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第327話

Auteur: こふまる
これほど苦しいことはない。

かつて手の中にあったものを大切にせず、失って初めてその価値に気づき、忘れられない執着を抱く——

真剣な面持ちで尋ねる。「桐嶋を選ぶつもりなのか?」

夕月はビジネスライクな口調で告げる。「私たちは桐嶋グループと既に合意に至りました。来週、正式な買収契約の調印式を行う予定です」

まるで取るに足らない存在を扱うかのような、軽くて冷淡な口調。

「橘社長、もう手遅れですわ。半年前なら、買収を持ちかけてきたのはあなただけでした。

でも今は、どんなに良い条件を出されても、お断りします。仮にあなたが約束を守り、心変わりしないとしても——600円億も1000億円も、2000億だって、全てお断りします」

いくら大金を積まれても無駄なことだった。

感情というものは、一度失われてしまえば、二度と取り戻すことは難しい。

千本もの冷たい針が体を突き刺すような痛みが、冬真を襲う。

眉間に深いしわを刻み、彼は声を荒げた。「桐嶋を選べば、後悔することになるぞ!」

夕月は相手にする気も失せ、「お父様、お客様をお見送りください。自分から退出なさらないなら、警備を呼びますが」
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Commentaires (1)
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良香
もう拉致やん。捕まえて貰え。
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