世良玲太は大学生である。 じきに就職活動が始まるというのに準備をするでもなくゲームに逃避する程度の男だ。 大学院に進めるほどの頭脳も経済的余裕もない。 かといって将来に目標があるとか、憧れの職業なんてのがあるわけでもない。 でも「働いたら負け」とか思っているわけでもない。 なんとなく意思決定から逃げている。 そんな状況だ。 今日も今日とて休日なのをいいことにワンルームマンションにこもってゲーム三昧を決め込もうと、ついさっき近所のスーパーで特売の菓子や惣菜、飲み物なんかを買い込んできたところ。 RPGマニアの彼は、ガチオタである。 古今東西のRPGを研究し、バイトで貯めたお金をレトロゲームなんかに費やしている。 むしろ、大学の専攻よりよっぽど博識である。 まぁ、今の所こっち方面は一般社会に認められていないので、在野の研究者にしかなれないから仕方ない。 玲太は昨日買ってきた全く見たことのないゲームのパッケージを取り出す。 王国の勇者 SHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用と書かれている。 八十年代のゲームだけれど、見たことも聞いたこともない。 昨日は帰ってきてから深夜まで、ずっとネットで調べてみたけれど、ついに情報を探し出すことができなかった。「いわゆる同人ゲームってやつかな?」 同人界隈では同じくSHARP製16bitパソコンX-68000シリーズが有名だけど、それは九十年代に入ってから。 8bit時代は自分たちでプログラムを組むのが普通だったから、機種が同じなら友達うちでコピーして回していたと母方の叔父さんが言っていた。 これもその一つかもしれない。「でも、パッケージまで作るとか、凝りまくってるな」 ご丁寧に「定価:4,800円」と書かれている。 もちろん消費税の表記はない。 パ
최신 업데이트 : 2025-12-01 더 보기