 伊達に修羅場はくぐっていないよ。 いや、でもこっちの修羅場はどうだろう? とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。 その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。 まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。 戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」「そういうことになるね」「でもどうしてかしら?」 アシュレイの疑問ももっともだ。 人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」 さすがは最年少ながら聖女として英才教
玲太の意識が戻った時、最初に出た言葉は「はぁ!?」 だった。 無理もない。 見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。 テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。 しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。 そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。 他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。 混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。「フロッピーディスクはどこいった!?」 X-1 turbo Z IIの灯は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。「なんじゃあ、こりゃあ!」 腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」 突っ込むところがそこかいな。「ん……」 混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
「ソフィア、ビルヒルティス、アシュレイ、そしてヴァネッサとレイト。魔王に攫われた我が娘クリスティーンを救出に旅立った勇者たちよ、王国の危機、ひいては世界の危機を救ってくれたこと、心より感謝する。特にヴァネッサとレイトには二度も娘の命を救ってもらった。この恩、生涯忘れまいぞ」「もったいなきお言葉」「命の危険を顧みず、魔王に立ち向かいあまつさえその魔王を討ち滅ぼしたそなたらはまさに世界の救世主。英雄と呼ぶにふさわしい者たちだ。朕は王として、また民の代表としてそなたらの望みを出来うる限り叶えたい。この場で望みを申すがよい」 そう言われて、五人は互いに顔を見交わした。 突然そんなこと言われてもねぇ。 すぐには思い浮かばないよねぇ。 まぁ、レイトの願いは想像つくけどね。「レイトよ。娘はそなたを好ましく思っておるようだぞ」「お父様!」 語気を強めるクリスティーンは耳まで朱くして抗議する。 王様、封建社会だからって娘をものみたいに扱っちゃいけませんよ。 王妃は王妃で笑みをたたえて父娘のやりとりを見ている。 そんな微笑ましい様子じゃないと思うけどね。「あの……」 と、恐る恐る発言許可を求めたのは最年少のビルヒーだった。「私、聖女の地位を捨ててレイトと一緒に旅がしたいと思います」「え?」 つい言葉が漏れたのは一緒に旅をしてきた四人だった。「聖女として母や国教会、王国に育てていただいた身ですが、この旅で外の世界の面白さ、気ままな自由さを知りました。このままレイトと一緒に自由に生きていきたいと望みます」「で、では私も、私も騎士の身分を捨てレイトと共に生きていきたく存じます」「ははは、そりゃいいね。あたしは別に欲しいものなんてなかったんだけど、あたしもかたっくるしい生活よりレイトと一緒に気ままに楽しく過ごせるならそうしたいや」「私も、私も一緒にいる!」(は? なんじゃこりゃ!) おうおう、王道のハーレム展開じ
王都に戻って十日が経った。 王女であるクリスティーンは王宮に戻り、ソフィアは騎士として王都の治安維持に、ビルヒーは聖女として最高司祭である母とともにそれぞれの仕事に従事している。 その間残った三人は暇を持て余していた。 そして、ようやくお呼びがかかり、国王に謁見とあいなった。 王城に登り控室に通されると、そこには騎士として正装したソフィアとこちらも聖女として国教会の正装をしているビルヒーがいた。「久しぶりだねぇ」 ヴァネッサが二人に声をかける。「お久しぶりです、ヴネッサ」 ちょっと見ない間に少し大人っぽくなっているビルヒーが、会釈をする。「はぁ、ちゃんとした正装のある立場の人はいいよねー。私なんか一応洗濯はしてきたけど旅に出てた時のまんまよ」 と、女の子らしく嘆くアシュレイをカラカラと笑い飛ばすソフィアは「ならこれを着るかい?」 と、クローゼットを開けてみせる。 そこにはきらびやかなドレスが数着並んでいた。 それを見たアシュレイはぶるぶると首を振って「やっぱやめとく。そんなの着たらみんなになんて言われるか判ったものじゃないもの」 と、チラリとレイトを横目で伺う。「なら、あたしが着ようかね?」 というヴァネッサに「サイズがないだろ」 と、余計な一言を投げかけてしまいチョークスリーパーをかけられるレイトであった。 ……まったく。 目鼻立ちのクッキリしたオリエンタルな顔立ちのヴァネッサにきらびやかなドレスは案外似合うと思うぞ。 しばしの談笑を繰り広げていると、部屋をノックする音がして呼び出しの声がかかる。(謁見するのは二度目だなぁ) なんて思いながら謁見の間に向かうレイト。 魔王の襲撃によって破壊された壁などは応急修繕がなされてはいたけれど、その爪痕は残っている。 居並ぶ顔ぶれも若い。 あの日、かなりの重臣が身を挺して魔王と戦い散っていった。 その
「冒険者ライセンス?」「ああ。通常、王国内でモンスターなどから戦利品を得たとしてもそれは王国の財産であるとして、国庫に収める義務がある。しかし、冒険者ギルドに所属する冒険者は国内のモンスターを駆除する報酬としてギルドに利益の二割を収めてあとは私財としていいことになっているのだ」 これまたいかにもRPGな設定だとレイトはクリスから手渡された認識票をしげしげと眺める。「で、俺とヴァネッサとライアンを登録したのか」「ああ」「クリスやクリスティーンは?」 と、問いかけると、クリスティー
この世界の睡眠は一瞬である。 まぁ、この感覚はどうもレイトだけのもののようだけれど、ベッドに潜り込んだ瞬間から睡魔に襲われ、目覚めた時にはちょうどいい朝になっている。「いいのか悪いのか」「なにを言っているんです?」 独り言が口をついてしまうなんて結構末期だよ、レイト。「あー。いや、独り言」 今日は休息をかねた買い出しの日である。 クリスは護衛と称してクリスティーンに付き添って食料の買い出し、残りの三人は残りの冒険道具の買い出しだ。 クリスは文無し、こちらはダン
レイトは宿屋で5ゴールド払って休むことにした。「二階の一番奥の部屋だ」 と言われたので、行ってみる。 小さな部屋にはベッドとタンスが一つずつ。 最初に目覚めた部屋によく似ている。「まぁ、ドット絵じゃしょうがないか」 PCGで定義された文字をタイリングしているんだろう。 ベッドに体当たりすると「ねる」「やめる」の選択肢が出たので「ねる」を選択する。 すると視界がブ
遺跡の塔はその名の通り朽ちた外観の塔だった。 一階が四角でその上に円筒が伸びている外観だ。「これで案外内部はしっかりしてたりするんだよなぁ……」 レイトは念の為、塔の前のモンスターでもう1レベル上げてから塔に入ることにした。 こういう時は案外慎重な男だ。 レベルアップすると強くなった気がする。 そのついでに怪我が治るんだ。「不思議な現象よね」 塔に入ると意思に反して動くことができなくなる。 ちょっと焦るも、BGMが鳴っていないことに気づき成り行