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第1105話

Autor: 木真知子
ウィルソン家の到来で、会場の空気はさらに微妙に揺れた。

光景と本田家の面々は、彼らにやけに熱心だ。

もちろん、同じ大財閥同士。わざわざ媚びへつらう必要などない。

だが周囲への態度と比べれば、十分に『特別扱い』だった。

ただ一人、隼人だけが別だった。

彼は光景の隣で、まるで孤高の彫刻のように静かに座り、愛する人をひたすらに見つめていた。

その視線は深く、濃く、情が滲み、瞬きすら忘れているかのようだった。

ちょうどその頃、万霆と桜子は何かを話し込んでいた。

父娘は真剣な表情で密談中。

桜子は話に夢中で、背後から向けられる熱すぎる視線にまったく気づいていなかった。

ふいに、隼人の美しい顔がすっと陰る。

冷たい風が吹き抜けたような気配。

隆一がシャンパンを取り上げ、わざと体を前に傾け、隼人の視線を完全に遮ったのだ。

そして次の瞬間。

隆一はゆっくりと隼人のほうへ振り向き、唇の端をほんの少しだけ上げた。

挑発めいた、気怠い笑み。

軽くシャンパンを掲げてみせる。

隼人の血の温度が、一気に氷点まで落ちた。

握り締めたグラスの脚が、きしっと悲鳴を上げる。

隆一は眉をひょいと上げ、余裕たっぷりに一口。

その目つき、その笑み――挑発以外の何物でもない。

――パキッ。

隼人は呼吸を忘れるほどの怒気のまま、ついにグラスの脚を折ってしまった。

シャンパンが彼のスーツにばしゃっと飛び散る。

「え?隼人お兄ちゃん!服が汚れちゃってる!」

昭子は、常に隼人ばかり見ていた。

その様子に気づくやいなや、まるでバネ仕掛けのように飛び出した。

そしてなんと、その場にしゃがみ込み、ハンカチで隼人のスラックスについたシャンパンを拭き始めたのだ。

――一同「……?」

拭く?いや、これはもう、完全に『媚び』だろ?

本田家の令嬢が、こんなに価値を落とすような真似をするなんて!

正太と本田夫人の顔は鉄のように青ざめ、怒りに震えていた。

本田家の栄次も、自分の姪が笑い者にされているのに止めるどころか、隣でこっそり笑っている。

むしろ楽しんでいる始末だ。

その小さな忍び笑いを、優希は見逃さなかった。

細い鳳のような目が、すっと沈む。

だが、昭子を止めるつもりはなかった。

優希は、昭子がこれを機に懲りればいいと思っていた。

二度と、既婚者に色目を使
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