聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

last updateآخر تحديث : 2025-06-12
بواسطة:  伊桜らなمستمر
لغة: Japanese
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家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。

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الفصل الأول

1.硬すぎなパンと酵母菌作り。

「池上先生、江川病院への異動……本当に決めたのか?」

斉藤勉(さいとう つとむ)院長は、池上由奈(いけがみ ゆな)の異動願を手にして目を丸くした。

由奈はわずかにまつげを震わせ、苦みを含んだ笑みを浮かべる。「はい、もう決めました」

その瞳に揺るがぬ決意を見て、勉は深いため息をつき、静かに署名した。

院長室を出て廊下を歩いたとき、由奈は白衣を着た長門歩実(ながと あゆみ)と、その隣にいる滝沢祐一(たきざわ ゆういち)、そして小さな男の子に出くわした。

一瞬、足が止まる。

まるで幸せな家族のような光景が、目に飛び込んできたのだ。

二人の間を歩く男の子が、左右の手をそれぞれ歩実と祐一にぎゅっと握られ、無邪気な笑顔を浮かべている。

由奈の胸に鋭い痛みが走った。

祐一が歩実と子どもに向ける柔らかな眼差し、穏やかで優しい仕草――それは、由奈が一度も与えられたことのないものだった。

彼は自分を憎んでいるのだと、由奈はよく知っている。

祐一の初恋の相手は歩実だった。だが、由奈が祐一の祖母・和恵(かずえ)と取引をして彼と結婚したとき、すでに二人は別れていた。とはいえ、その事実を知ったのは結婚後のことだった。

結局祐一にとって由奈は、隙を突き、卑怯な手で妻の座を奪った女でしかないのだ。

けれど――彼は知らない。

本当は、由奈の方が先に祐一と出会っていたのだ。だが彼は、その記憶をとっくに忘れていた。

結婚すれば思い出してくれる。冷え切った心も、寄り添えば少しずつ温まっていく。由奈はそう信じていた。

けれど、それは思い上がりにすぎなかった。

祐一は彼女を憎んでいる。愛してくれることなど、決してないのだ。

その証拠に、六年間の結婚生活のあいだ、彼は周囲に「独身だ」と言い続け、妻である由奈をまるで存在しない人間のように扱った。

「池上先生?」歩実が気づいて声をかける。

祐一は眉を寄せ、じっと由奈を見つめる。その視線には、まるで「余計なことを口にするな」と言いたげな緊張があった。

その距離感が、刹那に由奈の胸を締めつける。けれど彼女はすぐに表情を整え、頭を下げた。

「長門先生、滝沢社長、お疲れ様です」

祐一は最近、中央病院の出資者となり、病院経営に名を連ねている。もちろん、それは由奈のためではなく、歩実のためだった。

歩実が帰国してすぐ、祐一が彼女を中央病院に入れ、外科部長として推薦したのだ。院内では誰もが「歩実の後ろ盾が滝沢社長」と噂し、さらには二人が恋人関係だという話まで広がっていたが、祐一は何一つ否定しなかった。

歩実は祐一の腕を自然に取り、にこやかに言う。

「そんなにかしこまらなくていいのよ。私なんてまだ入ったばかりだし、これからいろいろ教えてもらわないと」

そのとき、男の子が祐一にしがみついた。「パパ、疲れた。抱っこして?」

由奈の顔色がさっと変わる。

――パパ?

歩実は慌ててしかめ顔をつくる。

「健斗、だめでしょ。そんな呼び方したら」そう言いながら祐一へ申し訳なさそうに視線を向けた。

「ごめんなさい、祐一。子どもがわかってなくて」

祐一はちらりと由奈を見たが、怒ることもなくただ穏やかに子どもを抱き上げた。

「いいんだ」

「僕、祐一パパが大好き!本当に僕のパパになってくれたらいいのに!」

健斗(けんと)は祐一の首に腕を回し、甘えるように声を弾ませた。

「もう、しょうがない子ね」歩実は苦笑しながら彼の頭を撫でた。

由奈は拳を固く握りしめる――こんなに優しい祐一を、彼女は見たことがない。

……もう諦めた。

どんなに頑張っても、冷たい心を温めることはできなかった。なら、終わりにするしかない。

重い気持ちを押し込み、由奈は三人を追い抜いてエレベーターに乗り込んだ。

……

異動の件は誰にも知らせていない、もちろん祐一にも。

知らせる必要がないと思ったし、彼が知りたがるはずもないのだから。

車を走らせ、由奈は滝沢家の本邸へ向かう。門前でチャイムを押すと、しばらくして使用人の森田(もりた)が出てきた。

「奥さま、お帰りなさいませ」

「おばあさまはいらっしゃる?」

「はい、中でお待ちです。どうぞ」

滝沢家の重鎮である和恵。祐一の祖父が亡くなって以来、家の一切を取り仕切ってきた女性だ。

彼女は南の町の商家の出で、若いころから手腕を発揮してきた。姑から疎まれても、表立って彼女を逆らう者はいなかった。

森田に案内され、由奈は静かな和室へ入る。そこでは和恵が座布団に正座し、数珠を手に念仏を唱えていた。

「奥さまがお見えです」

和恵はゆるやかに目を開き、横顔のまま「こちらへ」と告げる。

森田が下がると、由奈も正座して仏前に手を合わせた。

和恵は熱心な仏教徒で、よく寺に参拝し、香をあげていた。出かけると、戻るまでに半月ほどかかることもあった。

しばし沈黙が続いたのち、由奈は小さな声で切り出した。

「おばあさま……私、祐一さんと離婚したいと思っています」

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1.硬すぎなパンと酵母菌作り。
「メル、食パン焼き上がったから持っていって」 「はーい」 厨房にいるお父さんに言われ焼き上がった食パンをトレーに置き、お店に運ぶ。 「食パン焼き立てでーす」 食パンを並べてからハンドベルを鳴らす。すると、お店のドアが開きお客様が入ってきた。 「いらっしゃいませ!」 「メルちゃん、おはよう。今日も一斤ください」 お父さんが営むパン屋【lumière(リュミエール)】は天然酵母を使ったふわふわパンで有名で近所からは勿論のこと、市外からも来てくださるお客様もいる人気店だ。 「はい。ありがとうございます」 私、双葉(ふたば)愛瑠(める)はパン屋【lumière】の一人娘でありこの春に製パン専門学校を卒業したばかりのブーランジェだ。 「メル、クロワッサンも焼けたよ」 「あっはーい!」 お父さんに返事をしてお客様に「何か有ればお呼びください」と言い厨房へ向かった。 夢だったお父さんと一緒にブーランジェとして働くことも叶って、充実した毎日を送っている。 楽しくて楽しくて、仕方ない。 「お父さん、前掃いてくるね」 「おぅ、ゴミも出しといてくれ」 お父さんが指を差したゴミと箒を持って裏口を出ると、見たことのない模様が地面に描かれれば私を光が包んだ。 *** 「――お目覚めですか? 聖女様」 眩しさがなくなり目を開けると、思い切り起き上がった。周りを見渡せば、全く知らない光景が広がっている。 「聖女様?」 それに目の前には知らない女の子が心配そうに見ていた。 「あの、誰でしょうか?」 「すっ、すみません! 私は、侍女のメリッサでございます」 「じじょ?」 優しく微笑むメリッサという女の子は何故か聖女様と私を呼んでいる。 聖女ってなんなのか、それにここはどこなのか知りたいのだけど…… 「その“聖女様”ってどういうことでしょうか? それにここはどこでしょう?」 「ここはヴァルシア大陸の三大大国のひとつ、エミベザ王国です」 「は、はぁ」 ヴァルシア大陸?エミベザ王国?そんな国、知らない…… 「私、ジーク様にお伝えしてきますね!」 「えっ、ちょっと待って!」 メリッサは私の声をスルーをし、部屋を出ていった。放置されても困るんだけど、と考えているとそれから
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2.ふわふわの丸パンとヒール
[ふわふわの丸パンとヒール] 翌朝、ウキウキしながら起きると早いけど昨日作ったパルムの瓶を見に行くことにした。部屋に入ると、被せた布を取り、蓋を開けた。開ける瞬間に炭酸のようなシュワっとした音が聞こえた。一度匂いを嗅ぐと、あぁこれだ……と感動する。 「異世界にも酵母菌はあるんだなぁ」 私は瓶に蓋をし、上下に振りまた布を被せた。それを数日繰り返した。今まで退屈だった日々が、こっちに来て初めて充実している。 「あっ! メル様っこちらにいらしていたのね!」 「あ……ライラ。ごめんなさい。でもね、やっと出来たのよ!」 「……え?」 これで、ふわふわなパンが出来る! 「今から、パンを作るのよ!」 私は、すぐに行動した。すぐに厨房に行き、少しだけ使わせてもらえるようにお願いをした。 「メル様、何をされるんですか?」 「ふわふわのパンを作ろうと思って」 料理人さんに小麦粉にバター、卵とミルクをもらった。小麦粉を山にして真ん中を開けるとその中に卵とミルクを入れてそこにパルムの酵母菌を入れる。それを粉っけがなくなるまで捏ねる。捏ね終え、濡れ布巾を生地に被せ寝かせる。 「バター柔らかいかなぁ」 バターが柔らかくなったのを確認し生地に練り込み、一つの塊にする。また、布巾を被せると寝かせからパンチをした。 「メル様!? 一体何を……」 料理人さんの声は気にせずに、再び濡れ布巾を被せて一次発酵をする。 「温かい場所に置いておきます」 「えぇっ!? それだと腐りませんか!?」 「大丈夫ですよ」 それから一時間ほど経ち、二倍ほどに膨らんだらガス抜きをする。生地を八個に分けて丸く丸めると、鉄板に乗せた。 「今から焼くんですか?」 「いえ! 今からまた布巾を被せます」 「またですか? 時間かかるんですねぇ」 濡れ布巾を被せると、また温かい場所で二倍になるまで二次発酵をする。 「あの、石窯を温めてもらってもいいですか?」 「はいっ! もちろんです!」 料理人さんに石窯を温めてもらっている間に生地は二倍になったので、布巾を取り料理人さんに焼いて貰うように頼んだ。 しばらくすると、厨房内は香ばしい懐かしい匂いが漂ってきて笑みが溢れる。 「美味しそうですね! いただいてもいいですか?」 「
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舞台裏1/思い出のフレンチトースト
「――まだ、部屋に篭っておられるのか?」 「はい、あれから一度も……食事もいらないと言われてしまいました」 ――ここは王宮。玉座の間。そこにいるのは男性が二人。公爵家当主であるオスマン・セダールントと国王陛下であるレクサス・エリザベス・エミベザだ。 「本当にジーク(あやつ)は……聖女様を追い出すなど」 「私は、私欲でメル様に頼ってしまいました。申し訳ありません」 「だが、怪我を負った者は元気なのだろう?」 「はい、傷などなかったかのように……それに、一年前に倅が怪我によって受けた症状も完治いたしました」 オスマンの息子・ギルバートは、昨年の討伐で大きな怪我を負い後遺症が残った。半年間のリハビリを経て三ヶ月前に復帰したばかりだった。 「ほぉぅ……」 こればかりはオスマンも驚いた。医者ですらもう治らないだろうと言われていていたし、前よりは劣るが討伐にいけるようになった時は奇跡だと言っていたほどだった。 「やはり、聖女だからか……?」 「それはまだ分かりませんが、あれほど見事な聖魔法は見たことがありません。ですが、メル様がいた世界には魔法自体が存在しないらしいのです。自分から不思議な力が現れて戸惑われているのでしょう」 「そうか。オスマン、聖女様を頼む。何か必要ならば言ってくれ」 陛下はそう彼に言うと何かを考え込むような表情になった。 「御意」 オスマンはそう答えると玉座の間を去った。 *** 「旦那様、お帰りなさいませ」 オスマンが公爵邸に帰ると、もう二十時だった。 「ただいま……」 出迎えてくれたのは妻のエミリーと休暇中のギルバートだ。 「メルちゃん(彼女)の様子は変わらないかい?」 「ライラから聞いた話ですが、まだ部屋にも入らせてもらえないとのことです」 「えぇ、私も外から声をかけてはみたんですが返答すら返ってきませんでした」 ライラには返事するが「一人になりたい」と言うだけ。数日前まで笑顔を見せてくれたのが夢だったように思える。 「あの、旦那様。これメルちゃん……いえ、メル様に作ったんです」 「それは?」 料理人のアルベルトは「前に賄いで作っていただいたんです」と笑みを溢した。 「……君はメルちゃんと仲がいいのかい?」 「仲がいいというかお師匠
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もちもちベーグル
もちもちベーグル 「おはようございます、今日からよろしくお願いします」 あれから一週間経ち、私は念願だった厨房で働かせて貰えるようになった。 「あぁ、よろしくな。メル嬢」 ただ、条件がついたんだけど――。 『厨房で働くのはいいんだけどね、俺たちの養女にならないかな』 『養女? オスマンさんの、娘になるってことですか?』 『そう。今、メルちゃんは微妙な立場なんだよ。異界人であり聖女である、庶民のようで庶民じゃない。公爵家にいるからね』 「改めて、メル・フタバ・セダールントです。皆さまよろしくお願いいたします」 「メル嬢、まずは皿洗いと下ごしらえからな」 「はい」 私は、セダールント公爵家の養女になったけど厨房では見習いから始めることにした。料理長からはパン担当でいいと言われたけど、それはオスマンさんからの条件のひとつでもある。 「ディーン、教えてやれ」 「は、はい……! メル様、よろしくお願いいたします!」 ディーンという青年は先日|王都学園《アカデミー》を卒業したばかりで銀色の髪をマッシュヘアの可愛らしい子だ。 「こちらこそよろしくお願いします!」 「えっと、それじゃあじゃがいもの皮むきからやろうか」 じゃがいもなら得意だ、昔カレーにハマってたときがあったんだよね。 「じゃあ……ってできるね、だよね」 「はい、よくやってたので」 なんか申し訳ない、と思っていると私の前にボンっと置かれた。 「メルにはこれだ、剥き方も綺麗だし今日はじゃがいも係な」 「わかりました」 じゃがいもを無心で皮を剥いていき、あっちの世界でいう乱切りをした。それを調理部門に持って行ったりしてなんだか学生時代していた飲食店のバイトのようで楽しかった。 「メルちゃん、ご飯食べよう」 「うん」 それからお昼ご飯を食べると、私は自分の部屋に戻った。 *** 十四時になり私は厨房に戻ると、パン生地を広げて生地を伸ばして棒状にし輪っかに形成して閉じる。閉じ目を下にしてそれを十個ほど作ると、鍋に水を貯めて沸騰させる。蜂蜜を少し入れると、生地をお湯の中に入れて片面ずつ二十秒ほど茹でる。 「何作ってるんですか? メルさん」 「うん? ベーグルよ」 「ベーグル? あ、石窯に入れますか。俺やりますよ」 アルくんは鉄板を持ち、それを
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