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結城慎二
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Novel-novel oleh 結城慎二

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

僕だってチートがあれば苦労なんてしていない

のどかな田舎の小さな集落で生まれ育ったジャン・ロイは15歳の誕生日の前日、村を襲った盗賊から逃げている最中唐突に四十半ばのおじさんだった前世の記憶が蘇った。 略奪され、焼き尽くされた村でただ一人生き残ったジャンのサバイバル生活は、なんだかんだと仲間が増えて村が町の規模に。 復興したことが領主にバレたのを機に叛旗を翻し、ついには下剋上を成し遂げ領主として戦国の世におどりでる。
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Chapter: 頼られる立場として
 会議は続く。  次の議題は第四中の村の接収計画だ。  第四中の村自体はこちらに寝返る気があるようなのだけれど、中核にある町がそんな気ないのだ。  こちらはハンジー町より大きく一町四ヶ村で構成されていて人口七百人以上。  他三ヶ村は先の町と呼ばれているので第四中の村は冷遇されている(実際そうなのか、そう感じているだけなのかはこの際関係ない)ので帰順したいのだという。  コロニー立地でいえば商都ゼニナルの側にあってオグマリー市にも近い。  とはいえ中の町の名の通り、コロニーの一番奥に存在していて旧第五中の村ことセザン村の繁栄っぷり、ひいては僕の評判が高まっているという現在の状況的に、放置は良くないだろうというのが会議参加者の一致した見解だ。「とはいえ、本格的な軍事衝突は難しいぞ」 セザン村で軍隊長に就いているカイジョーがいう。「特にハンジー町にバンバたちを派遣するとなるとセザン村の戦力もおぼつかないくらいですからね」 と、イラードが補足する。「けど、増税に苦しむ村が助けを呼ぶような形なんだろ? それを宙ぶらりんでほっとくとなると仮にその後穏便に接収できたとしても村人たちにしこりを残さないか?」 ルダーは宙に視線をさまよわせて人差し指を立てた右手をくるくると回す。  残る。  そりゃ、きっと残るぞ。「ワタシも年内の接収は無理筋だと思います。しかし、秋波を送られているのを無視することも得策ではないことは理解できます。次善の策を考えるという方向で考えるしかありませんね」「息子よ、次善ではダメだ。最善を模索するのが為政者の務めである」 この親子は固い。「じゃあよ、ルビレルの考える最善ってのはなんだい?」「村の接収はできないが、なんらかの援助をする策……ということでしょうか?」「援助ねぇ……ルビレルなら承知の上だとは思うがよ、第四中の村は第六先の村と町と隣接してるんだぜ?」「承知している」「気づかれずにできる援助って具体的にどんなことだと思うのよ?」 ジョー
Terakhir Diperbarui: 2026-10-28
Chapter: 様になってきた戦略会議
「じゃあ、交渉は二人に任せる。ルビレルはそのまま宿場町の建設指揮も任せる」「今まで、ジャスに丸投げしてたのに、どういう風の吹き回しだ?」 ルダーの疑問もまぁもっともだ。「今回はグリフ族だけでなくモンスターも出る地域だからね、開拓チームの護衛も任務だってことだよ」「なるほど」「町の開発はどうする予定なんだ?」「その件はワタシから説明します」 説明を引き受けたルビンスは街を囲んでいる城壁を解体して周辺三ヶ村を繋ぐ街道沿いを全て農地にするという計画を話す。  これに目を輝かせたのはルダーだ。「俺に、その事業、俺に任せてくれ!」 いうと思った。「そのつもりだった。今年の収穫が終わったら信頼のできる部下を数人選んで移動してくれ。それまでに代官の後任を選んでおく」「後任人事は俺の要望を聞いてくれるのか?」「ああ、ある程度は要望をいれよう。まだまだわだかまりも燻っているのだろう?」「まあな」 ちらりとイラードを見ると、心なしか居心地が悪そうだ。「ルダーと一緒にバンバ、ブンター、カレンも派遣する」「え?」 難色を示したのはカイジョーだ。  最前線セザン村に集中させている三十人の駐留軍の主力である職業軍人十人から三人とられるとなれば、当然の反応だ。  けれど、旧来の領地人口四百五十人に対して新領地ハンジー町は六百四十人にのぼる。  常備軍に傭兵も含めて百三十はいるというのだから、|自由《フリー》|裁量《ハンド》の軍事力なんかそのまま握らせておくわけにはいかない。「──というわけで、カイジョーを送り込むわけにいかないんだから、仕方ないだろ?」「うむ、確かに仕方ないのか……」「軍は再編する予定だからその下調べも兼ねている。その仕事はサビーやガーブラには向かないし、イラードには残念だが任せられない」 独善的にことを進めてやらかしてるからね。「それとオギン」「はい」「ハ
Terakhir Diperbarui: 2026-10-28
Chapter: どちらの運か
 セザン村からこっち領主特権で毎日風呂に入ってきたとはいえ、やっぱり家風呂はいいもんだ。  たとえ宿の銭湯と違って小さな五右衛門風呂だったとしても、一人で湯船に浸かれるしゆったり落ち着ける。  旅の垢をクレタが開発した石鹸で落としてさっぱりした後、頭に手拭いをのせて肩まで浸かって「いい湯だな、あははん♪」なんて唄ってみる。  最高だね。「このまましばらくゆったり過ごしたいんだけどなぁ……」 戦国時代の弱小下克上領主にそんな余裕なんかないんだけどね。  ざばりと勢いよく風呂から上がった僕は、おろしたての服に身を包み、サラを残して中央広場の一角に建てられた会館に向かう。  会議に参加する人数が増えたことで館では手狭になったんで急遽作られた平屋の会館である。  会議室にはすでに全員集まっていた。  バロ村からは代官のブロロとルビレル、ルビンス、オギン、チャールズにたまたま村に戻っていたキャラバンのジョー。  ボット村からは代官のルダー。  セザン村からは村長ベハッチ、イラード、カイジョー。  それに僕を入れて総勢十一名だ。「やっときたか、待ちくたびれたぞ」 遠慮ないな、ルダー。「じゃあ、会議を始めようか」 ジョーの音頭で会議が始まる。  立場上、僕は領主なので議事進行は他人に任せている。「今日はなにを話し合うんだ?」 たまたま村に戻っていたジョーのために、まずは現状報告からということになった。  村の経営はいたって順調のようだ。  もちろん、どの村も急激に人口が膨張したためにインフラ整備に追われていたのだけれど、ズラカルト男爵の居住地移動禁止令で流入人口が一段落ついたのでだいぶ整備が進んだ。  宿場町は銭湯の流行で経営が安定したという報告も受けた。  でもそこら辺は今日の議題じゃない。  先日調略に成功したハンジー町の開発計画と街道整備、野営地に宿場兼グリフ族との交易拠点を作る計画についてだ。「交易拠点!?」 さっそくジョーが喰いついてきた。
Terakhir Diperbarui: 2026-10-27
Chapter: テルマエブーム
 本拠地であるバロ村に戻ってきて、最初にしたのはお風呂に入ることだった。  村では僕の館の離れにだけある湯船に浸かれるお風呂。  用水路から水道管でひかれた水を釜で沸かして湯船にお湯をはる。  なかなかの重労働だったりするので風呂に入るのは三日に一回なのが残念ではあるけれど、この世界ではそれでもそうとう贅沢なことである。  ちゃんと湯船があるのは館の他は二ヶ村の代官館と宿場宿くらいなんだけれど、とても評判がいい。  そりゃそうだ。  温かい風呂は貴族でも贅沢の一つらしい。  それを庶民が利用できるんだからね。  館の風呂は来賓のもてなしで村人は利用できないし、宿の風呂は有料で少しお高いけど。  最近では庶民の道楽に宿場に風呂に入りに行くのがはやっているそうだ。  ちょっとした|公衆浴場《テルマエ》ブームだな。  しかし、「ちょいと近場の銭湯へ」みたいな感覚なのか?  家に戻る頃には旅の汗で元の木阿弥って気もするんだけど。  まあおかげもあるのか、中央広場の池を「清浄の泉」と呼んで水浴びを推奨してきて四年、沐浴は村人の日課として定着したようだ。  衛生観念の向上は疫病や感染症などの抑制につながり、死亡率を低下させる。  長年医者としていろいろな村を診てきたソルブも感心していた。  チャールズが魔法関係で忙しくなり(ラバナルは何を始めたんだ?)、一時的にソルブの妻で同じく医者のジャンヌがバロ村にきて診察しているのだけど、助手としてつけているチャールズの妻ガブリエルがなかなか優秀らしく、二、三年で一人で任せられるんじゃないかと言っていた。  地球で二十一世紀を生きていた僕としては、「たった2、3年で?」 と、思ってしまうけれどね。
Terakhir Diperbarui: 2026-10-27
Chapter: ハンジー町調略コンプリート
「つまりその宿場町ってところを中立地帯にするってことか?」 なんのかんの言いながら話の要点は掴んでくるあたりサイもなかなかの人物だ。「うまくいけるか判らないけど、テリトリー問題で無用の争いを引き起こさずにすむ方策を考える方が建設的だろ?」「できるのであればですね」「やるのだよ」 ルビレルが決意を口に出す。「誰がですか?」 ノサウスが訊ねる「ワシが口にしたのだ、責任を持って事にあたろう」 過去にはこの町で任務についていたこともあるルビレルだ。  きっとグリフ族と接触したことも一度や二度ではないはずで、ある意味適任ではある。「では、ルビレルに任そう」「お任せを」 なんか、そういわれると偉くなった気になるよ。  いや、実際偉いんだけど。「ジャン様はこの後バロ村にお戻りになられるのでしょう?」 チカマックは一通りの計画案が出そろったと見たのか、僕に問う。「ああ」「開発は誰を責任者にするおつもりですか?」 おっと、さすがだね。  そこのところきっちり確認とってくるあたり、好感持てるよ。「町の代官は引き続きチカマックに任せる。もちろん、何人かはこちらに派遣させてもらうけどね」「よろしいのですか?」「かまわんよ。優秀な人材をないがしろにできるほど、人がいないからね」「かいかぶりですよ。嬉しいですけどね」「優秀な人材には結構無茶をいいますが、よろしくお願いします」「はっはっ、できる限り善処しましょう」「あ、最後に今日から一町三ヶ村ひっくるめてハンジー町と改名します」「キンショー様も喜ばれるでしょうな」 直接面識のあったルビレルとサイが目を細め。チカマックも目を閉じて感慨にふける。  これにてハンジー町調略コンプリート!
Terakhir Diperbarui: 2026-10-26
Chapter: 公共事業は大きくぶち上げましょう!-後篇-
「完成すれば|獲《と》れ|高《だか》で七、八倍になりますね」 事務方のノサウスは相当優秀なんだろう、概算だろうけど僕らと同じくらいの獲れ高をこの短時間で計算したようだ。「うちの農業指導者は優秀だからね、十倍の収穫量を保証する」「十倍!?」 サイが目を剥く。  面白い顔。「それが事実なら相当裕福な国になるぜ」「そういう国にします」 そのために進出したんだから当然だ。  |狭《きょう》|隘《あい》な高地という耕作に適さない三ヶ村には難しい農業生産力の向上は今後、領土拡大政策を展開するためにも重要な政策なのだ。「しかし、これだけの規模の農地を開発すると、水問題が発生しますね」 バロ村の横を流れている用水路はボット村セザン村の農地を潤して第四中の村方面に流れていく。  こっち方面は西の山脈から流れる川から引かれているのだけれど、八倍を見込む耕地面積すべてを潤せるかどうかは計算に入れていなかった。「ま、そっち方面はすぐすぐどうにかしなければならないものでもありませんし、おいおい考えていきましょう」 おっと?  ノサウスにはいくつか対策案があるってことか?  やるなぁ。「具体的な工期はこれも後日改めて詰めていきましょう。次にセザン村までの道の途中にある野営ポイント……というか、街道整備計画ですが……」「待て待て、街道整備だと?」「はい、ついでにグリフ族対策も」「だから待て、ちゃんと順を追って説明しろ。話を|端折《はしょ》るな」 ……僕の方が、立場は上なんだけどなぁ、なんで僕が気を遣って言葉を選んでいるのにサイの方が偉そうなんだ?「街道整備は速やかな軍事行動に必要なので、我が領では常に優先順位の高い事業であり、都市間移動の安全は為政者の務めです」 質問の答えにはなっていないんだけど、僕はそういって話を強引に進める。  現在の野営地にこれまでの施策通り宿場町を建設することを説明する。  事前にルビレルにグリフ族とは会話による
Terakhir Diperbarui: 2026-10-26
ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった

世良(せら)玲太(れいと)は大学生RPGマニアでレトロゲームにも造詣が深い。 そんな彼が手に入れたレトロゲームをプレイしようと思ったら画面の中に吸い込まれちゃいました。 8bitゲームの世界から物語が進むたびに16bit32bitとビジュアルやゲームシステムが進化していく世界で戦うレイトは元の世界に戻ることができるのでしょうか?
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Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる2
「…………」 おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。「なんじゃあ、こりゃあ!!」二回目だね、それ。  さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。「ん……ここは?」 愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。「なんなの、ココ!?」 アシュレイが驚くのも無理はないよねー。  玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。  それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか?  しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。「ええと、なにから説明しよう?」 混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。  さすがだね。  伊達に修羅場はくぐっていないよ。  いや、でもこっちの修羅場はどうだろう?  とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。  その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。  まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。  戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」「そういうことになるね」「でもどうしてかしら?」 アシュレイの疑問ももっともだ。  人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」 さすがは最年少ながら聖女として英才教
Terakhir Diperbarui: 2026-05-22
Chapter: 青年のプレイしていたRPGは大団円を迎え、現実世界の恋愛ゲームが始まる1
 |玲《れい》|太《と》の意識が戻った時、最初に出た言葉は「はぁ!?」 だった。  無理もない。  見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。  テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。  しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。  そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。  他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。  混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。「フロッピーディスクはどこいった!?」 X-1 turbo Z IIの|灯《ひ》は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。「なんじゃあ、こりゃあ!」 腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」 突っ込むところがそこかいな。「ん……」 混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
Terakhir Diperbarui: 2026-05-21
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる2
「ソフィア、ビルヒルティス、アシュレイ、そしてヴァネッサとレイト。魔王に攫われた我が娘クリスティーンを救出に旅立った勇者たちよ、王国の危機、ひいては世界の危機を救ってくれたこと、心より感謝する。特にヴァネッサとレイトには二度も娘の命を救ってもらった。この恩、生涯忘れまいぞ」「もったいなきお言葉」「命の危険を顧みず、魔王に立ち向かいあまつさえその魔王を討ち滅ぼしたそなたらはまさに世界の救世主。英雄と呼ぶにふさわしい者たちだ。朕は王として、また民の代表としてそなたらの望みを出来うる限り叶えたい。この場で望みを申すがよい」 そう言われて、五人は互いに顔を見交わした。  突然そんなこと言われてもねぇ。  すぐには思い浮かばないよねぇ。  まぁ、レイトの願いは想像つくけどね。「レイトよ。娘はそなたを好ましく思っておるようだぞ」「お父様!」 語気を強めるクリスティーンは耳まで|朱《あか》くして抗議する。  |王様《お父ちゃん》、封建社会だからって娘をものみたいに扱っちゃいけませんよ。  王妃は王妃で笑みをたたえて|父娘《おやこ》のやりとりを見ている。  そんな微笑ましい様子じゃないと思うけどね。「あの……」 と、恐る恐る発言許可を求めたのは最年少のビルヒーだった。「私、聖女の地位を捨ててレイトと一緒に旅がしたいと思います」「え?」 つい言葉が漏れたのは一緒に旅をしてきた四人だった。「聖女として母や国教会、王国に育てていただいた身ですが、この旅で外の世界の面白さ、気ままな自由さを知りました。このままレイトと一緒に自由に生きていきたいと望みます」「で、では私も、私も騎士の身分を捨てレイトと共に生きていきたく存じます」「ははは、そりゃいいね。あたしは別に欲しいものなんてなかったんだけど、あたしもかたっくるしい生活よりレイトと一緒に気ままに楽しく過ごせるならそうしたいや」「私も、私も一緒にいる!」(は? なんじゃこりゃ!) おうおう、王道のハーレム展開じ
Terakhir Diperbarui: 2026-05-20
Chapter: 青年は主人公らしく仲間の美少女たちに好意を寄せられる1
 王都に戻って十日が経った。  王女であるクリスティーンは王宮に戻り、ソフィアは騎士として王都の治安維持に、ビルヒーは聖女として最高司祭である母とともにそれぞれの仕事に従事している。  その間残った三人は暇を持て余していた。  そして、ようやくお呼びがかかり、国王に謁見とあいなった。  王城に登り控室に通されると、そこには騎士として正装したソフィアとこちらも聖女として国教会の正装をしているビルヒーがいた。「久しぶりだねぇ」 ヴァネッサが二人に声をかける。「お久しぶりです、ヴネッサ」 ちょっと見ない間に少し大人っぽくなっているビルヒーが、会釈をする。「はぁ、ちゃんとした正装のある立場の人はいいよねー。私なんか一応洗濯はしてきたけど旅に出てた時のまんまよ」 と、女の子らしく嘆くアシュレイをカラカラと笑い飛ばすソフィアは「ならこれを着るかい?」 と、クローゼットを開けてみせる。  そこにはきらびやかなドレスが数着並んでいた。  それを見たアシュレイはぶるぶると首を振って「やっぱやめとく。そんなの着たらみんなになんて言われるか判ったものじゃないもの」 と、チラリとレイトを横目で伺う。「なら、あたしが着ようかね?」 というヴァネッサに「サイズがないだろ」 と、余計な一言を投げかけてしまいチョークスリーパーをかけられるレイトであった。 ……まったく。 目鼻立ちのクッキリしたオリエンタルな顔立ちのヴァネッサにきらびやかなドレスは案外似合うと思うぞ。 しばしの談笑を繰り広げていると、部屋をノックする音がして呼び出しの声がかかる。(謁見するのは二度目だなぁ) なんて思いながら謁見の間に向かうレイト。  魔王の襲撃によって破壊された壁などは応急修繕がなされてはいたけれど、その爪痕は残っている。  居並ぶ顔ぶれも若い。  あの日、かなりの重臣が身を挺して魔王と戦い散っていった。  その
Terakhir Diperbarui: 2026-05-19
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す3
 たどり着いた大聖堂は無傷とはいえなかったが、甚大と言えるほどの被害ではなかった。「お母様」 陣頭指揮に当たっているアデルグンティスを見つけて駆け寄るビルヒーはやはりいたいけな少女だった。「ビルヒルティス。無事に戻ったと言うことは」 というと、娘から顔をあげ、クリスティーンを見とめた。「ああ、よくぞご無事で」「最高司祭様もご無事でなによりです」 アデルグンティスは陣頭指揮を近くにいた側近に引き継ぎ、大聖堂の中へと冒険者たちを案内する。「魔王軍襲来は国家存亡の危機でした」 最高司祭手ずから入れてくれたお茶を飲みながら、双方の情報交換が行われた。  それによると魔王に率いられた魔王軍は当初、三軍に別れて進軍、瞬く間に侵略されたのだけれど、突然四分五裂。  各軍団が互いに争い始めてあるものは討たれ、あるものは魔族領に戻りして次第に勢力が縮小していったそうだ。「各地で猛威を振るった魔族軍ですが、大賢者バガナス様や王国軍の奮戦によって軍としては壊滅いたしました。今、王国内に残っているのは残党に過ぎません」「つまり、魔王が倒されたことで、次の魔王候補が王国内で覇権争いを始め、侵略戦争どころじゃなくなったってことですかね?」「そうなのかもしれません」「とすれば、次期魔王候補で有力なものほど魔族領に戻り地盤固めに入り、そうではない者が王国内に取り残されているって考えていい?」 それはさすがに短絡すぎやしないかね? レイト。「なんにせよ、幸運にも我が国は世界は魔王の脅威から救われたのだな」 ここにも物事を単純化して考える女騎士がいたよ。  まぁ、間違っちゃいないんだ、これが。「王国としてはこれからが大変だともいえますけれど」 と、ため息こそつかないものの憂いをたたえた表情を見せる最高司祭の横顔を不謹慎にも美しいと思ってしまうレイトであった。 言っとくけど、三十そこそことまだ全然若いけどビルヒーのお母さんだからね、その人。  王国国教の最高司
Terakhir Diperbarui: 2026-05-18
Chapter: 青年たちは魔王軍をおって王都を目指す2
 帰還の旅の最大の試練は魔王軍の一団に出くわしたことだった。  魔族の大男に率いられた十人の魔族兵と二十体はいるだろう魔獣の軍団だ。  しかし、幸いなことに敵軍で大きな傷を負っているように見えなかったものは指揮官らしい大男くらいで、その大男にしても無数の傷を負っていた。  数の上では劣勢であっても魔王を倒した無傷の英雄たちである。  先制はレイトのフレイムウェーブだった。  火の波が魔王軍を襲っている間にクリスティーンとビルヒーがブレッシングの魔法を唱える。  二重がけのブレッシングはホーリーブレスとなり、神の過剰なほどの加護を味方に与える。  そこに当然のようにアシュレイのアクセラレーションが付与されれば、魔族といえども対応の難しい神速の剣戟が生まれる。  これをたった一人で受けて反撃までしてきた魔王がどれほど規格外の存在だったか。  レイトは今更ながらに身震いしてしまう。  これほどまでに過剰なバフを与えられて、魔王軍に遅れをとる冒険者たちではない。  カーナが一人で若いワイバーンを一体倒す間に冒険者は残りの魔獣を倒して魔族との戦いに入っていく。「やれますか?」 王女クリスティーンに問われたカーナは一度強く奥歯を噛み締めるとキッとまなじりを上げて力強く宣言する。「もちろんです」 クリスティーンに向かって襲ってきた魔族を迎え撃つカーナは長く鋭い爪を亡き隊長の形見である長剣で受け止めると、その腹を蹴り押す。  わずかに開いた間合いを自ら詰めると両手でもった剣で力の限り横一閃、硬く重い手応えを受けて止まりそうな勢いを雄叫び上げて強引に振り抜く。  一刀のもと両断された魔族の上半身が地面に落ちるのを確認せずに周囲の状況を確認すると、すでに指揮官の大男以外の魔族はすべて冒険者たちに倒されていた。「なんて強い人たちだ」「英雄と呼ぶにふさわしい方達でしょう?」 クリスティーンがカーナの独り言にそう答える。「確かに」 その間にも冒険者たちの攻撃は最後の魔族に向けられていた。  剣士三人の攻撃は
Terakhir Diperbarui: 2026-05-15
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