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結城慎二
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Novels by 結城慎二

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

のどかな田舎の小さな集落で生まれ育ったジャン・ロイは15歳の誕生日の前日、村を襲った盗賊から逃げている最中唐突に四十半ばのおじさんだった前世の記憶が蘇った。 略奪され、焼き尽くされた村でただ一人生き残ったジャンのサバイバル生活は、なんだかんだと仲間が増えて村が町の規模に。 復興したことが領主にバレたのを機に叛旗を翻し、ついには下剋上を成し遂げ領主として戦国の世におどりでる。
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Chapter: ジャンの懸念
「さて……」 と、飲み物で一息ついた三人を見回し視線を集める。「今晩宴が開かれるわけだけど、みんなにはこの宴で僕を正式な村長にしてもらいたい」「正式な村長?」 と、ザイーダが「なにを言ってんだ?」って顔で聞き返す。  イラードも「正式もなにもお館様はこの村の村長でしょう」 と、さも当然と言った口調で言う。  判ってないなぁ。  チラリとルダーを見るとこっちはなんとなくニュアンスがつかめていそうだ。  イラードもザイーダも村の中では結構な知識人なはずだけど、この辺りの機微は文字が読めるからと言って理解認識できるもんじゃないのかな?「今僕は、元々の村の住人ということで村長をやっている」 そこで区切ってみんながうなずくの確認する。「最初の七人はその経緯を知っているしある意味納得している」「知識や復興活動の運営を率先して行なっていたし、実績もある。誰もが納得していると思うが?」 と、ルダーは言うけどそうとも言えない。「さて、それはどうだろう? 後から来た人たちの中には僕を幼くて経験不足、信用ならないと思っている人も少なくないと思うんだ」「確かに若いと侮っている村人が数人いますね」 さすが、諜報部。  ザイーダはそこらへんの情報もちゃんと持っていたようだ。「なるほど、今は復興に力をあわせる都合もあって声に出していないだけで、お館様が村長でいることに不満を持っているものがいるのですね」「そう! 彼らはきっと『仮の村長』と思っているんだと僕は考えてる。復興作業も一段落したら『今の村長で本当にいいのか?』とか言い始めるに違いない」 ま、この辺は半分被害妄想なんだけど。「そこで、この機会に村の総意として僕を村長として正式に認めさせる」「できますか?」 いい質問だよ、ザイーダ。
Last Updated: 2026-07-30
Chapter: 転生して恋しいものがある
 ルダーを連れ立って僕は館に戻る。  館につくとザイーダが現れた。「なにかあったのか?」「いえ、御用がおありかと」 よく気がつきますこと。「じゃあ、イラードを呼んできてもらえないかな?」「ワタシならここに」 うおっ!  後ろから突然声をかけてこないでくれ。「じゃあ、みんな中へ」 と三人を招き入れる。  館の一階は基本的にはこの世界の常識にならって土足でいいのだけど、二階と奥座敷は土足禁止になっている。  その奥座敷には囲炉裏が切ってあって常時火種を絶やさない。  その囲炉裏に炭をくべ水を入れた深鍋を乗せる。  お茶が欲しいなぁ……。  他の地域がどうか知らないけど、この村では昔から水を沸かして飲んでいた。  白湯であったり湯冷ましであったり、基本生水は飲まない。  この季節ならダリプ|の果汁《ジュース》が子供達に人気だった。  大人たちはまぁダリプ酒を|昼《ひる》|日《ひ》|中《なか》から飲んでた。  原始的な醸造だからか、甘くてアルコール分低めなので水のようにがぶがぶ飲めてしまえる。  けど今は、僕の前世知識から平日は仕事中に飲んではいけないことにしている。  アルコールは脱水を促すし、肝臓に悪いしね。  ルダーが四人分のカップを持ってくる。  勝手知ったる|他人《ひと》の家ってやつか?  ザイーダは野生のスタベラをジャムにしたものを湯の中に入れる。  甘酸っぱくて疲れた体になかなか効果がある。  そうか、日本茶的なのは難しくてもハーブティー的なものなら飲めるかもしれない。「ルダー、ハーブティー的なものってできそう?」「ん? 食える草はいくつかあるけど、うまい飲み物になるかどうかは……」「アニーたちと一緒に試してみてよ」「んーん……まぁ、来年な」 あ。  そろそろ冬枯れの時期か。  仕方ないな、本題に入ろう。
Last Updated: 2026-07-30
Chapter: みんなワクワクソワソワ
「貴重な話が聞けたよ、ありがとう」 すっかり打ち解けた気になっていた男は「なんのなんの」と横柄に手をふる。「君の処遇は改めて明日決定するつもりだけれど、今日のところはこのまま部屋に戻ってもらうことにしよう」 なんというか、ジャスは阿吽の呼吸でも心得ているかのようになにも言わないうちに男に縄をかけ出す。「ちょっ、ちょっとこれは?」「君が囚われの身であることに変わりはないんだよ?」 そう金魚みたいに言葉もなく口をパクパクされても対応は変わらないよ?  ま、対応は最初から決まっているんだけど今日はこれから村をあげての大宴会だからね、不測の事態は困るんだ。  ジャスが部屋に男を押し込むのを確認して僕は家を出る。「終わったのかい?」 外では律儀に見張りについていたルダーが声をかけてきた。「終わった終わった。今後の村の計画になかなか有意義な情報があったよ」「そりゃあよかった」 遅れて鍋を抱えたジャスが出てくる。「見張りの当番はいつまでなんだい?」「日暮れまで」 とルダーに鍋を返しつつ答える。「じゃあ、宴で待ってるよ」 僕はそう言い残してルダーとその場を離れた。  向かったのは正面門。  二棟の櫓にはサビーとオギンがいる。「お館様」 僕らを見つけたオギンがスクワラーのようにするすると降りてくる。「見張りは通常体制に戻すよ」「襲撃の危険はない……と?」「そ。あいつの情報だ。信憑性は僕が保証する。二人とも宴まで休んでいいよ、ご苦労様」 そう告げて、今度はルダーの家へ。  家の前ではアニーがカルホと遊んでいた。  年の近い友達がいるのはいいことだよ。  多すぎるとそれはそれでややこしいことになるんだけどね。  あ、これは前世の経験だわ。  二人に軽く挨拶をして家に入ると、ヘレンは宴の準備で大鍋に食材を放り込んでいた。  僕は彼女にスープ
Last Updated: 2026-07-29
Chapter: お館様はネゴシエーター
 まずは飴の方で行ってみることにしよう。「申し遅れたかな? 僕はこの村の村長をしている」 まだカッコ仮……だけどね。「村……長?」 惚けた顔で男は繰り返す。「意外だろうね」 あ、こいつあっさり頷きやがった。「噂で聞いているだろうけど、この村は二年前に野盗に襲われて一度壊滅しているんだ。僕は唯一の生き残りとして暫定的に村長をやっている」 そこ! 「なるほど」なんて納得するんじゃない!  僕が顔を引きつらせたのをどう解釈したのか、男が蒼ざめた顔で見上げてくる。  いけね、話の振り方間違えたか?「あー……でも、そんなことはどうでもいいんだ。今はこの町でひっそりと暮らしていられれば」 たぶん無理だけど。  リリムが吹き出す。  チッ、また|独白《モノローグ》を読みやがった。「そこでだ、君にこの村でひっそり生きるための情報提供をしてもらいたい」「ジョウホウテイキョウ?」 これはどういう意味でのおうむ返しなんだ?「君の知っていることを教えてくれればそれでいい」「見返りはあるのか?」 いや、君は本来そういう立場じゃないって自覚ないの?「情報次第だ」「…………」 …………。「……なにが知りたい?」 ホッ。  第一段階の交渉はクリアした。  僕は彼の縄をほどき、リビングへ案内する。  おっと、ひと鞭くれてやるのを忘れちゃダメだな。「逃げ出すつもりなら死ぬ覚悟をしてくれよ。危害を加えるような人間に情けをかける気はないからね」 はい、ぶるっちゃいましたね。  ま・実際、彼以外はみんな死んでるし、説得力あるべ。  イスに腰掛けると、ジャスが温めたスープをよそってそれぞれの前に置く。「まずは食事といこう」 と、僕がいうと「うまいぞ」 と、ジャスがいう。  いいフォ
Last Updated: 2026-07-29
Chapter: 秋だけど春なんです
「ヘレンは順調かい?」「ああ、おかげさまで安定期だよ。そうでもなきゃスープなんて作ってもらえてないだろ」 確かにちょっと前までつわりがひどくてルダーが食事の支度をしてたな。「どっちかな?」「さあな。前世世界じゃあるまいし、生まれてくるまで判らんよ」「違いない」「アニーは妹ができると信じてるみたいだけどな」「そうか。村が復興して初めての子供だね」「そうだな。どうでもいいが、ジャリの視線が痛いわ」 憧れの|姐《あね》さんだったみたいだからねぇ。「そういや、チャールズとガブリエル。正式に結婚することにしたそうだ」「そりゃめでたい」 なんてとりとめもなく話していると案外すぐに着くもんだ。  見張りにはジャスが立っていた。「ケガは大丈夫かい?」「ザイーダが言うにはこれくらいの傷なら痕も残らないんじゃないかって」「そりゃあよかった」「うまそうですね。ヘレンさんのスープでしょ」 よく判るねぇ……。  ああ、もともと同郷ってか、ヘレンを慕ってついてきたんだっけか。「一緒に食う?」「いいんすか?」「いいよ」「ルダー、ごめん。ちょっとの間代わりに見張りお願い」「はいはい」 ルダーは二つ返事で引き受けてくれた。  中に入ると殺風景な家だった。  腰を据える気なんかサラサラないって言うのが家財道具から見て取れる。  奥の部屋のドアを開けると、ベッドの上に後ろ手に縛られた男が、心配そうにこちらを見てくる。  僕は辺りを見回して武器になりそうなものを確認する。  椅子とか鍋釜程度だな。  包丁さえないってのはどうやって調理してたんだ?  ジャスに指示して縄を解く。「腹が減ったろ? 一緒に食おう」 その提案はよっぽど彼の想定外だったんだろうか?  惚けた顔して返事一つ返ってこない。  スー
Last Updated: 2026-07-28
Chapter: 肩の荷が下りると体調を崩すことが多い…らしい
 階下から漂ってくるおいしそうな香りに起こされた。  体は少し重い。(|仕《し》|合《あい》の後はこんな感じになるとこが多かったな) などと妙に懐かしく思いながら下に降りる。「よう、やっと起きてきたな」 と出迎えてくれたのはルダーだった。  むーん……微妙に嬉しくないな。(やっぱり女性に起こされたい) などと思いつつも、なんでまたルダーが|僕《ぼく》|の《ん》|館《ち》にいるのか疑問に思っていると。「ヘレンにな」 と、まるで僕の心が読めるかのように説明してくれる。「ヘレンがな、ずっと気を張ってたやつは肩の荷が下りると体調を崩すことが多いから、あったかくてうまいもんを食べさせてやれって持たせてくれたんだ」 なるほど。  おじいさん商隊長さんが亡くなったのもそんな感じだった。「滋養にもいいぞ。デーコンポモイトスープだ。肉はラバトの塩漬けを使ってる」「それはうまそうだ。じゃあ、遠慮なくごちそうになるよ」「おぅよ」 もう随分前から自炊になっていて、最近は食べる機会もめっきり減ったけど、ヘレンの料理はうまいんだ。  食事をしながら僕は村の様子を訊ねる。「今日はみんなゆっくり起きて今は村人総出で宴の準備をしてるぞ」 農作物の収穫作業も一段落ついてるし、雑木林の収穫はピサーメ以外まだ少し早いと聞いてるからちょうどよかったのかもしれない。「誕生会と収穫祭と戦勝記念の宴だね」「おお、景気がいいな」「捕虜の容体は?」 そう訊ねると、ルダーの声のトーンが少し落ちる。「二人はお館様が去って間もなく死んだ。もう一人は『苦しい、殺してくれ』って言うんでイラードが楽にした」 そうか。「生き残りは例の男の家で見張られている」 手引き役の男は戦闘で死んでいるから、今は空き家ってことになるんだし有効利用ってやつだな。「様子は?」「縛られてるからって
Last Updated: 2026-07-28
ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

世良(せら)玲太(れいと)は大学生RPGマニアでレトロゲームにも造詣が深い。 そんな彼が手に入れたレトロゲームをプレイしようと思ったら画面の中に吸い込まれちゃいました。 8bitゲームの世界から物語が進むたびに16bit32bitとビジュアルやゲームシステムが進化していく世界で戦うレイトは元の世界に戻ることができるのでしょうか?
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Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる2
「…………」 おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。「なんじゃあ、こりゃあ!!」二回目だね、それ。  さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。「ん……ここは?」 愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。「なんなの、ココ!?」 アシュレイが驚くのも無理はないよねー。  玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。  それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか?  しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。「ええと、なにから説明しよう?」 混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。  さすがだね。  伊達に修羅場はくぐっていないよ。  いや、でもこっちの修羅場はどうだろう?  とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。  その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。  まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。  戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」「そういうことになるね」「でもどうしてかしら?」 アシュレイの疑問ももっともだ。  人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」 さすがは最年少ながら聖女として英才教
Last Updated: 2026-05-22
Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる1
 |玲《れい》|太《と》の意識が戻った時、最初に出た言葉は「はぁ!?」 だった。  無理もない。  見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。  テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。  しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。  そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。  他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。  混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。「フロッピーディスクはどこいった!?」 X-1 turbo Z IIの|灯《ひ》は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。「なんじゃあ、こりゃあ!」 腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」 突っ込むところがそこかいな。「ん……」 混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
Last Updated: 2026-05-21
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる2
「ソフィア、ビルヒルティス、アシュレイ、そしてヴァネッサとレイト。魔王に攫われた我が娘クリスティーンを救出に旅立った勇者たちよ、王国の危機、ひいては世界の危機を救ってくれたこと、心より感謝する。特にヴァネッサとレイトには二度も娘の命を救ってもらった。この恩、生涯忘れまいぞ」「もったいなきお言葉」「命の危険を顧みず、魔王に立ち向かいあまつさえその魔王を討ち滅ぼしたそなたらはまさに世界の救世主。英雄と呼ぶにふさわしい者たちだ。朕は王として、また民の代表としてそなたらの望みを出来うる限り叶えたい。この場で望みを申すがよい」 そう言われて、五人は互いに顔を見交わした。  突然そんなこと言われてもねぇ。  すぐには思い浮かばないよねぇ。  まぁ、レイトの願いは想像つくけどね。「レイトよ。娘はそなたを好ましく思っておるようだぞ」「お父様!」 語気を強めるクリスティーンは耳まで|朱《あか》くして抗議する。  |王様《お父ちゃん》、封建社会だからって娘をものみたいに扱っちゃいけませんよ。  王妃は王妃で笑みをたたえて|父娘《おやこ》のやりとりを見ている。  そんな微笑ましい様子じゃないと思うけどね。「あの……」 と、恐る恐る発言許可を求めたのは最年少のビルヒーだった。「私、聖女の地位を捨ててレイトと一緒に旅がしたいと思います」「え?」 つい言葉が漏れたのは一緒に旅をしてきた四人だった。「聖女として母や国教会、王国に育てていただいた身ですが、この旅で外の世界の面白さ、気ままな自由さを知りました。このままレイトと一緒に自由に生きていきたいと望みます」「で、では私も、私も騎士の身分を捨てレイトと共に生きていきたく存じます」「ははは、そりゃいいね。あたしは別に欲しいものなんてなかったんだけど、あたしもかたっくるしい生活よりレイトと一緒に気ままに楽しく過ごせるならそうしたいや」「私も、私も一緒にいる!」(は? なんじゃこりゃ!) おうおう、王道のハーレム展開じ
Last Updated: 2026-05-20
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる1
 王都に戻って十日が経った。  王女であるクリスティーンは王宮に戻り、ソフィアは騎士として王都の治安維持に、ビルヒーは聖女として最高司祭である母とともにそれぞれの仕事に従事している。  その間残った三人は暇を持て余していた。  そして、ようやくお呼びがかかり、国王に謁見とあいなった。  王城に登り控室に通されると、そこには騎士として正装したソフィアとこちらも聖女として国教会の正装をしているビルヒーがいた。「久しぶりだねぇ」 ヴァネッサが二人に声をかける。「お久しぶりです、ヴネッサ」 ちょっと見ない間に少し大人っぽくなっているビルヒーが、会釈をする。「はぁ、ちゃんとした正装のある立場の人はいいよねー。私なんか一応洗濯はしてきたけど旅に出てた時のまんまよ」 と、女の子らしく嘆くアシュレイをカラカラと笑い飛ばすソフィアは「ならこれを着るかい?」 と、クローゼットを開けてみせる。  そこにはきらびやかなドレスが数着並んでいた。  それを見たアシュレイはぶるぶると首を振って「やっぱやめとく。そんなの着たらみんなになんて言われるか判ったものじゃないもの」 と、チラリとレイトを横目で伺う。「なら、あたしが着ようかね?」 というヴァネッサに「サイズがないだろ」 と、余計な一言を投げかけてしまいチョークスリーパーをかけられるレイトであった。 ……まったく。 目鼻立ちのクッキリしたオリエンタルな顔立ちのヴァネッサにきらびやかなドレスは案外似合うと思うぞ。 しばしの談笑を繰り広げていると、部屋をノックする音がして呼び出しの声がかかる。(謁見するのは二度目だなぁ) なんて思いながら謁見の間に向かうレイト。  魔王の襲撃によって破壊された壁などは応急修繕がなされてはいたけれど、その爪痕は残っている。  居並ぶ顔ぶれも若い。  あの日、かなりの重臣が身を挺して魔王と戦い散っていった。  その
Last Updated: 2026-05-19
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す3
 たどり着いた大聖堂は無傷とはいえなかったが、甚大と言えるほどの被害ではなかった。「お母様」 陣頭指揮に当たっているアデルグンティスを見つけて駆け寄るビルヒーはやはりいたいけな少女だった。「ビルヒルティス。無事に戻ったと言うことは」 というと、娘から顔をあげ、クリスティーンを見とめた。「ああ、よくぞご無事で」「最高司祭様もご無事でなによりです」 アデルグンティスは陣頭指揮を近くにいた側近に引き継ぎ、大聖堂の中へと冒険者たちを案内する。「魔王軍襲来は国家存亡の危機でした」 最高司祭手ずから入れてくれたお茶を飲みながら、双方の情報交換が行われた。  それによると魔王に率いられた魔王軍は当初、三軍に別れて進軍、瞬く間に侵略されたのだけれど、突然四分五裂。  各軍団が互いに争い始めてあるものは討たれ、あるものは魔族領に戻りして次第に勢力が縮小していったそうだ。「各地で猛威を振るった魔族軍ですが、大賢者バガナス様や王国軍の奮戦によって軍としては壊滅いたしました。今、王国内に残っているのは残党に過ぎません」「つまり、魔王が倒されたことで、次の魔王候補が王国内で覇権争いを始め、侵略戦争どころじゃなくなったってことですかね?」「そうなのかもしれません」「とすれば、次期魔王候補で有力なものほど魔族領に戻り地盤固めに入り、そうではない者が王国内に取り残されているって考えていい?」 それはさすがに短絡すぎやしないかね? レイト。「なんにせよ、幸運にも我が国は世界は魔王の脅威から救われたのだな」 ここにも物事を単純化して考える女騎士がいたよ。  まぁ、間違っちゃいないんだ、これが。「王国としてはこれからが大変だともいえますけれど」 と、ため息こそつかないものの憂いをたたえた表情を見せる最高司祭の横顔を不謹慎にも美しいと思ってしまうレイトであった。 言っとくけど、三十そこそことまだ全然若いけどビルヒーのお母さんだからね、その人。  王国国教の最高司
Last Updated: 2026-05-18
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す2
 帰還の旅の最大の試練は魔王軍の一団に出くわしたことだった。  魔族の大男に率いられた十人の魔族兵と二十体はいるだろう魔獣の軍団だ。  しかし、幸いなことに敵軍で大きな傷を負っているように見えなかったものは指揮官らしい大男くらいで、その大男にしても無数の傷を負っていた。  数の上では劣勢であっても魔王を倒した無傷の英雄たちである。  先制はレイトのフレイムウェーブだった。  火の波が魔王軍を襲っている間にクリスティーンとビルヒーがブレッシングの魔法を唱える。  二重がけのブレッシングはホーリーブレスとなり、神の過剰なほどの加護を味方に与える。  そこに当然のようにアシュレイのアクセラレーションが付与されれば、魔族といえども対応の難しい神速の剣戟が生まれる。  これをたった一人で受けて反撃までしてきた魔王がどれほど規格外の存在だったか。  レイトは今更ながらに身震いしてしまう。  これほどまでに過剰なバフを与えられて、魔王軍に遅れをとる冒険者たちではない。  カーナが一人で若いワイバーンを一体倒す間に冒険者は残りの魔獣を倒して魔族との戦いに入っていく。「やれますか?」 王女クリスティーンに問われたカーナは一度強く奥歯を噛み締めるとキッとまなじりを上げて力強く宣言する。「もちろんです」 クリスティーンに向かって襲ってきた魔族を迎え撃つカーナは長く鋭い爪を亡き隊長の形見である長剣で受け止めると、その腹を蹴り押す。  わずかに開いた間合いを自ら詰めると両手でもった剣で力の限り横一閃、硬く重い手応えを受けて止まりそうな勢いを雄叫び上げて強引に振り抜く。  一刀のもと両断された魔族の上半身が地面に落ちるのを確認せずに周囲の状況を確認すると、すでに指揮官の大男以外の魔族はすべて冒険者たちに倒されていた。「なんて強い人たちだ」「英雄と呼ぶにふさわしい方達でしょう?」 クリスティーンがカーナの独り言にそう答える。「確かに」 その間にも冒険者たちの攻撃は最後の魔族に向けられていた。  剣士三人の攻撃は
Last Updated: 2026-05-15
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