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第1119話

Author: 木真知子
レース開始の時間になった。

歓声と期待に包まれ、騎手たちはそれぞれ鍛え抜かれた馬を引き連れて、堂々と姿を現した。

花束と拍手の中、彼らは胸を張り、一人ひとりがまるで戦場へ向かう戦士のようだった。

司会者が、登場する選手と名馬を次々と紹介していく。

観客たちの視線はそれぞれ自分の応援する馬に注がれていた。

だが、VIP席の一角だけは違った。

ただひとりの美しい姿が現れるのを、息を潜めて待っていた。

「次の選手は――」

司会者が手元のリストに目を落とした瞬間、言葉を失った。

会場がざわりと静まる。

「KS財団・高城家のご令嬢、桜子様!」

――どよめき。

観客席が一気に沸いた。

まさか、高城家の桜子様が直接レースに?

彼女が乗馬までできるなんて……

ジュエリーデザイナーのAlexa、ホテル経営者、ファッションデザイナーのSharon、名医・神の手。

そして今日は――騎手。

この女、一体どれだけ才能持ってんの?

そんな驚嘆の声があふれる一方、面白半分の人たちは酸っぱい声を上げていた。

「KSほどの財団でも、騎手ひとり雇えないの?自分とこのお嬢様を出すなんて、安っぽく見えない?」

「ほんとよ。馬場なんて砂埃すごいし、汚れるじゃない。私なら絶対行かないわ」

「馬は所詮獣よ?暴れたら落ちて踏まれて、どうなるか……

桜子様って、ほんと目立つためなら何でもやるのね」

だが――桜子が、漆黒と白の気品ある騎乗服で啸雲を連れて現れた瞬間。

その批判は、すべて飲み込まれた。

空気すら止まった。

あまりに、美しかった。

騎乗服はシンプルで体型がごまかせない。

誰でも似合うわけではない。

だが、桜子の完璧な身体のラインが、その欠点をすべて塗り替えた。

澄んだ瞳。

長い脚。

凛とした気迫。

――まるで燃える太陽。

その姿を見た隼人は、我慢できずに前へ走り出した。

欄干を握りしめ、瞳を潤ませ、ただ一心に桜子を見つめる。

「桜子……」

愛しい人の名を呟いた途端、胸が熱くなり、涙が滲んだ。

後ろで昭子が、隼人の背中をねめつけながら、酒を一気に飲み干した。

ほら、見てなさいよ。

今のうちに、しっかり見ときなさい。

――もうすぐ、その姿を見る機会も減るんだから。

光景は眉をひそめていた。

誇り高い息子が、高城家の娘の前であ
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