Chapter: 第140話 あやつの作戦 ~ソフィアサイド~「俺に考えがある。 ゾルダはあまり力入れずに。 攻撃は控えめでいいから」どうやらあやつは何か思いついたのかのぅ。 ゼドがしつこいおかげで、力加減も難しくなってきておる。 ここはあやつの作戦に乗っておこうかのぅ。「しかたないのぅ…… おぬしの作戦とやらを試すかのぅ。 ここから先は足止め程度しか攻撃はせんからのぅ」「それでいいよ。 じゃ、シータ、よろしく」あやつは横にいるシータに何か頼んでいるようじゃが、いったい何をするのかのぅ。「坊ちゃんも人使い荒いですの。 ゾルダ様に……」ワシの方をちらっと見ておるシータ。 おおかた、ワシに似ておるとか言いたのじゃろぅ。「は? 何か言ったかのぅ、シータ」「なんでもございません」しらばっくれるシータはあやつの近くにそそくさといくと、あやつを抱えて近距離の転移をしはじめた。「な……なんでこの恰好?」足を抱えられ、わきの下に手を通し、ひょいと持ち上げられたあやつは、顔を真っ赤にしておる。「まぁ、どんな格好でもいいではないですかの」「なんで、よりによってお姫様抱っこなんだよ!」「文句はあとから聞きますの。 今は、ゼド坊ちゃんの方をなんとかしてほしいの」シータはそう言うと、ゼドの近くにあやつを連れて転移しおった。「……うーん、もう、いいや。 とりあえずやる!」恥ずかしいと思うより、やらねばいけないことを優先したあやつは目の色を変え、魔法を発動しおった。「デトックス」? デトックスとな? そんな魔法、あやつへのダメージにはならんぞ?「おぬし、何を考えておるのじゃ。 そんな解毒魔法で、ゼドをどうする気じゃ?」「まぁ、見ていてよ。 上手くいくかどうかは分からないけど……」あやつはそう言うと、デトックスをゼドの奴に放つと、シータの転移魔法でゼドから離れ、 また、ゼドの死角に転移して、解毒魔法を繰り返しおった。ゼドの奴も鬱陶しいコバエがいたかのように、腕をブンブンと振り回しておるが…… 神出鬼没のシータとあやつを捕らえることが出来ない。 やがて、そっちの方が気になりだしたのか、ワシへの攻撃は止んでいきおった。ゼドの意識があやつに集中し始めたところもあり、ゼドの闇雲さは消え始めていきおった。 出現箇所を考えて、攻撃するようになってきおった。
Terakhir Diperbarui: 2026-01-05
Chapter: 第139話 元魔王vs現魔王 ~アグリサイド~二人の圧倒的な戦いの前にただただ見ているだけしかできない。 しかもこの二人が姉弟だということ。 それにゾルダはその前の魔王である父を殺している? ここに着いてそれほど時間が経っていないのに情報が多すぎる。 壮大な姉弟ケンカだな、これは……いやいや、そんなことを考えている場合ではない。 ゼドは明らかに暴走しているし、普通じゃない。 それを止めないといけないとは思うけど、俺はどうしたらいいんだろう。剣を構えてはいるものの、足が竦んで動いていない。 なんとかしなきゃいけないとは思うのだが……「アグリ殿、ここは無理せずお二人を見守ってもらえれば」俺の気持ちを察したのか、セバスチャンがすっと横に来て言った。 さっきまで暴れていったゼドから城の者たちを守っていたはずだったが……「いや……でも…… 俺の使命は魔王を倒すことのはずで……」そうは言ったものの、今の二人に割って入る実力がないのは分かっていた。 それでも、この世界に呼ばれた理由は魔王を倒すことである。 ここに俺がいる存在意義なのだ。 でも、ゾルダたちと旅をしてきて、俺の使命は「魔王を殺す」ことじゃなく、「誰も失わずに終わらせる」ことなんじゃないか、と感じ始めていた。 傍若無人なところはあっても、どこか憎めない。 それはマリーやセバスチャン、シータたちにも言えること。「あら、わっちは入らないの? 無視? それはそれで……」ん? 今、俺の心の声を読んだのか? ヒルダが大声で叫びながら悶えている。「いや、あなたはさっき会ったばかりだから、わからなくて……」勝手に読んだんだから律儀に返す必要はないだが、思わず返してしまった。 そのとたん、不機嫌な顔になったヒルダは「もう、真面目に答えなくても。 そこは放置プレイでしょ!」ブツブツ文句をいいながら、二人の戦いの余波を受け続けている。……なら放っておこう。人間と魔族、お互いが平和なら、不戦になるなら、それが一番なのかもとは思う。 ずっとアイツたちと旅をして来て、分かり合えなくはないと感じているからだ。 ゼドともきっと分かり合えるんじゃないかと……「アグリ、ねえさまに任せておけば大丈夫ですわ」マリーも飛んでくる瓦礫をたたき割りながら、俺にそう話しかけてきた。「マリーもありがとう。 分かったよ、ゾル
Terakhir Diperbarui: 2025-12-31
Chapter: 第138話 本当に何も見えておらんのぅ ~ソフィアサイド~「本当に嘆かわしいのじゃ。 お前は何も見えておらんのぅ……」そんな姿になってまでワシを倒したいのかのぅ。 父上の件は、ゼドがもう少し成長してから話すつもりでおったのじゃが…… まぁ、でもあの状況を見ておれば、誤解するのも無理はないかのぅ。「なぁ、ゾルダ。 ゼドが言っていたことは本当なのか? 先代の魔王を殺したって……」おぬしか…… あぁ、ここにも説明せねばならん奴がおるのか…… 面倒じゃのぅ。「その話は今のあのバカ弟のことが終わってからじゃ。 今、言えることは、すべてはあいつの勘違いということじゃ!」あやつにそう言うと、ワシは襲い掛かってくるゼドの前に立った。 なりふり構わぬゼドはワシ目掛けて大きな拳を落としてくる。ガッシーン――鉱物がぶつかったような音が部屋に響き渡っておる。 腕を交差して受け止めたのじゃが、なかなかズシリとくるのぅ。「お前も少しはやるようになったのぅ」あんな変な物の力を借りねばワシに立ち向かえぬ心の弱さ…… そういうところもじゃぞ。 まだまだ魔王としての自覚が足りないところばかりじゃ。 それに……「だが、まだまだワシには及ばぬのじゃ」交差した腕で押し返すと、いとも簡単にはじけ飛んでいったのじゃ。 ゼドは柱に激突するとヒビが大きく入り、瓦礫が崩れ落ちたのじゃ。 力も魔王としてもまだまだ足りないのぅ……「オマエガニクイ…… オマエサエ、イナケレバ……」そこまでワシを憎んでおるのか。 それとも薬の影響かのぅ…… お前のその考えも意識も全部誘導されておるということがわかっておらぬようじゃのぅ。ゼドは起き上がると、全身に魔力を流し身体を強化し始めたのじゃ。 力には力か…… その身体になったのなら、悪い考えではないのじゃが……「脳筋か、お前は。 お前はお前の戦い方があるじゃろうに」思わず首を横に振ってしまったのじゃ。 これはもう嘆かわしくて、頭を抱えてしまうのぅ。強化したゼドは思いのほか俊敏に動き、またワシに襲い掛かってきおった。 腕から繰り出される力一杯のパンチや闇雲に振るうキックの嵐。「だ……大丈夫か、ゾルダー!」あやつは剣をしっかり構えて、ゼドの隙を窺おうとしておる。 その心意気は嬉しい限りじゃが、今のあやつの実力じゃ、死ぬだけじゃ。「おぬし、ワシは大
Terakhir Diperbarui: 2025-12-21
Chapter: 第137話 どこに転移した? ~アグリサイド~シータの長々と話したていたが、ゾルダの一喝で転移の魔法の起動に入った。「ゾルダもそんなに無碍に扱わなくても……」まぁ、シータも調子に乗っていたのも確かだったけど、そんなに怒らなくてもいいのではと思った。「あいつは話を始めたら長いんじゃ。 さっきの分はワシからの命令だったしのぅ。 その話までは我慢してやったんじゃ。 ワシも度量が大きいじゃろ?」「それにしても止め方ってものが……」しばらくすると低いブーンとした音が聞こえてきた。 そろそろ転移が起動しそうだ。「そろそろ行きますの」シータがみんなに声をかけると、上から魔法陣が降りてきた。 俺たちに降り注いだ魔法陣が下に降りたころには、転移先に到着していた。 着いてすぐにゾルダが浮遊魔法で移動し始めた。 他のみんなもつき従っていく。 俺も慌てて走り始めた。「? ここはどこ? どこに転移した?」周りを見渡しても俺の知っているところではなさそうだ。「あらあら。 ここに来たのね」ヒルダがぽつりと口にした。 どうやらヒルダは知っているところのようだ。「なぁ、ゾルダ。 ここはいったい……」「まぁ、行けばわかるのじゃ。 まずは急ぐのじゃ」なんかもったいぶる言い方だな。 弟のことが心配のは分かるが、事情が一番わかってない俺に説明をしてくれてもいいじゃないか。 でも、すぐには説明する気はなさそうだ。 とりあえず分からないことが多いけど、ついていくしかない。長い廊下を進んでいき、大きな扉の前に着いた。 それにしても大きな城のようなところだ。 弟はいったい何をやっている奴なんだ? ゾルダが元魔王だし、魔王軍の幹部か何かかな? でも、ゾルダが追い出されているんだし、その家族だし、不遇な状況な気がするけど……「ここの奥にゾルダの弟がいるのか?」「たぶん、いるんじゃないのかのぅ。 ここが大好きな奴じゃしのぅ」周りにいたセバスチャンとシータが扉の前に立ち、取っ手を持ち引き始める。ギギギギッ――あまり手入れされていないのか軋んだ音が蝶番から聞こえてくる。 二人が扉を開け終わると、その向こうには大きな空間が広がる。 そして奥には豪華な玉座とそこにぐたっと座る男が居た。「やっぱりここに居ったか」「……っつ……お前……何しに来た」苦虫を噛み潰したよ
Terakhir Diperbarui: 2025-12-14
Chapter: 第136話 おいどんも活躍したのにの ~シータサイド~ゾルダ様も人使いが荒いというかなんと言うかの…… おいどんも頑張ってあのラファエルとクラウディアを追い詰めて捕まえたのにの。 すぐに転移魔法使えとおっしゃる。 少しぐらいはおいどんを気づかってくれてもいいのにな。 心の中でそんなことを考えていたら、坊ちゃんがおいどんの方へと近づいてきた。「シータ、ごめん。 一緒に戦うはずが、途中からあの二人任せっきりになっちゃって」「いや、お気遣いなく。 もともと一人で相手するはずだったからの」「ゾルダも弟のことが気になるんでしょ? せっかくラファエルとクラウディアを捕まえたシータに、さらに無理言って」坊ちゃんはおいどんのことを気づかってくれておるのかの。 それともおいどんに顔に出ておったかの。 そうであれば気をつけないといけないの。「ゾルダ様はいつも通りだとは思いますがの。 それでも坊ちゃんだけにでも気づかってもらえたのは嬉しいですの。 ところで……おいどんの戦いぶりはどうだったですかの?」「ごめん、こっちもいろいろとあったので、しっかりと見ていなかった」「ならば、おいどんがどうやってラファエルとクラウディアを捕らえたかをお聞かせしましょう」おいどんは見ていなかった坊ちゃんのために二人との戦いを振り返り始めた――『ゼド様は私たちに何をお渡しになったのですか……』『あれー? またおばさんが増えたじゃん ウケるー』ラファエルとクラウディアはどうやらあの仕掛けを知らなかったようですの。 おいどんたちも封印されていたのであれば、ヒルダ様も当然こうなっているのはわかるがの……『おい、お前らはこのことは知らなかったのかの?』『知る訳ねーじゃん。 ゼド様が勇者に渡せっていうから持ってきただけだって』『何かしらゼド様が考えていらっしゃることは分かっておりましたが……』どうやら策があるというぐらいの事しか知らなかったようですの。 しかし、あのヒルダ様の様子は少し違う感じがするの。 ゼド坊ちゃんが何か考えていると言うのであれば、何もないってことはなさそうですの。ヒルダ様と坊ちゃんの心配をしていたおいどんに対してラファエルは『余裕ですね。 今は私とクラウディアの相手をしているはずですよ』と言い、連続で火炎魔法を唱えてきた。『余裕ではないがの。 気になって見
Terakhir Diperbarui: 2025-12-06
Chapter: 第135話 ゾルダとヒルダの共闘 ~アグリサイド~は……恥ずかしいったらありゃしない。 なんで罵倒なんかしないといけないんだ。 俺はSでもMでもなくノーマルだって……覚悟を決めて言ってはみたものの、顔から火が出るような思いだった。 ヒルダが倒れたからよかったけど、これで何の効果も無かったら……ちょっとぞっとする。 ゾルダにもいろいろと突っ込まれたが、恥ずかしくてまともに顔も見れていない。 知らず知らずに、顔を手で覆っていた。 その時「アグリ、危ないのじゃ!」ゾルダの大きな声が聞こえてきた。「何が危ないって……」覆っていた手を外すと、ヒルダの上に固まっていた紫の霧が鋭い刃となり俺の方へ向かっていた。「うぁーーーー」突然の出来事に叫んで腕で顔を隠して身構えることしか出来なかった。 鋭い紫紺の殺気が俺の肌を刺すような感覚を感じる。 俺はこのままやられてしまうのか……バチーン――大きな音と共に濃紫の塵が飛び散った。 もうこれで終わりか…… 呆気ないなかったな、俺の人生も。 結局魔王だって倒せなかったし。 残されたゾルダたちはまた封印されてしまうのだろうか……などとあれこれ考えていたが、痛みが全然ない。 ふと顔を上げると目の前に居たのは、さっきまでそこに倒れていたヒルダだった。「あぁあん、そんなに慌てなくてもいいのに、このあわてんぼうさん。 うーん……でもね、あなたの攻めは……あまり美味しくないわ。 そうね……この子の方が…… 考えただけでゾクゾクするわ」紫紺の刃がヒルダを突き刺してはいるのもの、悦に入った表情をしているヒルダ。 俺の方を向くとますます悦に入った顔になっていく。「あ……ありがとうございます。 でも……それ、大丈夫ですか?」その尋常じゃない喜びに若干引きつつも、俺を庇ってくれたヒルダを気づかった。「あら、これぐらい平気よ。 全然足りないぐらいだわ」そう言いながら、濃紫の刃を少しづつ抜いていく。 俺から見ると痛そうに見えるその動作も、ヒルダは喜びながら行っていた。「姉貴、正気に戻ったのかのぅ? あやつを助けてくれて、助かったのじゃ」遅れてゾルダが俺の目の前に来て、ヒルダのことを心配していた。「あら、ゾルダちゃんが人の心配をしているなんて珍しいこともあるのね。 しかも名前まで呼んで」ヒルダは無数の紫紺の針たちを丁寧に
Terakhir Diperbarui: 2025-11-23