モブな勇者♂の相棒(バディ)は体(ボディ)も力(パワー)も規格外(チート)の元魔王♀! 非常識でジコチューのやりたい放題のチート元魔王♀と 翻弄される召喚モブ勇者♂が 魔王軍相手に無双して異世界を救う!? 平凡なサラリーマンのアグリは 突如異世界に転移した。 魔王討伐を命じられ、一振の剣をもらうのだが… その剣には元魔王が封印されていた。 そこから傍若無人の元魔王との魔王軍討伐が始まる。 課せられた運命にアグリは元魔王とチカラ合わせて突き進む。
view more俺はアグリ。
何故かこの世界で勇者となった。 そして魔王討伐の旅に出ている。で、今はその旅の途中なのだが……
「このワシに立てつくとはいい度胸しておるのぅ」
容姿端麗で見た目は美しいが終始高圧的な態度の女性が、容赦なく敵を蹴散らしていく。
「さすが、ねえさま。素晴らしいですわ」
現代で言えばゴスロリ風というのだろうか……
そういう服を着ている、 まだ容姿としては幼い女の子がうっとりした目をしている。「おいどんにも残しておいてくだされ」
強面で筋骨隆々ないでたちの男性が、肉体をこれ見よがしに見せながら敵をなぎ倒す。
「もう少しスマートに出来ないものですかね。私のように」
執事風ですらっとした体系の男性が、そう言いながら華麗に敵を倒していく。
「暑いわ。いややわ。わっちの肌がヒリヒリしてきたわ」
後方で素肌を眺めながらのんびりと構えている女性。
出るところが出て、引っ込むところは引っ込む、所謂物凄くグラマラスな女性だ。 そのスタイルがわかる姿は、目のやり場に困る感じだ。……と、なんだろう。この状況は。
みんながみんなだいぶ好き勝手にやってくれている。「おい、お前ら!
やりたい放題やって、さっきの話はどうなった?」終始高圧的な態度をしている女性が攻撃をやめて、睨みかえしてきた。
「さっきの話とはなんじゃったかのぅ……忘れたぞ
目の前に敵がいるなら堂々と蹴散らすのみじゃ」なんでこう話を聞かないのか。
「なぁ、ゾルダ。
敵を倒すのはいいんだけど、もっと自重しろっていったよな。 辺り一面火の海じゃん」終始高圧的な態度を示す女性の名はゾルダという。
「これでもワシは自重しておるぞ。
周りが脆いだけじゃ」そしてこのゾルダ。
実は元魔王である。「ゾルダの自重は自重になっていないんだって。
後々から言われるのは俺なんだからな」そう、勇者である俺のバディでもある。
そして他の4人も元四天王でゾルダの部下である。 今はこの5人と共に魔王討伐の旅に出ていたのだった。俺も何故元魔王たちと一緒にいるのか不思議だ。
勇者には勇者の仲間がいるのが普通だが、今の俺の仲間と言えるのはこの元魔王と元四天王だ。 勇者が元魔王の力を借りて現魔王を倒しに行く。 自分で言っていても訳が分からない。それにこいつらは本当に元魔王だし、元四天王なのだ。
魔族だし、人の常識にあてはめられないのは確かなのだが…… それを除いたとしても本当に本当に非常識だ。敵だろうが味方だろうが関係なしに攻撃しはじめる。
手加減をしない。 山の一つや二ついとも簡単に壊す。 建物もそうだ。それに加え、元魔王のゾルダは自己中でやりたい放題やってくれる。
人質は無視するし、作戦も無視する。 すぐるキレるし、何事も容赦をしない。 それに酒癖も悪いときた。 本当に一緒に旅をし始めてからは振り回されっぱなしだ。こう今までのことを思い出しても愚痴しか出てこない。
ただ、そうは言っても頼れる存在ではあるのだが……
ただゾルダたちに振り回されながらも、魔王討伐に向けて一緒に旅を続けている。
何故、そうなったかというと、それは俺がこの世界に呼び出されたころに遡る。「やるのぅ…… なかなかと…… ワクワクさせてくれる」あやつもワシについてこれるようになってきたかと思うと自然と笑いが止まらないのぅ。「さてと…… これはついてこれるかのぅ」その戦いぶりが嬉しくてついついスピードを上げてしまう。「くぅっ……」あやつは苦しみながらもワシになんとかついてこようとしておるようじゃ。その中でもあやつはしつこくワシに聞いてきた。「やっぱり、お前、ゾルダだろ」「何度も何度もしつこいのぅ…… 私はソフィーナだ!」正体を隠して武闘大会に参加してみておるのじゃが、あやつはワシとわかっているようじゃ。しかし……そこは頑として認めんぞ。この間のオムニスの件もそう。メフィストの時もそう。何せほぼほぼ戦っておらぬからのぅ。ワシとしてはもう戦いたい欲でいっぱいじゃった。だから、武闘大会をあのじじいに仕向けたのじゃ。勇者の凱旋という餌で。まぁ、半分はあやつのためでもあるのじゃが……あとはあやつに内緒にことを運んで準備をしてきた。まぁ、魔法は使えんので、全開とは言わんが、それでもヒリヒリする戦いが出来ると思ったのじゃが……最初の相手……なんと言う奴じゃったかのぅ。激戦地から来た、俺が勇者を倒すなどとほざいておったが、よく覚えておらん。口の割には全然歯応えがなかったのぅ。槍の動きは遅いわ、ちょっと小突いただけで吹っ飛ぶわで、準備運動にもならんかった。次の相手も、その次の相手もじゃ。人族と言うのはこんな弱いやつらばっかりじゃったかのぅ。それに引き換え、あやつはやっぱり勇者と言われるだけの事はあるのじゃ。まぁ、ワシが鍛えたのもあるし、セバスチャンの訓練のたまものでもあるがのぅ。今までの奴らに比べたら、桁違いの歯応えじゃ。これぐらいやれると、やっぱり楽しいのぅ。「おぬし、なかなかやるようになったではないか」周りの観客どもも大歓声でワシらの戦いを見てくれている。こうやって注目されるのもまた楽しいし、やる気が出るのぅ。しばらく楽しくてあやつとの駆け引き、競り合いをやっておったのじゃが……あやつもしつこくくらいついてきおる。そろそろこちらも一撃を入れんとのぅ。楽しんでばかりもおれん。慣れない剣を使っているせいもあると思うのじゃが、あやつが思いのほか、やりおる。普段なら、こんな事せずに魔法なのじ
俺よりか後に登場してきたソフィーナ・デストルークの方を見上げる。「あーっ!」その見覚えのある姿。仮面で顔は隠しているが、まるわかりだ。「お……お前……」びっくりして指をさす俺に対して、ソフィーナ・デストルークは何食わぬ顔をして立っている。「それでは決勝戦を始めます。 謎の仮面女剣士ソフィーナ・デストルーク対勇者アグリ! それでは……はじめ!」俺の事は構わず開始の宣言をする審判。もうこうなればやけくそである。俺が想像している奴なら正直こいつに勝つのは無理だ。一矢報いれればいいぐらいだ。無様な負け方だけはしないようにしよう。そう思いながら、剣を構え、ソフィーナとの間合いを詰める。ソフィーナはニヤニヤとした顔をして、俺が振りかざした剣を軽く受け流し、俺へと顔を近づけた。「おい! お前、ゾルダだろ」周りに聞かれないように小声で話すも……「さぁ、なんのことでやら……じゃないのぅ…… なんのことでしょうか。 ワシ……じゃなくて私はソフィーナですわ。 あなたとは初めてお会いしますわ」ソフィーナはそう言いながら、剣を素早く動かし何度も切りかかってきた。俺は辛うじてその剣戟を受け切った。「あのさ、バレバレなんだよ。 そんな仮面で顔を隠したぐらいじゃ、わかるって」ソフィーナは剣での攻撃の手を休めずに話を続けた。「人違いをなさっているのでは? 誰も私のことは、その『ゾルダ』という方とは思っていないようですわ。 それを証拠に、国王をはじめ昨日会われた方々は誰一人としてそう感じていないようですわよ」「昨日の宴に出ていたのなら、『ゾルダ』じゃないのか? 『ソフィーナ』という人はいなかったし……」「いなかった証拠はありますか? 何時? どこで? 誰が? 見てないって? あなたこそ証拠を示してくださいませ」ソフィーナもといゾルダは一層のスピードアップをして攻撃の手をゆるめない。俺としても受け切るのが精一杯だった。剣を使ったことは見たことなかったけど、やっぱりそれなりに使えるようだ。「普段魔法ばかりだったけど、剣も使えるんだな」「嗜む程度に……じゃないのぅ…… 普段とはいつの事でしょうか。 私は普段から剣を使っていますわ。 剣士ですし」ここまでわかり切っているのに、あくまでも白を切るようだ。俺は戸惑いながらも
「あんちゃん、覚悟は出来たか? オレは最初から全力だぜ!」開始早々、ガリックは斧を振り上げて、俺を攻撃してきた。「覚悟を決めないと……」勝てるかどうかはわからないけど、やるだけやってみよう。俺は自分に言い聞かせるように言うと、素早く剣を構えた。でもなかなか斧が振り下ろされてこない。「ん?」なんでこんなに遅いんだ?ガリックの攻撃がすごく遅く感じる。余裕でかわすことが出来た。「???」ガリックもなんか驚いているみたいだが、俺も驚いている。なんでこんなに相手の動きが見えるようになっているのか……セバスチャンとの訓練でもほとんど攻撃は見えていなかった。マリーとの模擬戦もかわすのがやっとという感じだったし……少しでもタイミングが遅くなるとすぐに当てられた。「あんちゃん…… よくオレの攻撃をかわせたな。 まぁ、たまたまだろうけどな。 次はこうはいかんぞ」ガリックは矢継ぎ早に斧を振り回す。でも……遅い。凄く遅い。なんだこの感じ。次々にかわす俺。そんな俺を見て歓声が沸く。あれ?それほど沸くことをしているのか?ガリックは俺に交わされて、さらにムキになってなって斧を力いっぱい振り回してきた。それも余裕でかわした。「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ……」ガリックは息切れを起こしている。「あん……ちゃん…… 避け……てばか……りいて……全然……攻撃……しないのか…… 俺が……そん……なに……怖い……のか?」疲れ切っていても強気な姿勢は変わっていないようだ。でもなんでこんなに簡単にかわせるんだ。もしかして……訓練の成果?セバスチャンの訓練ってもしかして凄かった?これならこっちの攻撃も当たるかも。「なら、こっちから行くぞ」剣を構え直し、ガリックに詰め寄り、剣を薙ぎ払う。――ブンそれに対してガリックは無防備のままだった。「ウギャーーーー」得も言われぬ声でガリックは吹っ飛んでいって、壁に激突した。一瞬静まり帰った闘技場――次の瞬間、大歓声に包まれた。「ガリックは戦闘不能。 勝者は勇者アグリ!」審判がそう告げると、さらに歓声が広がった。「俺、勝ったんだ……」拳を握りしめ、ガッツポーズをした。その姿を見た観客たちは、大きな声で声援を送ってくれた。しばらく歓声を浴びていたが、ふと我に返る。歓声の大きさ
部屋を飛び出した一件の後、あっという間に武闘大会の日になった。その間も、何もしていなといろいろ考えてしまうので……セバスチャンにいつも通り訓練をしてもらっていた。身体を動かしていると無心になれるというか考えずに済むから。セバスチャンの訓練も首都までの道中よりも、もう一段階上がった訓練になった。そのこともあってか、訓練後は疲れ果てて夕食後はすぐ寝てしまっていた。その間、ゾルダはと言うと……いつもと変わらぬ様子で、城のあちこちに出かけて、部屋にいないことが多かった。そのことをマリーに尋ねたのだが……「マリーは何も知らないですわ。 ねえさまは『忙しいのじゃ忙しいのじゃ』と言って…… 全然マリーの事構ってくれませんし……」と、何かやっているようだったけど、疲れてそこまで考えるほどの余裕はなかった。そして武闘大会当日――大会に参加したのは俺も含めて16名。急遽の開催ということもあって、人が集まらないかと思ったが……思いのほか人は集まって大会らしい大会になっていた。近隣から名うての冒険者や貴族の護衛、名を上げたい荒くれ者、国王の騎士団からの推薦者などなど……俺に一泡吹かせて、名前を売ろうと思っている者たちがエントリーしていた。「おっ、あんちゃんが、勇者か? なんか弱そうだな。 いろいろと話は聞いているけど、本当にお前がやったんか?」威勢のいい荒くれ者は俺に対して因縁をつけてきた。まぁ、そう思われても仕方ないのかもしれない。この場に居て、このメンツを見て正直まったく自信がないからだ。「ハハッ……ハハッ……」俺は愛想笑いをしてその場をごまかしてやり過ごした。そこへ、騎士団長が現れ、ルール説明が行われた。ルールとしてはざっとこんな感じ。・武器の使用は自由だが、武器は国が用意した模擬戦用の物を使用・魔法は禁止、使った時点で反則負けとする・武器に関するスキルの使用は可能(アトリビュートもOK)・降参するか戦闘不能と審判が判断したら負け「模擬戦の武器だからそこまで大けがにつながることはないとは思う。 スキルも弱体化の腕輪をつけてもらうから問題ないとは思うが…… お互い敬意を持って戦ってほしい」騎士団は最後にそう言って、ルールの説明が終わった。その後、トーナメントの組み合わせをすることになった。俺はくじ引きを引くこ
あやつが部屋を出ていきおった。あまりにもグジグジするあやつに、ちょっとイライラしたワシは、思わず声を荒げてしまった。そうしたら、何も言わずあやつが出ていってしまった。「…… 何がいけなかったのじゃ?」何かあやつに対して変なことをしたのか……思い当たることがないのぅ。「お嬢様…… 少し言い過ぎだったかと思います」セバスチャンが苦笑いしながら、ワシに近づいてきた。「何を言い過ぎたのじゃ? あやつが煮え切らないのがいけないのではないか? それに、あやつの強さを示す絶好の機会じゃと思うのだじゃが……」あやつが前々から少しおかしいのは感じておった。ワシらと共に行動しているとあやつがワシらより弱いので、戦果も挙げられていないのは知っていた。そこを気にしているのかと思ったから、国王を嗾けて武闘大会を開催するように言った。人族相手なら十分あやつも通用するからのぅ。「アグリ殿はここでの自分の立場に悩んでいるのかと思います。 確かにお嬢様が言う通りに、アグリ殿が自分自身が成長していることを実感できれば…… 悩みの一つも解消されるかもしれませんが…… そう簡単なものではないでしょう。 私たちと共に行動している限り、役に立っていないと大きく感じるのではないでしょうか……」「うむ……」セバスチャンはさらに話を続ける。「アグリ殿は強くなったことを実感したいということではなく…… 私たちの役に立ちたいという思いが強いのではないかと思われます。 アグリ殿は異世界から来られた方。 その世界では、もしかしたらそういう観念が強いのかもしれません」もしセバスチャンが言うことがあやつの本心であるのであれば……「だとしたらじゃ…… さっきのワシは言い過ぎたじゃろうか? このままあやつが戻ってこなかったどうしよう」あやつのことを……アグリのことを……思って取り計らったつもりじゃが、逆効果じゃったようのぅ……ワシはあやつが強くなりたいと願っているのじゃと思っていたのじゃが……なんとも言えない気持ちが沸き上がってくる。どうしたらいいのじゃ。あやつが戻ってくるにはどうすればいいのじゃ……「のぅ、セバスチャン。 あやつを探しに行った方がいいじゃろうか?」「今はそっとしてあげたほうがよろしいかと思います。 アグリ殿も気持ちの整理が必要にな
昨晩、国王が宴で突如発表した武闘大会――なんか俺も出ることになっている。相談も無いし、出るとも言っていないんだが……「ゾルダ、お前国王様に何か吹き込んだ?」どうせゾルダが何か仕掛けたのだろうと思い、問いただした。「さぁ、のぅ…… 何のことやらさっぱりわからんのじゃ」ゾルダはあくまでもしらを切り通すらしい。その顔はにやつきが止まっていない。「あのさ…… 俺がいつ出るって言った? そもそも武闘大会なんて出ている時間もないんじゃないのか?」「まぁ、まぁ、そう目くじら立てんでものぅ。 ここでおぬしが出なければ国王様のメンツをつぶすことになるぞ」「ぬぐぐぐ…… そりゃそうだけどさ……」なんかゾルダにしてやられた感じがある。悔しさが顔に滲み出る。「いいのではないでしょうか。 アグリ殿のいい訓練とこれまでの成果を試す場としては」セバスチャンは前向きにとらえるようにと俺にアドバイスをしてきた。確かにそうではあるのだが……「でもさ…… 俺って強くなっているのかな…… 魔王軍との戦いでもそう役に立った覚えはないし」「アグリはそんなこと気にしているのですか? そりゃ、ねえさまやセバスチャン、マリーに比べたら弱いですが…… 人族ならそこそこいけると思いますわ」マリーからどストレートな意見を言われた。しかもそこそこって……「そういう評価なんだ、俺って…… でもさぁ、勇者が簡単に負けたら、何を言われるかわからないし…… この状況って、俺は勝たないといけないよね。 プレッシャーも半端ないんだけど……」弱音や愚痴が次から次へと口から出てくる。自信がないし、強くなったかもわからない。でも勝つことを義務付けられているような大会だ。そんな感じでどう戦えと言うのだ。「おぬしは相変わらずグチグチ言うのぅ。 腹をくくるのじゃ! 今までの成果もあるし、ワシらから訓練もしておる。 もう少し自信を持たぬか!」俺の愚痴にイライラしたゾルダが俺に対して怒りをぶつけてきた。「ワシがせっかくお膳立てしてやったのに…… おぬしが越えられぬ壁を用意したつもりはないのじゃ! 十分強くなっておる。 人族相手なら正直手加減したほうがいいぐらいじゃ!」自信を持て、強くなったと言われても、結果が出ていない以上実感がないのも事実である。そこを
Mga Comments