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結城慎二
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Novels by 結城慎二

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

のどかな田舎の小さな集落で生まれ育ったジャン・ロイは15歳の誕生日の前日、村を襲った盗賊から逃げている最中唐突に四十半ばのおじさんだった前世の記憶が蘇った。 略奪され、焼き尽くされた村でただ一人生き残ったジャンのサバイバル生活は、なんだかんだと仲間が増えて村が町の規模に。 復興したことが領主にバレたのを機に叛旗を翻し、ついには下剋上を成し遂げ領主として戦国の世におどりでる。
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Chapter: 田舎じゃ文明の進化は感じにくい
「ジャンは何を作ろうとしているの?」 カルホが疲れからか満腹からかは判らないけれど眠そうに目をこすりながら聞いてくる。「最初のルンカーで焼き窯を、その焼き窯でより強度の高いルンカーや食器なんかを作る」「食器?」 今世の村では食器は木製だった。  今使っている食器もみんなが持ち寄った木製の皿だ。  匙も木製。  もっとも、僕のは冬の間に自分で作った不恰好なものだけど。  これは推測だけれども陶磁器が生まれていないか普及していない文化水準であるということだ。  作れるなら商売になる。「俺は作れないぞ」 …………。「期待してたのに」「無茶を言うな」 確かに磁器作りには高い技術が必要で、日本では安土桃山時代、朝鮮に出兵した際に職人を連れてくるまで作ることができなかったと言われている。  でも、土器なら今すぐにでも作れる。  粘土をそこらへんで野焼きしても出来るんだから。  実際、僕も前世の小学校の体験授業で土器は作った。  じゃあ陶器ならどうだろう?  と、思ったんだ。  まぁ、この辺は素人考えなんだけど。「土の器なんて使えないだろう」 と、ジャリがいつものように反論してくるところを見るとこの地域にも土器は存在しているようだ。  そりゃそうか、前世世界では先史時代の土器が発掘されている。  日本でも一万年以上前から使われていたことが判っている。  この辺はすでに鉄器文明によって鍋釜は金属器に置き換わっているけれど、食器が木製なのは一考の余地がある。  でも、今のところ試行錯誤をしている余裕はないみたいだからひとまず諦めるしかないな。「ルンカーはどこで焼けばいい?」 考えてなかったぞ。「炭ができているはずだ。入れ替わりであの炭焼き窯を使えばいいさ」 名案だ。「ついでに炭でルンカーを試し焼きしてみたらどうだ?」 ルダー冴えてる。「…………そう
Last Updated: 2026-06-15
Chapter: 鍋を囲んで親睦を深めるのこと
 まずは夏までにみんなの住む家を建て、今の先史時代生活から古代文明水準に戻ることを目標にしよう。  そして冬までに野盗に襲われる前の生活レベルをとりもろす。  中期目標は前世的には三年計画か五年計画のことだった。  こっちはある程度腹案は考えたけど、みんなと話し合う必要がある。  短期目標は自分自身に直接影響があることを扱う場合が多いので考えるまでもないことが多いけど、中長期目標は自分の生活とは一見直接関わりのないことに思えるものが多いから理解できても納得できない場合がある。  前世ではよく上司の無理難題で進めるプロジェクトを部下に納得させるのに手を焼いた。 一日の終わりもミーティング。  こっちは晩御飯を食べながら今日あった出来事などを話すことにしている。  人間関係を円滑にするには大事なことだと前世知識が訴えてる。  確かに前世でも「昭和くさい」と部下に言われていたけれど、プロジェクトを滞りなく進行させるには情報収拾は大事だ。  畑の方は概ね順調。  今日のルンカー作りは成型作業だけをしたそうだ。  農作業の帰りに立ち寄って見た感じだと一週間続けても家一軒分になるか判らない感じだった。  手が足りないのは百も承知だったけど、短期目標達成も危ない感じだな。「種まきさえ終わってしまえば、オレたちもルンカー作りを手伝えるから大丈夫でしょ」「うん、ジャスにはルンカー作りを手伝ってもらうけど、全員がルンカー作りってわけにもいかないからどうだろう?」「他に何をやるつもりなんだ?」「食料確保」「ああ……」 実際肉体労働者が八人で鍋を囲んで仲良く食べると瞬く間に食料がなくなっていく。「他にも作らなきゃいけないものがいっぱいあるし、どう役割を振り分けようかと考えているんだ」
Last Updated: 2026-06-14
Chapter: この先生きのこるために
 畑に来て最初にルダーが|行《おこな》ったのは土を舐める事。  いや、ドラマなんかではよく行われる行動だったりするけど、実際どうなの?  いやいや、現世の父ちゃんもやってたなぁと思い出せばどうという事はないか。「うん、なかなかいい土が出来てる」「全部耕すのか?」 ジャスがルダーに聞いてくる。  この村は元々三十人ほどの集落だった。  現在の村人は八人。  実に三分の一以下で、しかも畑を耕すのはヘレンさんを含めて四人だけ。「いや、物理的に無理だし、そもそも買い付けた種がそんなにない。そうだな、四分の一ってところにしよう」「残りは休耕?」「それもどうかしら」「どう考えても手が足りない。木が生えない程度に手を入れておくことにしよう」 話し合っていても解決手段は出てこないし、仕方ないのでルダーの提案通りに耕すことにする。  黙々と鋤鍬で畑を耕す。  今年蒔くのはフレイラとポモイト。  どちらも主食用の穀物だ。  フレイラは通常秋にまくのだけれど、去年の秋まきフレイラは野党に荒らされていてぱっと見で絶望的だったから、買い付けた半分を今から蒔こうってことになってる。  収穫した分はそのほとんどを種もみにすると宣言された。  ポモイトの方も今年の分は三分の一が来年の種用だとルダーは言っている。  当分穀物は無理だな。 畑を耕しながら僕は、今後のトゥドゥリストを考える。  喫緊は畑と家づくり。  それと並行して食料確保が最重要だ。  とはいえいつまでも古代人生活を続けるわけにいかない。  依然として田舎暮らしで情報が少ないからなんともいえないんだけど、前世の時代区分に照らしてみればこの国は少なくとも中世以降の文明水準には達している。  この先生き残るために出来れば近世レベルの文明水準を手に入れたい。  野望的には小さな村だけど独立自治を求めたい。  なんてぐるぐると考えを巡らせた結果、とりあえず短期目標は村を村として機能するまでに整備することに決め
Last Updated: 2026-06-14
Chapter: 天使か悪魔か
 詳しく説明を求めると、ルンカーで家を作れるのは法律で決められた一定額の税を納めた者だけということになっているらしい。  まじか……。  いや、そんなもん無視だ無視。  そもそも、ここはすでに棄てられた廃村だから王国の法律なんて知るか。  戦国時代に突入した世界で自衛の手段を手放すなんて自殺行為だ。「ま・オレも畑仕事よりモノ作ってる方がいいからそれで行こう」 いいんかい。  いや、こっちもありがたいんだけど。「どれだけ作ればいいんだ?」「とりあえず十日間で作れるだけ」「つまり十日間は畑仕事とルンカー作りで過ごすってことだな?」「そういうこと。じゃ、始めようか」「鋤鍬は揃ってるのか?」「うーん……あるっちゃある」 ちゃんと使えるかどうかは疑わしいけどね。「使ってみなきゃ使えるかどうか判らないもんなのかい?」「ええ、まぁ……」「まぁ、ないよりマシさね」 ヘレンさんはなんのかんのでたくましい。「では、今日もよろしくお願いします」「しまーす」 畑仕事に向かう道々、ルダーが僕と並んで歩く。  何か相談したいことがあるのか? 聞きたいことがあるのか?「何か考えていることがあるのか?」「え?」「いや、炭だレンガだってこの世界で馴染みのないものを矢継ぎ早に作るなんて、考えがあってのことかと思ってな」「うーん……リリムが言うには、勇者以外の転生者ってのは崩れた世界のバランスを調整するために招き入れられているんだってさ。で、その崩れたバランスってのは僕たちの境遇や商隊長さんの話などからみて王国の継承問題で内戦状態になってることだと思うんだ」「だろうな」「ところでリリス。転生者はみんな君の声も聞こえるの?」「どうかな?」「聞こえるな」「あら、そうなのね」「リリムによると転生者の使命は生き残ることなんだってさ」
Last Updated: 2026-06-13
Chapter: 新しい仕事
 村長生活一週間。  伐採した木は百本を超えた。  僕が冬の間に切ってきた木と合わせて百二十本はある。  何本かはすでに炭と炭焼きの燃料に使っている。  日本では成長の止まる冬の間に木を切るのを良しとしたとか。  芽吹き始めたこの春に切ったのはまぁ仕方ないとはいえ残念だ。  本来なら最低でも一年は寝かせるべきなんだろうけど、そんなことも言ってられないのでこれをこのまま使う。 …………。 そういえば、僕は日本家屋をイメージしていたし、実際暮らしていた村は木造家屋ばかりだったけど、レンガの家の方がいい気がしてきたぞ?「リリム」「何?」「野盗とか、また襲ってくると思うか?」「どうかしらね? 村の規模によるんじゃない?」 なるほど、襲っておいしい思いができなきゃ意味ないもんな。  しばらくは来ないか……。 僕は、日課になっている朝会で、今日からの仕事の役割分担を発表する。  朝会を開くあたり、前世のサラリーマン時代にだいぶ引きずられてるよなぁ……。  炭焼き第一弾は窯を冷ましている段階で今日からルダーもみんなと活動できる。「今日から畑の作業をします」「それりゃいい」「遅いくらいだからな」「だろうね」「家はどうするんだ?」「モノには手順ってのがあるからさ、ジャリ」 ジャリって、なんでこう反抗的なんだ?  まるっきり不良高校生みたいだぞ。「クレタとカルホとアニーにはレンガを作ってもらう」「レンガ?」 ん?  レンガ知らないのか?「ルンカーのこと?」 ああ、名詞が違ってたな。  最近思考の時は前世記憶を元に考えてるから前世の単語で考えてることが多かった。「そうそう、ルンカー。作り方知ってる?」「日干しルンカーなら作れる」「日干しか……」 この辺は割とよく雨が降る。
Last Updated: 2026-06-13
Chapter: 廃村復興0円生活-後篇-
「そりゃすげぇな」 と、ジャスは普通に驚いてくれたわけだが、相変わらずジャリが「なんでお前がそんなこと知ってるんだよ」 とか突っ込んでくる。  「いやぁじつは前世が……」などと言っても詮なきことなので適当にはぐらかしつつルダーを見る。「白炭は無理だぞ」 仕方ないよね。「まずは黒炭だけでいい」 と、答えとく。「まずは……か。まぁ、いずれ試してみるけど今は炭にさえなりゃいいんだな?」「よろしく」 二人の間では意思の疎通ができている。  ジャリとジャスにはちょっと不満かもしれないけど、余計な説明はしないでおきたいから目をつむる。  向こうもとりあえずしばらくは不満に目をつむってるだろう。「窯はどこに作ればいいんだ?」「用水路周りが粘土質の土なんでその辺で……あぁ、水車小屋のそばに僕の小屋が建ってるからその近くにしようか?」「判った」「で、明後日以降も採集と伐採で五日間過ごそうと思う」「どうして?」 クレタの質問だ。「木材は早急に家を作る必要があるから。山菜は今時期しか取れないからだよ」 ここらあたりはヘレンも心得ているようでその心の声が表情に漏れている。「みんなには大変だろうけど夜も仕事をしてもらいたいんだよね」「どんな?」「カルホはできるかどうか知らないけど、縄をなったり袋や籠を編んだりして欲しいのだよ」「縄ならできるよ」「そりゃあいい」「俺は苦手だ。うまくできないぞ」 胸を張って言えるこっちゃないぞ、ジャリ。「じゃあ、私たちは明日は午前中に道具の材料になる植物の採集。午後は山菜採りということにしましょうね」「ヘレンさんありがとうございます」「いえ、大きな籠を作ればなんども往復しなくて済みますから」 と、今日使った郵便カバンみたいな入れ物を少し持ち上げてみせる。  今日
Last Updated: 2026-06-12
ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

世良(せら)玲太(れいと)は大学生RPGマニアでレトロゲームにも造詣が深い。 そんな彼が手に入れたレトロゲームをプレイしようと思ったら画面の中に吸い込まれちゃいました。 8bitゲームの世界から物語が進むたびに16bit32bitとビジュアルやゲームシステムが進化していく世界で戦うレイトは元の世界に戻ることができるのでしょうか?
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Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる2
「…………」 おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。「なんじゃあ、こりゃあ!!」二回目だね、それ。  さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。「ん……ここは?」 愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。「なんなの、ココ!?」 アシュレイが驚くのも無理はないよねー。  玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。  それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか?  しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。「ええと、なにから説明しよう?」 混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。  さすがだね。  伊達に修羅場はくぐっていないよ。  いや、でもこっちの修羅場はどうだろう?  とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。  その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。  まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。  戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」「そういうことになるね」「でもどうしてかしら?」 アシュレイの疑問ももっともだ。  人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」 さすがは最年少ながら聖女として英才教
Last Updated: 2026-05-22
Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる1
 |玲《れい》|太《と》の意識が戻った時、最初に出た言葉は「はぁ!?」 だった。  無理もない。  見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。  テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。  しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。  そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。  他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。  混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。「フロッピーディスクはどこいった!?」 X-1 turbo Z IIの|灯《ひ》は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。「なんじゃあ、こりゃあ!」 腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」 突っ込むところがそこかいな。「ん……」 混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
Last Updated: 2026-05-21
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる2
「ソフィア、ビルヒルティス、アシュレイ、そしてヴァネッサとレイト。魔王に攫われた我が娘クリスティーンを救出に旅立った勇者たちよ、王国の危機、ひいては世界の危機を救ってくれたこと、心より感謝する。特にヴァネッサとレイトには二度も娘の命を救ってもらった。この恩、生涯忘れまいぞ」「もったいなきお言葉」「命の危険を顧みず、魔王に立ち向かいあまつさえその魔王を討ち滅ぼしたそなたらはまさに世界の救世主。英雄と呼ぶにふさわしい者たちだ。朕は王として、また民の代表としてそなたらの望みを出来うる限り叶えたい。この場で望みを申すがよい」 そう言われて、五人は互いに顔を見交わした。  突然そんなこと言われてもねぇ。  すぐには思い浮かばないよねぇ。  まぁ、レイトの願いは想像つくけどね。「レイトよ。娘はそなたを好ましく思っておるようだぞ」「お父様!」 語気を強めるクリスティーンは耳まで|朱《あか》くして抗議する。  |王様《お父ちゃん》、封建社会だからって娘をものみたいに扱っちゃいけませんよ。  王妃は王妃で笑みをたたえて|父娘《おやこ》のやりとりを見ている。  そんな微笑ましい様子じゃないと思うけどね。「あの……」 と、恐る恐る発言許可を求めたのは最年少のビルヒーだった。「私、聖女の地位を捨ててレイトと一緒に旅がしたいと思います」「え?」 つい言葉が漏れたのは一緒に旅をしてきた四人だった。「聖女として母や国教会、王国に育てていただいた身ですが、この旅で外の世界の面白さ、気ままな自由さを知りました。このままレイトと一緒に自由に生きていきたいと望みます」「で、では私も、私も騎士の身分を捨てレイトと共に生きていきたく存じます」「ははは、そりゃいいね。あたしは別に欲しいものなんてなかったんだけど、あたしもかたっくるしい生活よりレイトと一緒に気ままに楽しく過ごせるならそうしたいや」「私も、私も一緒にいる!」(は? なんじゃこりゃ!) おうおう、王道のハーレム展開じ
Last Updated: 2026-05-20
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる1
 王都に戻って十日が経った。  王女であるクリスティーンは王宮に戻り、ソフィアは騎士として王都の治安維持に、ビルヒーは聖女として最高司祭である母とともにそれぞれの仕事に従事している。  その間残った三人は暇を持て余していた。  そして、ようやくお呼びがかかり、国王に謁見とあいなった。  王城に登り控室に通されると、そこには騎士として正装したソフィアとこちらも聖女として国教会の正装をしているビルヒーがいた。「久しぶりだねぇ」 ヴァネッサが二人に声をかける。「お久しぶりです、ヴネッサ」 ちょっと見ない間に少し大人っぽくなっているビルヒーが、会釈をする。「はぁ、ちゃんとした正装のある立場の人はいいよねー。私なんか一応洗濯はしてきたけど旅に出てた時のまんまよ」 と、女の子らしく嘆くアシュレイをカラカラと笑い飛ばすソフィアは「ならこれを着るかい?」 と、クローゼットを開けてみせる。  そこにはきらびやかなドレスが数着並んでいた。  それを見たアシュレイはぶるぶると首を振って「やっぱやめとく。そんなの着たらみんなになんて言われるか判ったものじゃないもの」 と、チラリとレイトを横目で伺う。「なら、あたしが着ようかね?」 というヴァネッサに「サイズがないだろ」 と、余計な一言を投げかけてしまいチョークスリーパーをかけられるレイトであった。 ……まったく。 目鼻立ちのクッキリしたオリエンタルな顔立ちのヴァネッサにきらびやかなドレスは案外似合うと思うぞ。 しばしの談笑を繰り広げていると、部屋をノックする音がして呼び出しの声がかかる。(謁見するのは二度目だなぁ) なんて思いながら謁見の間に向かうレイト。  魔王の襲撃によって破壊された壁などは応急修繕がなされてはいたけれど、その爪痕は残っている。  居並ぶ顔ぶれも若い。  あの日、かなりの重臣が身を挺して魔王と戦い散っていった。  その
Last Updated: 2026-05-19
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す3
 たどり着いた大聖堂は無傷とはいえなかったが、甚大と言えるほどの被害ではなかった。「お母様」 陣頭指揮に当たっているアデルグンティスを見つけて駆け寄るビルヒーはやはりいたいけな少女だった。「ビルヒルティス。無事に戻ったと言うことは」 というと、娘から顔をあげ、クリスティーンを見とめた。「ああ、よくぞご無事で」「最高司祭様もご無事でなによりです」 アデルグンティスは陣頭指揮を近くにいた側近に引き継ぎ、大聖堂の中へと冒険者たちを案内する。「魔王軍襲来は国家存亡の危機でした」 最高司祭手ずから入れてくれたお茶を飲みながら、双方の情報交換が行われた。  それによると魔王に率いられた魔王軍は当初、三軍に別れて進軍、瞬く間に侵略されたのだけれど、突然四分五裂。  各軍団が互いに争い始めてあるものは討たれ、あるものは魔族領に戻りして次第に勢力が縮小していったそうだ。「各地で猛威を振るった魔族軍ですが、大賢者バガナス様や王国軍の奮戦によって軍としては壊滅いたしました。今、王国内に残っているのは残党に過ぎません」「つまり、魔王が倒されたことで、次の魔王候補が王国内で覇権争いを始め、侵略戦争どころじゃなくなったってことですかね?」「そうなのかもしれません」「とすれば、次期魔王候補で有力なものほど魔族領に戻り地盤固めに入り、そうではない者が王国内に取り残されているって考えていい?」 それはさすがに短絡すぎやしないかね? レイト。「なんにせよ、幸運にも我が国は世界は魔王の脅威から救われたのだな」 ここにも物事を単純化して考える女騎士がいたよ。  まぁ、間違っちゃいないんだ、これが。「王国としてはこれからが大変だともいえますけれど」 と、ため息こそつかないものの憂いをたたえた表情を見せる最高司祭の横顔を不謹慎にも美しいと思ってしまうレイトであった。 言っとくけど、三十そこそことまだ全然若いけどビルヒーのお母さんだからね、その人。  王国国教の最高司
Last Updated: 2026-05-18
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す2
 帰還の旅の最大の試練は魔王軍の一団に出くわしたことだった。  魔族の大男に率いられた十人の魔族兵と二十体はいるだろう魔獣の軍団だ。  しかし、幸いなことに敵軍で大きな傷を負っているように見えなかったものは指揮官らしい大男くらいで、その大男にしても無数の傷を負っていた。  数の上では劣勢であっても魔王を倒した無傷の英雄たちである。  先制はレイトのフレイムウェーブだった。  火の波が魔王軍を襲っている間にクリスティーンとビルヒーがブレッシングの魔法を唱える。  二重がけのブレッシングはホーリーブレスとなり、神の過剰なほどの加護を味方に与える。  そこに当然のようにアシュレイのアクセラレーションが付与されれば、魔族といえども対応の難しい神速の剣戟が生まれる。  これをたった一人で受けて反撃までしてきた魔王がどれほど規格外の存在だったか。  レイトは今更ながらに身震いしてしまう。  これほどまでに過剰なバフを与えられて、魔王軍に遅れをとる冒険者たちではない。  カーナが一人で若いワイバーンを一体倒す間に冒険者は残りの魔獣を倒して魔族との戦いに入っていく。「やれますか?」 王女クリスティーンに問われたカーナは一度強く奥歯を噛み締めるとキッとまなじりを上げて力強く宣言する。「もちろんです」 クリスティーンに向かって襲ってきた魔族を迎え撃つカーナは長く鋭い爪を亡き隊長の形見である長剣で受け止めると、その腹を蹴り押す。  わずかに開いた間合いを自ら詰めると両手でもった剣で力の限り横一閃、硬く重い手応えを受けて止まりそうな勢いを雄叫び上げて強引に振り抜く。  一刀のもと両断された魔族の上半身が地面に落ちるのを確認せずに周囲の状況を確認すると、すでに指揮官の大男以外の魔族はすべて冒険者たちに倒されていた。「なんて強い人たちだ」「英雄と呼ぶにふさわしい方達でしょう?」 クリスティーンがカーナの独り言にそう答える。「確かに」 その間にも冒険者たちの攻撃は最後の魔族に向けられていた。  剣士三人の攻撃は
Last Updated: 2026-05-15
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