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結城慎二
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結城慎二の小説

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

一人称異世界ファンタジー魔法オタク転生
のどかな田舎の小さな集落で生まれ育ったジャン・ロイは15歳の誕生日の前日、村を襲った盗賊から逃げている最中唐突に四十半ばのおじさんだった前世の記憶が蘇った。 略奪され、焼き尽くされた村でただ一人生き残ったジャンのサバイバル生活は、なんだかんだと仲間が増えて村が町の規模に。 復興したことが領主にバレたのを機に叛旗を翻し、ついには下剋上を成し遂げ領主として戦国の世におどりでる。
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Chapter: 楽勝が続くと
 最初の一斉射撃でのこちらの人的被害は皆無だった。  とはいえ、あの場所にいると怖いだろうなぁ……。  やっててよかった町の長。  こちらはまだ反撃しない。  そして、二度目の斉射が撃ち上がる。  何度やっても結果は同じだけど。  味方陣営には待機の指示が出ている。  よく守ってくれてます。  第三斉射の後、敵の弓隊が退き、先陣を任されたのだろう騎馬隊が前に出る。  想定通りだ。  サバジュ隊かな?  オルバック隊かな?  その数十二騎。  あ、多分両方だな。  その騎馬隊が走り出す。「突撃ぃ!」 と、微かにだけれども、ここまで聞こえて来る。  その騎馬隊に|矢狭間《やざま》から狙ったイラード弓隊の一斉射が放たれる。  あ・一人落馬した。  その後は間断なく矢が射込まれるもののこちらの弓隊は十人ちょっと。  弾幕というにはまばらに過ぎる。  また一人落馬した。  ただ、弓隊には戦闘狂の魔法使いラバナルがいる。  そして……。  騎馬隊が矢と切り株を避けるために散開した直後、三騎の騎馬が穴に落ちる。  してやったりだよね。  切り株を残していたのは時間のないことももちろんあった。  けど、この「落とし穴」という単純だけど有効な罠をさらに効果的に利用するための仕掛けでもあったんだ。  切り株を避けて走ろうと思うとどうしてもルート選択が限られる。  街道の行き来のために開いている|出入り口《ゴール》を目指すわけだから守備側としてはルートがある程度読めるわけだ。罠張り放題じゃないか。  騎馬隊は切り株を避けながらだったこともあり、速度が出ていなかったのだろう。  さっと退却する。  いい判断だ。  闇雲に突っ込んでくれば、もう何騎か落とせただろうに。  騎馬隊が退がるのと入れ替わるように、盾を持った兵が三人一組になって戦場に残った騎士を回収に来る。  もちろんイラード隊が見逃すわけもなく、回収前に穴に落ちた騎士に
最終更新日: 2026-09-13
Chapter: 長浜城の攻防については土佐物語を読んでね
 ザイーダの投石隊とイラードの弓隊が先陣として門を出ていく。  ここには最初からラバナルが嬉々として参加している。  次がカイジョー隊だ。  ここには先日の戦で投降した傭兵三人が組み込まれている。  その後に反お館派を集めたギラン隊。  僕の周りには騎乗しているサビーとガーブラ。  オギン、チャールズ、ルダー、捕虜のルビンスとその従者、予備兵として老人組がいる。  残りの女性陣はガブリエルに指揮される救護班だ。  救護班を門内に待機させ、最後に僕の隊が布陣に向かう。  すでにこちらの軍の布陣はあらかた終わっている。  柵の後ろに置き盾に隠れた弓隊。  その後ろにカイジョー隊とギラン隊。  今回は左右に並んで布陣させている。  さらにその後ろにザイーダ隊。  今回は高い柵のせいで投石隊が有効に利用できなくなっているんで、戦力ダウンは否めないかと思っているんだけど、退却戦での支援を中心に考えている。  今回、投石兵だった女性のうち選抜試験で特に技量を認められたクレタ他四名が弓隊に配属されている。  イラードは嫌がっていたけど、弓手は一人でも多い方がいい。  そろそろ七度目の定時報告の頃だなと思いはじめた頃、バコード軍が姿を現した。  先陣は盾を構えた兵だ。  多分その後ろに弓兵が並んでいる。「やっぱり、ちゃんとした指揮下にある軍は壮観だね」「|他人《ひと》|事《ごと》みたいに言ってますな」「でも、サビーもそう思わない?」「そりゃ、ゾクゾクきますけどね」「お館様、こちらから攻撃しないのですか?」「不意が打てるなら先制するけど、まずは相手の出方を見ないと」「味方の兵の方が多いならそれも手だろうが、弱い側がそれでどんな利がある?」 と、ルビンスが訊ねてくる。「こちらには前線に魔法使いがいるからね」「理解ができん、判るように説明してもらえないか?」「んーん……おいおい、な。そろそろ始まる」 ジャン
最終更新日: 2026-09-13
Chapter: 飯も戦も準備が七割?
 そうそう、前回の戦でいいことが一つあった。  野宿に使われていた二箇所のスペースが軍の野営に使われたおかげか、  広く拓かれているそうだ。  今回は倍の陣容だってんだから、さらに拓かれているだろう。  春の宿場建設が楽になる。  ズラカルト様様だ。  それもこれもこの戦に勝てなきゃ意味がないんだけどね。  今回は畑の前に高さ十シャルの柵を設け、その前に戦場予定地として奥行き二十五シャル、幅三十シャル木を切り倒している。  さすがに切り株掘り起こす時間はなかったんでそのままなんだけど、騎兵を自由にさせない障害物としても機能しそうなんで結果オーライってやつだ。  切った木は後で美味しく……じゃなかった、薪および炭にする予定です。  さて、さすがに前回無策にも不用意に姿を現した結果先制を許して敗北した轍を踏むようなこともなく(というか、あれは戦経験皆無なジュニアが酷すぎただけだと思う)斥候を二人放ってきた。  こっちは前回と違って畑には兵を出していない。  敵軍は野営の準備を終えて火を熾したようだ。  煙の距離から移動距離一時間くらい先かな?  物見櫓には左右に二人ずつ見張りに、櫓の下には見張りの交代要員および伝令役として八人を配置、念の為カシオペアの五人にホルスを一頭与えて柵の|際《きわ》まで夜営に出す。  寒いのかわいそうなんで薪をガンガン使わせる。  今は割と余ってるんでね。  前回もそうだったけど、緊張でなかなか寝られないね。  特に今回は向こうの戦力の方が多いから、慎重に指揮しないと負けちゃう可能性も高いからなおのこと神経使っちゃうよね。  そんな夜をじりじりと過ごして、日の出を迎えた。  日が出た後は半時間おきに定時連絡をもらうことになっている。  最初の連絡は日の出の報告。  二度目の連絡は特になし。  三度目の連絡で敵陣の煙が大きくなったという報告がきた。  多分飯炊きだ。  腹が減っては戦ができないってよくいうし。  僕は、その報告を受けて出陣を決断。  五度目の報告は中央広場で聞
最終更新日: 2026-09-12
Chapter: 情報は最大の武器である
 その後の一ヶ月は、そりゃあもう忙しかったですよ。  いろいろ準備もしましたさ。  軍の編成とか土木作業とか。  他にもいろいろやりました。  その間、ヤッチシからの飛行手紙が二度送られてきてた(ちなみに、ヤッチシには十枚の飛行手紙を預けている)。  最初の手紙には軍の規模と出陣の日時が書かれていた。  それによると今回の軍は騎兵二十騎、弓兵五十、剣兵八十。  そして、魔法使いが一名同行しているそうだ。  あ、今回も槍兵がいないな。  こちらは、傭兵出身以外の白兵は全員槍兵に兵装を変えている。  やっぱ、白兵戦は槍最強でしょ。  軍は三隊に分かれていて敵の総大将はバコード。  ズラカルト男爵家で代々軍を束ねる名門の当代当主だそうだ。  とはいえ、男爵領では少なくともこの五十年、戦と言える争いは起きていないってんだからどれほどの指揮をするかは未知数だ。  僕が知っているのは彼がまだ若い頃、ハッシュシ王国との国境紛争に従軍し、勲章をもらったという逸話だけ。  まったく参考にならない。  副将はサバジュとオルバック。  あらあら、ジュニア(苦笑)  もちろんジュニアも従軍しているし、今回はルビレルもいるらしい。  厳しい戦いを強いられるのは覚悟の前だ。  でも、こちらだって手をこまぬいて待っているわけじゃないぞ。 軍が隣村を出発したのをケイロが飛行手紙で知らせてくる。  文字を覚えるほどの時間がなかったので、署名と日付が書かれているだけなんだけど、必要十分だ。  便利便利。  やはり情報は最強武器の一つだよね。  飛行手紙の欠点は、今の所僕の屋敷宛にしか届かないことか。  急ぎで開発してもらったんだからこれは仕方ない。  今回は、この時点でラバナルを呼んだ。  戦が始まるまではチャールズの家にこもっているんだそうな。
最終更新日: 2026-09-12
Chapter: 田舎に貨幣を持ち込むために
 そして、中央広場の市に出向く。  ここには屋台が並んでいる。  貨幣経済導入のための市だ。  自分の得意なことで銭を稼ぐ。  この王国は農本主義だ。 封建領主は領土からの収穫物を税として納めさせ、それをもって領土経営にあたる。  農民に残される収穫物は、翌年畑に撒く種と自分たちが食べる分だけ。  必要な道具などは自分たちで作る。  百姓と呼ばれる|所以《ゆえん》だ。  でも、人には得手不得手がある。  得意な人に任せる方が能率もいいしクオリティも上がる。  自分のやりたいことに時間を使える方が町全体としても利益になる。  ところが物々交換では価値の等価が担保できない。  そこで価値の基準となる貨幣の出番だ。  この国にはもともと貨幣が存在している。  ここは僻地で十分利用されていなかっただけ。  利用価値を判ってもらうためにも市は重要な存在なのだ。 貨幣経済が確立して、みんなが農業以外の仕事につけば(もちろんどこまでも農業労働は領民の義務だけど)、農作物はぶっちゃけ一〇〇%徴税できる。  ま、実際は一〇〇%なんて不可能だけどね。「まるで異国のようだ」 と、ルビンスがいう。 なるほど、この町以外この世界を知らない僕が企画した市は、前世のイメージに強く影響されているのだろう。  それも悪くない。  だって、その方が心地いいんだから。「しかし、民の表情がみな生き生きしているようだ」「こんなもんじゃないのか?」「いいや。ワタシの知っている民は、たえず誰かの目を意識して伏し目がちだった」 あー、お貴族様のせいだな、そりゃ。 その一員であるルビンスには、そういう側面しか見られなかったってことなんだろう。 ルビンスは、日が暮れるまで広場の市を見つめていた。  寒いってば。 見かねたロットが焚き火を提供してくれたけど、そんなんじゃ足りないくらい寒かった。 むむむ……冬の市の開催はちょ
最終更新日: 2026-09-11
Chapter: 理想は語ってこそ、実現への努力をしてこそ崇高
 町の畑で戦闘してから十五日、あたり一面 に雪が積もって本格的な冬が来た。  今日はルビンスと町を視察している。  どんな心境の変化があったのかは知らないけど、町を見て回りたいと言われたので僕が直々に案内することにしたわけだ。  さすがにお人好しの僕だって「どうぞご勝手に」とはやれない。  見せたくない部分だってあるしね。  厳選した視察ルートは以下の通り。  まずは町の名産として名が売れているらしいダリプ酒の醸造蔵。  試験的に寝かせている昨年の樽から試飲してみる。  やっぱり味が落ちてる。  長期熟成にはもう少し試行が必要なのかな?  そんなダリプ酒なのにルビンスはうまそうに飲み干した。「イケる口?」「ん? うむ、我々程度ではいい酒はなかなか飲めなくてな。ダリプ酒など、主人の晩餐会のおこぼれくらいしか機会がない」 泣ける。  いや、これはイケるぞ。 今年のダリプ酒はまだできてないので飲ませてあげられないけど、もう一つの方なら……。 僕は、この後予定していた中央広場に出ている市に行く前に焼酎蒸留所へ行く先を変更した。  ここでは現在、フレイラ焼酎の蒸留が行われていた。  ポモイトとマルルンは仕込み時期が遅かったので、まだ醸造中だ。  蒸留原酒に、絞ったダリプ果汁と水を足す。「こ、これは……」「うまい酒だろ? 町の次期主力商品だ」 ルビンスは何も言わずにカップを見つめている。「この酒は蒸留酒だから長期保存ができるんだ。こんな酒がどこでも飲めるようになったらいいと思わない?」「思う。思うが、これは貴族の酒だ」「貴族だけのものにはしたくないんだ。酒くらい飲みたいときに誰でも飲める世の中がいいべや」「酒くらい……か」 この世界……いや、前世世界でも貧富の差は厳然として存在していた。  現状それを解消するのは不可能に近い。  でも、だからこそか?  せめて誰もが食うことだけは困らない世の
最終更新日: 2026-09-11
ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

三人称異世界ファンタジー転移ゲームドラゴンレベルアップRPGハーレム
世良(せら)玲太(れいと)は大学生RPGマニアでレトロゲームにも造詣が深い。 そんな彼が手に入れたレトロゲームをプレイしようと思ったら画面の中に吸い込まれちゃいました。 8bitゲームの世界から物語が進むたびに16bit32bitとビジュアルやゲームシステムが進化していく世界で戦うレイトは元の世界に戻ることができるのでしょうか?
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Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる2
「…………」 おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。「なんじゃあ、こりゃあ!!」二回目だね、それ。  さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。「ん……ここは?」 愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。「なんなの、ココ!?」 アシュレイが驚くのも無理はないよねー。  玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。  それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか?  しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。「ええと、なにから説明しよう?」 混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。  さすがだね。  伊達に修羅場はくぐっていないよ。  いや、でもこっちの修羅場はどうだろう?  とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。  その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。  まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。  戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」「そういうことになるね」「でもどうしてかしら?」 アシュレイの疑問ももっともだ。  人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」 さすがは最年少ながら聖女として英才教
最終更新日: 2026-05-22
Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる1
 |玲《れい》|太《と》の意識が戻った時、最初に出た言葉は「はぁ!?」 だった。  無理もない。  見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。  テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。  しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。  そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。  他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。  混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。「フロッピーディスクはどこいった!?」 X-1 turbo Z IIの|灯《ひ》は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。「なんじゃあ、こりゃあ!」 腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」 突っ込むところがそこかいな。「ん……」 混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
最終更新日: 2026-05-21
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる2
「ソフィア、ビルヒルティス、アシュレイ、そしてヴァネッサとレイト。魔王に攫われた我が娘クリスティーンを救出に旅立った勇者たちよ、王国の危機、ひいては世界の危機を救ってくれたこと、心より感謝する。特にヴァネッサとレイトには二度も娘の命を救ってもらった。この恩、生涯忘れまいぞ」「もったいなきお言葉」「命の危険を顧みず、魔王に立ち向かいあまつさえその魔王を討ち滅ぼしたそなたらはまさに世界の救世主。英雄と呼ぶにふさわしい者たちだ。朕は王として、また民の代表としてそなたらの望みを出来うる限り叶えたい。この場で望みを申すがよい」 そう言われて、五人は互いに顔を見交わした。  突然そんなこと言われてもねぇ。  すぐには思い浮かばないよねぇ。  まぁ、レイトの願いは想像つくけどね。「レイトよ。娘はそなたを好ましく思っておるようだぞ」「お父様!」 語気を強めるクリスティーンは耳まで|朱《あか》くして抗議する。  |王様《お父ちゃん》、封建社会だからって娘をものみたいに扱っちゃいけませんよ。  王妃は王妃で笑みをたたえて|父娘《おやこ》のやりとりを見ている。  そんな微笑ましい様子じゃないと思うけどね。「あの……」 と、恐る恐る発言許可を求めたのは最年少のビルヒーだった。「私、聖女の地位を捨ててレイトと一緒に旅がしたいと思います」「え?」 つい言葉が漏れたのは一緒に旅をしてきた四人だった。「聖女として母や国教会、王国に育てていただいた身ですが、この旅で外の世界の面白さ、気ままな自由さを知りました。このままレイトと一緒に自由に生きていきたいと望みます」「で、では私も、私も騎士の身分を捨てレイトと共に生きていきたく存じます」「ははは、そりゃいいね。あたしは別に欲しいものなんてなかったんだけど、あたしもかたっくるしい生活よりレイトと一緒に気ままに楽しく過ごせるならそうしたいや」「私も、私も一緒にいる!」(は? なんじゃこりゃ!) おうおう、王道のハーレム展開じ
最終更新日: 2026-05-20
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる1
 王都に戻って十日が経った。  王女であるクリスティーンは王宮に戻り、ソフィアは騎士として王都の治安維持に、ビルヒーは聖女として最高司祭である母とともにそれぞれの仕事に従事している。  その間残った三人は暇を持て余していた。  そして、ようやくお呼びがかかり、国王に謁見とあいなった。  王城に登り控室に通されると、そこには騎士として正装したソフィアとこちらも聖女として国教会の正装をしているビルヒーがいた。「久しぶりだねぇ」 ヴァネッサが二人に声をかける。「お久しぶりです、ヴネッサ」 ちょっと見ない間に少し大人っぽくなっているビルヒーが、会釈をする。「はぁ、ちゃんとした正装のある立場の人はいいよねー。私なんか一応洗濯はしてきたけど旅に出てた時のまんまよ」 と、女の子らしく嘆くアシュレイをカラカラと笑い飛ばすソフィアは「ならこれを着るかい?」 と、クローゼットを開けてみせる。  そこにはきらびやかなドレスが数着並んでいた。  それを見たアシュレイはぶるぶると首を振って「やっぱやめとく。そんなの着たらみんなになんて言われるか判ったものじゃないもの」 と、チラリとレイトを横目で伺う。「なら、あたしが着ようかね?」 というヴァネッサに「サイズがないだろ」 と、余計な一言を投げかけてしまいチョークスリーパーをかけられるレイトであった。 ……まったく。 目鼻立ちのクッキリしたオリエンタルな顔立ちのヴァネッサにきらびやかなドレスは案外似合うと思うぞ。 しばしの談笑を繰り広げていると、部屋をノックする音がして呼び出しの声がかかる。(謁見するのは二度目だなぁ) なんて思いながら謁見の間に向かうレイト。  魔王の襲撃によって破壊された壁などは応急修繕がなされてはいたけれど、その爪痕は残っている。  居並ぶ顔ぶれも若い。  あの日、かなりの重臣が身を挺して魔王と戦い散っていった。  その
最終更新日: 2026-05-19
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す3
 たどり着いた大聖堂は無傷とはいえなかったが、甚大と言えるほどの被害ではなかった。「お母様」 陣頭指揮に当たっているアデルグンティスを見つけて駆け寄るビルヒーはやはりいたいけな少女だった。「ビルヒルティス。無事に戻ったと言うことは」 というと、娘から顔をあげ、クリスティーンを見とめた。「ああ、よくぞご無事で」「最高司祭様もご無事でなによりです」 アデルグンティスは陣頭指揮を近くにいた側近に引き継ぎ、大聖堂の中へと冒険者たちを案内する。「魔王軍襲来は国家存亡の危機でした」 最高司祭手ずから入れてくれたお茶を飲みながら、双方の情報交換が行われた。  それによると魔王に率いられた魔王軍は当初、三軍に別れて進軍、瞬く間に侵略されたのだけれど、突然四分五裂。  各軍団が互いに争い始めてあるものは討たれ、あるものは魔族領に戻りして次第に勢力が縮小していったそうだ。「各地で猛威を振るった魔族軍ですが、大賢者バガナス様や王国軍の奮戦によって軍としては壊滅いたしました。今、王国内に残っているのは残党に過ぎません」「つまり、魔王が倒されたことで、次の魔王候補が王国内で覇権争いを始め、侵略戦争どころじゃなくなったってことですかね?」「そうなのかもしれません」「とすれば、次期魔王候補で有力なものほど魔族領に戻り地盤固めに入り、そうではない者が王国内に取り残されているって考えていい?」 それはさすがに短絡すぎやしないかね? レイト。「なんにせよ、幸運にも我が国は世界は魔王の脅威から救われたのだな」 ここにも物事を単純化して考える女騎士がいたよ。  まぁ、間違っちゃいないんだ、これが。「王国としてはこれからが大変だともいえますけれど」 と、ため息こそつかないものの憂いをたたえた表情を見せる最高司祭の横顔を不謹慎にも美しいと思ってしまうレイトであった。 言っとくけど、三十そこそことまだ全然若いけどビルヒーのお母さんだからね、その人。  王国国教の最高司
最終更新日: 2026-05-18
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す2
 帰還の旅の最大の試練は魔王軍の一団に出くわしたことだった。  魔族の大男に率いられた十人の魔族兵と二十体はいるだろう魔獣の軍団だ。  しかし、幸いなことに敵軍で大きな傷を負っているように見えなかったものは指揮官らしい大男くらいで、その大男にしても無数の傷を負っていた。  数の上では劣勢であっても魔王を倒した無傷の英雄たちである。  先制はレイトのフレイムウェーブだった。  火の波が魔王軍を襲っている間にクリスティーンとビルヒーがブレッシングの魔法を唱える。  二重がけのブレッシングはホーリーブレスとなり、神の過剰なほどの加護を味方に与える。  そこに当然のようにアシュレイのアクセラレーションが付与されれば、魔族といえども対応の難しい神速の剣戟が生まれる。  これをたった一人で受けて反撃までしてきた魔王がどれほど規格外の存在だったか。  レイトは今更ながらに身震いしてしまう。  これほどまでに過剰なバフを与えられて、魔王軍に遅れをとる冒険者たちではない。  カーナが一人で若いワイバーンを一体倒す間に冒険者は残りの魔獣を倒して魔族との戦いに入っていく。「やれますか?」 王女クリスティーンに問われたカーナは一度強く奥歯を噛み締めるとキッとまなじりを上げて力強く宣言する。「もちろんです」 クリスティーンに向かって襲ってきた魔族を迎え撃つカーナは長く鋭い爪を亡き隊長の形見である長剣で受け止めると、その腹を蹴り押す。  わずかに開いた間合いを自ら詰めると両手でもった剣で力の限り横一閃、硬く重い手応えを受けて止まりそうな勢いを雄叫び上げて強引に振り抜く。  一刀のもと両断された魔族の上半身が地面に落ちるのを確認せずに周囲の状況を確認すると、すでに指揮官の大男以外の魔族はすべて冒険者たちに倒されていた。「なんて強い人たちだ」「英雄と呼ぶにふさわしい方達でしょう?」 クリスティーンがカーナの独り言にそう答える。「確かに」 その間にも冒険者たちの攻撃は最後の魔族に向けられていた。  剣士三人の攻撃は
最終更新日: 2026-05-15
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